8.Q.口腔ケア関係の本

A.大生信愛病院歯科口腔外科 医員 関根義朗

 食事は口からするもので、口腔は食べることと密接な関係があります。口腔内には歯や舌等があるというだけでなく、いろいろな機能をもち、それぞれが大切な役割を果たしています。しかし、虫歯や歯周病により歯を失っていくことで、少しずつその食べる機能は低下していきます。高齢者ともなると咬む機能の低下と飲み込むという機能の低下により。食事が困難になってくることが多いのです。食べることに代表される口腔の機能をできるだけながく維持するためには、口腔をケアするということは大切です。そのような口腔ケアを行っていくには、口の中がどうなっているのかよく知ることから始めるのが良いでしょう。ここでは口の中のことを知って頂くのにわかりやすく参考となる本を紹介します。

口腔ケア関係の本

1.鈴木俊夫 監修「口腔ケア実践マニュアル」日総研出版、1994.
 現場からの疑問を中心にQ&A形式でまとめられ、どのように口腔ケアを行っていけばよいかを解説している。疾患別、症状別に口腔ケアのポイントについて詳しく述べられている。乳幼児から高齢者にいたるまでの口腔ケアについても記載されている。
2.青柳公夫、遠藤英俊、阪口英夫、鈴木俊夫、中島俊朗 編集「歯科訪問診療−キュアからケアへ− Quality of Lifeを求めて」デンタルダイヤモンド社、1997.(ただしGC友の会でもNo.77で同じものを発行した)
 歯科訪問診療を実際に行う場合の注意すべき点と高齢者の抱えている問題点を、カラー写真を多く引用し、非常にわかりやすく解説している。歯科医師と歯科衛生士や介護スタッフがどのように協力して口腔ケアを進めていけばよいかがわかる。
3.愛知県歯科医師会、埼玉介護力強化病院研究会歯科部会 監修「介護保険と口腔ケア−基礎から実践まで−」口腔保険協会、1998.
 介護保険と高齢者の医療サービスについての記述から始まり、介護保険における歯科の役割について解説している。特に要介護高齢者に対する口腔ケアの方法について詳しく述べられている。実際のの事例も15例ほど提示されており、要介護高齢者の口腔をどのようにアセスメントしてケアプランを作成していくのかがわかる。
4.愛知県歯科医師会、埼玉介護力強化病院研究会歯科部会 監修「高齢者ケアチームのための口腔ケアプラン」厚生科学研究所、1997.
 実際に高齢者を介護しているスタッフを対象とした内容で、ケアの一部としての口腔ケアをどのようにすればよいか歯科関係者以外の方が読んでもわかりやすいように解説されている。高齢者に特徴的な症状別にケアプランが記載されているので,介護の現場にいるスタッフにすぐにでも役立つ内容である。
5.施設口腔保険協会、日本口腔疾患研究所 監修「口腔ケアQ&A 口から始まるクオリティ・オブ・ライフ」中央法規、1996.
 介護力強化病院、特別養護老人ホーム、老人保健施設などで看護・介護しているスタッフからの疑問をQとしてQ&A形式で解説し、明日からのケアにすぐに役立つことを目指している。最近、口腔ケアが介護の現場で注目されていることや、看護や介護の現場で口腔ケアが必要とされているこどがわかる。イラストも豊富で、歯科関係者以外の方が読んでも理解できるように構成されている。
6.日本歯科衛生士会 監修「歯科衛生士による訪問歯科保健指導ガイドブック」医歯薬出版、1994.
 歯科衛生士による訪問歯科保健指導という新しい分野の重要性について解説している。在宅高齢者に関する歯科保健事業と歯科衛生士の関わりから始まり、在宅ケアの現状と、今後どのように訪問歯科保健指導を進めるべきかが記載されている。高齢者に関わるスタッフとどう関わっていっくべきかがわかる。
7.藤島一郎「脳卒中の摂食・嚥下障害 第2版」医歯薬出版、1998.
 口腔ケアを主体とした内容ではないが、脳卒中に限らず摂食・嚥下障害を持つ人の口腔ケアを進めていく時の参考となる。摂食・嚥下に関する解剖・生理学をはじめ、摂食・嚥下障害や誤嚥の病態生理を解説している。また嚥下機能回復を目指す訓練の実際、体位・頭位と嚥下の関係、誤嚥と予防法をまとめてある。
8.大森武子、鈴木俊夫、夏目長門 編集「ポケッタブル口腔ケアマニュアル」医歯薬出版、1996.
 ケアを実際に行う看護婦を対象とし、歯科の基礎知識から具体的な口腔ケアの方法に関してわかりやすく述べている。口腔のケアを看護の中の一つの項目としてポイントをうまくまとめているので、歯科医療関係者が読んでも非常に参考となる。
9.才藤栄一、向井美惠、半田幸代、藤島一郎 編集「JJNスペシャル No.52 摂食・嚥下リハビリテーションマニュアル」医学書院、1996.
 医師、看護婦や全ての摂食・嚥下リハビリテーションに関わる人々向けに書かれた本である。高齢者だけでなく小児に対する対応も充実したものとなっている。摂食・嚥下機能に障害を持つ場合の口腔の問題ついて詳しく述べられており、どのような口腔ケアが必要かがわかる。
10.加藤武彦他、黒岩恭子 編集「デンタルハイジーン別冊 口から食べたい 口腔介護 Q&A」医歯薬出版、1998.
 歯科衛生士向けに、障害を持つ高齢者の口腔ケアの方法と実際を解説している。高齢者の抱える問題点を列挙し、その対応方法についてわかりやすく書かれている。歯科関係者以外の方が読まれても、十分理解できる内容となっている。