久馬栄道の全く個人的な映画の感想 2000年版です
last updated Jan. 13,2001
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これは久馬が映画館で見た映画の個人的感想です.
下に行くにしたがって古くなっています.
感想ください
E-mail:
kyuma@dpc.aichi-gakuin.ac.jp
過去に見た映画の検索用に、
名前のリスト
を作りました。
どうぞご利用ください。
以下は12月に見た映画です
- 『愛のコリーダ 2000』
それにしても20世紀を締めくくる映画が、これになるなんて。
大島渚監督の問題作を、大幅にボカシを減らしたリニューアル版なんですが、
それでもまだ、ぼかしは多かったです。
それにしても、かつての名作を今見るとたいしたことがない、
という事は良くありまして
(この間、つきし哲也さんの後援会に行ったら、
同じ事を言っておられました)、
あれほど猥褻と非難されたベルトリッチ監督の
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』なんて、
今見ると全くたいしたことはないのですが、
本作は長年の月日の風化を全く感じさせない、
本当に今見てもピッカピカの素晴らしい緊張感あふれる映画です。
本当に「大島渚、おそるべし」です。
まあ内容は昭和10年に愛人を殺して、その*ニ*を切り落とした
阿部定事件を描いているのですが、
そんなことはどうでも良く、画面から伝わるテンションの高さに
注目したいですねえ。
- 『Party 7』
『鮫肌男と桃尻女』で衝撃的なデビューを果たした石井克人監督の
新作映画なんですが、何しろ『鮫肌〜』はあまりに衝撃的でした
からねえ。
その後、どんな映画を持ってきても、インパクトに欠けると思います。
作る順が逆だったら、納得が行くんだけど。
まあでも、部屋のデザイン、衣装センス、洒脱な会話、
すべてに石井監督のセンスが光っているのですが、
それでも『鮫肌〜』の後じゃあなあ、どうしたって
印象が薄いです。
まあキャラクターは『鮫肌〜』の方が倍強烈。
パワーも『鮫肌〜』の方が3倍有るし、
ユーモアだけは本作の方が上かなあ。
まあとにかく、これだけ強烈なキャラクターばかり集めたのに、
『鮫肌〜』ほど残るものが無いのです。
どうしてだろう。
- 『ビラッド・シンプル/ザ・スリラー』
あのコーエン兄弟(監督、プロヂュース)の幻のデビュー作を、
現在のデジタル技術を
駆使してフィルムを編集しなおしたものなんですが、
これが本当に内容も面白く映像がスタイリッシュな映画になっているのです。
音楽もなかなか来ています。
やはりコーエン兄弟は、犯罪もの映画に限ります。
それにしてもコーエン兄弟の犯罪物、本当に出てくる出演者は
賢い人がいません。
実に理にかなっていない行動ばかりします。
その微妙な行動の食い違いが、ストーリを本当に面白くするのですが、
本作も実に脚本が良く出来ていて、それに出演者の奇妙きてれつな
キャラクターがピッタリなのです。
とにかく映画はまず脚本、黒沢明の言葉を思い出します。
とにかくインディーズ映画のお手本のような映画で、
金をかけなくても良く出来た映画を作るためには何が必要か、
この映画にはそのヒントがふんだんに盛り込まれています。
最後に私の大好きなコーエン兄弟の映画を、いくつか
上げておきましょう。
まずは、お勧めのコーエン兄弟の犯罪物映画から。
- 『ミラーズ・クロッシング』ガブリエル・バーンが実にスタイリッシュ
だった映画で、本当にカッコ良かったぜ。
- 『ファーゴ』もう、言うまでもなく、本当に面白い映画とは、
これですね。しかしやっぱり妊婦は雪の上を歩いちゃいけないぜ。
(と言うか、かんじんのストーリよりも、そっちの方でヒヤヒヤします。
そこが上手いんだけど。)
じゃあ次は、コーエン兄弟の犯罪物でない映画です。
- 『バートン・フィンク』カンヌ映画祭でパルム・ドール(グランプリの事)
を始め沢山の賞を取って、一躍この兄弟が有名になった映画なんだけど、
私はいまいち好きでは有りません。
確かにジョン・タトゥーロのキャラクターと、これでもか、これでもかと、
人間の神経を逆撫でする感覚は凄いですが...
- 『未来は今』あまりこの映画、好きな人は少ないんだけど、
私は意外と好きです。
でもコーエン兄弟らしくはない映画ですけど。
ティム・ロビンスやジェニファー・ジェイソン・リーのキャラクターが、
なかなか良かった。
- 『ビッグ・リボウスキー』この映画も、犯罪物に入れた方が良いのだろうか。
とにかく何が有ってもボーリングを続ける超マイペースな主人公たちの
キャラクターがスキですねえ。
- 『クロコダイルの涙』
原題は『the wisdom of crocodiles(ワニの叡知)』で、
これは哲学者フランシス・ベーコンの言葉なんだそうですが、
ワニが獲物を食べるときに流す涙は、罪悪感を払拭するためなんだが、
それは自己愛から来ている、と言うような意味なんだそうです。
まあ詳しくは辞書を調べてもらうとして、
この映画、映画自体として、なかなか手ごわく面白い。
主演はジュード・ロウですが、やはり彼は、『リプリー』のような
単なるカワイコチャンの役よりも、『ガタカ』や『イグジステンス』の
ような、どこか人間ばなれしたような役が、良く似合います。
本作もなかなか現実ばなれした吸血鬼の役なんですが、
これがなかなかはまっていました。
今までも美青年吸血鬼映画では『インタビュー・ウイズ・バンパイア』と
言うような映画もありましたが、本作は全く新しい感覚の
吸血鬼映画です。
- 『ホワット・ライズ・ビニース』
はっきり言って、この題名を何とかしてくれ。
知り合いのカナダ人に意味を聞いても、良く分からないと言っていた。
まあ「したにある秘密の何か」見たいな意味だと言っていたけど、
そんなのは辞書を引けば分かる。
とまあ題名はともかく、さすが『バック・トゥーザ・フューチャー』や
(私の大好きな)『ロジャー・ラビット』や感動的だった
『フォレスト・ガンプ』のロバート・ゼメキス監督。
とにかく見せ方が上手いですねえ。
最後のクライマックス以外は意外と地味な演出なんですが、
全く退屈させずに最後まで引っ張って行くのは、さすがです。
そして最後はナカナカ美しいクライマックスに仕上がっています。
もちろんミステリーとしても第1級の出来に仕上がっていますが、
ロバート・ゼメキスは、見せ方とかストーリとか音楽とか、
良くヒッチコックを研究していると思います。
さて、どうもここのところパッとしないハリソン・フォードなんですが、
本作の演技は競演のミッシェル・ファイファーの熱演に引きずられて、
なかなかの演技でした。
そのミッシェル・ファイファーも、ここのところいまいち御疲れの
感じがしていたのが、本作は本当にハマリ役です。
- 『バーティカル・リミット』
まあ、そこそこは面白かったです。
同じような『クリフ・ハンガー』と言う映画が有りましたが、
はっきり言って、『クリフ・ハンガー』の方が面白い。
内容は『クリフ・ハンガー』と往年のフランスの名画『恐怖の報酬』を
足して2で割ったような映画なのですが、
いかんせん登山の方法に無理が有りすぎて現実身が少なく、
いまいち映画にのめり込めません。
それに、山岳救助映画なのに、こんなに人が死ぬのは私は嫌いです。
まあ普通、映画というのは、荒唐無稽な話をいかにリアリティーを
持たせるかが大事なのですが、そこのところを特撮を使いすぎて
失敗しています。
確かに特撮を使えば何でも撮影できますが、
だからと言って何でも撮影して良いと言うものでも有りません。
そこに感動がないとどんな凄い特撮でも、
それにのめり込めません。
人はなぜジャッキー・チェンの映画に感動するかと言えば、
彼は特撮なしで本当にヘリコプターから氷の湖に飛び込むからです。
ハリウッドの人間は皆、(特撮を使えば楽に安全に撮影できるから)
特撮をあえて使わない彼の事をクレイジーと言ってますが、
だからこそ彼の痛みとか冷たさが画面から伝わってくるのです。
『クリフ・ハンガー』も、基本的には命綱を消す以外には、
原則的に特撮は使っていません。
あの映像は、すべて俳優がその場で実際に写っていることなのです。
特に高所恐怖症のスタローンの頑張りには、驚きます。
あれは最後の本当の意味でのスペクタクル的な撮影が行なわれた映画だと
私は思っています。
最後に、予告編で凄い映像を全部使ってしまったのは、
まずいのではないか。
過去にも『トータル・リコール』と言う予告編でかんじんの映像をほとんど
使ってしまった映画が有りましたが、
やはり予告編はあくまでも予告編であり、本編の方により凄い映像がないと、
まずいと思います。
- 『リトル・ダンサー』
イギリス映画。
バレエ・ダンサーになりたい小学生を描いた映画で、
たいへん良く出来ていまして、私は3回泣きました。
まあそんなことより、まさかバレエの映画に、
往年のグラム・ロック(なんて呼び名、知ってますか)T.REX の
曲が似合うとは思いませんでした。
冒頭のところで手にしているレコード・ジャケットは
「電気の武者」(だっけ)で、ジャケットの擦れ具合が泣かせます。
ここで「コズミック・ダンサー」がかかるのですが、
マーク・ボランの色っぽい声が、
バレエの話に良く似合います。
ただ少年のダンス・シーンは良く出来ているのですが、
もうちょっと『コヨーテ・アグリー』のような
ダイナミックな演出が有っても良いとは思いますが。
- 『ピッチ・ブラック』
ヒッチ・コックの『鳥』と『エイリアン』を
合体させたような内容で、恐がらせ方が全く古典的だし、
お金もあまりかかってないようだし、出演者も監督も
あまり有名な人はいないのですが、
映像の見せ方が上手いし、登場人物のキャラクターも多層的で
厚みが有り、なかなか骨太で面白いし、とにかく私には
たいへん面白い映画でした。
私はホラー映画はめったに褒めないのですが、
これは良かった。
ただ宇宙生物のデザインは、もうちょっと考えて欲しかった。
- 『コヨーテ・アグリー』
さすがジェリー・ブラッカイマーがプロデュースしただけある
映画で、そにかくパワーが凄かった。
最近の映画だけでも『ザ・ロック』『コーン・エアー』
『60セカンズ』そして私の大好きな『バッド・ボーイズ』。
古くは『フラッシュ・ダンス』『トップ・ガン』など。
本当にこの人は、人を夢中にするつぼを、心得ています。
まあ、話自身は本当に典型的なハリウッド映画で、
田舎からでてきた自信の無い女の子が、
仲間の励ましで成功して行く話です。
私の知り合いのアメリカ人やカナダ人は、この映画を嫌いだと言ってました。
あらゆるところがミエミエなのですが、それでも
私は最後はその圧倒的なパワーに感動して、
泣いてしまいました。
ミエミエでもいいのです、パワーが有れば。
- 『セクシャル・イノセンス』
(本当にニコラス・ケージの演技が凄かった)
『リービング・ラスベガス』が強烈だったマイク・フィギス監督なんですが、
その後の『ワン・ナイト・スタンド』はイマイチだったし、
どうなっちゃうんだろうと思ったら、本作、本当につまらない
映画でした。
監督の自伝的な映画なんですが、
少しあらかじめストーリを知っていれば、
まだ面白いのかも知れないが、
例えば初めの葬式のシーンが途中で初体験をしそこなうところで出てくる
父親だなんて、分からないし、その他、全く編集が下手くそとしか
言えません。
まあ、音楽と映像はさすがなんですが、それだけでして、
色々なストーリがこま切れになっているのは良いですが、
それを繋げるだけの編集技術がないのは間違っています。
- 『デトロイト・ロック・シティー』
『デトロイト・ロック・シティー』と言うのは、懐かしのロック・バンド、
キッスの名曲なんですが、この映画はキッスのコンサートを見に行く
アメリカの4人の高校生の物語です。
まあ内容は想像通りなんですが、なかなかストーリが上手に作ってありまして、
最後までハラハラ・ドキドキ。
そしてラストはなかなか鮮やかです。
キッスのデトロイトでの幻のコンサートも再現されているのですが、
これもなかなか当時の雰囲気をもっていまして、
なかなかお勧めな映画です。
- 『タイタス』
ついに衝撃の問題作の登場なのですが、
期待を裏切らない全く素晴らしい出来でした。
この話はシェークスピアの中でも一番残酷な話と言われていますが、
本当に酷い話なのです。
今、国会で『バトル・ロワイアル』が問題になっていますが、
まだ私は見ていないので何とも言えないですが、
原作者の質と深作監督の今までの映画の暴力シーンの出来と、
ちょっとだけ見たシーンを総合して判断すれば、
『タイタス』の方が遥かに衝撃度が違うと思います。
監督のジェリー・テイモアはミュージカルの「ライオン・キング」何かを
ヒットさせた女流演出家らしいのですが、
この映画も見せ方が全く劇場的でして、
あまり映画の手法にとらわれない演出になっています。
それがかえって様式美を際だたせ、素晴らしい出来となっています。
例えば、もっと映画のスペクタクルを強調するような
演出の仕方も有ったと思いますが、彼女はあえてそれをしなかった。
古代ローマの話しなら、『グラディエータ』のように大人数の
シーンで人の度胆を抜くことだって出来るのに、
あえてそういう事はしない。
彼女はあくまでも彼女の本文である、劇的な演出にこだわり、
そのこだわりが、素晴らしい出来になっているわけです。
