7.Q.誤嚥を防ぐ義歯

A.北海道大学歯学部附属病院特殊歯科治療部 講師 木下憲治
 北海道大学歯学部附属病院咬合系歯科小児 医員 弘中祥司
 北海道大学歯学部口腔外科学第二講座 助手 小野貢伸
 北海道大学歯学部口腔外科学第一講座 助手 山崎 裕
 北海道大学歯学部口腔外科学第二講座 助手 鄭 漢忠

 はじめに誤嚥を防ぐ義歯といっても、義歯自体が誤嚥を防いでくれるわけではありません。また、重度の嚥下障害がある場合には、嚥下の補助に義歯を使用しても誤嚥を完全に防ぐことはとても難しいです。そういった意味から言うと嚥下の機能を補助してくれる義歯すなわち嚥下補助義歯あるいは嚥下補助床と言う方が適当かもしれません。
 基本的には、口腔を形作る歯や歯周組織、口蓋、舌などが先天的にあるいは腫瘍や加齢によって失われてしまった所を補うものと機能障害などで動けなくなって生じたすき間(死腔)を埋めるもの(下図)、さらにその両方の機能を持つものに大きく分かれます。
 ただ残念なことに、この装置を入れたからといってすぐに嚥下が上手になるわけではありません。また、適応症も限られていますし、現在どの歯科医院でもできるというわけではありません。適切な摂食機能訓練と並行して使用することによって,効果を発揮するため嚥下障害に詳しい医療機関に相談してください。

左図のように嚥下補助義歯がない場合、舌が前方へ突出し、また可動域が制限されているために死腔が生じて咽頭への送り込みが行いにくくなるが、右図のように嚥下補助義歯を装着することによって、舌が嚥下運動の際に、前方へ突出せず、義歯に接触して、嚥下運動を助ける働きをする。
参考文献:
1)向井美惠「老年者の摂食・嚥下機能障害とリハビリテーション.歯界展望Vol.9   No.2 」医歯薬出版、1998.
2)菊谷 武「義歯でもおいしく食べられる ホント? ウソ? 高齢者歯科の立場
  からDental Diamond Vol.22 No.305 」デンタルダイアモンド社、1997.
3)中澤 清「器質的疾患を有する高齢者(総義歯患者)と摂食機能療法.日本歯科
  評論 October,No.636」日本歯科評論社、1995.