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【馬】

★1a.馬と結婚の約束をする娘。

『捜神記』巻14−11(通巻350話)  娘が馬に「遠方に赴任している父を連れ帰ってくれるなら、お前の嫁になろう」と冗談を言う。馬は父のもとへ駆け、父を連れ帰って娘を要求する。父は怒って馬を殺し、皮を剥ぐ。皮は娘を包みこんで飛び去り、やがて庭の樹上で蚕と化して糸を吐く。良質の糸が多く取れたので、その樹を「桑」と名づけた。「桑」とは「喪」の意味である。

★1b.馬と夫婦になる娘。

『遠野物語』(柳田国男)69  貧しい百姓が飼っている馬をその娘が愛し、ついに娘と馬は夫婦になる。百姓は怒り、馬を桑の木につり下げて殺す。 娘が馬の首にすがって泣くので、百姓は斧で馬の首を切り落とす。娘は馬の首に乗ったまま、天に昇り去った〔*オシラサマ(養蚕の神様)の起源譚〕。

★1c.馬と交わる女たち。

『日本書紀』巻16武烈天皇8年3月  武烈天皇は、女たちを裸にして平板の上に坐らせ、馬と交接させた。女の陰部を見て、潤っている者は殺し、潤っていない者は官婢(=朝廷所有の婢)とした。これが武烈天皇の楽しみだった。 

★2.馬が動かなくなる。

『黄金伝説』160「司教聖マルティヌス」  身なりをかまわぬ司教聖マルティヌスが、ろばに乗って出かける。数人の騎士たちが、マルティヌスにおそいかかり、めった打ちにする。すると、騎士たちの馬が大地に根が生えたごとくになり、鞭打っても動かない。騎士たちは聖人に詫びる。

『高野聖』(泉鏡花)  魔性の女が、旅の薬売りを馬に変身させる。その馬を馬市に連れて行こうとするが、動かない。女が着物を脱いで馬の下腹をくぐりぬけると、馬は歩き出す。

『沙石集』巻5末−7  聖徳太子が片岡山を過ぎる時、馬が進まなくなった。不審に思って見ると、異相の僧が飢えて臥していた。この僧は達磨大師である。聖徳太子は前世で唐の僧だった時、達磨大師から「日本に生まれて仏法を広めよ」と勧められ、この日本に誕生したのであった。

『太平記』巻11「筑紫合戦の事」  菊池入道が櫛田の宮を過ぎる時、乗った馬が立ちすくみ進まなくなる。入道が神殿の扉を2矢射ると、馬は動き出す。社壇には大蛇が矢に当たって死んでいた。

『貫之集』  貫之が紀の国から帰り上る途次、にわかに馬が重病になる。道行く人が「ここにおわす蟻通しの神がし給うたこと」と教えたので、貫之は「かき曇りあやめも知らぬ大空に蟻通しをば思ふべしやは」の歌を奉り、馬は回復する〔*『俊頼髄脳』などに類話〕。

『蒙求』225所引『西京雑記』  滕公が車で東都門に行った時のこと、車を引く馬が急に鳴き出し、足をかがめて進もうとせず、前足で地をかいた。士卒がそこを掘ると石棺があり、古体の文字で「3千年後に、滕公なる者がここに葬られよう」と記してあった。

★3.人食い馬と英雄。

『小栗(をぐり)(説経)  横山殿は娘婿の小栗判官を嫌い、人食い馬の鬼鹿毛(おにかげ)に乗せて、小栗を殺そうとたくらむ。しかし鬼鹿毛は小栗の言葉を聞き、その顔を拝んで(*→〔瞳〕2b)、荒々しい心を捨て、前膝を折って小栗を背に乗せる。小栗は自在に鬼鹿毛を乗りこなし、梯子乗り・碁盤乗りなどをする。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章  ビストン族の王ディオメデスは、人食い牝馬を持っていた。ヘラクレスが来て、秣槽(まぐさおけ)の世話をする者たちを打ち負かし、人食い牝馬を連れ出した。ビストン人たちが追って来たので、ヘラクレスは彼らと闘い、ディオメデス王を殺した。

★4.他人の馬に乗っていたため、間違って殺される。

『三国志演義』第63回  劉備の軍が、劉璋の軍と戦うため出陣する時、軍師ホウ統の馬が棒立ちになって、ホウ統を振り落とした。劉備はホウ統の身を気づかい、「このような悪い馬にはわしが乗ろう」と言って、自らの白馬とホウ統の馬を取り替えた。待ち伏せしていた劉璋の軍は、「白馬に乗るのが劉備だ」と思い、矢の雨を射かけてホウ統を殺した。

『南総里見八犬伝』肇輯巻之1第2回  滝田城主・神余光弘は、愛妾玉梓の色香におぼれていた。近習の山下定包がそれに乗じ、国の乗っ取りをねらう。村民・杣木朴平らが山下定包暗殺を企てたので、山下定包は自分の白馬に神余光弘を乗せて、狩に行かせる。杣木朴平らは、白馬に乗る神余光弘を山下定包だと思い、矢を射かけて殺した。

★5.馬の教え。

『捜神記』巻13−9(通巻327話)  秦の頃、胡族の侵攻に備えて城を築くが、何度も完成しそうになっては崩壊する。1頭の馬が同じ所をぐるぐる走り回るので、その馬の足跡に沿って城壁を築くと、ようやく、崩れることなく完成する。

*馬の教えを無視して、命を失う→〔落とし穴〕2の『王書』(フェルドウスィー)第2部第7章「ロスタムの最期」・〔凶兆〕3aの『リチャード三世』(シェイクスピア)第3幕。

★6a.観音の化身の白馬。

『うつほ物語』「俊蔭」  清原俊蔭は16歳の時、遣唐使となって渡唐するが、途中、嵐にあって波斯国の渚に漂着した。俊蔭は心細さに観音を念じ、「7歳より仕うまつる本尊、現れ給え」と祈る。すると、鞍を置いた白馬が渚に出現し、俊蔭を乗せて清く涼しい林まで運んで、消え失せた〔*俊蔭はその後、阿修羅・天人・仙人・仏に出会い、琴を得て帰国する〕。

『今昔物語集』巻5−1  天竺の人・僧迦羅と5百人の商人たちが、美女たちの住む島へ行く。しかし美女たちが実は羅刹鬼であることを知って逃げ出し、浜辺で観音に救いを求める。沖から大きな白馬が波を分けて現れ、僧迦羅と商人たちは皆、白馬にしがみつく。白馬は海を渡り、僧迦羅たちは故国へ帰ることができた〔*『宇治拾遺物語』巻6−9に類話。原拠である『大唐西域記』巻11・1・3では、天馬が雲路を飛び走った、と記す〕。

『平家物語』(延慶本)巻2−33「基康清水寺籠事・付康頼夢の事」  油黄島に流された康頼入道のある夜の夢に、子息基康が「妙法蓮華経信解品」と白帆に書いた船で来ると見て、なおよく見ると、船ではなく白馬に基康は乗っていた。