ところでジェリー・テイモアはオペラの演出も手がけますが、
ぜひ、モーツァルトの『魔笛』の動物たちが踊るところを、
「ライオン・キング」のような素晴らしい演出でやってもらいたいです。
この夏、ウィーン国立歌劇場で『魔笛』を見てきたのですが、
だいたいは素晴らしい演出だったのですが、
動物のシーンは、動物のきぐるみを着てやっていて、
どうもいまいちなのです。
- 『漂流街』
監督が(私が大好きな)『中国の鳥人』の三池祟史だし、
原作が『不夜城』の馳星周なので、それなりに期待して行ったのですが、
ブラジル人と中国人のカップルがただ逃げるだけという映画でして、
いまいちだった。
闘鶏のシーンとか、中国マフィアの見せ方とか、
それなりに面白い所は有るのですが、
何か暴力の見せ方が単調だった。
- 『チャーリーズ・エンジェル』
私の周りの、この映画を見た人の間で、この映画は
物凄く評判が悪いのです。
だから、どれくらいくだらない映画か確かめるために
見に行ったのですが、
まあまあの出来でした。
もともと、もとのテレビシリーズ自体が、
それほど面白いというものでは無かったので、
それに比べればだいぶましになったかな、
と言う所でしょうか。
ただ私の好みとしては、もっとB級映画に撤した方が
それなりに面白いと思います。
ただ気になるのは、下膨れ顔のドリュー・バリモアは論外として、
キャメロン・ディアスの魅力が薄れているような
気がするのは、私だけであろうか。
何か、彼女の顔の皮膚の張りが無いような気がするのですが。
もうこれからは、『マルコビッチの穴』のような
路線の方が、面白いかも知れない。
以下は11月に見た映画です
- 『リプレースメント』
キアヌ・リーブス主演のアメフト映画。
まあ実際のアメフトとは随分異なる所も有るのですが、
エンターティメントに撤した本作は、
なかなかスカット出来る作品だと思います。
正選手ではない個性豊かな代理選手(リプレースメント)が
さまざまな困難を乗りきり、お色気作戦あり、
奇策ありで、次々に勝って行く映画です。
プロのアメフトは2軍がないので、1軍から外れると
即座に首なのです。だから代理選手とは言え、
かなりの実力の選手がいます。
映画で言っていたセーマイ・プロフェッショナル(日本で言うセミプロ、
semi はアメリカ人はセーマイと言う)は
日本で言うと草チームのようなもので、
日本の実業団よりも待遇は悪いです。
さて物語は一見奇想天外な事ばかり。
黒板に書いてある作戦も、実に適当な作戦です。
しかし実際は、かなりギリギリで有りそうな話に
作ってあります。
例えば接着剤作戦。
私はソックスの裏に松脂を大量に塗っておいて、
肝心な時に手につけて接着剤の働きをさせている人を知っています。
キッカーがサッカーの選手と言うのもありです。
アメフトは選手の分業化が徹底しているので、
キッカーはただ蹴れば良いので、
サッカー選手がキックの時だけ出てくるのもありです。
(しかし西洋人は、『ノッティング・ヒルの恋人』でも出てきたけど、
ウェールズ人は皆変人ばかりだと、
思っているのかなあ。)
最後の試合の相手がダラス・カウボーイズと言うのも
良く考えられていますし、前半の点差が17点と言うのも
ありです。
ただ相撲取りがオフェンス・ガードと言うポジションは、
ちょっと無理が有るうな。
ディフェンス・ノーズならありです。
ちなみに日本の相撲取りの突進力は凄いものです。
アメフトのラインメンが相撲をやると、
たぶん十両ぐらいだと言われています。
ただアメフトのラインメンは前だけでなく横のダッシュも
出来ないといけないので、その分相撲取りの方が有利なのかも知れません。
- 『エクソシスト』
昔流行った恐怖映画を、監督自身が再編集した映画です。
だがあまり恐くない。
監督のウィリアム・フリードキンはドキュメントの出身で、
それまでの恐怖映画がいいかげんなので、
悪魔払いと言うキリスト教に本当にある儀式を、
リアルに描きたかったんだと思う。
それでまあ、リアルなのはリアルです。
この映画は、音楽のマイク・オールドフィールドの
「チューブラ・ベルズ」が有名です。
彼はスタジオのエンジニア出身で、
スタジオの機材を空いた時間に自由に使えるので、
テープのダビングを繰り返して、
一人で多重録音をして、この音楽を作ったのです。
今でこそ、こういった音楽は珍しくないですが、
当時はテープ・レコーダだって4トラックしかないし、
今みたいに、シンセサイザーで簡単に同じ曲が出てくるわけでもありません。
大変な苦労をして、完成させました。
でも出してくれるレコード会社が有りません。
その時、この曲を出すことにしたのが、
後にあのバージン航空を作ったリチャード・ブランソン。
彼は当時バージン・レコードを立ち上げたばかりで、
新しい曲を探していたのです。
そしてこの曲は、めでたくバージン・レコードの
第1号の作品となったのです。
- 『シャフト』
サミュエル・L・ジャクソンが乗りの良い音楽にのって
難事件を解決する、と言う刑事ものの映画なんですが、
これがわりかしとつまらなかった。
もうちょっと頑張って欲しいなあ。
- 『キューバ・フェリス』
キューバの老ミュージシャンをドキュメンタリで撮影した映画ですが、
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』何かよりも
遥かにキューバの生の音楽が感じられて、
面白かったです。
そりゃあ、まあ、音楽的には『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の
方がソツがないですが、あれはライ・クーダと言う、
ポップ音楽の人間のフィルターを通して見たキューバ音楽であり、
ドロドロした中にも、どこか洗練した味が有ったわけです。
だいたい民族音楽と言うのは、そのままではなかなかドロドロしすぎて、
なかなか聴きずらいものが沢山有ります。
まあ、普通にヒットしている民族音楽と言うのは、
それを一度西洋音楽のフィルターに通してやって、
聞きやすくしているわけです。
しかし、このキューバ・フェリスと言う映画は、
チュニジア生まれのカリム・ドリディが
全く前知識なしに一人の老キューバ・ミュージシャンに密着して
撮影されたものであり、
とにかくありのままのキューバ音楽が撮影されているのが
興味深いです。
- 『愛ここにありて』
う〜〜ん。
題名もありきたりですが、出演者も監督の演出も内容も、
本当にありきたりのラヴ・ドラマです。
と言うわけで、まことにつまらなかったです。
と言うより、典型的テレビ・ドラマだけれども、
最近はテレビ・ドラマも
(私はテレビ・ドラマは見ないけれども、噂では)
もうちょっと面白いらしい。
そもそも映画というのは、テレビでは見れないものが見れるから、
わざわざ映画館に行こうと言う気になるのであって、
こんな映画、わざわざ映画館に行く必要は、
まるでないわけです。
とにかく、つまらなかったです。
- 『独立少年合唱団』
家族に何らかの事情を抱えている少年たちを、全寮制で預かる
独立学院と言うキリスト教系の学校の合唱団の話なんだけど、
これが意外や意外、なかなか良かった。
監督は長らくの助監督生活の後、やっと初監督出来た緒方明と言う
人なんですが、
ベルリン映画祭で新人監督賞(アルフレート・バウアー賞)を
受賞しただけの事はあると思います。
映画の時代背景は1970年代なんですが、
なかなかその時代感覚も良く出ていました。
『リング2』も、これくらい時代感覚が有れば良かったのに。
それにしても、本当にあの時代、革命を本気で目指していた人達が
いたのです。
(最近相次いで逮捕されたので、またあの時代の記憶が
蘇るのですが。)
そして、学生運動崩れが、随分学校の先生になったものです。
私のいた学校でも、「ソビエトは医療費や住宅費もただで、世界で
一番良い国だ」と、社会の時間に教えていた先生がいました。
(まあ、ある意味では本当だったのですが。)
ところで、誰も言わないんで私が言いますけれども、
この映画はウィーン少年合唱団をテーマにした映画
(たぶん『美しき青きドナウ』と言う題名だったと思ったけれども、
忘れました)のパロディーかと思いました。
この映画はウィーン少年合唱団のメンバーが
声変わりのためツアーに参加できなくなるため、
他の友達が画策して、最後は指揮者として参加する
ストーリだったと思いますが、
途中まで良く似ています。
(でも違うのかなあ。)
ところで最後のシーンはちょっと予備知識がないと分かりにくいかも知れません。
まあ、あくまでも私の意見なのですが、
『ウィーン少年合唱団はオーストリア人以外はメンバーになれない』
と言うことと『ウィーン少年合唱団は少年たちがアイドル化しないため、
メンバーの個人名が一般に知れることはない』と言うことを知っていると、
最後のシーンは少し理解できるかも知れません。
ところであくまでも私の個人的意見なのですが、
ウィーン少年合唱団とパリ木の十字架合唱団とほとんど同時期に
コンサートで聞き比べたのですが、
私はちょっとパリの方が上に聞こえました。
まあハーモニーはどちらも甲乙付け難いのですが、
個人主義を重んじるフランスのパリ木の十字架合唱団は、
メンバーも個人名が出るのですが、歌も個人主義で
それぞれの技量が生かされていたように思えるのです。
- 『アンジェラの灰』
イギリスで大ヒットした小説を原作に、ロバート・カーライル、
エミリー・ワトソンが主演した映画なんだけど、何しろ内容が暗すぎるので、
私にはあまり面白くない映画だった。
監督がアラン・パーカーなんだけど、この監督も『小さな恋のメロディー』の
脚本とか、『フェーム』『ピンク・フロイド、ザ・ウォール』とか
(本当に衝撃だった)『エンジェル・ハート』なんかの監督をやっていて、
けっこうキャリアが長い監督なんだけど、最近はマドンナ主演の『エヴィータ』は
完全にはずしたと思うし、そろそろ限界なんかしら。
観客が何を望んでいるのか、全然分からなくなっていると思います。
- 『素肌の涙』
今まで、数々の名作映画に出演しているティム・ロスの第1回監督作品と
言うことで見に行ったのですが、ちょっと内容が近親相姦と言うこともあって、
確かに衝撃的な映画では有りましたが、私はちょっと苦手です。
ちなみに今までティム・ロス、どんな映画に出ていたか古い順に示して見ましょう。
- 『コックと泥棒その妻と愛人』
これは、幾何学的関係が大好きなピータ・グリナーウェイ的世界に彩られた
とても面白い映画です。
あくまでもテーマはチューブにこだわっているのですが、
そのこだわりが、普通ではないのです。
内容はコックが泥棒に雇われていて、泥棒の妻と愛人の話なのですが、
実際見てみないと、何の事やら分かりませんでしょうねえ。
- 『ローゼンクラーツとギルデンスターンは死んだ』
これはヴェネチア映画祭で金の獅子賞を受賞した問題作です。
競演しているのは、あのパンク映画の王様『シド・アンド・ナンシー』や
リュックベッソン監督の『レオン』で悪い悪い麻薬捜査官役がはまっていた
ゲーリ・オールドマン。
ローゼンクラーツとギルデンスターンと言うのは『ハムレット』の
中でハムレットの御学友として城に呼び出されて、あっと言う間に
殺される役なのです。
『ハムレット』の中ではほとんど出番が無いのですが、
その2人が城に行くまでの珍道中を、舞台出身で芸達者の2人が
喋って喋って喋り倒す映画なのです。
- 『ゴッホ、謎の生涯』
あの『プレイヤー』のロバート・アルトマン監督の映画なのだが、
ゴッホの役が見事にはまっていました。
- 『レザボア・ドッグス』
アメリカに進出して早速クエンティン・タランティーノ監督の
本作に抜擢されたわけですが、本当に面白い映画でした。
- 『パルプ・フィクション』
再びクエンティン・タランティーノの映画に出たわけですが、
これも本当に面白かった。
- 『フォー・ルームス』
これもタランティーノと組んだ映画なのですが、
性格俳優ティム・ロスの本領発揮の映画です。
- 『世界中がアイ・ラブ・ユー』
ウッディー・アレン監督の映画なのですが、申し訳ないけど
どこに出ていたか忘れてしまった。
エドワード・ノートンが良い味出してました。
- 『孤独の絆』
デボラ・カーラ・アンガーやジェームズ・ルッソと言った
個性派俳優で脇を固めた映画なのですが、
ティム・ロスの寡黙な演技に胸がジーンと来ました。
- 『海の上のピアニスト』
言わずと知れた(『ニュー・シネマ・パラダイス』は
素晴らしかったのに、『みんな元気』や『明日を夢見て』は
いまいちだった)ジョゼッペ・トレナトーレ監督の名作中の名作。
それにしても、あらためて見直すに、凄い映画に出ていますねえ。
- 『カル』
今まで韓国は儒教の国で映画の規制が厳しかったらしいのですが、
そういった規制を破るサイコ・ホラーの傑作がついに登場です。
とにかくこの監督、見せ方が抜群に面白いです。
これだけ黒いビニール袋を振っておけば、
それがちょっと出てきただけで心理的負担は相当なものです。
ただ、ちょっと謎解きが難しすぎるのではないですか?
まあ『ユージュアル・サスペクト』だって、
**ザー**が*利*だなんて、後で言われれば気がつきますが、
とても映画の中では分かりません。
それでも見終わった後、いちおう謎解きは完結しているわけです。
だからこの映画も、だいたいは映画の中で完結して欲しかったが、
結局分からなかったのでパンフレットを見たが、
それでも分からない。(そんなに私が馬鹿なのか?)
やはり本を買うべきでしょうか?
