<インドネシア共和国>
期間:平成15年2月2日〜2月16日
派遣者: 小浜源郁 (札幌医科大学 名誉教授)
野口 誠 (富山大学医学部 教授)
関口 隆 (手稲渓仁会病院)
山口 晃 (札幌医科大学)
針谷靖史 (札幌医科大学)
林 路子 (札幌医科大学附属病院)
横山秀子 (札幌医科大学附属病院)
今岡典子 (日本口唇口蓋裂協会)
中部ジャワ州ジョクジャカルタ市ガジャマダ大学において、口唇口蓋裂の手術症例を通して、同大学口腔外科医への技術移転を行った。手術症例の内訳は、口唇形成術:12例、口蓋形成術:8例である。口唇形成術はMillardによるroatation advancement methodを中心に指導した。口唇裂における口輪筋の走行の特徴とそれを踏まえた筋形成について、実際例を通じて解説した。口蓋形成術については、粘膜骨膜弁法によるpush-back operation、特に成人未手術例におけるwide cleftの際の口蓋帆張筋の処理について、段階を追って解説、指導した。
同大学歯学部において、「Management of oral squamous cell carcinoma: guideline for the primary treatment」と題する学術講演を行った。その中で、頸部郭清術の術式と適用に関する討論を行った。
 また西ジャワ州口腔外科学会主催のセミナーにおいて、「Management of oral squamous cell carcinoma: guideline for the primary treatment」と題する学術講演を行った。口腔癌の早期発見と早期治療は根治性ばかりではなく、口腔の機能温存に有利なことを強調した。
 さらにスマトラ島バンダラランプン市Dr. H ABDUL病院においてパジャジャラン大学の口腔外科医と共同で、48例の口唇口蓋裂手術を行うとともに、実際例を通して治療法に関する討論を行った。両側性口唇裂で、中間顎の突出が著しい症例の管理について意見交換した。すなわち、口唇形成術時に中間顎を骨折させる方法では後に口唇圧によって、中間顎が下方に突出するcaseがあることから、他の合理的方法が検討された。中間顎基部を一定幅で骨削除し、水平的に後方移動しワイヤー固定する方法、中間顎は処理せずに二段階法による口唇形成術などが議論の対象となった。
 これまでの医療援助によって技術移転は進み、彼らが自ら手術を行えるまでにその技術は進歩した。インドネシアには数多くの患者が今だ未手術で放置している状況であるが、手術によって患者の人生は大きく変わるものだと感じている。一人でも多くの患者への手術は必要であり、このような活動の重要性を現地医師らにも伝わったことと確信している。
 今後の課題として、現在のインドネシアにおける口唇口蓋裂治療は避隙を閉鎖することだけを目的としているので、顎顔面形態の正常な発育と機能の獲得を促し、成人となった時、普通の人と同じような社会生活がおくれるようにはなっていないのが現状である。今後は生まれてから成人になるまでの過程において適切な時期に適切な処置が必要であることを教育し、それを担う人材を育成し、口唇口蓋裂の治療体制を確立する必要があると考える。

2007年度は、日本郵政公社のボランティア貯金の補助金を受け、平成19年12月2日〜18日、インドネシア共和国西ジャワ洲バンドゥンをはじめ、ジョグジャカルタ並びにロンボク島へ医療チーム(専門家10名)の派遣を予定している。バンドゥンでは、日本政府の支援を受け建設中であった口唇裂センターが昨年5月に完成した。当施設を私用して無償手術を行い、また僻地へ出向いて無償手術を行う。ジョグジャカルタ並びにロンボク島マタラムでは、現地医師・看護師への技術指導を行うとともに無償手術を行う。