9.Q.嚥下性肺炎

A.名古屋市厚生院附属病院 院長 鈴木幹三

 嚥下性肺炎は、食物、液体、胃内容物などを誤嚥あるいは誤飲することにより発病する肺炎です。臨床症状は、宿主側の要因ならびに吸飲された物質の種類、量、性状により左右されます。嚥下性肺炎には種々の病態が見られ、一般的には細菌性肺炎が最も多く、酸度の強い胃液を吸飲した場合は化学成敗造園を惹起し重篤となります(図1)。診断は、誤嚥・誤飲のエピソード、発熱、喘鳴、咳嗽、呼吸困難などの臨床症状、胸部X線写真上の肺炎陰影によりなされます。治療は各病態に即して行い、同時に抗生物質の投与が必要です。いったん発症すると急激に重症課する場合も見られるため、嚥下障害などの素因を有した患者(表1)においては誤嚥の予防が重要な課題です。
 明らかな誤嚥・誤飲が見られず、口腔や咽頭の分泌物を無自覚的に吸飲することによって怒る肺炎も、嚥下性肺炎と同様に考えられています。
<参考文献>
1)長沢 潤「吸引性肺炎」診断と治療67:2377〜2380,1979.
2)鈴木幹三「誤嚥性肺炎」検査と技術19:806〜811,1991.
3)鈴木幹三「高齢者における誤嚥性肺炎の予防」看護実践の科学18(2):64〜6,1993.

図1 嚥下性肺炎の病態

表1 表1 誤嚥を起こしやすい病態

l.意識レベルの低下
 アルコールの過飲
 鎮静薬の使用
 全身麻酔
 中枢神経系疾患(脳血管障害、パーキンソン病など)
 代謝性脳症
 頭部外傷
2.末梢神経障害
 反回神経麻痺
 脳神経障害
3.筋原性疾患
4.食道疾患
 気管食道瘻
 食道憩室
 食道裂孔ヘルニア
 アカラジア
5.咽喉頭疾患
6.機械的要因
 経鼻胃チューブの留置
 気管内挿管
 気管切開
 人工呼吸器装着
7.その他