1.Q.摂食・嚥下障害とは

A.聖隷三方原病院リハビリテーション診療科 科長 藤島一郎

 私どもはふだん何気なく食べたり飲んだりしています。生まれてから何の疑問も持たずに食べて生きているわけですが、もし「食べたくても舌やのどが思うように動かなくて食べられない、飲み込めない」ということになったらどうでしょうか?また、口から上手に食べているように見えても、実際は食べ物の一部が肺の方へ流れ込んでいるかも知れないと考えたことはあるでしょうか?
 水や食物が飲み込めなくなったり、いつも肺の方へ行ってしまうようになる(誤嚥)ことを「嚥下障害」といいます。嚥下障害になると栄養が取れなけて栄養失調を起こしたり、肺炎などの呼吸器の病気にかかってしまいます。
文献
藤島一郎「脳卒中の摂食・嚥下障害」第2版 医歯薬出版,1998.
:基礎から実践まで一番多い脳卒中の嚥下障害について解説
才藤栄一、向井美恵、半田幸代、藤島一郎 編集「摂食・嚥下リハビリテーションマニュアル」JJNスペシャルNo.52,1996
:ナース向けのマニュアル図も多い
藤島一郎「新版 口から食べる 嚥下障害Q&A」中央法規出版、1998.
:介護者向けの本。入門として易しくかかれている。
藤島一郎 監訳 Groher ME. 編著「嚥下障害 その病態とリハビリテ−ション」 原著第3版(Dysphagia Diagnosis And Treament 3rd ed.1997)医歯薬出版 (東京),1998 .
:外国の実状を垣間見ることができる。高度な内容。
千野直一、金子芳洋監修:才藤栄一、田山二朗、藤島一郎、向井美惠 編集「摂食・嚥下リハビリテーション」医歯薬出版 、1998.
:小児から成人までを網羅した優れた教科書
日本嚥下障害臨床研究会監修「嚥下障害の臨床 その考え方とリハビリテーション」医歯薬出版 、1998.
:研究会のメンバーが実践してきた内容をまとめた教科書


(1)食物の認識 (2)ロヘの取り込み (3)そしゃくと食塊形成(第lの部屋) (4)咽頭への送り込み (5)咽頭通過、食道への送り込み:嚥下反射(第2の部屋) (6)食道通過(第3の部屋)

注)一般的には、(3)は準備相、(4)はロ腔相、(5)は咽頭相、(6)は食道相と呼ばれます。なお、相(phase)という語と期(stage)という語はほとんど区別して使用してはいませんが、巌密には相:食物のある場所期:嚥下運動のように区別して考えるとはっきりします。たとえば食物はすでに咽頭にあるので、「咽頭相」にあるけれども、ゴクンという「咽頭期」は起こっていないなどと表現することができます。