- 『Xーメン』
アメリカの人気コミックを、あの傑作中の傑作『ユージュアル・サスペクト』を
30歳前に監督した天才、ブライアン・シンガーが映画化した作品。
しかしいったいどうしてしまったのであろうか?
ブライアン・シンガーは、前作『ゴールデン・ボーイ』に引き続き、
再びイマイチな作品を作ってしまったのです。
前作は原作はスティーブン・キングだし、本作は人気コミックだし、
題材はどちらも申し分ないと思うのですが、
この満たされない気持ちは、何だろうか?
コミック原作ってのは、なかなかどうして、ここまで傑作が多いと思います。
『スーパーマン』何かも良く出来ていましたが、
何と言ってもティム・バートン的世界が満載された『バットマン』とか
『スパゥーン』何かも、実に独特の世界を展開していてビジュアル的にも
SFX的にも素晴らしいと思うのですが、
それらと比べると、まあいまいちです。
それにしても天才と言われたブライアン・シンガー。
2作続けて不作で次は大丈夫なんだろうか?
- 『グリーン・デスティニー』
これはなかなか豪勢な映画です。
主演が『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファと
『ポリス・ストーリ3』のミッシェル・リー。
監督が『推手』『ウェディング・バンケット』
『恋人たちの食卓』『いつか晴れた日に』と、
作る度に全く異なる分野の映画に挑戦し、
そしてどれも非常に高い評価を得ているアン・リー。
私の大好きな監督です。
このメンバーで、アクション指導に『マトリックス』の
ユエン・ウーピンを迎え、
何と剣劇映画を作ってしまったのです。
(しかも音楽がヨーヨー・マ。)
中華世界のオールスターです。
(もっとも中華世界では、あのウォン・カーフェイだって
剣劇映画を作っていますから、誰が作ったっておかしくないけれども。)
それにしてもこれは、剣劇シーンもさることながら、
ロマンチックなシーンが実にアン・リー的で、
なかなかの出来に仕上がっていました。
- 『薔薇の眠り』
デミ・ムーア主演の映画で、
内容は、眠ると別の人として目覚め、
また眠ると元の人として目覚めると言うものです。
監督は『僕のバラ色の人生』がとっても良かった
ベルギー人のアラン・ベルリネールなので、
期待して見ていたのですが、
私は途中から退屈しました。
でも最後は意外な展開でした。
- 『五条霊戦記』
義経と弁慶の五条橋での戦いを、全く新しい感覚で
現代に蘇らせた作品で、
なかなか良かった。
浅野忠信と永瀬正敏と隆大介が、なかなか見せてくれました。
バイオレンス・シーンが見ものですが、
途中、やや中だるみの戦闘シーンが有って、
それだけが気になりました。
監督は『GONIN』の石井聡互なんですが、
『GONIN』の戦闘シーンも途中から見てて退屈だったのですが、
それと同じようなリズムです。
まあ、でも最後は良かったですよ。
以下は10月に見た映画です
- 『キャスティング・ディレクター』
もともとこの映画は、デビッド・レイブと言う人の1984年の戯曲
『Hurlyburly』が元になっています。
結構人気のある戯曲らしく、何度も舞台化しています。
それをショーン・ペン、ケビン・スペイシー
(この2人は『Hurlyburly』に実際に出演しています)、
チャズ・パルミンテリ(彼は自伝的一人芝居『ブロンクス物語』が
ヒットして、それがロバート・デ・ニーロの目に止まり、映画界入した逸材)
と言う舞台出身の芸達者な俳優達と、
メグ・ライアン、(『モル・フランダース』が本当に良かった)
ロビン・ライト・ペン、(『ピアノ・レッスン』の)アンナ・パキンらが
脇を固めているので、どんな面白い映画かと見に行ったのですが、
これが全くつまらない映画でした。
まあとにかく、まずこんなみっともないショーン・ペン、
チャズ・パルミンテリ、メグ・ライアンを見たことがない。
まあまあまともだったのは、ケビン・スペイシーぐらいか。
それにストーリがまるで分からない。
この映画って、本当に面白いのですか?
- 『インビジブル』
透明人間の話です。
もしあなたが透明人間だったら、何がしたいですか?
可愛い女の部屋に忍び込むとか、振られた女に仕返しするとか、
そんな内容じゃあ、中学生並みの思考回路なのですが、
この映画、たったそれだけの映画なのです。
これじゃあ、あんまり工夫が無さ過ぎるのではないだろうか?
とにかく監督が、あのポール・バーホーベン。
私は『トータル・リコール』はあまり好きではないですが、
『氷の微笑』や『スターシップ・トゥルーパ』の情け容赦無い映像は
好きでして、『ショーガール』も好きなのです。
それなのに、この脳天気な内容にはガッカリしました。
もっともSFXはなかなか見せてくれるので、
見どころはそれだけでしょうかねえ。
あと、これだけ科学的な話なのですが、最後エリザベス・シューが
体力で頑張るかと思いきや、さすが科学者らしく知恵を使うところも
良いです。
- 『ことの終わり』
不倫をめぐる3人の人間の愛憎劇なのですが、
これが実に良くストーリが出来ていまして、
なかなか味わい深い映画になっています。
監督は『俺たちは天使じゃない』や(私の大好きな)『クライング・ゲーム』の
ニール・ジョーダン。
彼は本当は、なかなか思い通りに映画がとれずに、
故郷のアイルランドに一度は帰ろうと思ったのですが、
最後に本当に自分が好きな映画を作ってから止めようと
『クライング・ゲーム』を作ったのですが、
これが予想を越えて世界中で大ヒット。
それで映画の世界に留まった変わった経歴なのです。
それでも『クライング・ゲーム』以来、『マイケル・コリンズ』など
いまいちの映画ばかりで心配だったのですが、
本作で見事に蘇った感じです。
主演のレイフ・ファインズは、『シンドラーのリスト』は
大作に押されてボケた演技だったし、『アベンジャー』のようなお笑い路線は
イマイチだし、あげくに自分でプロデュースした『オネーギンの恋文』の
演技は相変わらずピンボケだし、どうしちゃったんだろう、
と言う俳優だったのですが、本作の演技は
そのピンボケが見事にマッチして、なかなか良かったです。
とにかく、面白かったです。
- 『クレイドル・ウィル・ロック』
1930年代の大恐慌時代のアメリカ。
アメリカ政府はニューディール政策として、
芸人を救うために、劇場まで補助していたと言うのは、
驚きです。
ニューディール政策とは、ケインズという人が言い出したことで、
景気を上げるには、国が無駄遣いすべきだ、と言うもので、
当時の経済学では最先端の理論なのです。
今の日本もこの理論にしたがって、一生懸命無駄な道路を
景気対策で作っているわけです。
もっともケインズは、何もしないよりはピラミッドを
作った方がましだ、と言ったとされますから、
ピラミッドよりはましかも。
(そうしたら、この間NHKの番組で、ピラミッドは
古代エジプトの景気対策だった、と言う説を紹介していて、
びっくりしましたが。)
しかしアメリカは政策が中途半端で、
あまりニューディール政策は上手くいかなかったらしいです。
(アメリカの景気が回復するのは、第2次世界大戦まで
待たないといけないのです。)
それに反し、ヒットラーはもっと徹底的に行ない、
たちまち景気を上昇させ、英雄となるわけです。
それで1930年代の無駄遣いの一環で、
芸人のための劇場を作るわけですが、
要するに金を出すと言うことは口も出すわけです。
この映画は、反政府的なミュージカルを上演するにあたっての
ゴタゴタを描いたものなのですが、
なかなか面白かったです。
中でもミュージカルを演出するオーソン・ウェルズ。
彼はもちろん映画ファンの間では伝説的な人物なのですが、
彼が『市民ケーン』(私は物凄くこの映画が好きです)を
作る前や『第3の男』にでる前と言うのは、SFの『火星人来襲』を
超リアルにラジオドラマ化し、何とアメリカ中で
このラジオ放送を信じた人達が600万人も非難する
と言うパニックを引き起こした人物という事ぐらいしか知らないのですが、
こんなことをやっていたとは。
監督のティム・ロビンスは、俳優として
(私の大好きな)『ショーシャンクの空に』などに出ていますが、
監督としても『デッド・マン・ウォーキング』などの秀作を
実に手堅くまとめていますねえ。
たいしたものです。
- 『(ザ)ダンサー』
リュック・ベッソン原作・脚本で作られた映画ですが、
とにかく題名通り、ひたすらパワフルに踊りまくるヒロインの
踊りに目が釘付けです。
この映画は、ひたすら彼女のための映画であり、
それ以外のものは、彼女の引立て役に過ぎません。
ただ余談ですが、
それにしても世紀の大発明がこの程度のものとは...
これぐらいのものなら、ゲーム・センターに既に有りそうですが。
- 『オータム・イン・ニューヨーク』
次の『17歳のカルテ』と合わせて、何だか久しぶりのウィノナ・ライダー
なのですが、しばらく見ないうちにすっかり大人の演技が出来るように
なったのですね。
これは、なかなか素敵なラヴ・ストーリになっていました。
競演はリチャード・ギアでして、私はこの人は、いったいどこが
良いのかさっぱり分からないのですが、本作はあまり
喋ってもうるさくないのがよいです。
監督は『ラスト・エンペラー』で女優として有名になった
ジョアン・チェンですが、『シュウ・シュウの季節』で彼女の
監督としての才能が分かると、すぐにアメリカに呼んで
作らせるなんて、この辺りがハリウッドの強さですねえ。
だいたいが、純粋のラヴ・ストーリと言うのは、
これでなかなか難しい。
秀作が少ないのを見ても、分かると思います。
ノーラ・エフロンの脚本作品(『恋人達の予感』『めぐり逢えたら』)の
ように、ストーリや発想の面白さで見せるのならともかく、
だいたい純粋に描くとすると、恋人達のすることといったら、
愛し合ったり、嫉妬したり、喧嘩したり、セックスしたり、
だいたいやることが限られてきます。
しかも映画の2時間と言う時間を、これらのことでもたせようとすると、
かなり演技が上手いとか、台詞が良いとか、
そんなところでしょう。
本作は、ウィノナの表情と、監督の演出の上手さで、
ストーリ的には大した話ではないのに、
実に巧みに最後まで観客を引っ張っていきます。
その当りの監督の演出が上手いです。
- 『17歳のカルテ』
実に切ない表情のウィノア・ライダーの表情に、
実にいやらしく絡みつくアンジェリーナ・ジョリーの演技。
この2人が本当に実力を出し切り、素晴らしい映画になっています。
特にアンジェリーナ・ジョリーは、『60ミニッツ』だけを見ていると、
単に可愛いだけの女に思えるのですが、
『ボーン・コレクター』とか本作とか、とにかく
でる映画すべて、全く異なる表情を見せます。
全く大した演技力です。
久々に、アカデミー助演女優賞にふさわしい人が賞を取ったと思います。
それにしても、精神病院(そう言えばこの言葉も差別用語らしく、
神経科と言わないといけないらしいが、神経と言うのは、精神とはまた
異なるものを指すので、あまり良い言葉とは思えないのですが)の
医者と言うのは、本当に役に立っているのだろうか。
アメリカの精神科の医者のための本にしたがって普通の人間を
精神の病気かどうか診察すると、90%以上の人が
異常になってしまうそうです。
つまり、精神科の医者は、正常な人を異常と判断するのを
仕事としているらしいのです。
それにこういった病院に入院して、
長期的にかえって悪くなったと言う話は良くあっても、
本当に治ったと言う話は、
あまり聞かないのですが。
つまり、基本的な疑問は、「精神の問題は、
本当に病院の仕事なのだろうか?」
という事なんですが、だれか分かりますか?
医者に出来ることは、ちょっと薬を調合して少し気分を楽にするくらいしか、
出来ないのじゃないかしら。
それにしても、この映画の中でアンジェリーナ・ジョリーは
あまりに研ぎ澄まされた感性に従って、皆をバサバサ切って行くのですが、
その凄まじいこと。
物凄い迫力です。
そして彼女の中とウィノア・ライダーの中に、
精神病院の問題の解決の糸口も有るような気がするのですが。
- 『キッド』
ばりばり仕事をするブルース・ウィルスの前に、
8歳の自分が表れて...と言う映画なのですが、
まあ言ってしまえば典型的ディズニー映画なのですが、
『クール・ランニング』や(私が大好きな)『あなたが
寝てる間に』(本当に「あなたが寝てる間」の話だったのは、
驚いた)のジョン・タートルーブ監督なので、
なかなか一筋縄では行きません。
いちおう、それなりに、面白くは作って有りました。
- 『シベリアの理髪師』
私の大好きな『ウルガ』の映画監督、ニキータ・ミハルコフの
最新作です。
ちなみに『ウルガ』とはモンゴル民族が馬を捕まえるときに用いる
道具なのですが、
彼らはセックスは草原でするのですが、その時ウルガを立てて置くらしいのです。
そうするとそれが目印になって、そこには皆近づかないと言う
ルールになっているのです。
そういう全くおおらかな映画で面白かったです。
とにかくこの監督、実にどの映画も着想が巧みで
油断ならない監督なので本作も期待十分だったのですが、
期待を裏切らず、実に面白い出来だった。
時は19世紀、ロシア帝国末期、ロシアの士官学校をめぐる
話なんですが、まあこういう事をやっていれば
ロシア陸軍は戦争に弱い
(ロシア or ソビエト陸軍は、ナポレオンもヒットラーも、冬将軍に
勝たせてもらったわけで、決して自力で勝ったわけでは
無いわけですから)わけだと、納得しました。
主演のジュリア・オーモンドは、イギリスのシェークスピア劇団出身で、
正統的イギリス美人俳優の王道を行くような人なのですが、
今まで(オードリ・ヘップバーン主演の『うるわしのサブリナ』のリメークの)
『サブリナ』のように、どうも出演作に恵まれない傾向に有ったので、
本作で大きく飛躍して欲しいです。
それにしても、この題名、モーツァルトの「フィガロの結婚」
(原作は「セルビアの理髪師」)からもじったようにも思えたのですが、
本当にシベリアの理髪師の話しだなんて...