★6b.海の上を駆ける白馬。

『ケルトの神話』(井村君江)「常若の国へ行ったオシーン」  騎士オシーンは、常若(とこわか)の国ティル・ナ・ノグの王女、金髪のニァヴに誘われ、いっしょに白馬に乗る。2人を乗せた白馬は海の上を西へ向かって駆け、常若の国の宮殿に到る。オシーンはニァヴと結婚して3年の月日を幸せに過ごすが、故郷が恋しくなり、彼は1人で白馬に乗って帰る。ニァヴはオシーンに、「白馬から下りてはいけません。足が地にふれたら、2度と私の所へ戻れないのです」と言い聞かせる→〔土〕3

★7.天翔ける馬。

『今昔物語集』巻11−1  甲斐国から都へ、黒駒が献上された。聖徳太子は黒駒に乗って天空へ上がり、東をさして去った。太子は信濃国に到り、三越(みこし。=越前・越中・越後)の境を巡って、3日後に帰還した。

『今昔物語集』巻11−6  藤原広継は、午前中は都で右近少将として朝廷に仕え、午後は九州へ下り太宰少弍として執務した。彼は空を翔ける龍馬(りゅうめ)に乗り、瞬く間に都へ上り、九州へ下っていたのだった。

『変身物語』(オヴィディウス)巻4  ペルセウスがメドゥサの首を切り取ると、首からほとばしる血を母として、翼を持つ天馬ペガサスが生まれ出た。

★8.八本足の馬。

『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)(スノリ)第42章  男神ロキは牝馬に変身して牡馬スヴァジルフェーリと交わり、灰色で8本足の馬スレイプニルを産んだ〔*スレイプニルはオーディンの乗馬となる〕→〔性転換〕5

*八本足の兎→〔兎〕5の『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)。

★9a.人間を馬にする草、馬を人間にもどす草。

『宝物集』(七巻本)巻1  天竺の安族国(=西アジアのアルサク朝パルティア王国のことと言う)の王は、人を馬にする術を知っていた。王は、旅の男に葉の細い畢婆羅草(ひつばらさう)を食べさせ、馬にしてしまった。息子が父を尋ね捜し、葉の広い遮羅婆羅草(しゃらばらさう)を与えて、もとの人間に戻した。

*人間をろばにするキャベツ、ろばを人間にもどすキャベツ→〔ろば〕2aの『キャベツろば』(グリム)KHM122。 

*笞で人を打って馬にする→〔宿〕3b の『今昔物語集』巻31−14。

★9b.「人を馬にする」と称するが、できない。

『人馬』(狂言)  大名が「一芸のある者を召し抱える」と言うので、新参の男が「人を馬にする術を知っている」と、でまかせを言う。大名の命令で太郎冠者が実験台になるが、男がいくら呪文を唱えても馬にはならず、男は逃げ出す。

★9c.人を馬に変えるふりをして、人妻と交わる。

『デカメロン』第9日第10話  牧師が、「魔法で人を馬にできる」と称して友人の妻を裸にし、身体中を「ここが馬になるように」と言ってさわる。最後に、「尻尾をつける」と言って背後から性交に及ぶので、夫が「尻尾はいらない」と叫ぶ。牧師は、「君が口をきいたので魔法が効かなくなった」と言う。

★9d.「馬を人に変え、人を馬に変える」と称して、酒食や金品をだまし取る。

『沙石集』巻8−2  修行者が或る人に、「馬を人に変え、人を馬に変える術を授ける」と約束して、様々にもてなしを受ける。引出物まで取った上で、修行者は「馬を人に変える術とは、馬を売って人を買うのです。人を馬に変える術とは、人を売って馬を買うのです」と教えた。

★9e.人が死んで馬に生まれ変わる。

『古今著聞集』巻20「魚虫禽獣」第30・通巻719話  阿波国の智願上人の乳母だった尼が、死後、馬に生まれ変わった。智願上人は、尼の生まれ変わりとは知らず、その馬に乗った。ほどなく馬は死に、上人は惜しみ嘆いたが、尼は、またしても上人の乗馬に生まれ変わった。尼の霊は人に憑依して、「上人のことをずっと心にかけているので、他の物に生まれ変わったりせず、再び上人の乗馬になったのだ」と告げた。建長の頃(1249〜56)のことである。

★10.馬人間。

『御曹子島渡』(御伽草子)  御曹子義経が蝦夷が島への航海途中に上陸した王せん島には、腰から上が馬・下半身が人の、身長10丈ほどの馬人間が住んでいた。彼らは背が高すぎて、倒れると起き上がれず、腰に付けた太鼓を叩いて助けを呼ぶのだった〔*→〔逆さまの世界〕2の『ガリヴァー旅行記』では、馬が人を支配する島をガリヴァーが訪れる〕。

★11.馬が埴輪に変わる。

『日本書紀』巻14雄略天皇9年7月1日  田辺史伯孫(はくそん)が、自分の葦毛馬と引き換えに得た赤馬を、厩(うまや)に入れておく。しかし翌朝見ると、赤馬は埴輪馬(はにわうま)に変わっていた。彼の葦毛馬は、誉田陵(=応神天皇陵)の埴輪馬の間に立っていたので、伯孫は厩の埴輪馬を陵に戻し、葦毛馬を連れ帰った。

*天皇陵の埴輪→〔人形〕6

★12.駿馬と駄馬。

『三国遺事』巻1「紀異」第1・高句麗  卵から生まれた朱蒙は、金蛙王のもとで育った。金蛙王は、朱蒙に馬の飼育をさせた。朱蒙は駿馬をよく見抜き、わざと餌を減らして痩せ細らせ、駄馬にはたくさん餌を食わせて肥らせた。金蛙王はそんなことはまったく知らず、肥えた馬には自分が乗り、痩せた馬は朱蒙に与えた〔*見た目だけで判断する点で、→〔二者択一〕1の『神統記』(ヘシオドス)と類似する〕。 

★13.馬乗り。

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)  高給サラリーマンの「私(河合譲治)」は28歳の時、カフエエの女給・15歳のナオミを知り、彼女の西洋風の容姿にひかれて同棲する。しかしナオミは天性の淫婦であり、平気で大勢の男たちと関係を持つ。「私」は怒ってナオミを追い出すが、彼女の肉体の魅力に抗しきれず、家へ戻ってくれるよう請う。「私」は四つん這いになり、ナオミは「私」の背中へまたがって、「あたしに好きなことをさせるか。いくらでもお金を出すか」と問う。「私」は、すべてナオミの言いなりになることを誓う。 

 *少女が男の背中に腰かける→〔椅子〕3の『ラ洞先生』(谷崎潤一郎)。

 

*山にくっつく馬(*→〔山〕4cの『沼の主のつかい』)と、岩から出て来る馬(*→〔石〕9dの『ふしぎな馬』)。

 

 

【海】

★1.海の水のからい理由。

『海の水はなぜからい(塩引き臼)』(昔話)  望みのものが出る挽き臼で弟が長者になる。兄がその臼と甘い菓子や餅を盗んで、小舟で沖へ行く。兄は甘い物を食べた後に塩が欲しくなって、臼を挽く。しかし止め方を知らなかったので小舟は沈み、臼は海底で今も塩を出し続けている(岩手県上閉伊郡)。

