3.Q.高齢者のむし歯の特徴は

A.愛知学院大学歯学部解剖学第一講座 教授 大野紀和

高齢者になると,歯の質は若年者と比較すると硬くなり,また歯の色は黄色味が増してきます。歯冠部のむし歯はそれほど増加しません。これは歯の基本的構造物である象牙質の中の無数にある細い管に石灰塩が沈着することにより硬度が増してきます。しかし,硬くなることは脆くなることを意味し,破折などを起こす危険があります。
高齢者になりますと,大半の人は歯肉退縮をおこします。すると歯根が露出し,歯根表面あるいは歯間に歯垢が付着し,歯ブラシが届かない不潔な部位が出来,むし歯になりやすくなります(▲印)。
部分的な義歯を入れている高齢者は残存歯と義歯の間が不潔になり,歯根露出部がむし歯になりやすくなります。
歯根が露出していますと,歯ブラシが当たり,歯根表面を被うセメント質が擦り減り,象牙質が露出し,長年歯磨きを続けることにより,歯頚部の歯根に楔状の欠損が形成されます(矢印)。この部は褐色あるいは黒色に着色され,更に歯磨きを強く行うと冷温水でしみたりする様になります。