8.Q.口腔ケアと感染対策

A.名古屋市厚生院附属病院 院長 鈴木幹三

 口腔ケアに従事していて、患者や保菌者からの感染は極めてまれです。血液を介して感染する病気(表1)を持つ患者の口腔内の出血の処置は、ゴム手袋を使用します。血液が手指についた時は、流水と石鹸で洗い、次亜塩酸ナトリウムを浸した脱脂綿で拭えば十分です。多剤耐性菌(表2)や疥癬(表3)等の接触感染を予防するためには、口腔ケア前後の手洗いが最も重要です。手指消毒薬による消毒も有効です。かぜや肺結核等の空気・飛沫感染に対しては、マスクを着用し、うがいを行います。
 口腔ケア従事者から患者への感染予防としては、清潔な物品を使用し、手洗いの励行が基本です。看護・介護者は日常の健康管理に努めるとともに、インフルエンザ流行前にワクチン接種を進んで受けるように心掛けることが大切です。
<参考文献>
1)厚生省老人保険福祉局老人福祉計画課監修「特別養護老人ホーム等における感染症対策の手引」全国社会福祉協議会、1994.
2)鈴木俊夫監修「口腔ケア実践マニュアル」日総研出版、1994.
3)施設口腔保健研究会、日本口腔疾患研究所監修「口腔ケアのQ&A」中央法規出版、1996.

表1 血液を介して感染する病気
 ・B型肝炎
 ・C型肝炎
 ・後天性免疫不全症候群(エイズ)
 ・梅毒
 ・その他

表2 多剤耐性菌
 ・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
 ・多剤耐性緑膿菌
 ・多剤耐性セラチア
 ・シュウドモナス セパシア
 ・その他

表3 疥癬
 疥癬とは、ダニの一種であるヒゼンダニが皮膚の角層内に寄生することによって起る感染性皮膚病で、腹部、腋下、大腿内側などにパラパラと赤い丘疹ができ、激しいかゆみを伴います。
 感染経路は、直接接触による場合と、汚染した衣類やふとんなどによる場合があります。施設内で流行しやすいので、早期に発見し、虫体または虫卵陽性の場合、通切な治療及び感染防止策をとる必要があります。