10.Q.口の癌について教えて下さい

東京大学医学部口腔外科学教室 教授  高戸 毅
東京大学医学部口腔外科学講座     津山泰彦

 口にできる癌を口腔癌といいます。口腔癌には,主に口腔粘膜から発生する上皮性の癌(癌腫)と粘膜下の結合組織を構成する様々な細胞から発生する非上皮性の癌(肉腫)があります。上皮性の癌の中には口腔癌全体の80%強を占める扁平上皮癌があり、部位別頻度では,舌が最も多く、ついで歯肉,口底,頬粘膜と続き、とくに舌では舌縁から口底に多くみられます(写真参照)。肉眼的には、外向型と内向型に分類されます。この他上皮性の癌には、唾液腺から発生する腺癌や腺様嚢胞癌、さらに上皮中に分布するメラニン産生細胞から発生する悪性黒色腫などがあります。一般に、このような上皮性の癌は男性,高齢者に多いといわれています。一方。非上皮性の癌は上皮性の癌に比べて発生頻度は低いものの、筋肉腫,骨肉腫,軟骨肉腫,血管肉腫などが発生し、若年者に多いといわれています。

参考文献
清水正嗣,小浜源郁「口腔癌[診断と治療]」デンタルダイアモンド社,1989.