5.Q.口腔乾燥症と治療は。

A.大分医科大学医学部歯科口腔外科学教室 教授 柳澤繁孝

 唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺と口腔内に広く分布する小唾液腺から、一日
に約1500CC排出される。耳下腺と顎下腺では水分が主体で、その他は粘液で
ある。唾液には粘膜保護、潤滑、洗浄、静菌、消化、食塊形成や緩衝作用があ
り、唾液の減少が続くと口腔乾燥症といわれる症状が現れる。
「症状」:粘膜萎縮(図1)、義歯性潰瘍、義歯不安定、味覚障害、舌痛、多発
性歯頚部齲蝕、歯周炎の増悪、咀嚼障害、嚥下障害、食思不良、構音障害
「口腔乾燥症の原因」:加齢、糖尿病、尿崩症、自律神経失調症、放射線被曝、
シェーグレン病、薬物常用(睡眠薬、抗ヒスタミン薬、精神安定剤、利尿剤、
降圧剤ほか)
「治療」:
1) 薬剤性の場合:原疾患に影響しない範囲で減量・休止,他剤に変更。
2) 糖尿病、尿崩症、自律神経失調症:原疾患の治療
3) 口腔乾燥への対処:口腔環境の悪化を防ぐために口腔の湿潤と清潔を心が
ける。甘いものは口腔乾燥感を和らげるが齲蝕の原因となるために避ける。
   薬剤;フェルビテンTM、ビソルボンTM、ペクタイトTM
   水分補給;人工唾液(サリベートTM)、お茶・水など、
        サワーキャンデー、ハッカキャンデー、トマトジュース 
   口唇乾燥;リップクリーム

参考文献
金沢医科大学シェーグレングループ訳「シェーグレン症候群」診療新社、大阪、1990年

図1 口腔乾燥症患者の口腔内写真
   舌年乳頭の萎縮で舌は平らで滑沢となっている(平滑舌)