- 『オルフェ』
ギリシャ神話のオルフェの話を題材に、ブラジルを舞台にした
映画といえば、名作『黒いオルフェ』が有名なのですが、
それとは関係なさそうです。
さすがブラジルで作られた映画だけあって、カーニバルの
シーンは圧巻ですが、どうもそれ以外は退屈です。
主人公は有名なミュージシャンらしいので、とにかく
歌とギターは抜群なのにストーリがいまいちなので、
ストーリをもっと思い切って削って、
音楽を増やせば良かったのに、
どことなく中途半端です。
それと『黒いオルフェ』では、単にサンバのリズムだけでなく、
実に複雑なリズムが多重的に絡み合って、
実に奥行きの有るリズムを形成していたのですが、
今回は何か単純です。
映画の中で警察官も言っていましたが、
やっぱりサンバにラップ・ミュージックは
あわないんじゃ無いかなあ。
- 『電話で抱きしめて』
私が大好きな『恋人達の予感』や『めぐり逢えたら』の監督の
ノーラ・エフロンの脚本で、
ダイアン・キートンが監督・出演、メグ・ライアンも出演していると
いうので見に行ったのですが、まあそれなりの出来なのですが、
ダイアン・キートンの演出には、
なんかわざとらしいところが有って、私にはイマイチでした。
それでも、出演者達は芸達者な人が揃っているので、
何とか最後まで、見させてくれますが...
- 『サルサ』
いやあ、良いですねえ。
もう音楽ノリノリの映画。
なんでみんな、じっと見ているのかなあ。
身体が自然と動きだす映画です。
実に楽しい。
ただ、主人公のヴァン・サン・ルクードはピアノが弾けないらしいので、
ピアノの演奏シーンがイマイチなのです。
初めのショパンの「ワルツ16の2」(有名な「子犬のワルツ」の
次の曲です)はともかくとして、「革命エチュード」も
そんなに上手に見えないのです。
その他のピアノを弾いてるシーンでも、
ちょっと弾いてるように見えないところが有って、
抵抗が有りました。
でもまあ、そんなこと抜きにして、
脳天気にサルサのリズムに素直に乗れる珍しいフランス映画です。
以下は9月に見た映画です
- 『パトリオット』
まあローランド・エメリッヒ監督なので、
最後までハラハラ・ドキドキ、退屈しません。
(前作『13F』は駄作だったですが。)
ただ、ローランド・エメリッヒだからなあ、
どうせ『インディペンデント・デイ』の焼き直しだろうと
予測して行ったのですが、全くその通りでした。
どうもこの監督、アメリカ人の肥大化した自画像を映し出している
ところが有って、それが私には、はなもちならないような気がするのですが、
皆は気にならないのでしょうか?
まあ、『インディペンデント・デイ』でも、
どう見たって立派に見えないビル・プルマンが大統領だったので、
どうもいまいちです。
最後にそんな大統領に命令されて
日本の自衛隊が宇宙人に攻撃すると言うのは、抵抗が有るのですが。
『パトリオット』でも、結局「アメリカ・バンザイ」と言う
単純な映画でして、アメリカ軍が窮地に陥ると、
メル・ギブソンが突撃すると何とかなってしまうと言う、
実に脳天気な映画なのです。
と、ここまでアメリカの悪口を書いてきたのですが、
よくよく考えてみるに、監督のローランド・エメリッヒって、
ドイツ人ではないか。
主役のメル・ギブソンはオーストラリア人だし、
息子の役のヒース・レジャーもオーストラリア人、
ヒロインのジェリー・リチャードソンはイギリス人
(『チャタレイ夫人の恋』や『101』では、イギリス人らしく、
バタ臭い顔でした)、
牧師役のルネ・オーベンジョノワはフランス系カナダ人と言うありさま。
まあアメリカは移民の国と言ったって、これは少し
異常ではないか。
でまあ考えてみるに、要するに、これらの人々のアメリカ・コンプレックスの
裏返しが、この映画ではないかと思うわけです。
そうでなければ、これだけ恥ずかしげもなく、
アメリカ・バンザイとなるはずがないではないか?
それにしても、もうちょっとストーリは工夫しないと、
ただメル・ギブソンが突っ込んで行けば勝てると言うのじゃあ、
(アメリカ人以外)誰も納得しないと思いますが。
- 『マルコビッチの穴』
物凄い発想力の映画ですねえ。
これは物凄く面白い映画です。
何しろ、とある穴を通ると、誰でもジョン・マルコビッチ
(と言う実在の俳優)になってしまうのですから、凄いです。
まあ、ジョン・マルコビッチと言うのは、
(私の大好きな)『コン・エアー』のひげずらの悪役
(本当に悪かったなあ、大好きです)のイメージが有りますが、
リュック・ベッソンの『ジャンヌ・ダルク』の無能な
王様の役も凄かったです。
ただ、間違っても、彼になりたいと思う人は、
そんなにいないんじゃないかなあ、とは思ってしまうのですが、
それがかえってこの映画のミソなのです。
あと、それだけでなく、この映画には沢山の仕掛けが有って、それだけでも
楽しい映画です。
主役のジョン・キューザックも、『コーン・エアー』や(これも私の大好きな)
『真夜中のハバナ』のツルッとした役が多いのですが、
これが意外な雰囲気なのです。
それと一番意外なのが、キャメロン・ディアス。
これがなかなか良かった。
とにかくガーーーンと来ますよー、この映画は。
- 『ミュージック・オブ・(ザ)・ハート』
いやー、とにかく良い映画でした。
これで文部省が推薦していなければ、もっと良いのですが。
(私は文部省が推薦する映画は、どうも見に行く気がしません。)
監督が『スクリーム』のウェス・クレイヴンだったので、
いろんな意味で心配だったのですが、
何の何の、全くたいしたものです。
とにかく、ストーリが良いですね。
しかも実話。
人と人を結びつける輪が、大きくなっていき、
最後は貧しい子供たちがカーネギー・ホールでコンサートするまで
を描いているのですが、その輪を結びつけているのが
音楽と言うのが、実に説得力が有るのです。
とにかくお勧めの映画。
所で原題は「music of the heart」なのですが、
私は良く of の後ろの the は飛ばすのですが、
この場合は付くのが普通なのですか?
(知り合いのカナダ人に聞いたけど、分からないと言っていた。)
- 『60セカンズ』
いやはや、さすが製作のジェリー・ブラッカイマー。
この人は新人のマイケル・ベイ監督を起用して
(私の大好きな)『バッド・ボーイズ』や『ザ・ロック』を
成功させた手腕はさすがデス。
で、こんども新人のドミニク・セナ監督ですが、
もうメチャクチャに面白い。
ニコラス・ケイジもアンジェリーナ・ジョリーも、
トレバー・ラビンの音楽も、
もちろんいいけれども、
とにかく車を盗む方も、追う警察も、
とにかく車好き。
車見ているだけで楽しい。
エンジン音も良い。
所で、ベンツの最新式盗難防止装置ですが、
あれは車のコンピュータを入れ換えればすぐに破れるらしい。
ただその方法だと、60秒では無理なのかなあ...
- 『クリクリのいた夏』
これは、なかなか良い出来の映画です。
最後の何とも言えないさわやかさも、好きです。
まあ、或る女の人が小さかった頃を思い出して、
その思いでを語っているのですが、
もちろん思い出ですからすべては美化され、
出てくる人々は実に田舎の良い味を出しているのですが、
それがちっとも嫌味に感じられず、実に美しい話に仕上がっています。
話はフランスの第1次世界大戦後なのですが、皆さんはフランスと言うと
何を思い出しますか?
芸術?文化?サッカー?
私はルイ14世以来の(日本以上の)超官僚国家で、
最近でも植民地(「信託統治」と言うごまかしの言葉で語られますが)で
核実験を行なう酷い国と言う、もう一つの側面を思い出します。
さらにヨーロッパで一番の原発の国
(官僚が強いので、官僚主導で人民を押さえつけ、原発を作れる)で、
ヨーロッパの他の国が原発を減らせるのは、
みなフランスから電気を買えるからなのです。
さらに、個人主義の国なので、労働組合の組織率が低く、
労働者が資本家から搾取されている国(断っておきますが、
私は共産主義者では有りません)と言う面も有ります。
あまりに労働組合が弱いので、すぐに労働者は自発的に暴動に走ります。
最近でも、フランス中の石油の精製所が、封鎖されたばかりです。
と、ここまでフランスの悪口を書きましたが、
この映画を見ていてフランスのもう一つの側面、
大農業国で有ることを、思い出しました。
フランスは豊かな農業生産高を背景に、ルイ14世の時代には
強力な常備軍を持つことが出来たのです。
フランスに比べれば、ドイツなんてなかなか小麦が出来なくて、
黒っぽいドイツパン
(とは言え、このパンは、なかなかドイツのハムやチーズと合うので、
一緒に食べれば美味で、私は好きです)しか食べれなかったのですが、
これは大阪では小麦を使ったうどんが食べれたのに、
寒くて農業生産が低い江戸では、ソバしか食べれなかった
ような話しです。
とにかく、この映画、フランスの田舎の古き良き時代を満喫できます。
- 『ソフィーの世界』
世界中で大ヒットしたヨースタイン・ドルデルの本「ソフィーの世界」を
映画化したもの。
まあ本の内容は大幅にカットされていますが、そこそこ上手にまとめた
のではないでしょうか。
ただ、映画の出来としては、かなりクエスチョン・マークが付きますが。
- 8月24日から9月13日までヨーロッパ旅行をしておりまして、
その時のスケッチは
ここをクリックすると見れますので、
良かったら見てやってください。
以下は8月に見た映画です
- 『ホワイト・アウト』
これはまことに面白い映画です。
主人公、織田裕二の痛みや寒さが、本当に伝わってくるような
演出が、たいへん良かったです。
ストーリも実に良く考えられています。
普通、これほどスキのないテロリスト集団に、
銃の扱いもままならない素人が1人で立ち向かうのは
どう考えたって無理がありますが、
織田には冬山に強いと言うことと、ダムの仕組みを知り尽くしている
と言う利点が、与えられているのです。
そして何より、強いモティベーションが有るのです。
とにかく、テロリストもダムの事は調べ尽くしているわけですから、
おたがいの知力と体力を使った戦いは、
実に見ごたえ有りました。
とにかく話は抜群に面白かったのですが、
脚本上、いくつか気になる点も有りました。
例えばラスト15分間、どう考えたって15分以上経っているように
思えるのですが...
何も無理して15分にしなくっても、
30分ぐらいなら適当に感じたと思うのですが。
まあでも、そういった事を除けば、もうほとんど完璧な映画です。
- 『リプリー』
トム・リプリーと言えば、名作中の名作『太陽がいっぱい』の
主人公の名。
彼はこの映画では逮捕されるので、
その後、ビム・ベンダースがコッポラに招かれてハリウッドで初めって
とった『アメリカの友人』で同名の主人公が出てきたときには、
「こいつは刑務所じゃあないのか」と、変な違和感を感じたものです。
『太陽がいっぱい』と『リプリー』は同じ原作
(『アメリカの友人』は、同じシリーズの原作)なのですが、
監督のアンソニー・ミンゲラは、比較して欲しくないそうです。
まあ『太陽がいっぱい』は、まずミステリーとして抜群に面白い。
特に有名なラストのシーンは、見事としか言いようがありません。
それに、若きアラン・ドロンが本当に輝いていました。
そこにニーノ・ロータの哀愁を帯びた音楽が、実にマッチしていました。
とにかく名作中の名作だと思います。
ただ原作では、アメリカ人がヨーロッパに来る話なのですが、
『太陽がいっぱい』ではフランス人2人を主人公にすることによって、
全く異なった味わいの映画になってしまいました。
そこで、本作は原作の持つ味わいを忠実に蘇らせたので、
これはこれで、それなりの映画になっています。
ただ原作では、2人の主人公は顔が似ている事になっているのですが、
マット・デイモンとジュード・ロウでは、
ちょっと無理が有るのではないですか?