『パンタグリュエル物語』第二之書(ラブレー)第2章  昔ファエトン(パエトン)が父太陽神に代わって光明の車駕を操った時、技が拙かったために、車駕は黄道を逸脱して著しく地球に接近した。大地は熱せられて多くの汗を流し、それが海となった。それゆえ海は、汗同様に塩辛いのである。

★2.海の水すべてを収める器。

『西遊記』百回本第42回  観音菩薩が浄瓶を海に投げ込むと、まもなく亀が背に浄瓶をのせて浮かびあがる。孫悟空が浄瓶を取ろうとするが、持ち上がらない。海に投げ込まれた時、浄瓶は海の水をすべて中に収めてしまったのだった〔*観音はこの浄瓶で、妖怪紅孩児の三昧火を消す〕。

*→〔無尽蔵〕2bの『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』第46〜47章。

★3a.海の水を干上がらせる。

『太平記』巻10「稲村崎干潟と成る事」  新田義貞が、海上をはるかに伏し拝み「潮を退け道を開かせ給へ」と龍神に祈誓して、黄金作りの太刀を投ずると、稲村ヶ崎20余町が干上がった。6万余騎は、遠干潟を真一文字に鎌倉へ攻め入った。

*→〔玉(珠)〕3の『太平記』巻39「神功皇后新羅を攻め給ふ事」。

*川の水を干上がらせる→〔水〕2a。 

★3b.海の水を二つに分ける。

『出エジプト記』第12〜14章  イスラエルの人々が葦の海(あるいは紅海)まで来た時(*→〔呪的逃走〕3)、主(しゅ)は一晩中、激しい東風をもって海を押し返し、水は2つに分かれた。イスラエルの人々は海の中の乾いた所を進んで行き、水は彼らの右と左に壁のようになった。ファラオの戦車部隊があとを追って海に入るが、主が水をもとの場所へ戻したので、ファラオの軍は全滅した。

★3c.海の水が分かれない。

『海と夕焼』(三島由紀夫)  13世紀のフランス。少年アンリはキリストに出会い、「お前ら少年が、聖地エルサレムを異教徒トルコ人から取り戻すのだ」と命ぜられた。「同志を集めてマルセイユへ行け。地中海の水が2つに分かれて、お前たちを聖地へ導くだろう」。アンリたち少年十字軍はマルセイユへ行き、懸命に祈ったが、海は分かれなかった。「船でエルサレムまでお連れしよう」と言う悪人に騙され、少年たちは奴隷として売られる。アンリは大覚禅師に拾われ、日本へ渡って、鎌倉建長寺の寺男安里となった。

★4a.海の水を飲み干す。

『マハーバーラタ』巻3「森の巻」  神々との戦争に敗れて、悪魔たちは海底へ逃げ込んだ。彼らは夜ごとに陸地へ上がり、多数のバラモンたちを食い殺して、また海底に隠れた。このままでは世界が滅んでしまうので、神々の依頼によって、アガスティヤ仙人が、一気に大海を飲み干す。干上がった海に神々が攻め入り、悪魔たちを殺した。 

*海の水を飲み干すが、川の水は飲まない→〔契約〕2の『寓話』(ラ・フォンテーヌ)第1集「フリギアの人イソップの生涯」。

★4b.海を汲みつくそうとする・埋めつくそうとする。

『三宝絵詞』上−4  大施太子が龍王から得た如意珠を、諸の龍たちが奪い返し、海中に没した。太子は再び如意株を得るために、「海の水は多いといっても限りがある」と言って、貝殻で海水を汲みつくそうとする。龍たちはあざ笑うが、天人が力を貸し、太子が1〜2度汲むだけで、海水の10分の8がなくなった〔*『宝物集』(七巻本)巻5の類話では、大海が半分に減じて龍宮が海上に現れた、と記す〕。 龍王はあわてて如意珠を太子に返した〔*山を崩して平地にしようとする愚公の物語と類想→〔山〕6cの『列子』「湯問」第5〕。

『山海経(せんがいきょう)第3「北山経」  炎帝神農氏の娘女娃(じょあい)は、東海に遊んで溺れ死んだ。彼女は、化して精衛という小鳥になり、以来、つねに西山から小枝・小石をくわえて運んで来ては、東海を埋めつくそうとしている。

★4c.海水を掬(すく)って懐に入れ続ける。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第7章  イピメデイアは海神ポセイドンに恋していつも海へ行き、海水を掬っては懐に注ぎ込んでいた。ポセイドンはイピメデイアと会合し、彼女は2人の子供を産んだ。

★5.海上を歩く。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第4章  巨人オリオンは、一説では海神ポセイドンの子である。ポセイドンはオリオンに、海上を自由に歩く力を授けたという。

*イエスが湖上を歩く→〔湖〕2の『マタイによる福音書』第14章。

*水上歩行→〔歩行〕2

★6a.海の世界は、そのまま天上世界に通じている。

『丹後国風土記』逸文  水の江の浦の嶼子(=浦島)は、亀の化身である美女から「蓬山(とこよのくに)へ行こう」と誘われ、舟を漕いで海中(わたなか。*「遠い海の彼方」とも「海底」とも解釈できる)の大きな島に到った。7人の童子と8人の童子が出迎えて、「この人は亀比売(かめひめ)の夫だ」と言った。美女(=亀比売)は、「7人の童子は昴星(すばるぼし=プレアデス星団)。8人の童子は畢星(あめふりぼし=ヒアデス星団)」と説明した。

 *昴星の物語→〔すばる〕

 *畢星の物語→〔雨〕5c

*天の雷が木に落ちて魚に化す→〔落雷〕3bの『日本書紀』巻22推古天皇26年8月。

*海の彼方は天の川につながっている→〔星〕3b

★6b.海底の龍宮世界。

『海神別荘』(泉鏡花)  欲深い男が、海中の財宝を得ることと引き換えに、1人娘を海へ沈める。娘は海底の琅カン殿(ろうかんでん。=龍宮世界)に到り、乙姫の弟である公子に迎えられる。娘は、自分が生きていることを父に知らせたいと思い、陸へ上がるが、人間の目には、娘が大蛇に見えた。父は鉄砲で大蛇を撃とうとするので、娘は悲しんで海底へ戻り、公子との幾久しい契りを誓う。

★6c.海の底にも都がある。

『平家物語』巻11「先帝身投」  壇の浦の海戦で平家は敗北し、源氏の兵たちが平家の舟に乗り移って来る。二位殿(=平清盛の妻・時子)は、神璽(=勾玉)と宝剣(=草薙の剣)を持ち、8歳の安徳天皇を抱いて船端に立つ。二位殿は、「極楽浄土へお連れいたしましょう。浪の下にも都がございますよ」と安徳天皇を慰め、2人は海の底深くへ沈んで行った。

★6d.海の下の町には、おにぎりもお菓子もある。

『現代民話考』(松谷みよ子)6「銃後ほか」第9章の5  第2次大戦が終わり、満州や朝鮮から内地へ引き揚げる日本人たちは、暴行され、殺され、飢えや病気で多くの人が死んだ。朝鮮の海辺で1人の母親が、「海の下には町があるのよ。おにぎりもお菓子もあるから、お母さんと一緒に行きましょう」と、しきりに子供に言いきかせているのを、聞いた人がいた。

