5.Q.摂食・嚥下障害のある方の食事の注意点(在宅では)

A.北海道大学歯学部附属病院  歯科学講座 教授 小口春久
 北海道大学歯学部附属病院特殊歯科治療部 講師 木下憲治
 北海道大学歯学部附属病院咬合系歯科小児 医員 弘中祥司

 摂食・嚥下障害は全身のいろいろな機能と密接に関連しています。在宅で安全に食事を行うためには、本人あるいは家族や介護者が日常生活全般に広く目を向ける「注意深い観察ときめ細やかな配慮」がたいへん重要となります。少なくとも次の4つのことに注意して下さい。
1) リスク管理(予防)
 まず第一に「誤嚥」「窒息」について考えておかなければなりません。対処法は十分に理解しておきましょう。嚥下障害に詳しい医療機関に相談しながらすすめることが重要です。
2) 水分・栄養の維持
 誤嚥の次に慢性的に脱水や低栄養に陥る危険性がきわめて高いです。脱水や低栄養は脳血管疾患の再発につながり、全身状態を悪化させる原因になります。
3) 摂食・嚥下訓練
 口腔機能を維持するだけではなく、より良くするためには正しい摂食・嚥下訓練が必要です。大きく分けると食べ物を用いない間接的訓練と、食べ物を用いる直接的訓練があります。
4) 本人・家族・介護者の協力
 在宅でいちばん重要なことは本人・家族・介護者の協力です。本人の障害の程度と起こりうる合併症や現在行っている治療・訓練の意味、今後の見通しについては関わる人すべてが知っておくべきです。

 口腔ケアやさまざまな訓練を組み合わせて、一人ひとりの生活のリズムとペースに合わせた、時間と手間をかけたきめ細かい指導や訓練ができるのは在宅ならではの強みだと思います。

参考文献
1)金子芳洋、千野直一監修「摂食・嚥下リハビリテーション」医歯薬出版、1998.
2)才藤栄一、向井美惠、半田幸代、藤島一郎編「JJNスペシャルNo.52 摂食・嚥
  下リハビリテーションマニュアル」医学書院、1996.
3)藤島一郎「脳卒中の摂食・嚥下障害 第2版医歯薬出版、1998.