- 『パーフェクト・ストーム』
はっきり言って、アウグガング・ピーターゼン監督はやりすぎ。
でもまあ、娯楽映画で一番大事なのは、
「やりすぎ」なんだろうけどねえ。
とにかく呼吸する暇もないほど、面白かった。
この監督、前の『エアーフォース・ワン』はイマイチだったので、
心配していたのですが、こんどのは凄かった。
しかし良く考えてみれば、ジョージ・クルーニには悪いけれど、
この船長の判断がもう少し良ければ、
この事態を避けられる機会はいくらでもあったわけで、
やっぱり船長が悪いんじゃあ無いかなあ。
だいたいこの船長、このところ勘が鈍って漁が不作な上、
あせって出航してみたら、不吉なことだらけ。
つまり実力も勘も運にも見放されたわけだから、
こういう時はジタバタせずに、じっとしとれば良いのに。
とにかく、引き返す勇気がなかったと言うのは、
最近の天災(人災?)のパターンですよねえ。
それにしても、躊躇無く荒海に飛び込む船員や沿岸警備隊の人達には、
本当に心打たれました。
馬鹿な船長の話は置いといて、こっちを主体にした方が、
面白かったのに。
- 『TAXi 2』
リュック・ベッソンが製作・脚本を指示した映画の第2段。
まあ、はっきり言って、前作はお金のかけようが、
ハリウッドに比べて少ないのが映像にも出てしまい、
イマイチ、フラストレーションの溜まる内容だったのですが、
今回は初めから終わりまで、とにかく笑わかしてもらいました。
車の壊しっぷりも、実に見事なものです。
やっぱ、本場ヨーロッパの意地として、
F1やラリーの本物のテクニック見せるコンセプトも良いですけど、
車もこれくらい壊さないと駄目でしょう。
とにかく笑えた。
- 『あの子を探して』
大感動作『紅いコーリャン』のチャン・イーモウ監督の最新作。
この監督、映画祭での受賞率がすさまじい監督なのですが、
どうも『紅いコーリャン』以後、『菊豆(チュイトウ)』
『紅夢』『秋菊の物語』『上海ルージュ』と、
女優コン・リーと組んだこの路線はジリヒンな感じがしていました。
それにしても、この映画で、全く違う映像を見せてくれて、見事
カムバックしてきたのは、嬉しいです。
とにかくこの映画は、物凄く良かった。
話は中国の田舎の学校の話なのですが、
とにかく出演している素人の子供がいいのです。
そして、中国の(我々の予想を遥かに越えた)貧乏差も
考えさせられました。
私も中国奥地のタクマラカン砂漠や標高4900mの
パミール高原に何回か行きましたが、
とにかく信じられないことだらけだったです。
- 『シャンハイ・ヌーン』
ジャッキー・チェンも『ラッシュ・アワー』で
ハリウッドに乗り込み、見事アメリカではヒットしたそうですが、
どうも私的にはイマイチな感じで、やはりアジアでも
ヒットしなく、ジャッキーもヤッパリ香港で撮影したいらしいです。
そんなわけで、ハリウッド第2作の本作も、
あまり期待しないで行ったのですが、
やっぱりジャッキーの映画にしては、アクションがイマイチ足りないし、
脚本もイマイチだし、
彼の映画の中ではベスト15に入るかどうか、と言う辺りかしら。
ジャッキーのファンだけに、彼の行く末が心配です。
- 『サウス・パーク』
アメリカで(一部のインテリに)大人気の「サウス・パーク」と
いうアニメがあるそうですが、
これはそれに、大々的にミュージカルの要素を取り入れた映画版。
それにしてもこのアニメ、とにかくシモネタの連続でして、
たとえケーブル・テレビでも、良く放映できたものです。
もともとトレイとマッケイと言う、たいへん才能がある2人が、
セコセコ手作りで作ったアニメがたいへん評判となり、
多くのテレビ局が彼らの獲得に乗り出したと言う、
才人なのです。
今回の映画でも、多くの声の出演もこなし、
見事なミュージカル・ナンバーも、多くがトレイの作なのです。
それにしても、このギャグについて行けるかどうかは、
そうとう大変ですけれどもねえ。
ブラックが好きな人には、たまりません。
- 『映画史』
なんとあの、ジャン・リュック・ゴダールが
10年の歳月をかけて作った、
どうどうの8部作からなる『映画史』なのですが、
なんと言ってもあのゴダールですからねえ、
見に行くべきか行かないべきか、そうとう迷いました。
(この間も『ゴダールのリア王』でさんざん迷ったあげく見に行って、
そうとう後悔しましたから。)
まあそれで見に行って、この映画もだいぶ後悔しました。
それにしても彼も『勝手にしやがれ』とか『気違いピエロ』とか、
本当に尖っていて、しかも最後まで目が離せない本当の意味の傑作映画を
作っていたのに、最近の映画と来たらただ退屈なだけ、
と言うのには、困ったものです。
(しかも、こう言った映画に「いかにも、もっともらしい」解説を書く人がいて、
それを見て誤解して見に来る人がいるのですから、困ったものです。)
私は、やはり劇場でお金を取って上映するからには、
たとえ実験的な映画にしろ、やはりお客さんの事は
少しは考えるべきだと思っているのですが、
何しろ、あのゴダールですからねえ...
それにしても、この内容でお客さんがギッシリ来ている
(でも、かなりの人が寝てましたし、途中の休憩で帰ろうかどうしようか、
迷っている人は、かなりいました)と言うのは、
ヤッパリ、あのゴダールだからと言うことでしょうか。
私には信じられませんが。
- 『ハピネス』
物凄くブラックな問題作ですね。
しかも笑える。
アメリカの病気を描いた映画だけど、『アメリカン・ビューティ』や
『ボーイズ・ドント・クライ』ほど深刻ではないが、
ブラックなのです。
(まあ、でも、こう言った映画を見ていたら、当分はアメリカには
行く気は無いです。)
とにかく出てくる人出てくる人、みな深刻な悩みを抱えている。
しかも本人が深刻なら深刻なほど、「他人の不孝は密の味」と
いうわけです。
それにしても、男性のいろんな世代の****・シーンが、こんなに出てくる
映画も珍しいですねえ。
まあ、そりゃあそれで、やってる時は本人は「ハピネス」だろうけど。
所で、テレビ・シリーズ(劇場映画版には出ていない)の
『トゥイン・ピークス』に出ていたララ・フリン・ボイルって、
こういうハスキーな声をしていたのですねえ。
それにしてもあれから10年、彼女も年をとったものだ。
- 『ファンタジア2000』
とにかく、あのディズニーの名作中の名作『ファンタジア』
(それにしても戦前の1939年に、この映画が作られたのは、
驚き以外の何者でもありません)の
続編なわけですから、待ちに待っていました。
『ファンタジア』は、私が小学校の時、大スクリーンで見て
感動したのですが、その後リバイバルで来る度に、
小さなスクリーンの映画館で上映されていたので、
ぜひ大きなスクリーンで見たかったのです。
続編とは言え、大きなスクリーンで見れて、
本当に嬉しいです。
まず「ローマの松」で泣けました。
本当に良い出来栄えです。
フラミンゴのヨーヨーは、前作のカバのダンスの方が
上ではないですか?
それで、やっぱり『ファンタジア』と言えば、
やっぱり「魔法使いの弟子」でしょう。
これは本当に素晴らしいので、
また見れて嬉しいです。
それにしてもドナルドも本当に泣かせてくれました。
エルガーの威風堂々なんて、なんでもない曲を、
このように使うなんて、面白いです。
そして最後の「火の鳥」は圧巻で、
最後を飾るのにふさわしい曲です。
所で、指揮者は前作の恐い顔をしたストコフスキー
(この人は『オーケストラの少女』では恐い顔が
映画にピッタリでした)ではなく、
見るからに親しみやすいレバインで、
これはこれで良かったです。
まあ、レバイン、「3大テノール」を聞いても分かりますが、
本当にポップ過ぎる指揮なんですが、
それがこの映画にピッタリでした。
- 『風を見た少年』
まあ、そこそこ面白い映画なのですが、どうしてもこの内容だと、
『風の谷のナウシカ』と比べてしまいます。
もちろん『風の谷のナウシカ』の方が10倍くらい面白いことに
異論がある人はいないでしょう。
どう考えたって、歩が悪すぎます。
内容はそれほど悪くないので、原作のC.W.ニコルさんには、
何の責任も無いと思います。
ただ具体的に言って、『ナウシカ』と比べると、
絵は暗いし、キャラクターは『ナウシカ』ほど魅力ないし、
音楽も『ナウシカ』の久石譲さんには遠く及ばないし、
何と言っても、空を飛ぶあの浮遊感が、
『ナウシカ』に遥かに及びません。
メッセージ的にも、『ナウシカ』があくまでも共生を
力強くうったえているのに比べ、
この映画では結局は武力でかたを付けると言う発想が
気に入りませんし、最高権力者一人が救われても、
死んで行った兵士達はどうなるのだ、
などと考えますと、やっぱ何か(思慮?)が足りないのでは
無いでしょうか?
で、最後にとどめを刺すのがレベッカ
(ちなみに言っておきますと、私はレベッカには何の
恨みもございませんし、この歌自身はそう悪くはないと
思っています)の歌でして、
これは『ナウシカ』の安田成美の歌
(と言っても、ほとんどの人が知らないだろうけど、
始めの頃は『ナウシカ』には、この歌が最後に流れていたのです)と
良い勝負です。
- 『ボーイズ・ドント・クライ』
性同一性障害を扱った実話に基づいて描いた映画なのですが、
それより何よりアメリカがいかにひどい国か、と言う映画だと思う。
確かにどこの国にも差別や偏見はあり、
日本だってそうとう問題だと思うけど、
この映画で描かれているアメリカの現実を思えばそうとうマシかも。
この映画の主人公も、ひょっとしてアメリカ以外に産まれていれば、
事態はまたそうとう変わっていたのでは無いだろうか?
主演のヒラリー・スワンクは文句無しアカデミー賞に値すると思う。
まあ、ニール・ジョーダン監督の『クライング・ゲーム』の
ような仕掛けは無いですが、まっすぐな演技はそれはそれで
良いです。
- 『ムッソリーニとお茶を』
(シュールな顔の)シェールとか、
『恋に落ちたシェークスピア』ではエリザベス女王役が良かったジュデ・リンチとか、
ジェーン・ブローライト、マギー・スミス、リリー・トムスンと、
とにかく年増女の在庫一掃セールのような映画だったです。
彼女たちのパワーたるや、物凄いものがあり、初めはそれが
うっとうしかったのですが、何しろそのパワーで押し切られ、
最後は感動しましたねえ。
話は、第2次世界大戦下のイタリア。
イタリアの美を愛して移り住んできたイギリス人アメリカ人にも、
ファシズムの嵐が押し寄せてくるのですが、そこはそれ、
中年(老年)女達のパワー炸裂。
と言っても、そう大したことするわけではないのですが、
あくまでも going my way と言うのが、素晴らしいです。
そして最後に、この人達のその後の人生が明かされるのですが、
これがまた意外や意外、全く大した映画です。
ちなみに監督は、(布施明と結婚した)オリビア・ハッセイが主演した
『ロメオとジュリエット』の監督のフランコ・ゼフェレッリです。
以下は7月に見た映画です
- 『ロッタちゃんと赤い自転車』
スウェーデンの児童文学として有名なロッタちゃんシリーズを
映画化したもので、前に公開された『ロッタちゃん、はじめてのお使い』と
同時に撮影されたものらしいです。
まあ、私は、子供の可愛さをダシに使った映画は、
あまり好きではないのです。
もともと子供と言うのは、わがままで、残酷で、
ろくな存在ではないはずなのですが、
どうも人間の本能に、子供は可愛いもの、と言う情報が、強烈に
あらかじめインプットされているらしいのです。
なぜなら、哺乳動物は他の生物と異なり、長期間子供を育てる必要が有りますから、
その間、無条件で子供の面倒を見なければなりませんから、
そう思う必要が、有るらしいのです。
で『ロッタちゃんシリーズ』が他の子供物と異なるのは、
子供の自己中心性、残酷性をチャンと描いているところです。
今日の一番面白かったことに、「お兄さんがおぼれたこと」をあげるなど、
普通に考えるとひどいことなのですが、それが子供なのです。
この映画はチャンとそこのことは押さえてあって、
私は好きです。
- 『ショウ・ミー・ラヴ』
スウェーデンの今時の中学生の女の子を、
ドキュメンタリー風に撮影した映画かと思いきや、
途中から意外な展開に目が離せません。
しかし、現実を生々しく撮影するって、
なかなか痛々しいですねえ。
ラストはそれを乗り越える力強さと自然さが有りますが。
- 『フォーエバー・フィーバ』
その昔、『サタデー・ナイト・フィーバ』と言う映画が
大ヒットした時代(1977年ぐらいか?)が有りました。
今のディスコから考えれば、そう大した場所でも無いのですが、
私もディスコには良く、かよいました。
(足の膝の靭帯を切って、ギブスをはめても、行きました。)
ただ、その『サタデー・ナイト・フィーバ』と言う映画自体は、
私はあまり好きではなかったです。
だいたいが、ダンスの映画なのに、あまりダンス・シーンもないし、
そのダンス・シーンも、大したことない
(当時、「ソウル・トレイン」なんかを見ていた私の目には、
物足りなかった)し、内容も暗いし。
いったいどこが良い映画なのだろう。
(ただ、『小さな恋のメロディー』の「メロディー・フェアー」で、
美しいハーモニーを聞かせていたビージーズが、
大幅にイメージ・チェンジをして、ケッタイな高音で
『ステイン・アライブ』を歌っていたのには、ビックリしましたが。)
この映画は『サタデー・ナイト・フィーバ』の時代に、
シンガポールでこの映画に熱中する若者の文化を描いた映画なのですが、
先ほども書きましたように、モトネタにあまり感情移入できないので、
この映画もどうかなあ、と思ったのですが、
これが意外や意外、不覚にもラスト・シーンで泣いてしまったのです。
まあ、もっとも、トラボルタ役に、臆面もなく全く顔もダンスも似てない
人物を持ってくるなど、B級映画と言えばB級なのですが、
我慢して最後まで見る価値は、私は有ると思います。
(と言っても、最後まで見て、つまらなかったから責任をとれと言われても、
困りますが。)
- 『ブラウンズ・レクイエム』
