11.Q.歯垢とはどのようなものですか

A.愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座 教授 中垣晴男

 歯垢(しこう)とは歯の汚れで微生物とその産生物、唾液と歯肉液に由来するものの沈着物です。
 口の中にミュースタンス・レンサ球菌(とくにストレプト・コッカス・ミュースタンス、ストレプトコッカス・ソブリヌス)が常在菌としていて、砂糖(スクロース)を含む間食食品が入ってくると、ある種の酵素(G Tase とよばれる)を出し、スクロースから不溶性のグルカン(多糖類)とよばれる歯垢の柱になるものをつくります。これは水に溶けなく、歯の表面に粘着する性質があるため、内部で産生された酸が外部へ出るのを妨げ、局所的に酸性度pHを低下させ、pH5.4以下となると歯を溶かし(脱灰)むし歯を発生するものです。
 また最近はキシリトールなどう蝕細菌が分解できないもので甘味料に替えようとする代替(代用)甘味料が開発されてきています(表1)。

 表1.実用化されているう蝕の原因になりにくい甘味料とそれらのう蝕原性および主な用途

甘味料

原材料

甘味度

う蝕原性 a)

用途

酸生成

非水溶性 グルカン 生成

菌体凝集

動物う蝕

対照
 砂糖(ショ糖)

さとうきび等

1

広範囲
少糖類
 カップリングシュガー ショ糖・でんぷん

0.6

+(-)c)

+(-)c)

+(-)c)

菓子類、ジャム、食卓用
 メイオリゴP ショ糖

0.4

±(-)d)

±(-)d)

食卓用、菓子類、乳製品
 パラチノース ショ糖

0.4

±b)

チューインガム、飴類
 ラクチュロース 乳糖

0.6

±

乳製品、食卓用
糖アルコール
 ソルビトール ブドウ糖

0.6

菓子類、練製品、食卓用
 キシリトール 木糖

1

比較的広範囲 e)
 マルチトール 麦芽糖

0.8

菓子類、ジャム、食卓用
 還元水飴 でんぷん

0.4

±

菓子類、佃煮類
配糖体
 ステビオサイド 植物葉

300

各種飲料、甘味補強
ジペプチド
 アスパルテーム アミノ酸

180

各種飲料、食卓用
たんぱく質
 ソーマチン 果実

2000

漬物、甘味補強
注)a)日大松戸歯学部細菌学教室1-4)に基づき作成. ただしb)はOoshimaらの研究5)による. c)主要成分のマルトールシュクロース、d)主要成分のニストース、e)日本では甘味料として使用できない. *:実験を行っていない. なお市販商品への 利用は表中の単品でなく他の甘味料との混用例が多い. (加藤三郎, 1987)