★6e.海の中はとても良い所だった、という嘘。

『俵薬師』(昔話)  海へ沈めたはずの嘘吉が(*→〔袋〕9a)、旦那の家へやって来て、「海の中は、とんだいいとこだった。牛ももらった。米ももらった」と言う。旦那は「そんないいとこなら、おれも1ぺん連れてってくれえや」と請う。嘘吉は旦那と一緒に海辺へ行き、旦那を海へ突き落とす(長野県上水内郡小川村稲岡東)。

★7a.海に沈む宝。

『今昔物語集』巻11−15  新羅国の宰相が、東天竺小天子国から弥勒菩薩像を盗み出し、船で帰国する。途中、海が荒れたので船中の財宝を投げ入れるが、風波はおさまらない。「命が助かるためには、第1の宝である弥勒菩薩像の眉間の珠を海に入れるしかない」と考えて投ずると、龍王がこれを取り、海は静まった。

『続日本紀』巻1文武天皇4年3月己未  道照は、玄奘三蔵から不思議な鍋をもらい帰国する。途中、船が波間に漂い7日7夜動かない。「龍王が鍋を欲している」との占い師の言に従い、海に鍋を投ずると船は進み出す。

『平家物語』巻11「内侍所都入」  壇の浦の合戦の時、三種の神器(=宝剣・神璽・内侍所)のうち宝剣(=草薙の剣)は、安徳天皇とともに海に沈んでしまった(*→〔海〕6c)。神璽(=勾玉)は海上に浮かび上がり、内侍所(=鏡)は船中で源氏の兵が確保して、内裏へ戻された→〔転生と天皇〕3

★7b.海に沈んだ宝を引き上げる。再び取り戻す。

『海士(あま)(能)  唐土から興福寺へ贈られた3つの宝、花原磬・泗濱石・面向不背の玉のうち、面向不背の玉は讃州志度の浦沖で龍神に取られ、海底の龍宮に沈んでしまった。藤原淡海大臣の依頼を受けた海士乙女が海底に飛び入り、命を捨てて玉を取り戻した。

『古事談』巻6−9  唐人の船が沈みそうになる。種々の財物を投げても海中に入らず、水龍という笛を入れるとたちまち没して、船は無事であった。後、沙金千両と引き換えに龍王からこの笛を取り返し、平等院の宝蔵に納めた。

『冒険者たち』(アンリコ)  財宝を積んだ小型機が、アフリカのコンゴ沖に墜落する。中年男ローラン、青年マヌー、美女レティシアの3人が船で沖に出、潜水して海底から財宝を引き上げる。財宝をねらうギャングたちが現れ、まずレティシアが、次いでマヌーが銃撃されて死ぬ。怒ったローランは手榴弾を投げて、ギャングたちを皆殺しにする。ローランは、死んで行くマヌーに「レティシアはお前と暮らすと言っていたぞ」と語りかける。マヌーは「嘘つきめ」と笑って息絶える。

★7c.海の中から、不死の甘露などを得る。

『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」  神々が、マンダラ山を地面から引き抜いて海に入れ、海をかきまわす棒軸とする。亀王クールマの背中にマンダラ山を乗せ、龍王ヴァースキを巻きつけ、その頭部と尻尾を引っ張って、マンダラ山を回転させる。海は攪拌されて乳状になり、ラクシュミー(=ヴィシュヌ神の妃)、神酒ソーマ、月、白馬ウッチャイヒシュラヴァスが現われる。そして神々の医師ダンワンタリが、不死の飲料アムリタ(甘露)の入った容器を押し戴いて、姿を現した。

★8.海の名前の起源。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章  ボイオティア王アタマスの息子プリクソスは、ゼウスへの生贄にされそうになったので、妹ヘレと一緒に、空飛ぶ金毛の羊に乗って逃げた。ヨーロッパからアジアに渡る海峡にさしかかった時、妹ヘレは羊の背から滑り落ちて、溺れ死んだ。その海は、彼女の名をとってヘレスポントス(=ヘレの海。現在のダーダネルス海峡)と呼ばれた。  

 

*生命体である海→〔生命〕3の『惑星ソラリス』(タルコフスキー)。

 

 

【裏切り】

★1.師を裏切る。

『マタイによる福音書』第26〜27章  イエスの12使徒の1人イスカリオテのユダが祭司長たちに、「あの男(=イエス)を引き渡せば、いくらくれますか?」と問う。祭司長たちは、銀貨30枚を支払うことにする。最後の晩餐の時、イエスは「あなたがたのうちの1人が、わたしを裏切ろうとしている」と言う。その夜のうちにイエスは捕らえられ(*→〔接吻〕4)、最高法院で有罪の判決を受ける。ユダはそれを知って後悔し、銀貨を神殿に投げ捨ててから、首をつって死んだ〔*イエスが処刑される前に死んだのである〕。  

 *ユダの死については、他の福音書には記述がない。『使徒行伝』第1章に異伝がある→〔土〕5a

★2.親友を裏切る。

『こころ』(夏目漱石)  「先生」とKとは、子供の頃からの親友だった。Kが下宿のお嬢さんへの恋心を「先生」に打ち明けた時、「先生」はKを出し抜いて、下宿の奥さんに「お嬢さんを私に下さい」と申し込み、承諾を得る。「先生」はそのことをKに言わず、Kは奥さんから、「先生」とお嬢さんの婚約を知らされる。「先生」はKに詫びようと思いつつ逡巡しているうちに、Kは「先生」の隣の部屋で剃刀自殺する。  

 *『それから』では、平岡が三千代への恋心を、親友の代助に打ち明ける→〔犠牲〕7

★3.犯罪者仲間を裏切る。

『入院患者』(ドイル)  ブレシントン、カートライトをはじめとする、5人組の銀行強盗が逮捕された。ブレシントンは仲間の4人を裏切って証言し、そのためカートライトが絞首刑、他の3人が刑期15年となった。その後ブレシントンは、ロンドン市街の医院に入院して身を隠したが、出獄した3人が彼を探し出して殺し、病室で縊死したように見せかけた。医師トリヴェリヤンから「入院患者の首吊り」と聞いたホームズは、「犯罪者仲間が、裏切り者に復讐した」との真相を看破した。  

 

 

【占い】

★1.未来の禍福を知る。

『宇治拾遺物語』巻1−8  父親が易占いをして、「自分の死後10年を経て娘は貧しくなる」との運命を知る。父親は、その時に役立てるため千両を隠し、娘に「10年後に宿を借りに訪れる旅人から、千両を得よ」と言い残す。10年後に訪れた旅人もまた易をする人で、彼は娘の訴えを聞き、千両の隠し場所を占い出して、娘に与えた。  

『荘子』「徐無鬼篇」第24  相人がある人の子の相を見て「一国の君主と同じ御馳走を食べて生涯を送るだろう」と占い、それを聞いた父親は悲しむ。果して、その子は旅中盗賊につかまり、足の筋を切られて斉国の屠殺人街に売られ、君主同様に肉を食べて生涯を終わる。

