2.Q.口腔内、口唇の乾燥を防ぐには、どうしたらよいですか

A.福岡歯科大学口腔外科学講座 教授 大関 悟 

 まず口腔が乾燥する原因表1に何らかの基礎疾患があればその治療表2が必要です。口腔の乾燥感を和らげる方法として、乾燥した外気から口腔を守ること(室内の加湿、湿らせたガーゼマスクの装着など)が大切です。唾液の分泌を促進するため水分を多く含み酸味のある食事をゆっくりよく噛むように指導して下さい。耳下腺や顎下腺のマッサージも効果的です。乾燥のため舌や口腔粘膜にヒリヒリした痛みがある時には冷たい水か氷を口に含むことにより、粘膜に潤いを与え痛みも和らぎます。また外用薬としては口腔に潤いを与え唾液分泌を誘発する含嗽剤やトローチがあります。ほとんど唾液の分泌がみられない場合には人工唾液の噴霧が咀嚼、嚥下、会話を円滑に行うために有用です。内服薬としては、唾液腺ホルモン剤や、漢方薬などがありますが、直接的な唾液量の増加は期待できません。
参考文献
1) 山根源之「口腔感染症の診断と治療」 
 歯科ジャーナル 28 : 111-117, 1988.
2) 山野精一「 Sjogren症候群と歯科」
 医学のあゆみ 163 : 96-99, 1992.

表1.口腔乾燥の原因

加齢による唾液分泌能の低下
1. 唾液腺の萎縮:Sjogren症候群、慢性唾液腺炎、放射線照射後
2. 薬物の影響:向精神薬、降圧剤
3. 口呼吸:鼻疾患、無歯顎
4. 心因性:神経症、精神的興奮

表2.口腔乾燥症の治療法

1. 口腔の乾燥を防ぐ 室内の加湿、鼻呼吸の予防(鼻疾患の治療)、口腔の加湿(湿ったガーゼ、マスク)
2. 唾液の分泌を促す食品 ガム、スルメ、梅干し、酢昆布、レモン水
3. 含嗽剤(口腔内の湿潤および殺菌、消毒) イソジンガーグル、ハチアズレ、ネオステリングリーン
4. トローチ(唾液分泌の誘発と殺菌効果) オラドール、SPトローチ、ダントローチ
5. 人工唾液(唾液の補充) サリベート、シュー
6. 内服薬 (1) 唾液腺ホルモン:パロチン
(2) 植物製剤:セファランチン
(3) 去痰剤:ビソルボン、チスタニン
(4) 唾液分泌亢進剤:フェルビテン
(5) 漢方薬:麦門冬湯、小柴胡湯