11.Q.舌癌治療後の注意点とケアー

A.広島大学歯学部口腔外科学第一講座 助教授 吉賀浩二

1.舌癌の好発年齢
年齢的には、40-70歳台に多く男性が女性の約2倍である。
2.原因、誘因
喫煙、アルコール、齲歯、不適合義歯、口腔不衛生、粘膜の白斑病変、紅斑病変
3.治療およびケアー上の注意点
舌癌の治療の主体は放射線と手術である。これに化学療法が適宜行われている。
T1-T3(UICC,T分類)舌に限局した腫瘍で、組織内照射にて根治治療されたものでは、機能障害は少ない。これに対しT3,T4の局所進展癌で、外部照射、化学療法で効果なく縮小しないものまたリンパ節転移のあるものでは根治手術が必要となる。切除術式は部分切除、舌可動部半側切除、舌根を含めた半側切除、舌亜全摘、全摘、拡大切除である。
部分切除:一次縫縮で創の閉鎖が可能、舌の機能障害は少ない。
可動部半側切除:腫瘍径が2cm以上で、舌筋への浸潤があるもの。しかし、深部切除の必要がなく一次縫縮可能なもの、また中間層植皮で対応できるものもある。これらのものでは比較的舌機能障害は少ない。深部組織を同時に切除する場合(pull through operation)
は再建が必要であり、舌機能障害をある程度後遺する。
舌根を含めた舌半側切除:癌の浸潤は固有舌筋から口底、歯肉側へと浸潤している場合。
一般に頚部郭清が同時に行われ、舌、口底、歯肉、下顎骨の再建が必要である。
舌亜全摘、全摘、拡大切除:癌の浸潤は正中を越え、深部では舌骨上筋群、咽頭扁桃窩、中咽頭側壁へ進展している場合。再建は必須であるが、舌機能はかなり障害される。その程度は残存舌の量による。高度進展例では術後の誤嚥が問題となる。
(参照 図1.表1)

参考文献
1.UICC:TNM Klassification Springer-Ver
lag, Brerlin 1987
2.野村恭也、石井哲夫監修・編集、耳鼻咽喉  科診断治療体系、講談社、東京、1986
3. 平野 実編集、頭頚部腫瘍の治療、医学
  教育出版社、東京、1987
4.砂原茂一監修、言語障害、医歯薬出版、東 京、1991
5. 熊倉勇美、舌切除後の構音機能に関する研 究、音声言語医学26:224-235,1985
6. 今井智子他、舌・口底切除症例に対する
  舌接触補助床の有効性、聴能言語学研究
9:1-9,1992
7. 吉賀浩二他、下顎癌、下顎の再建、頭頚部  腫瘍、19:12-16,1993
8. 小椋 脩他、嚥下障害の臨床、リハビリテーショ ンの考え方と実際、医歯薬出版,1998