『英草紙』第8篇「白水翁が売卜直言奇を示す話」  神社のほとりで占いをする白水翁に、茅渟官平という侍が八卦を見てもらう。白水翁が「貴君は今夜の三更に死ぬ」と占うので、官平は怒って帰る。しかし占いは的中し、その夜、官平は寝間を飛び出して橋上から川へ身を投げ、死ぬ→〔死因〕2b

★2.多くの人の目前に迫った危難を、人相や手相から読み取る。

『今昔物語集』巻24−21  僧登照が朱雀門の前を通ると、門の下で休む人々に、死相があらわれていた。「たとえ悪人が来て殺すにしても、こんなに多くの人を一時には殺せまい。もしや、門が倒れるのではあるまいか」と登照は察知し、人々に「逃げよ」と警告した。まもなく、風も吹かず地震もないのに朱雀門は倒れた。

『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第12巻67ページ  辻の易者が、通りかかる人々の手相を見て、皆に水難の相があるので「ハテ」と首をかしげる。まもなく雨が降り出し、皆あわてて駆け出す。易者も店じまいして雨を避ける。

*多くの人の目前に迫った危難を、脈拍から読み取る→〔波〕7の『耳袋』(根岸鎮衛)巻之5「道三神脈の事」。

★3.銭占い。

『聊斎志異』巻8−324「銭卜巫」  不運続きの男が28歳の時、巫女に銭占いをしてもらった。巫女は百銭を木筒に入れて揺すり、1枚ずつ手に受けて卓上に並べる。字のある面は凶で、裏面が吉なのだが、58枚目まで、すべて字のある面が出た。巫女は「父上の悪行の報いの禍(わざわい)がまだ尽きず、あなたは今その残りを受けている。58歳で、あなた自身の運と出遇うだろう」と言う。占いどおり、男は58歳を過ぎて裕福になり、80歳の長寿を保った。 

 

 

【占い師】

★1.自分の災難を予見できない占い師。

『イソップ寓話集』(岩波文庫版)161「占い師」  占い師が広場で客を集め、見料を稼いでいた。男が来て「お前の家の戸が破られ、中のものが持ち出されていた」と告げたので、占い師は驚いて家へ駆け戻った。居合わせた1人が「他人のことは前もってわかると言うくせに、自分のことは占ってみなかったのか」と言った。

『黄金のろば』(アプレイウス)第2巻  占い師が客に、旅立ちに良い日を教える。そこへ占い師の知人が来合わせ「一別以来どうしていたか」と問う。占い師は、つい正直に「乗った船が嵐で沈み、陸へ泳ぎついたら追剥に遭い、何もかも失った」と答える。客は占いの見料を払うのをやめて去る。

★2.にせ占い師。

『御神酒徳利』(落語)  旅籠の大掃除の時、番頭の善六が、将軍家拝領の御神酒徳利の保管場所を捜し、台所の水甕に入れたまま忘れてしまう。その後、御神酒徳利が紛失したというので大騒ぎになり、善六は、今さら「私が水甕にしまった」とも言い難く、占いの真似事をして「台所の、水と土に縁ある器の中、との易が出た」と言う。皆、善六は占いの名人だと思う→〔過去〕4

『馬喰やそ八』(昔話)  やそ八が、ある家で人妻が情夫と酒盛りをするさまをのぞき見る。そこへ旦那が帰宅したので、妻は酒肴を隣室に、情夫をつづらに隠す。やそ八は、「私は旅の八卦置きだ」と言って家に上がり、馬の皮をもんで、「隣室に御馳走があり、つづらに化け物がひそんでいる」と占う。旦那は感心して、つづらの処理をやそ八に頼み、馬の皮を百両で買う(岩手県上閉伊郡)。

★3.占い師の死後。

『神曲』(ダンテ)「地獄篇」第20歌  テイレシアスをはじめとする占い師たちは、不遜にも先のことを見すかそうとしたため、死後、罰を受けた。彼らは地獄の第8圏谷の第4濠で、胴体の上に頭を前後逆につけられて、前を見ることができず、後ずさりして歩いている。

 

 

【瓜二つ】

★1.間違えられたり、身代わりになったりする。

『鎌倉三代記』7段目  佐々木四郎高綱と百姓藤三郎は見まがうばかりよく似ていたので、北条家を欺くために高綱は藤三郎の命を買い取り、身代わりのにせ首とする。

『千一夜物語』「『ほくろ』の物語」マルドリュス版第268夜  教王ハルン・アル・ラシードの寵臣「ほくろ」は、財宝を盗んだとの濡れ衣を着せられ、絞首刑を宣告される。警吏長は「ほくろ」の親友だったので、獄中の死刑囚の中から「ほくろ」にそっくりの男を捜し出し、身代わりに絞首台につるす。

『捜神記』巻16−4(通巻379話)  尋陽の司令官宅に寄宿する居候が、冥府に連れて行かれそうになる。居候は必死で命乞いし、身代わりに、彼に容貌の似た司令官幕下の都督が死ぬ。

『壇浦兜軍記』2〜5段目  井場十蔵は、妹阿古屋の愛人景清に瓜二つであるため、間違って捕らわれそうになるが、やがて自らすすんで景清の身代わりをつとめ、命を捨てようとする。

『独裁者』(チャップリン)  トメニア国の独裁者ヒンケルは、アーリア民族による世界支配を目指し、ユダヤ人を迫害する。ユダヤ人の床屋は、たまたまヒンケルにそっくりの風貌だったため、ヒンケルに間違えられる。本物のヒンケルもまた、ユダヤ人と間違えられて逮捕される。床屋はヒンケル総統になり代わり、自由・平和・民主主義を説く大演説をする。

『南総里見八犬伝』第8輯巻之3第78〜79回  長尾景春の母・箙大刀自が、犬川荘介・犬田小文吾を捕らえて首を討つよう命ずる。しかし長尾家の執事稲戸津盛が荘介・小文吾をかくまい、彼らの身代わりとして、山賊酒顛二の手下で荘介・小文吾に容貌の似た2人の首を斬る。

『二都物語』(ディケンズ)  チャールズ・ダーネーは、民衆の犠牲の上に成り立つ貴族の生活を嫌い、侯爵の甥としての身分を捨てて生活していた。しかしフランス革命がおこり、ダーネーは逮捕され死刑を宣告される。ダーネーの妻ルーシーに思いをよせていた弁護士シドニー・カートンが、ダーネーを脱獄させ、自分の容貌がダーネーと瓜二つであることを利用し、身代わりに断頭台にのぼる。

『日本書紀』巻10応神天皇9年4月  「大臣武内宿禰が筑紫で謀叛をたくらんでいる」との讒言があり、応神天皇は、宿禰を殺すための使者をさしむける。臣下の真根子が、武内宿禰によく似ているため身代わりをかって出、自刃する。

『ペンタメローネ』(バジーレ)第1日第9話  フォンツォ王子は瓜二つの親友カンネローロと見間違えられ、カンネローロの妃と床をともにする。フォンツォ王子は2人の間に抜き身の剣を置く。

『レ・ミゼラブル』(ユーゴー)第1部第6〜7編  前科者ジャン・ヴァルジャンは過去を隠し、「マドレーヌ」と名乗る。彼は、貧しい人々を助けるなど数々の善行の結果、市長に推挙される。しかし、彼によく似た男がジャン・ヴァルジャンと見なされ逮捕されたため、マドレーヌ市長は法廷に乗りこみ、「自分こそジャン・ヴァルジャンだ」と名乗る。