『揺りかごを揺らす手』の演出が、抜群に良かった
カーティス・ハンソン監督の『L.A.コンフィデンシャル』。
その映画のおかげで、その原作のジェームズ・エルロイの小説は、
どれも高値で映画化権が売れたそうですが、
唯一売れ残ったエルロイの処女作を、
エルロイにほれ込んだジェイソン・フリーランドが
監督して映画化したと言うだけあって、
エルロイ独特の雰囲気が実に良く出た映画だと思います。
内容も抜群に面白い探偵物の映画で、
映画の画面から、ヤバイ空気がムンムンと伝わってきます。
とにかく、お勧めです。
- 『ドグマ』
あの名作『グッド・ウィル・ハンティング』の
マッド・ディモンとベン・アフレックスのコンビが
競演すると言うので見に行ったのですが、
結論から言いますと、全くつまらなかった。
どうしたら、ここまでつまらない映画が作れるのでしょうか、
不思議です。
要するに監督のケヴィン・スミスが
皆から才能が有ると言われチヤホヤされ、
悪ノリしすぎた映画なのですが、
その悪ノリの方向が、全く間違っているのです。
出演者はマッド・ディモンとベン・アフレックス以外にも、
『ワイルド・ワイド・ウェスト』(これもつまらなかった)の
サルマ・ハエックとか、『マイケル・コリンズ』の
アラン・リックマンが股間を見せるとか、
かなり来てても良い映画なのですが、
これが何と言いましょうか、全く駄目でした。
- 『M:i-2、ミッション・インポッシブル2』
言わずと知れた、
あのおなじみのテレビ・シリーズの「スパイ大作戦」
(昔月曜日の9時と言えば、この番組でした)のリメークの
第2弾です。
とは言っても、冒頭も「おはようフェリスプ君」ではなく
「Good morning, Mr. Hunt!」になっちゃっているし、
ちょっとずつ違うのですが、これは前作の初めで、かつての
スパイ組織は壊滅したのですから、しょうがないですが。
それにしても、音楽もあの懐かしいララ・シフリン
(彼はピアソラの楽団にいたり、ジャズのアレンジなんかをやっていたので、
こう言った音楽は、お手の物です)のかっこいいテーマ音楽を、
現代風にアレンジした内容で、これも郷愁を誘います。
でまあ、本作ですが、さすがさすが、の一言。
やっぱりジョン・ウーは偉い。
彼を起用したトム・クルーズも偉い。
とにかく娯楽映画の王道を行く映画に仕上がっていて、
とにかく抜群に面白い。
前作は、ちょっとアクション・シーンが足りなかったと言う
反省に立って作られたのですが、
もともとスパイと言うのは、
人知れず行動するものですから、
あまり目立ってはいけないので、
アクション・シーンが足りないのは当たり前です。
でまあ白羽の矢が立てられたのが、
ジョン・ウーだったのです。
彼は前作『フェイス・オフ』で、
目立ってはいけないテロリスト(ニコラス・ケージ)を、
冒頭のシーンで、あろうことか公(おおやけ)の場所で派手に
ハレルヤを歌わせたほどの人ですから、
スパイを派手にするのに、もってこいの人なのです。
で結果は大成功。
彼のメロドラマ的なドロドロ感の心情演出と、
どこまでもひたすら派手なアクションが、
見事にマッチした作品と言えるでしょう。
それにしても、カンフー的な足技の連続は、
まるでマンガ「修羅の門」を彷彿とさせて好きです。
とにかく、『フェース・オフ』もそうなんですが、
どうせやるならここまでやらなきゃあ、の見本みたいな映画です。
出演者もトム・クルーズ以外はあまり知られていない人ばかりですが、
実力者ばかりで固めてあります。
私個人的には、『グリッド・ロック』(大好きな映画で、
今はなきミュージシャンのシュパック・シャクールが見れます)や
『シャンドライの恋』とは全くイメージの違う
サンディー・ニュートンが好きです。
- 『エド・TV』
日常世界で起こることを、テレビで24時間放送する内容と言えば、
『トゥルーマン・ショウ』の2番煎じと思うかも知れませんが、
内容はちょっとずつ、違っています。
監督はロン・ハワード。
『バック・ドラフト』や『身代金』の監督なのですが、
これらの映画ほど面白いかと言うと疑問が残りますが、
彼としては、それなりに面白い。
ただし1年後には、内容は忘れているだろうけれども、
それでも最後の30分は『トゥルーマン・ショウ』よりも
遥かに面白かった。
脇を固める俳優陣がユニーク。
存在するだけで恐ろしいウッディー・ハレルソンが兄貴だし、
『恋人達の予感』の監督のロブ・ライナーは、
相変わらずデブの役だし、
デニス・ホッパーは、こう言った役をやらせたらはまる役だし、
マーティン・ランドンは相変わらずだし。
- 『サイダー・ハウス・ルール』
一見、まともで感動的なストーリに見えるのです。
孤児院が有って、そこに献身的な医者がいて、
彼の後釜となる孤児の人間的成長を扱った映画なのです。
でも原作、脚色が、あのジョン・アービングなのです。
あの『ガープの世界』
(本当に衝撃的な映画で、若きロビン・ウィリアムズの
キャラクターもぶっ飛んでたなあ)
や『ホテル・ニューハンプシャー』
(これは、本当にジョン・アービング的世界が満載で、
出てくるキャラクターが皆変で、
しかも良く考えてみれば、悲劇的内容なのに、
やけに明るく進行する内容が、変です。
個人的には「熊」の役
(意味が分からない人は、映画を見てください)をやった
ナターシャ・キンスキーが良いです。)の
ジョン・アービングなのですぞ。
話がただすむわけがない。
一見、まともな登場人物ばかりなのに、
皆ちょっとずつ変。
(と言っても、『ホテル・ニューハンプシャ』ほどでは
無いですが。)
話も感動的な話しのはずなのに、良く考えればどこか変。
やっぱりジョン・アービングは、ただ者ではない。
それにしても、(何度もここで言っているように)、
本当にマイケル・ケインの演技は、
『シックス・センス』のぼうやとか、
『グリーン・マイル』の巨人の演技を凌いで、
アカデミー助演賞を受賞するほどかなあ、
という疑問は、残りますが。
- 『シーズ・オール・ザット』
世の中には、テレビ・コマーシャルで女優として出ているのだが、
いったいだれ、と言う人が結構いますが、
まさにヒロインのレイチェル・リー・クックは、そういう人です。
まあこの映画で、いちおう映画に出ていることは判明しましたが、
これじゃあねえ。
監督も、テレビ・ドラマ専門らしく、
典型的学園ドラマですが、こんな映画、映画館で見る必要が
有るのだろうか?
まあ点数を付けるとすると、40点が良い所かしら。
- 『ザ・ハリケーン』
無実のボクサーの冤罪を晴らすまでを描いた、
実話に基づく映画なのですが、
映画自体の時間の流れがどっしりしていて、
たいへん面白い映画に仕上がっていました。
ベテラン監督のノーマン・ジェーソンならではの、
映画の時間の流れがどっしりしている作りで、
なかなかたいしたものです。
まあ、デンゼル・ワシントンの素晴らしい演技は当たり前として、
周りを固める脇役が面白い。
(『クラッシュ』が最高だった、わたし好みの美人の)デボラ・カーラ・アンガー。
『リストランテの夜』も良いのだけれども、
つい『スクリーム』の影響でサイコ野郎に見えてしまうリーヴ・シュレイバー。
そして最後を締めくくる堂々とした演技のロッド・シュタイガー。
あと、ボブ・デュランの歌も良かったです。
- 『レインディア・ゲーム』
はっきり言って、この映画はそうとう面白い。
物凄くお勧めです。
何しろ、あの『隣人は静かに笑う』
(まあ、後味は悪かったですが、内容は物凄く
面白かったです)の脚本家アーレン・クルーガが
書いているので、ただの話になるわけが有りませんが、
それにしてもここまで面白いとは。
この良く出来た脚本は、ヒッチコックの『レベッカ』
(ヒッチコックの映画の中では一番好きです)や黒沢明の
『隠し砦の3悪人』にそうとうすると思います。
俳優も、耐える男ベン・アフレック。
『ディアボロス』や『ノイズ』も良かったけれども
個人的には健康的な『マイティー・ジョー』が良かった
シャーリズ・セロン。
そして『アルビノ・アリゲータ』や『スネーク・アイズ』の
ような役しかやらないのかと思ったら、
『グリーン・マイル』や『ミッション・トゥー・マーズ』のまともな役も
こなすゲイリー・シニーズ。
本作のような正統的悪役こそが、彼の持ち味でしょう。
ちなみに題名の『レインディア・ゲーム』の『レインディア』とは、
「レイン」すなわち手綱で縛られた「ディア(鹿)」のことで、
トナカイの意味らしいですが、
映画の題名に原題をそのまま付けたがる風潮は、
あまり良くないのではないでしょうか。
ちなみに、『レインディア・ゲーム』と言う
クリスマス・ソングが有って、映画の最後の方でかかり、
それがなかなか効果的なので映画の題名になったのだと思いますが、
もうちょっと分かりやすい題名がよいと思います。
以下は6月に見た映画です
- 『ラスト・ハーレム』
トルコ帝国最後のハーレムをイスタンブール生まれの
フェルザン・オズペクトがリアルに再現した映画。
ただ内容が、ハーレムで夜な夜な女達の間で話されている話が
現代に駅で待つ2人の女の話で、
この2人が話している内容がハーレムと言う入れ子になった話なのですが、
これが時間軸がずれていれ、矛盾を含んでいるし、
監督はそれが面白いとしたいらしいのですが、
私には不成功だったように思います。
こう言ったこころみは、『ビフォアー・ザ・レイン』では
成功しているのですが、普通はなかなか難しく、
監督の独り善がりに終わってしまう場合が多いです。
- 『地上(ここ)より何処(どこ)かで』
この題名の付け方、有名な某映画を彷彿とさせますが、
全く関係が有りません。
所で、世の中には、時々こんな車、誰が乗るのだろうか、と
考え込んじゃう車って有りますが、そうか、こういう奴が
乗るんだ。
しかも最後、賛同者まで表れるなんて。
この「そうそういるいる、こういう奴」って思わせた時点で、
監督のウェイン・ワンの勝ちなのです。
つまり、一見普通でない話に、そう思った瞬間、臨場感が
産まれるのです。
まあ、ウェイン・ワンは『スモーク』でもポール・オースタの
普通でない原作を鮮やかに捌いていますし、
やっぱり上手いです。
(『チャイニーズ・ボックス』は、わけが分からなかったけど。)
俳優陣も、こう言った無理のある役をやらせると実に上手い
スーザン・サランドン。
『レオン』や『スター・ウォーズ、エピソード1』の
憂いの有る表情が良かったナタリー・ポートマン。
特にナタリーは、美人だけど女優にはちょっとね、と言う役を、
女優がやるから面白い。
- 『ミフネ』
この映画を理解するためには、まず「ドグマ95」という物を
知らないといけないのですが、これの説明がややこしい。
それにわたし自身、「ドグマ95」は何となく気に食わないので
説明したくないのですが、
この説明をしないと先に進まないので、いちおうしておきます。
要するに「ドグマ95」とは、映画から「わざと」と言う部分を徹底的に
取り除こうとする運動らしいのです。
音楽や効果音も「わざと」入れてはいけなく、自然と撮影中入ってしまったもの
のみよい。
セットを作るのがいけないのは当たり前ですが、
小道具も「わざと」持ち込んではいけなく、
初めからロケの場所に有るものをそのまま使う。
明かりも「わざと」作っていけなく、あくまでも自然な照明のみ。
もちろんジャンル物の映画は、「わざと」話をカテゴリーに分けるわけですから、
これも駄目。
とにかくがんじがらめなのです。
でもこの理屈で行くと、フィルムを編集することも駄目なような気もするのですが、
それは良いらしいのです。
私は映画という物は、編集と言う技術が入って以来、
演出されるようになり、それがケレンミにしろ何にしろ、
映画の映画らしい所以だと思っています。
それに映画とは、もともとフィルム上の夢幻(ゆめまぼろし)のしろもので、
所詮は夢幻上ではありますが、
その上で、いかに楽しく観客を酔わせるかが大事と思っているので、
「ドグマ95」は私には受け入れられないしろものだったのですが、
この映画の監督のインタビューを聞いて、
何となく納得しました。
要するに、現代の映画はテクノロジーで
何でも出来るようになってしまったのですが、
「ドグマ95」はあえて制約を加えることにより、
監督にとっては、ダイエットのようなものらしいのです。
とにかく一度やるとスカットするらしいのです。
まあ監督の気分転換と言ったところでしょうか。
だからこの監督も、次は普通に映画を撮るそうです。
所で『ミフネ』とは三船敏郎のことで、
『7人の侍』の三船がオマージュされています。
映画の中でこの言葉が2人の兄弟を繋ぐキー・ワードに成ります。
(まるで映画の『レインマン』で、トム・クルーズと
ダフティン・ホフマンを繋ぐ言葉がレインマン(本当はレイモンド)で
あったように。)
それにしても日本文化と言うのが思わぬところで出てきたのですが、
北欧には、日露戦争でロシアに勝ったのを記念
(北欧はロシアの圧政の下に有った)して、
「トーゴー通り」とか「トーゴービール」(もちろん
バルチック艦隊を破った東郷平八郎の名前からです)が有るそうなんで、
意外と日本て、知られているのです。
- 『バージン・スーサイド』
フランシス・フォード・コッポラの娘のソフィア・コッポラの
監督第1作なのですが、なかなかソツの無い仕上がりになってまして、
良かったです。
話は、14歳から17歳までの5姉妹が自殺する話です。
実話に基づいた話なのですが、全く話に澱(よど)みはなく、
こう言った話にありがちな不自然さは有りません。
この映画が成功した理由の一つに、5姉妹の心情に深く踏み込んで
いない点です。
やはり自殺する人間の心情は、本当の所は分からないのではないでしょうか。
でも5人も自殺するなんて、きっと何か理由が有るはずだ、
そこから覗き根性が働き、ワイド・ショー的展開になるのですが、
この映画はそういった態度を、客観的に揶揄している風にも思えます。
最近日本でも、異常な事件が続き、マスコミは犯人達の心情を
覗こうとするのですが、でも本当に分かるのでしょうか?
