11.歯周病予防のための正しいブラッシング法は?

A.大阪大学歯学部予防歯科学 助教授 埴岡 隆

 歯周病予防のためのブラッシングでは、歯周組織に隣接している歯面に付着しているプラーク(歯垢)と歯と歯肉の溝で成長したプラークの除去による歯肉炎の予防、そして、歯周組織への適度な機械的刺激による歯肉微小循環の賦活を行います。このためには、ブラッシング習慣ブラッシング方法ブラッシング器具の3つの要素がうまく機能すること、その人の口腔の部位にあった適切なブラッシングを選択して実践することが重要です。プラーク除去効果は歯ブラシによっても異なり、ていねいにブラッシングをしているつもりでもプラークが残りやすい部位があります。歯間部のプラーク除去には歯ブラシだけでは不十分で補助器具が必要です。市販の歯ブラシでは、歯肉に機械的刺激を加えると歯肉に傷をつける可能性があります。正しいブラッシング法を日常生活で実際に行うためには、各自のライフスタイルにあわせたブラッシング習慣を確立することが大切です。

ブラッシング習慣、ブラッシング法、ブラッシング器具

基本要素 内容
ブラッシング習慣 ブラッシング回数、1日のブラッシングのタイミング、ブラッシング時間、ブラッシングの場所
ブラッシング技術 歯ブラシの当て方、歯ブラシの動かし方、歯ブラシ圧、歯ブラシの到達度、口の中でのブラッシングの順序
ブラッシング器具 歯ブラシの形、歯ブラシの大きさ、毛の硬さ、電動歯ブラシ、様々な補助器具

プラークが残りやすい部位

プラークが残りやすい部位の原因とその対処法

部位 原因 対処法
歯と歯肉の境目 歯肉に当てるのがこわい 歯ブラシを歯肉に少し当たるようにする。歯ブラシの動きを少し小さくして歯肉からの出血を少なくするとよい。
下顎舌側 舌の動き、歯ブラシの角度 歯ブラシの当て方を鏡で確かめながら感覚を学習する。小型の歯ブラシを用いる。
歯の裏側 歯の外側から磨く 時々、歯を磨く順番を裏側から始めるようにする
上顎大臼歯の頬側 頬の緊張と下顎骨の前方移動 口を閉じめにして歯ブラシを奥まで挿入する。小型の歯ブラシを用いる。
歯間部およびその近辺 毛先が入りにくい 歯面に毛先が当たる角度を調節する。歯間清掃用の補助器具を用いる。歯間部に毛先が入りやすいよう、適切な歯ブラシ圧やストロークでブラッシングする。
歯並びが乱れている部位 歯ブラシが当たりにくい 歯ブラシを縦にして磨く
抜けた歯に隣接する歯面 歯ブラシが当たりにくい 歯ブラシを隣接する歯面に垂直に当てて磨く
炎症歯肉に接する部位 プラークの成長が早い ブラッシングのタイミングを多くとり、歯肉炎症が減退するようにする
露出した歯根面 歯と歯肉の境目が後退している 歯と歯肉の境目を鏡で確かめながら歯ブラシの当て方を確認し、感覚を学習する。

補助器具

主な歯間部清掃用の補助器具の種類とその適用

補助器具の種類 適用
デンタルフロス 空隙がほとんどない歯間部
フロススレッダー 連結されているクラウンの間の歯間部やブリッジのダミー下の隣接面部のデンタルフロスが歯と歯の間にはさまらない時に、スレッダーを用いてデンタルフロスと併用して使用する
歯間ブラシ 空隙のある歯間部。空隙の大きさに応じて歯間ブラシのサイズを選択する。
タフトエンドブラシ 空隙の大きな臼歯の歯間部