*→〔演技〕4の『南総里見八犬伝』第4輯巻之3第36回〜巻之4第37回。

*→〔三者択一〕5の『源平盛衰記』巻16「あやめの前の事」。

*→〔誓い〕2の『七賢人物語』「皇帝の息子の語る第八の物語」。

*→〔入れ替わり〕〔双子〕1a〔分身〕に関連記事。

★2.神・仏・悪魔などが、ある人間と瓜二つに化ける。瓜二つの人間を造る。

『古本説話集』下−56  吝嗇な留志長者の留守中、帝釈天が長者そっくりの姿になって、財物を人々に分け与える。そこへ本物の長者が帰宅するが、2人の長者のどちらが本物か誰も見分けられない。これは、長者を物欲から解放するための方便だった〔*『今昔物語集』巻3−22に類話〕。

『西遊記』百回本第39回  文殊菩薩の乗用の獅子が道士に化け、孫悟空と闘うが到底かなわないので、三蔵法師そっくりの姿になり、本物の三蔵の横に並ぶ。悟空が棒で打ちかかると、2人とも「悟空や、打つんじゃない。私だ」と言い、見分けがつかない。本物の三蔵は緊箍呪を唱えて悟空の頭の金環を締めつけ、自分が本物であることを示す。

『西遊記』百回本第58回  六耳の猿が孫悟空そっくりに化け、本物の悟空と「あいつこそ偽者だ」と争う。南海の観音菩薩が緊箍呪を唱えると、2人とも「頭が痛い」と訴える。天界の照魔鏡に映しても区別がつかない。霊鷲山雷音寺の釈迦如来が偽悟空の正体をあばき、本物の悟空が鉄棒で偽悟空を打ち殺す。

『未来のイヴ』(リラダン)  エワルド卿の恋人アリシャは、美貌とは裏腹の卑俗な魂を持っていた。発明家エディソンが、アリシャと瓜二つで高貴な魂を持つ人造人間ハダリーをつくる。エワルド卿ははじめてハダリーと語り合った時、それをアリシャだと思う→〔人造人間〕1

*→〔にせ花嫁〕2の『白鳥の湖』(チャイコフスキー)・〔婿選び〕1の『マハーバーラタ』第3巻「森の巻」。

★3.瓜二つの集団。

『古事記』下巻  雄略天皇が、紅紐に青摺の衣の百官を率いて葛城山に登る。向かいの山に、まったく同じ服装の一団が現れる。「誰か」と問うと「誰か」と答え、矢をつがえると相手方も矢をつがえる。それは一言主の神であり、雄略天皇は拝礼する。

★4.瓜二つの二人と思わせて、実は一人が二役をする。

『七賢人物語』「妃の語る第七の物語」  騎士が秘密の抜け穴を利用して、王妃と密通する。騎士は王妃を抜け穴から連れ出し、着飾らせて、「私の恋人です」と言って王に紹介する。王は「我が妃と瓜二つだ」と驚く。王は騎士の頼みにより、騎士と恋人(実は王妃)を教会で結婚させ、花嫁に「誰よりも騎士を愛せよ」と教える。騎士と花嫁が船で去った後に、王は妃を奪われたことを知る。

★5.現身と霊姿と思わせて、実は一人が二役をする。

『カター・サリット・サーガラ』「愚者物語」第15話  夫の旅中に妻が情夫の所に行く。妻の腹心の下女が、帰宅した夫に「奥様は亡くなられた」と告げ、夫は嘆く。夫が妻の追善供養をすると、バラモンに扮した情夫が妻とともにやって来て、供養のご馳走を幾月もの間、食い荒らす。下女が「奥様は霊界からおいでになり、バラモン様と食事をなさっています」と言い、夫はそれを信じる。

 

*→〔双子〕に関連記事。

 

 

【ウロボロス】

 *関連項目→〔円環構造〕

★1.自分の尾をくわえて円環状になる蛇や魚。

『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)(スノリ)第34章  ロキと女巨人の間に生まれたミズガルズ蛇を、大神オーディンが深い海の中へ投げこんだ。大洋に横たわる蛇は陸地をとりまくようにして成長し、その口が自分の尻尾を噛むまでになった。

『新編常陸国誌』  地中にいる大魚(大蛇ともいう)が日本国土をとり囲み、首と尾とが茨城県の鹿島郡で出会った。鹿島明神が釘でその首と尾を貫き止めた。この釘が要石(かなめいし)である。それゆえ、この地には地震が少ない〔*要石は、鹿島の神が天から降臨した時に座し給うた石だ、との伝説もある→〔地震〕7の要石の伝説〕。

『南島の神話』(後藤明)第4章「日本神話と南島世界」  とても長い魚「ナエ」が、世界を取り巻いている。ナエは口で自分の尾をくわえて、タガのように日本列島を締めつけているのだ。ナエが口から尾を離すと、タガがゆるんで地震が起こる(種子島の伝承)→〔地震〕7

『ツァラトゥストラはこう言った』(ニーチェ)「序説」  1羽の鷲が空に大きな輪を描き、その鷲に1匹の蛇が絡まっていて、その蛇は鷲の首に輪のように巻きついていた。ツァラトゥストラは「あれはわたしの動物たちだ」と叫び、鷲と蛇をつねに身近に置いた。

*自分の足を食べる蛸→〔蛸〕1cの『死なない蛸』(萩原朔太郎)。

★2.「自分の足指を用いて妊娠する女」というのは、「自分の尾をくわえる蛇」と同類のものであろう。

足指で孕んだ女  大昔のこと、ナミテという名前の女が海岸に現れた。彼女は自分の足の親指を使って自ら受胎し、2人の息子、カウケとカウケゲヴァラを産んだ。やがてナミテは年老い、「私を殺して、血を竹筒に受け止め、火に入れなさい」と息子たちに言う。息子たちは、たくさんの竹筒に血を詰め、栓をして火に入れる。血が煮えて竹筒が割れ、竹筒と同じ数の人間たちが発生した(東北ニューギニア、カイザー・ヴィルヘルムスラント、モヌムボ族の神話)。

★3a.自分の尾をくわえて回転する犬。

『神異経』「西荒経」  崑崙の西に、犬に似た「混沌」という獣がいる。目が見えず耳が聞こえず、食べた物は口から尻へ素通りする。何もせず無為の状態におり、いつも自分の尾を噛み、くるくる回転して、天を仰いで笑っている。

★3b.自分の排泄物を主食とする虫。

『ユープケッチャ』(安部公房)  ユープケッチャは体長1センチ5ミリの昆虫で、自分の糞を主食とする。移動する必要がないため肢は退化して、なくなってしまった。ユープケッチャは体を左に回転させつつ食べ、食べながら脱糞する。糞はつねにきれいな半円を描く〔*→〔箱船(方舟)〕2の『方舟(はこぶね)さくら丸』にも、自給自足の閉鎖系の象徴として、この虫が出てくる〕

