2.Q.噛む事の意義

A.愛知学院大学歯学部補綴学部第一講座 教授 田中貴言
  〃                講師 石上友彦

 噛むということは口に人れた食吻を切断、砕き、唾液と混ぜ合わせる消化作用の第1段階であると言われています。よく噛むと唾液が出てきて消化を助けるだけでなく、唾液により食べかすを押し出し、口の中をきれいにします。また、逆に噛むことにより食物の情報が歯や舌その周囲の感覚により、食物として異物であると感じると反射的に吐き出すという防御反応の誘因となります。噛むことはこのような食生活に関与するだけなく、人の発育期においては骨格や筋肉の成長にも関与することも知られています。チューインガムを噛むと眠気をとると言われていますが、噛むという行為が筋肉や舌等を意識的に、あるい反射的に反応させ、脳や身体に刺激を与え、脳の発育を促進させたり、脳の老化を防ぐ一因になると思われます。また近年は噛むことが全身的運動系の一部であり、運動能力を高める、ということがスポーツ歯学という分野でも言われています。このように、噛むことは人が生きていくうえで大切な要因であると言えます。

参考文駄
「口は何のためにあるか」山田宗睦 編、風人社、東京、1994.
「留本と調和した咬治のために」河邊清治、河村洋二郎 監修、石橋成六 編、クインテッセンス出版株式会社、東京、1984.
「スポーツ歯学」石上恵一 監修、医学情報社、東京、1994.