A.佐賀医科大学歯科口腔外科 教授    香月 武
              助教授   後藤昌昭
              病棟医長  野口信宏
              医員    柿添昌久
              医員研修医 重松正仁



【はじめに】

う蝕(むし歯)と歯周病いわゆる歯槽膿漏(しそうのうろう)は、口の中で起こる代表的な病気です。原因は、歯の表面や歯と歯の間に残った食べ物に細菌が付着蓄積したもの(プラーク、歯垢(しこう))で起こります。

左の図は、口腔内の歯垢を採取し、顕微鏡で見たものです。青紫に染まって、くさり状に連なったものが、レンサ球菌です。
このプラークを歯磨きによって除去する事がむし歯、歯周病予防に欠かせない事なのです。しかし歯磨きで、歯垢を除去する場合、歯ブラシの選択、歯の磨き方によって、個人差が生じます。適当な歯ブラシで、個人にあった方法で歯磨きしないと、う蝕や歯周病予防にならないということです。
ここでは、最近急増しつつある電動歯ブラシについて、その適応、種類、使用法、注意点について述べたいと思います。

【電動歯ブラシの適応】

電動歯ブラシは、より効果的な歯垢除去を行うことを目的として1930年代後半に欧米で開発されました。わが国でも1980年代後半から、主に手足が不自由で、介助が必要な人や、高齢者においてその使用が増加しています。最近は軽量化が図られ、持ち運びが自由で、場所を選ばないため、一般の家庭にも普及してきました。手用歯ブラシと比較して操作が簡単である上に、磨き残しが多い歯と歯の間や、歯と歯肉の境目の歯垢除去効果においても、手用歯ブラシと同等以上といわれています。また、歯並びの矯正装置を使用している人の歯磨きにも適しているといわれています。

【電動歯ブラシの種類】

現在、市販されている電動歯ブラシには、大きく分けて替えブラシ自体が振動する型と替えブラシの毛の部分のみが振動する型の2種類があります。ここでは、代表的な電動歯ブラシを2つ紹介します。

GUM CARE電動ハブラシ(バトラー社)

GUM CARE電動ハブラシ(バトラー社)
最適といわれる振動数(毎分2,000回転)に設定された電動歯ブラシです。毛先が歯間部にしっかりと入りプラークをきれいに除去します。2種類の回転ブラシがあり、奥歯の細かい溝や歯の根元の隙間まで十分に磨くことができます。
また、液状タイプのバトラーデンタルリキッドジェル(別売)を併用するとより効果的にプラークを除去できます。




ソニケアープラス(オプティヴァ社)

ソニケアープラス(オプティヴァ社)
世界で初めて音波域の毎分31,000回転の超高速でブラシを振動させたのがソニケアープラスです。その高速振動から発生するキャビテーション(真空状態)効果が歯間部、歯周ポケットにも作用しプラークを強力に除去します。現在、アメリカで主流になっている電動歯ブラシです。



【使用方法】

手動歯ブラシのように反復運動させる必要はありませんし、歯磨き粉を使わなくても十分な歯垢除去が可能です。毛先を歯の表面に軽く当て、奥歯から前歯に向かって少しずつ移動させるだけでよいのです。歯の表側の面、裏側の面、咬み合わせの面に分け、一連の流れで磨くのが効率的な磨き方といえるでしょう。エンピツを持つときの要領で電動歯ブラシのグリップを握れば、よけいな力も入らず、より磨きやすくなります。


【注意点】

電動歯ブラシを使用するときは、毛先を歯に強く当てすぎないよう注意する必要があります。歯垢は、毛先を歯に軽く当てるだけで、十分に除去することができますから、必要以上に力を加えないようにしましょう。介助が必要な人や高齢者が使用する場合には、本人だけではなく、介護者も電動歯ブラシについて、十分理解しておくことが大切です。


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