1.Q.片麻痺等でうまく歯磨きできない人への指導方法

A.東京医科歯科大学歯学部高齢者歯科学講座 教授 植松 宏

 片麻痺等があるとうまく歯磨きできなくなります。脳卒中による片麻痺は手指のみならず、口腔内にも及びます。具体的には舌や頬の動きが悪くなります。食物残渣がある場合、ふつうは舌を使ってこれを巧みに除きます。また、歯の間に物が詰まった場合は頬や舌を使って吸って取り除こうとします。このような口の動きが上手にできなくなります。その人の機能に合わせた指導が必要です。実際に歯磨きをしてもらい、それを観察して磨き残しをなくすにはどうしたらよいか指導して下さい。歯ブラシの動かし方ばかりでなく、歯ブラシの柄も握りやすく工夫することができます。歯科医師に聞いて下さい。

 片麻痺患者の多くは運動障害のみならず感覚障害も伴っています。例えば、触覚や痛覚が鈍麻しているのです。ですから自分では口腔内に食物が残っていたり、歯の表面が汚れていることに気付きにくいのです。まず口の中が汚れていることを自覚してもらうことが先決問題です。鏡をみて点検する習慣をつけるなどの指導が必要です。
片麻痺のある人は麻痺側に食べ物が残りやすい

参考文献 

藤島一郎「脳卒中の摂食・嚥下障害」p87-88,医歯薬出版,1993