★4a.自分の頭の池へ身投げする男。

『あたま山』(落語)  桜んぼを食べた男の頭に桜の木が生え、皆が花見に来る。男がうるさがって木を引き抜くと、あとに大きな穴があき、水がたまって池になる。そこへ魚釣り客が大勢来て騒ぐ。男はたまりかねて、自分の頭の池へ身を投げる。

★4b.自分の持つ瓶(びん)の中へ落ちる男。

『一千一秒物語』(稲垣足穂)「どうして酔いよりさめたか?」  ある晩、「自分」は唄をうたいながら歩いていて、井戸へ落ちた。誰かが綱を下ろしてくれた。「自分」は、片手にぶら下げていた飲みさしのブランディびんの口から、匍(は)い出してきた。

★5.自分の身体から自分自身を産み出す女。

『マイナス・ゼロ』(広瀬正)  昭和20年(1945)、17歳の伊沢啓子はタイムマシンに乗せられて昭和38年(1963)へ行き、浜田俊夫と出会って関係を持ち、身ごもる。その直後にタイムマシンの誤作動で彼女は昭和2年(1927)へ戻り、それとともに記憶を失う。自分が誰か忘れたまま彼女は翌年昭和3年に女児を産み、「啓子」と名づけて捨て子にする。その後彼女は女優にスカウトされ、小田切美子の芸名を用いる(*→〔同一人物〕1)。捨てられた啓子は、大学講師伊沢に養われ、伊沢啓子となって昭和20年には17歳になる。伊沢啓子は伊沢啓子自身から産み出されたのだった。

*「僕」が江戸時代へ行ってもうけた息子が「僕」の祖父→〔系図〕2dの『御先祖様万歳』(小松左京)。

*息子の夢から生まれた母親が息子を産む→〔母と息子〕3の『なぜ神々は人間をつくったのか』(シッパー)。

★6.自分と交わり自分を産み出した人。父も母も子もすべて「わたし」。

『輪廻の蛇』(ハインライン)  1945年、孤児院の前に棄てられていた女児の「わたし」は、1963年、18歳で妊娠、出産する。その折、「わたし」は実は両性具有者だったことが判明する。以後、「わたし」は男として生きてゆく。1970年、25歳の「わたし(男)」は、タイムマシンで1963年へ戻され、18歳の「わたし(女)」と出会い、関係を持って女児が生まれる。女児はタイムマシンで1945年へ戻され、孤児院の前に棄てられる。タイムマシンを操作したのは、1993年からやって来た未来の「わたし」である。

★7.ヘビ・ガマ・ナメクジ、三すくみのウロボロス。

三すくみの話  ヘビがガマを、ガマがナメクジを、ナメクジがヘビを、追いかけて呑もうとする。3者は丸い輪を描くようにつながる。それぞれがそれぞれを呑み始めるにつれて、輪は小さくなって行く。3者は同じ速さで互いを呑み終わり、呑まれ終わる。その瞬間、3者はパッと消えてなくなった。

 

 

【運命】

★1a.定まった死の運命。

『イソップ寓話集』(岩波文庫版)363「子供と絵のライオン」  「息子がライオンに殺される」との夢を見た父が、正夢となることを恐れ、宙に浮いた住居を作りそこに息子を入れて、ライオンから守る。ある日、住居の壁に描かれたライオンの絵を息子が手で打つと、刺が爪につきささり、それがもとで息子は死ぬ。

『歴史』(ヘロドトス)巻1−34〜43  リュディア王クロイソスは、息子アテュスが鉄の槍に刺されて死ぬ夢を見、息子の身辺から投槍・手槍の類を遠ざける。アテュスが猪狩りに行くのを王は制止するが、アテュスは「手を持たぬ猪が槍をふるうはずがない」と言って、出かける。しかし同行者が猪をねらって投げた槍がアテュスに刺さり、彼は死ぬ。

*→〔予言〕1a

★1b.定まった結婚の運命。

『魚と指輪』(イギリス昔話)  領主が「運命の書」を開き、将来息子が身分卑しい娘と結婚する、と知る。領主は、生まれたばかりのその娘を捜し出し、川に捨てるなどして殺そうとするが、結局娘は、息子の妻となる→〔書き換え〕3〔指輪〕4

*母と結婚する運命→〔予言〕1aの『オイディプス王』(ソポクレス)。

『今昔物語集』巻31−3  湛慶阿闍梨は「某国某郡の女児と夫婦になる運命だ」と、不動尊からの夢告を得る。「女犯僧になるまい」と考えた湛慶は、その女児を捜し、首をかき切って逃げる。しかし女児は死なず、年月を経て、湛慶は成長した彼女と知らずして再会、愛欲の心をおこして結婚し、ついに還俗する→〔傷あと〕2

『続玄怪録』3「定婚店」  良縁を求める韋固は、冥界の老人から、妻となるべき運命の娘を教えられる。それは野菜売りの片目の婆さんに抱かれた3歳児だったので、韋固は怒り、下男に命じて女児を刺し殺させる。しかし女児は死なず、しかも本来身分ある人の娘であって、14年後、成長した娘と韋固は結婚することとなった→〔傷あと〕2

*女が、将来自分の夫になる男の顔を、傷つける→〔水鏡〕3bの未来の夫(日本の現代伝説『走るお婆さん』)。  

★1c.定まった貧窮の運命。

『江談抄』第6−58  「車子」という名の人が生まれると自分の福が失われる、と知った男が、その生まれるべき年に、財産を運んで他国へ逃れる。旅の途中、従者の中に妊婦がいて子を生む。旅の車中で生まれたので「車子」と名づけられる。

『沙石集』巻9−10  海人の親子3人があり、毎日魚3つが釣れた。海人夫婦は、「子がいなければ、2人で魚3つを食うことができる」と考え、子を追い出した。その後、魚は2つしか釣れなくなった。

*貧乏神から逃れられない→〔貧乏神〕3の『発心集』巻7−7。

★1d.良い運命も、前世からの定め。

『古今著聞集』巻8「孝行恩愛」第10・通巻309話  建春門院は兵部大輔時信の娘で、はじめは後白河院に仕える女房だった。彼女は後白河院に寵愛され、産んだ男児がやがて帝位についた(=高倉天皇)。天皇即位の日、かつての同僚だった上臈女房が「このお幸せをどうお思いですか?」と尋ねると、建春門院は「前世で定められたことなので、何とも思いません」と答えた。 

★2a.悪い運命が将来予想される時、その悪運を早目に終わらせてしまう。

『金枝篇』(フレイザー)第3章「共感呪術」  出生の日によって人の運勢は決まる。2月1日に男児が生まれると、彼の成長後その家は焼ける。この災難を逃れるため、彼の友人たちは、運命の機先を制して、前もって小屋を建て、それに火を放ち焼いてしまう(*マダガスカルの風習)。

 *小屋を焼くのは、→〔風〕1の風の三郎さま(水木しげる『図説日本妖怪大鑑』)で小屋を壊すのと、同様の考え方によるのだろう。

『源氏物語』「若紫」「須磨」  18歳の光源氏は、夢解きから「将来あなたは天皇の父となる。しかしそれまでの間に、身を慎まねばならぬことがある」と、教えられた。26歳の源氏が自ら須磨に退去するのは、慎むべき運命を経験し、その後に我が子(=冷泉帝)の即位を現実化させようとしてのことである。