昔の文集を持ち出してきて、いろいろ分かった風なことを
アナウンサーは言うわけですが、朝日新聞で精神科医
(もっとも精神科医にも2通り有るらしく、人間の心情を覗こうとするタイプ
(心理療法士やカウンセラーか?)と、
おもに人間の外側を観察し、客観的に判断し、薬でいろいろ脳みそをいじくる
(最近は精神を高揚させる薬や、不安を取り除く薬がいろいろ作られていて、
アメリカでは素人でも簡単に買えるらしい)
タイプに分かれるらしいのですが)
が警告を発していましたが、
人間の心情なんて物は、専門の精神科医でも、なかなか(それとも全く?)
分からないのに、
ちゃんとしたニュース番組がワイド・ショーのような分析を
やっていて、良いのだろうかと、本当に思いますね。
だからこの映画も、主人公達の心情を分かった風なことを描いた瞬間、
何かしら嘘っぽい要素が出てきただろうに、それを意図的に避けることで、
嘘っぽさが無いわけです。
まあ人間の心情は簡単にわから無いとして、人間の行動パターンは
比較的簡単です。例えば自殺は伝染するらしいのです。
「誘惑者」と言う小説が有りましたが、
どうも一人死ぬと、周りの人間も簡単に自殺する傾向に有るらしいのです。
なぜだか分からないですが、とにかくそういうことらしいのです。
それにしても14歳から17歳まで5人も姉妹がいると言うことは、
(映画では出てきませんでしたが)これはよほど敬虔なキリスト教徒で、
「産めよ増やせよ」を忠実に守ったとしか思えません。
- 『グラディエータ』
下記の『インサイダー』と同じラッセル・クロウが、
ローマ時代の剣闘士に扮した話なのですが、
17Kgも体重を落とし、同一人物とは思えなく、
私の奥さんは、最後まで気がつかなかったです。
でも私としてはこの役よりも、『インサイダー』や『L.A.コンフィデンシャル』の方が、
役としては合っていると思います。
100億円かけたと言うのが売りらしいですが、
130億円かけても『13ウォーリアーズ』のように
全然駄目だった映画もあるし、それは問題ではないです。
ローマ時代の町並みをC.G.で見せると言うのは新しく、
それなりに良かったのです(少なくとも『梟の城』よりは良かった)が、
やはり第1次世界大戦前の『イントレランス』や
第2次世界大戦後の『ベン・ハー』に比べると、
本当に作った方が存在感が有るように思います。
- 『インサイダー』
『ヒート』のマイケル・マン監督なんだが、
この監督『ヒート』も『ラスト・オブ・モヒガン』も
だらだらした演出で、あまり好きではないのですが、
本作はなかなか良かった。
タバコ会社の裁判の内部告発の話なのですが、
ラッセル・クロウがなかなか渋かった。
『バウンド』のジーナ・ガーショウもテレビ会社の美人重役の
役で、本当に美人だった。
所で、映画上で舞台になっている『60 ミニッツ』と言う
報道番組は、日本では『CBSドキュメント』と言う名で、
東海地方では日曜の深夜に放送されていて、
なかなか面白かったのですが、
最近やらなくなって、さびしいです。
- 『アシッド・ハウス』
なんせあの『トレイン・スポッティング』の原作の
アービン・ウェルシュの原作映画なので、
見に行きましたが、本当にぶっ飛びましたね。
これは面白い。
イギリスと言うのは、ロンドンとか湖水地方とか、
観光地だけ見ているとなんか良い街ばかりの印象なんですけど、
ちょっと荒れた町に行くと、本当にこんな感じです。
私の知り合いのウェールズに住んでいるアイルランド人の数学者も、
車の盗難が多くてかなわん、と言ってましたが、
日本で自転車が盗まれるごとく、車も盗まれるらしいです。
自転車なんて、バカでかいチェーン・ロックで電信柱にグルグル巻きに
しておいても、その部分を遺して、残り綺麗に盗まれるらしいです。
それに、良く物が壊れています。
とにかく日本に帰ってくると、日本の治安の良さにホッとします。
それでも私はイギリスが好きですが。
(日本でも、最近わけの分からない事件が
多いですが、それでも外国に比べれば、遥かにましですよ。)
- 『プランケット & マクレーン』
まあ要するに、『明日に向って撃て』の18世紀イギリス版なのですが、
製作があの『レオン』で悪い悪い麻薬捜査官を演じたゲーリ・オールドマン。
彼は伝説のパンク・ロッカーを鮮烈に演じた『シド・アンド・ナンシー』などで
物凄い演技を見せたのですが、『ベートーベン、不滅の恋』は
つまらんかったし、制作者として『ニル・バイ・マウス』も
中年のおっさんが「ニル・バイ・マウス」と言うだけの映画だし、
そろそろ正念場ではないかと思い、見に行ったのです。
出演がロバート・カーライルにリブ・タイラーで期待は
高かったのですが、イマイチな印象でした。
- 『キングズ・オブ・クレズマー』
クレズマーと言うのは、ユダヤ人の音楽、
もうちょっと正確に言うと、アシュケナジームと言われる
東欧系ユダヤ人の音楽です。
この映画は、歳老いた兄弟でクレズマー音楽を演奏する
人達を撮ったドキュメンタリー映画です。
所で、このアシュケナジーム、中世にヨーロッパの東欧で
ユダヤ教に改宗したヨーロッパ人が主体だそうで、
血筋的(ヨダヤ教は母系家族で、母方の血が絶対と
歴史の時間に習ったのですが)には、
旧約聖書に出てくる人達とは、
あまり関係が無いそうです。
ヒットラーはおもに血筋の問題でユダヤ人を大虐殺したのですが、
その殺したユダヤ人は大部分はユダヤの血筋でなく、
れっきとしたヨーロッパ系(と言う言葉が有るのかどうか、知りませんが)
のアシュケナジームだったのは、
何とも「ああ、勘違い」で、ドジもいいところですが、
殺される方は勘違いで殺されるのじゃあ、たまりません。
で、このアシュケナジームで古くから結婚式やお祭りなんかで
演奏されていたのが、クレズマーと言うわけです。
もともと東欧の血の濃いところですから、
音楽も東欧風で、我々の良く知っている曲もあります。
例えば子牛が引かれて行く「ドナドナ」とか、ベニー・グッドマンの
スタンダード・ナンバーの「素敵なあなた」とか、
ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』
(これはもちろん、ユダヤ人の物語です)の「サンライズ・サンセット」とか、
フォークダンスの「マイム・マイム」
(皆が手を繋いで中央に寄るのは、ユダヤ人が砂漠を放浪していた時、
水が湧き出てきて、その喜びを表しているそうです)とか、
とにかく世界中にユダヤ人は分布しているので、
思わぬところで聞いているわけです。
これらの曲は映画ではやりませんが、それ以外の曲も、なかなかでした。
- 『ミッション・トゥー・マース』
なんせ、あの『アンタッチャブル』や『ミッション・インポッシブル』の
ブライアン・デ・パルマが監督をするので、
『スネーク・アイズ』(もう少し、単純な話にして欲しかった)のような
ケレンミたっぷりの映画かと思いましたが、
これが以外や意外、まともなSF感動大作に成っているのです。
でまあ、気になるのが、あまりに『2001年宇宙の旅』の
パクリと思われるところが多い
(宇宙船のデザインや、宇宙船内の生活や、最後の白のイメージ)のと、
それでもなお『2001年宇宙の旅』は越えれなかった、
というところなのですが、
まあ、この映画はこの映画で、とっても面白かったです。
この映画の収穫は、今までは何を考えているのか分からないクールな
役が多かったゲイリー・シニーズが、人間らしい役をやっているところですか。
『スクリーム2』では憎たらしかったジェリー・オコーネルも、
なかなか良い味、出してます。
長身のティム・ロスは、良く宇宙服が有ったなあ、と思いますが。
- 『エリン・ブロコビッチ』
この映画でジュリア・ロバーツは20億円の出演料を手にしたのが
話題ですが、そんなことを忘れても、十分面白い映画です。
(だいたい女優の出演料は安すぎで、かつてアカデミー賞を4回も受賞した
某女優でも、単なる人気男優の4分の1だと怒っていました。)
ただの運なし女が、一躍裁判のヒーロに成るわけですから、
もっとジュリア・ロバートは無理の有ることをするのかと思いましたが、
意外に外見のドハデ差とは別に地味なのです。
この当り、スポーツで良く言われることですが、
夢は大きく、でもやることは次の1戦にコツコツあたれ、と言うことです。
なかなか地に足の付いた役で良かった。
監督のスティーブン・ソダーバーグは『セックスと嘘とビデオテープ』で
カンヌ映画祭でパルム・ドールをとったわけですが、
どうもそれ以外は、監督として印象に有りません。
脚本としては、ユアン・マグレガーが好演した『ナイト・ウォッチ』
(これはヨーロッパでヒットした『モルグ』と言う映画を同じ監督で
リメークしたものです)とか、
制作者として、『カラー・オブ・ハート』を手がけたり、
いちおういくつかの秀作とかかわりは持っていますが、
やはり監督作品を見たかったわけです。
ですから本作は、嬉しい。
所で、外国で企業や政府の陰謀が暴かれることが多いのは、
やはり内部告発が多いせいです。
日本では、バブルの頃までは、企業戦士しかいなく、
会社や組織のためなら嘘も辞さない人間ばかりだったので、
内部告発は見事に押さえ込まれていたのですが、
バブルも崩壊し、これだけリストラが進むと、
何も会社や組織が全てではない、と思う人間が沢山いるのも当たり前です。
それで日本の社会も内部告発が増えて、役所の不正や
警察の不正や会社の不正や病院の不正などが、
暴かれるようになったと言う話しです。
要するに(ほとんどの日本人は、うすうすは気がついていたが)
昔からこういう不正は有ったのですが、表面に出なかっただけで、
最近増えたのは、内部告発で表面化したわけです。
でまあ、内部機密が流出するのは上のような場合は良いのですが、
困った面もあって、NTTが民営化されて以来、
内部の士気は落ちるばかり(私は何回かひどい目に有った)で、
電話番号の情報などは、中からもらす人が多く、
インターネット上で売買されていますが、
昔マンガの「ナニワ金融道」で苦労して情報を手に入れたのも、
今では簡単に金でケリが付くのです。
- 『ナインス・ゲート』
久々の、ロマン・ポランスキー監督が悪魔を題材にした映画。
何しろ主演がジョニー・デップと『蜘蛛女』が本当に良かった
レナ・リオンなので、見に行かないわけには行きません。
まあそれでも、全盛期のポランスキー作品に比べると力は6歩と言うところですが、
この人も当り外れの少ない人なので、それなりに楽しめた。
それにしても、この人の数奇な運命を考えるとき、
未だに監督しているのが不思議で成りません。
もともとポーランド
(ポーランド時代の彼の作品については、1998年8月に有ります)
の人なので、アンジェン・ワイダのような悲劇の人生を考えてしまうのですが、
その後アメリカに渡り大成功。
ところが、女優を片っ端から妊娠させ
(そういっちゃあ何ですが、『チャイナ・タウン』にチラっと俳優としても
出ていますが、チビで...ですよお。なのになぜ、あの女優も、あの女優も...)
てアメリカにいられなくなり、
以後ずーーと、ヨーロッパで撮っているわけです。
だから女癖さえよければ、物凄い大監督
(残念ながらヨーロッパでは予算が限られる)
に成っていたかも知れないのに。
彼の力量を考えると、本当にハリウッド
(ハリウッド映画を全面的に肯定するわけではないが、彼の画風は
ハリウッドにあうと思うのです。
こんどの映画でも『ディアボロス』のような特撮を入れると、
面白いと思うのだが)で撮らさせてあげたいです。
- 『マン・オン・ザ・ムーン』
監督ミロシュ・フォアマン。
この監督さん、『カッコーの巣の上で』は本当に凄かった。
私のベストの映画10本に入るかも知れない。
ジャック・ニコルソンの演技も凄かったけど、
看護婦の人がそれに一歩も引けをとらず凄かった。
その後、だいぶたって忘れ去られた頃、こんどは『アマデウス』で
見事復活したわけです。
ところがマタマア最近、『ラリー・フリント』はそれなりに問題作ですが、
彼としてはイマイチだったわけです。
ですから本作で見事復活して嬉しい。
所で内容は、ジム・キャリーが若くして死んだ、実在のコメディアンを
演じているのですが、このコメディアンのジョークが凄いのです。
まあ。新しいと言えば新しいのですが、何しろ新しすぎて
今やっても誰も理解できないでしょう。
と言うより、人類に理解は出来ないのではないかと思います。
はっきり言うと、私はこの笑いは好きではないので、
そこは何とかして欲しかった。
- 『フェリシアの旅』
若きフェリシアと、料理好きで親切で純朴な中年男の
恋の物語かと思ったら、大間違い。
何しろ監督は、あのアトム・エゴヤン。
ただで終わるわけがないと思っていましたが、
予想を遥かに越えていました。
アトム・エゴヤンと言えば、
(制服フェチにはたまらない)『エキゾチカ』や
『スィート・ヒアー・アフター』や
『インスパイアド・バイ・バッハ、第4番』など、
話の時間系列をズタズタにした上で、
ジグゾー・パズルのように組み立て、
しかも最後に大きなどんでん返しがあると言う、
非常に凝ったことをする監督で、
しかも実験映画かと言うと、
ちゃんとエンターティメントの部分もあると言う、
大変な力量の持ち主なんですが、
本作はそのような作りは影を潜めています。
とにかく面白かった。
最後に、朝日新聞の夕刊に、本作の批評がのっていたのですが、
(どうも私見ですが)この欄はネタばらしが多い感じです。
本作もネタばらしされていましたが、これはひどいんじゃないかなあ。
私は幸い映画を見た後で新聞を見たから良かったですが、
もうちょっと考えて、書いて欲しい。
- 『オネーギンの恋文』
プーシキン原作のロシア文学を、
レイフ・ファインズが製作総指揮、主演で映画化したものです。
ヒロインのリヴ・タイラーが猫背で、ちっとも時代劇のヒロインに
思えなかったが、後半はグット良くなり、
最後の台詞は泣かせた。
にしても、ファインズの演技がピンボケで、
(私には)演技の意図が良く分からなかった。
この映画の見どころは、どこなんだろう...
