口唇口蓋裂の現在と遺伝子研究の重要性

口唇口蓋裂は、胎児の時に左右に別れていたくちびる(口唇)や上あご(口蓋)がくっつかない状態のまま生まれる先天性の病気です。

黄色人種に多く、日本では妊娠500件に1例という高い頻度で発生し、国内の患者は25万人以上いるとされています。

愛知学院大学は、口唇口蓋裂センターや言語治療外来部門を持ち、この分野では中部地区最大で最も古くから治療を行ってきました。

聴覚士養成・疫学研究・国内最大の遺伝子バンク

言語治療など、生活の質(QOL)を高めるアフターケア充実にも努めており、平成16年4月には、国内で唯一の口蓋裂小児の構音障害の施設基準Iに適合する付属施設を持つ、4年制の言語聴覚士養成機関を、心身科学部健康科学科と心理学科に開設。国内外から研修生を受け入れるなど、教育面で中心的役割を果たしています。

研究面でも、東海3県の出産施設の協力の下、厚生労働省科学研究費で先天異常モニタリングを行い、この地方で先天的な病気の子供がどの程度出生しているか、近年の妊婦の高齢化や環境ホルモンなどの影響で先天的な病気が多発していないかなどの疫学的研究を行ってきました。

国内最大の遺伝子バンク文部科学研究費や米国NIHなどの研究費を受け、米国アイオワ大学などと共同で着手。

平成10年からは、文部科学省の「特定領域研究ゲノム医科学」の分担研究者として、国内における口腔先天異常の研究にテーマを広げ、平成15年には、文部科学省ハイテクリサーチ拠点(委員長野口俊英病院長)の分担研究として、協力者のプライバシーの保護と倫理面に十分配慮をしつつ、確実なセキュリティーの下で十万検体以上を保管できる「口腔疾患遺伝子バンキング施設」を設立。口唇口蓋裂について我が国最大の遺伝子を保有しています。

口腔疾患遺伝子バンキング施設1 口腔疾患遺伝子バンキング施設2 口腔疾患遺伝子バンキング施設3 口腔疾患遺伝子バンキング施設4

予防への取組み

先天性疾患は予防が困難だと考えられていますが、平成10年から、口唇口蓋裂の予防を目指した取組みも始まりました。既にこのプログラムで出産に至った方もいます。

プログラムは出生時の予防を約束するものではありませんが、これまでの研究から予防効果が明らかになった血液検査や栄養指導などを中心に行うもので、患者や家族への福音となっています。

将来は、遺伝子解析の成果を取り入れ、確実な予防を目指しています。この研究は国の研究費を受け、同センターを中心に全国19大学で平成16年から平成19年までの4年間、継続が予定されています。

遺伝子研究はどう生かされるのか

あまり知られていない口腔先天異常症候群の場合、多くの患者の方が自分の正確な病名を知らないまま病気で苦しんでいるのが現状です。

例えば、基底細胞母班症候群では、口蓋裂や顎嚢胞、皮膚癌などとして治療され、正しい診断がなされていない方がいます。
以前は、専門医以外は正確な診断が困難だったためですが、愛知学院大学口唇口蓋裂センターでは、必要に応じて十分なインフォームドコンセントを行った上で遺伝子分析や各種検査などを行い、正確な病名を明らかにすることが出来るようになりました。

これが遺伝子解析の研究結果です。家族に同じ病気が発症するかもしれないと、不安な日々を送っている方にとっては、遺伝子解析を行うことで、病気が発症しないと分かれば安心できます。
病気と診断された場合も、早期治療が可能になります。

口唇口蓋裂センターでは、先天的な口の病気について、最新の研究成果をふまえて的確なカウンセリングを行うため、遺伝子カウンセリング部門を設立しました。

口腔疾患関連遺伝子共同研究拠点とは

研究には、多くの大学の協力が必要です。口腔先天異常疾患関連遺伝子の解析研究について、文部科学省基盤研究Aの助成を受け、北海道から沖縄まで25大学が協力する研究拠点が設立されました。

《研究代表者施設》愛知学院大学口唇口蓋裂センター

《共同研究者施設》

  • 北海道大学・札幌医科大学・東北大学・岩手医科大学・秋田大学・明海大学・東京大学・東京医科大学・東京医科歯科大学・神奈川歯科大学・横浜市立大学・信州大学・名古屋市立大学・大阪大学・島根大学・九州大学・九州歯科大学・福岡歯科大学・大分大学・佐賀大学・長崎大学・宮崎大学・鹿児島大学・琉球大学
  • 共同研究者施設

    お問合せは、下記で受け付けています。

    愛知学院大学口唇口蓋裂センター
    (tel:052-759-2151 E-mail:natsume@dpc.aichi-gakuin.ac.jp)

    国連認定法人(ロスター)特定非営利活動法人 日本口唇口蓋裂協会
    (理事長 川口文夫 中部電力株式会社会長)
    (tel:052-757-4312 E-mail:jcpf@naa.att.ne.jp)