『源平盛衰記』巻25「はらかの奏、吉野の国栖の事」  天智天皇がまだ即位前のこと。ある人が「君は乞食(こつじき)の相おはします」と申し上げた。天智天皇は、「帝位についてから乞食となるわけにはいかない。身に備わった相(=運命)が、逃れがたいものならば、即位前にその運命を終わらせてしまおう」と考え、西国へ修行に出た。

『英草紙』第9篇「高武蔵守婢を出だして媒をなす話」  浄御原の天皇(=天武帝)は生来乞食の相があったので、「皇子時代にこの運命を終わらせてしまおう」と考え、僧は乞食に類する点があるゆえ、僧形となって廻国した。これで、大友皇子の威を避けることができた。

★2b.運命をそのまま受け入れる。

『今昔物語集』巻20−43  「月、大将の星を犯す」との勘文が奉られたため、右大将実頼は様々に祈りをする。しかし左大将仲平は何もせず、「自分は無能の老人。死んだとて何ほどのこともない」と言う。それを聞いた僧は、「その御心ならば必ず、三宝の御加護があろう」と感動する。その後、仲平は身に病なく、70余歳まで大臣でいた〔*『宇治拾遺物語』巻14−9に同話〕。

『十訓抄』第6−34  小野宮実資が新築の家に入った夜、火鉢の火が簾のへりに飛び、見るまに燃え広がる。実資は火を消そうとせず、家1つが焼失する。後に実資は、「僅かな走り火が、思いがけず燃え上がったのは、天の与えた災いだ。人の力で防ごうとすれば、これ以上の大事が起こるかもしれぬ」と語った。

 *火事にあったため、三悪道へ堕ちずにすむ→〔火事〕7の『今昔物語集』巻5−15。

『封神演義』第10回  殷の紂王から、「西伯姫昌(=周の文王)を都・朝歌へ召す」との詔が発せられる。西伯が卦を起こして占うと、「朝歌へ行けば7年の厄がある」と出る。西伯は「これは天数である。あえて避ければ、かえって事態を悪化させるだけだ」と考え、災難を承知で朝歌へ向かう。

 *死の運命をそのまま受け入れたため、死なずにすむ→〔予言〕2b

★3a.運命の転換。Aが受けるはずの非運を、Bが受ける。

『万葉集』巻16 3882〜3891歌左注  神亀年中(724〜729)、大宰府が、対馬へ食糧を運ぶ船の船頭として、百姓津麻呂を任命した。津麻呂は「自分は身体が衰え、年もとっており、航海に堪えられない。代わりに行ってほしい」と、友人の白水郎(あま)荒雄に請う。荒雄は承諾し、肥前国から対馬めざして出航する。船は暴風雨に遭って沈み、荒雄は死んでしまった。   

★3b.悪い運命は、他の人や物に移すことができる。

『愚管抄』巻6  「三星合」という天変があらわれたので、慈円僧正が修法をする。「三星合」は消えるが、その間に後京極摂政良経が急死した。「後鳥羽院の大事だったはずのところ、修法により、『三星合』が後鳥羽院を良経と取り替えたのだ」と、天文博士安倍晴光が語った。また、慈円僧正が後鳥羽院のために7日間の法華経の修法を終えると、まもなく法勝寺の九重塔が落雷で焼けた。慈円は「院に変事があるはずだったのが、転じられて塔焼失の凶事に移った。これは吉事だ」と院に具申した。

*悪い病気を人にうつすことによって、自身は治癒する→〔性交〕3a

*死の運命を他人に移し、自分は助かる→〔呪い〕5の『リング』(中田秀夫)。 

★3c.悪い運命を他の人に移すことなく、自ら引き受ける。

『三国志演義』第34回  劉表は、玄徳の乗った馬を気に入り、譲ってもらう。ところが、臣下から「これは乗る者に崇りをなす馬です」と言われ、劉表は馬を玄徳に返す。玄徳にも、この馬には乗らぬよう忠告する者があったが、玄徳は「人の生死は定まったもの。馬には左右されぬ」と言い、乗り続ける。

*火星がもたらす災いを、自ら引き受ける→〔惑星〕2aの『史記』「宋微子世家」第8。

★3d.息子の運命を、父親が引き受けようとする。

『子不語』巻13−339  江西省に住む江秀才が、ある日突然、水中に身を投じた。村人があわてて助け上げると、江秀才は恨みがましく言った。「私の次男は、今日の未(ひつじ)の三刻に、洞庭湖に入水する運命なのだ。わしは息子の身代わりに死のうとしたが、助けられてしまった。運命は逃れ難いものだ。息子を救ってくれる人はあるまい」。日を経て、次男が死んだとの知らせがあった。 

★4.悪運の兆し。

『徒然草』第146段  明雲座主が相者(=人相見)にむかって、「私に兵仗(ひゃうぢゃう)の難(=剣難の相)がありはしないか?」と問うた。相者は、「傷害の恐れなきはずの身で、仮りにもそのようなことを思いつく、これがすでに危難の兆しである」と答えた。後に明雲座主は、矢に当たって死んだ〔*寿永2年(1183)、木曽義仲が後白河法皇の御所を攻めた時、明雲は流れ矢に当たって死んだ〕。

 *病気を恐れれば病気になる→〔ハンセン病〕4の『ゲスタ・ロマノルム』132。

★5.不運と思われた出来事が、実は幸運に結びついていた。

『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第17巻40ページ  ワカメが曲がり角まで来た時に下駄の鼻緒が切れ、ワカメは「あーあ、運が悪いな」と言って引き返す。しかし、曲がり角の向こうには恐い顔の犬がうずくまっており、ワカメは鼻緒が切れたおかげで、犬難から逃れることができたのだった。

『不運つづきの娘』(ボーモン夫人)  オーロールは、王弟アンジェニュと結婚する直前、茨で顔を傷つけて醜く腫れ上がり、結婚後も、生まれた息子がさらわれるなど、不運が続く。しかしそのおかげで、悪王フルバンの妃にされる災難や、息子を殺される災難に、遭わずにすむ。後、オーロールと王弟アンジェニュは難船して無人島に漂着するが、その不運もまた、行方不明の息子と再会するきっかけになった。

*吉事と凶事が連なり重なる→〔累積〕2

★6.幸運も不運も、平均的な確率の範囲内にあるのが望ましい。

『ぼくは神様』(藤子・F・不二雄)  神山少年はもともと運が強かったが、最近は、何でも思うようになる力を得つつあった。ある夜、宇宙確率調整機構管制官ゾロメーが現れ、「この力を得た人間は欲望にふりまわされ、例外なく皆みじめな最期を遂げている。そういう悲劇を防ぐのが、ぼくの役目だ。力を返しなさい」と言って、神山少年の悲惨な末路を夢で見せる。神山少年はゾロメーに力を返し、以後は、それまでの埋め合わせに、平均より少し運の悪い人間になった。 

*良いことばかりは続かない→〔寿命〕5の『源氏物語』「絵合」。

 

*福運を人にゆずる→〔売買〕4

 

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