2.Q.最近話題のキシリトールについて教えて下さい。

A.日本歯科大学歯学部衛生学教室 助教授 福田雅臣

 キシリトール(C-5-H-12-O-5:分子量152.15)はペンチトール(5価アルコール)タイプの糖アルコールで、イチゴ、プラム、カリフラワー等の多くの果物や野菜に含まれている天然の甘味炭水化物である。我が国では平成9年4月に食品添加物の指定を受け、食品に利用できるようになった。そして甘味料としての認知度が高まってきたのと同時に、むし歯予防効果についても知られるようになってきた。むし歯予防効果については多くの疫学研究で証明されている(表l)。むし歯予防効果としては、キシリトールの甘さによって唾液分泌促避させること、むし歯原因菌であるミュータンス菌による多糖類合成や口腔内細菌による酸産生の墓質にならないことがあげられる。またミュータンス菌の増殖を抑制しプラーク中のミュータンス菌数を減少させる効果があり、これはキシリトール無益回路(図1)によるものであると考えられている。

参考文献

カウコ K.マキネン、鈴木章、福田雅臣著 「キシリトールのすべて」TPジヤパン

表1 キシリト−ルを用いた疫学的研究の一覧表
研究名 実施期間 期間(年) 対象者 説明 齲蝕減少率 キシリトール摂取量(g/日/被験者)
Turku(フィンランド)2件 1972〜1974 2 平均年令28歳 食事利用試験:キシリト−ル、フルクト−ス、ショ糖のいずれかを甘味料として使用 キシリトール群でショ糖群に比べて少なくとも85%少ない(フルクト−ス群に比べて50%少ない) 67
1973〜1974 1 平均年令22歳 ショ糖ガムとキシリトールガム使用 キシリトールガム群でショ糖群に比べて少なくとも82%少ない 6.7
ソ連 1975〜1977 2 8〜14歳の児童 部分的にショ糖の変わりにキシリトール使用 キシリトール群でショ糖群に比べて少なくとも70%少ない 30
フランス領ポリネシア 1981〜1984 2,7 6〜12歳の児童 キシリトールガムとフッ素群とフッ素だけの群 キシリトールとフッ素群でフッ素だけの群の発症率に比べて37〜39%少ない 20以上
ハンガリー(連続追跡調査)2件 1980年代初め 2〜3 6〜11歳の児童 ガムと固形菓子を使用、キシリトールとフッ素の群と治療とフッ素の群 キシリトールとフッ素の群で他の群に比べて35〜45%少ない 14〜20
モントリオール(カナダ) 1980年代初め 2 8〜9歳の児童 キシリトールガム使用 キシリトール群で対照群に比べて約65%少ない 0.8〜3.4
Vlivieska(フィンランド) 1982〜1985 2〜3 11〜12歳の児童 キシリトールガム使用 キシリトール群で対照群に比べて約30〜80%少ない。4〜5年後の再調査でもこの比率は変わらず。 7〜10
ベリ−ズ(中米) 1989〜1993 2〜3 6・10歳の児童 キシリトール、ソルビト−ル、ショ糖を使用したガム 100%キシリトールガムで対照群に比べて71%少ない 4.3〜9.0

図1 キシリトール無益回路