14.Q.合わない義歯を長期間使用しているとどうなるのですか。

A.大阪大学歯学部口腔外科学第二講座 教授 作田正義
                  講師 森 悦秀

 義歯は、なくなった歯を補う人工歯、歯ぐきに接する床と呼ばれる台、そして残った歯にかける金属性の鉤(ない場合もあります)などからできており、これらが協調して義歯を口の中で安定させ、咬む力に耐えています。しかし、年月に伴う口の中の変化や、人工歯の摩耗などによって義歯が合わなくなることがあります。
 このような義歯を長い間使用していると、痛い、咬めないなどの理由から食事の量が減ったり、内容が偏ったりしがちなだけでなく、歯や歯ぐきと義歯の隙間に食片がつまって不潔になり、齲蝕や歯周病を誘発します。これに加えて、強い力のかかる歯が動揺したり、床の裏面や縁で歯ぐきや頬、舌の付け根に傷をつけて粘膜がむけ(褥創性潰瘍といいます、写真1、2)、舌や頬を咬みやすくなります。また、異常な力によって義歯を支える顎の骨も細くなったり、顎の関節に変形が生じるなど、顎全体に変化が生じます。一方、合わない義歯によって生じる慢性的な傷はガンとの区別が難しく、ガン性の潰瘍を見過ごすことがあるので注意が必要です。

写真1:義歯の縁で歯ぐきに作られた傷(褥創性潰瘍)

写真2:合わない義歯により舌にできた傷