Q.口腔内の微生物 カンジダなど ―老人による変化―

愛知学院大学歯学部微生物学講座 教授 吉村文信

 口腔内には多数の細菌が常在しています。棒状のもの、球状のもの、らせん状のものなど、口腔内の歯の表面や粘膜には数百種類もの微生物が棲んでいる事が昔から知られています。皆さんが飲み込んだり、時に吐き出したりする唾液1N(一辺が1Bのさいころの容量)中に、ゆうに百万個を越える細菌が見つかります。唾液の細菌は主に舌の表面に張り付いて暮らしている細菌が唾液の洗浄作用によって落ち込んでくるものです。ですから口腔粘膜には唾液に見つかるよりも、もっとずっと密度が高い状態で細菌が付着しています。これらの付着細菌は、歯磨きなど口腔清掃という「手入れ」をしないとなかなかとれません。
生まれた時の赤ちゃんの口腔は微生物のいない無菌状態ですが、すぐにお母さんなどから移ってきて細菌が棲み始めます。歯がはえると常在する細菌が変わります。一生を通して口腔細菌は変化します。年をとって、歯を失い、唾液の分泌が少なくなったり、体を守る免疫の働きが低下すると、常在する細菌が増加し、カンジダ(かびの一種)なども増え、口腔内の衛生状態が悪くなります。これを放置すると老人性肺炎の原因にもなりますので、常に口腔衛生を保つ事が大切です。

参考文献

奥田克爾「デンタルプラーク細菌の世界 その病原性とミクロの戦い」医歯薬出版 1996

図の説明:図1(300年前、1690年代にオランダのレーウエンフックが観察し、スケッチした口腔内の細菌)