1.Q.唾液について 分泌量や成分

A.大阪大学歯学部附属病院顎口腔機能治療部 教授 和田 健

 口の中にいつも嚥液は分泌・貯留し、口の中の粘膜表面を湿らせている。唾液によって口の中では食塊形成が容易となり、食べ物をよく噛むこと(咀嚼)や飲み込むこと(嚥下)、食物中の味物質を溶解して味覚を促進すること、発音のための口の運動操作を円滑にしている。唾液は歯面や歯周組織をいつも清潔にする自浄作用によって虫歯や歯周病を予防したり、デンプンをマルトースに分解する消化作用、分泌型免疫抗体(IgA,IgG,IgM)などによる抗菌作用、唾液pHの緩衝作用など多くの生理作用がある。唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺という三大唾液腺からと、口唇・頬・口蓋・舌などに散在する小唾液腺から分泌される。唾液分泌量はl日約1 〜1,5リットルとされているが、顎下腺からの分泌が最も多く、次いで耳下腺、舌下腺の順に少なくなる。唾液分泌は自律神経支配によるが、交感神経刺激で粘調唾液が少量、副交感神経刺激で漿液性唾液が多量に分泌する。高齢者では唾液分泌量が減少しやすく、口腔乾燥により口腔生理機能・連動に不郡合を生じやすい。