- 『ファントム』
題名は平凡ですが、中身はなかなかでした。
ディーン・クンツと言うホラー小説家の原作小説を、
映画化したものです。
この人の原作を映画化したものは、どう言うわけか映画とマッチしないものが
多かったらしいのですが、本作は原作の抜群のアイデアと、
映画のスケールが上手くマッチして、
見事な作品になっています。
とにかくこのアイデア、私はマンガの「寄生獣」に相当すると思います。
それくらい面白かった。
あとそう言えば、久しぶりにピータ・オトゥールを見ました。
以下は5月に見た映画です
- 『エニー・ギブン・サンディー』
アメリカン・フットボール(以下アメフトと略す)と言うのは、
本当にエキセントリックなスポーツなのです。
テレビで見ていると、汗1つかかずにスマートな印象を
受けるかも知れませんが、実際は物凄く熱くなっているのです。
この最もエキセントリックなスポーツを、
あのオリバー・ストーンが撮影するわけですから、
『J.F.K.』のような見る麻薬になるのではないかと思っていたのですが、
意外と抑え目で、しかもシッカリとアメフトが描かれていて、
嬉しかった。
日本人は、アメフトについて、余りよく知らないので、
初めに少し解説しておきます。
なぜ、あれほどエキセントリックかといいますと、
基本的に週に1度(それこそ文字どおり、エニー・ギブン・サンディーに
やります)
しか試合がなく、1シーズン、たった16試合しかレギュラーの試合が
無いのです。(プロはその後プレーオフ、スーパーボウル、
カレッジは各種ボウル・ゲーム)
これほど試合が少ないので、大学選手権のような試合は無く、
記者の投票で大学の順位が決まります。
サッカーのようにホーム&アウェーでやるわけでもなく、
リーグ選でも、リーグ内のすべてのチームと戦うわけでは無いのです。
そんなわけで、試合が少ない分、1試合の重みが凄くあるのです。
それで、一見、華やかに見えるアメフトなのですが、
中身はまさしく軍隊そのもの。
あれはアメリカの社会を反映したスポーツではなく、
アメリカの競争社会を反映したスポーツなのです。
それに1チーム50人もいて、
その他コーチも多数、スタッフも多数なので、
選手の給料は安いです。
またサラリー・キャップ制(1チームの選手の給料の合計の上限が
決まっている)なので、大リーグのように、
給料が高沸することも有りません。
選手の平均給料は安いから、たいていはシーズン・オフは
アルバイトをしています。
何しろ、野球のように2軍は有りませんから、
1軍から落ちたら即クビ。
だから弁護士や建築士の資格を持っている選手もけっこういて、
どこかの国のスポーツ選手のように、
単なるバカだけでは無いのです。
それから、当然けがも多いスポーツです。
大抵の選手は半病人で、映画のように痛み止めを打って出る選手も、
沢山います。
何しろ競争が激しいので、油断するとすぐ消えて行きますから。
だいたいレギュラー・クラスの選手でも、6年くらいで消えて行きます。
それであと、アメフトの負の面ですが、
アメフトは基本的に「生悪説」に基づいたスポーツです。
ですから選手は、審判に見つからなければ、
どれだけ反則しても良いと教え込まれます。
もちろん、どんなスポーツでも、「ズルイ」プレーはつきものですが、
それを組織的にやっているのは、アメフトくらいな物でしょう。
だから、審判は6人も必要なのです。
あと、相手の選手がケガをしたら、そこは執ように攻めます。
情けをかけるようなことは、絶対有りません。
勝つためには何でもやります。
だから、逆にケガをしたら、必死で隠します。
あと、アメフトはドーピング検査が有りませんので、
アメリカのほとんどのプロの選手が筋肉増強剤を使っています。
ほとんど報道されませんが、引退した選手が何人か告発しています。
(私はアメリカの報道番組の「60 ミニッツ」で見ました。)
あと、これほどテレビを意識したスポーツも有りません。
なんとテレビのコマーシャルのために、
審判はタイム・アウトを延長できるのです。
(サッカーも少しは見習って欲しい。)
さらに、テレビに気を使った次のような例も有ります。
昔、ゾーン・ディフェンスが確立されて、
ロング・パスがあまり成功しなくなったので、
(ロング・パスはテレビ写りが良いから)ゾーン・ディフェンスを
禁止しようとしたことが有りました。
なんぼなんでも、それはひどいと言うことで、
その案は廃案に成ったのですが、
その後、だいぶ経ってから、パスを投げやすくするためのルール改正が
有ったので、一時期物凄く点が入る時期が有りました。
と、アメフトには、普通のスポーツにはない、
いくつかの特徴が有るのです。
でまあ、映画の話に移ります。
まず冒頭で、最高のヘッド・コーチであるビンス・ロンバルディーの
御言葉で始まるなんて、実に良く分かっている。
ビンス・ロンバルディーはスーパー・ボウルの第1回と2回を
制した時のグリーン・ベイ・パッカーズのヘッド・コーチです。
しかしまあ、今時アル・パチーノのようなヘッド・コーチって、
いるのだろうか?
今はどちらかと言うと、兄貴分タイプのヘッド・コーチ全盛時代だと
思いますよ。
あの強くて強くてどうしようもなかった日大ですら、
鬼の篠竹監督のもとでやるのは現代っ子にはいやらしく、
部員が集まらなくって、低迷しています。
もっともアメリカでも、こう言ったタイプはいなくなったからこそ、
映画の主人公になるのかも知れませんが。
所で映画で、黒人差別の話が出てきますが、
確かに存在します。
今から(確か)10年くらい前ですと、黒人のクォーター・バックなんて、
いなかったです。
カニンガムが出てきたときには、本当に驚きました。
その前ですと、映画の『ジョーイ』の頃には、
ランニング・バックも黒人はいなかったです。
(まあでも、その頃は、黒人の水泳選手やゴルフ選手やテニス選手も、
いなかったですが。)
それにしても、この映画は、試合のシーンでえらく手振れしている
ように思うかも知れませんが、実際ヘルメットをかぶった目線で見ると、
本当にああいった光景に、見えるのです。
だから実際は試合中、選手って見えてないのです。
ただ、なんかハドル
(次の作戦を伝えるために、集まること)の最中、あれだけ選手どうし喋るのは、
不可能です。
(なんぼプロはハドルの時間が少し長くても)
ハドルは、クォータ・バックが指示を出すだけで
精いっぱいだと思います。
それにライン・メンの指示でオーディブル
(相手のディフェンスを見て、攻撃を変更すること)をするのも
現実的でない気がするし、
あれだけブリッツ(ディフェンスの選手が、積極的に
攻撃の選手に突っ込んでくること)をやられたら、
普通はスクリーン・パスのような一息入れる
プレーをやって、突っ込めなくするだろうし、
まあ色々不満な所は有りますが、
それでも全体的に見ると、あのスポーツの異様性が実に良く描かれていると
思います。
- 『美少年の恋』
美少年と言うよりは美青年なのですが、
香港のゲイの男娼達を描いた映画。
なかなか出てくる人々が美しいので、
私までドキドキしてしまうのです。
香港でゲイと言えば、ウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』と言う
映画が有りましたが、あれは湿度90%の暑苦しい恋ですが、
こちらは湿度は極めて低く、あっさりした味付けが好きです。
しかし、(自称)ジェームス・ディーン似の歌手は、
何とかして欲しかった。
- 『Go!Go!L.A.』
女性を追っかけて、スコットランドの田舎からロス・アンジェルスに出てきた
青年の目から見た、おかしなアメリカの姿とでも言いましょうか。
あの『レニングラード・カウボーイ、アメリカに行く』の
フィンランドの監督のミカ・カウイスマキが撮った映画。
しかも、『バッファロー66』のヴィンセント・ギャロや
ジュリー・デルフィーも出ているので、
楽しみにしていたのですが、
私は何となく、のれなかった。
- 『どら平太』
確かに、最近こんな痛快な時代劇は無かったですわ。
もうスカッとするし、最後まで笑わかしてもらいました。
で、脚本が黒沢明で原作が山本周五郎と言うことになると、ついつい
(私の中での黒沢映画の一番である)『椿三十郎』と
比べてしまいます。
まあ実際、どちらも良く出来た映画なのですが、
あえてどっちが面白いかと言うと、
黒沢明に敬意を表し、
最後の決闘シーンの分だけ『椿三十郎』と言うことに、
しておきましょう。
もともと『椿三十郎』の三十郎のキャラクターは、
これも山本周五郎原作、黒沢明脚本の『雨あがる』のような
キャラクターだったのを、
前年に世界的にヒットした『用心棒』のイメージで
やってくれ、と言う映画会社の要請で、
ああなったらしいのですが、
この『どら平太』は、三船敏郎と比べると役所広司は弱いかな、
と言うイメージも有りますが、
彼は『うなぎ』でも、
血だらけに成りながらもどこかヒョウヒョウとした雰囲気が有って、
それはそれで、良いのではないでしょうか。
最後に今あげた時代劇に点数を付けると、
『椿三十郎』120点、『雨あがる』90点、
『どら平太』92点と言う辺りだと思います。
- 『スティル・クレイジー』
70年代のロック・バンドが、昔の夢よもう一度、
で再結成する話。
ただ音楽が、名曲目白押しの70年代のバンドと言う設定ならば、
もうちょっと良い曲が欲しい。
曲が物足りないので、映画にも乗れなかった。
まあでも、確かに70年代のロック・バンドの雰囲気はでていた気もするが。
ハモンド・オルガンの上にミニ・ムーグ・シンセザイザー
(しかし、どこで使っていたのだろうか?あれは
飾り(キース・エマーソンは、「こけおどし」でムーグ3を置いていた)
だったのだろうか)を置くのは、
当時のキーボードの定番ですが、
70年代後半になって、もっと色々と便利なシンセサイザーが出てきて、
ミニ・ムーグはあまり使われなくなったと思います。
(今のようにビンテージで復活するのは、もっとズーーート後です。)
- 『ロメオ・マスト・ダイ』
うーーん、久しぶりのリー・リン・チェンことジェット・リー。
彼は11歳で中国の武術大会で優勝して以来、4年連続優勝と言う
輝かしい経歴を引っ提げて、映画界に乗り込んできたわけです。
実際当時、彼の武術大会のフィルムを見た時、
彼がいかにずば抜けていたのか、良く分かりました。
(さすがに、ジャッキー・チェンの『酔拳』が、お遊びに見えました。)
その彼が、今から20年ほど前、『少林寺』と言う映画で
デビューしたときの衝撃たるや、凄いものが有りました。
何しろこう言った経歴の武術家が映画に出るのは、
前例が無いことでした。
(ブルース・リーも「武術家」と言うことでしたが、彼のファンには
申し訳ないですが、私には格が違うように思えました。)
それが、それから20年近く、
彼には物凄く熱烈なファンが多いにも関わらず、
彼は何をやっていたのでしょうねえ。
『阿羅漢』は『少林寺』のイメージで消され、憶えていないし、
ツイ・ハークの『ワンス・アポンナ・タイム・イン・チャイナ』も
印象にないし、どうしちゃったんだろう、と思っていたら、
やっとこの間、『リーサル・ウェポン4』で悪役で復活して、
存在感の有るところを示しました。
私の持論は、男優は悪役で真価を発揮する、と思っていましたから、
本当に嬉しいです。
まあ、内容はそこそこ面白いし、『マトリックス』で多用された
モーフィングと言われる技術や、
昔「必殺仕置人」で山崎努が「必殺骨はずし」で、
レントゲン映像を見せたような仕掛けも有りますし、
そこそこ映像も楽しめます。
ただ彼の前途が洋々か、と言うと、これはクエッション・マークが付きます。
最大に懸念されるのは、彼が見るからに強すぎる、と言うことなのです。
だから、汗をかかないし、絶体絶命にも成らない。
同じような俳優に、スティーブン・セガールがいますが、
彼も強すぎるとは言いませんが、アクションで汗をかかないのです。
これが、ジャッキー・チェンだと、本当に痛そうだし
(と言うか、NGシーンを見ると、しばしば死にかけているし)、
強敵に対して本当に一生懸命、と言うのが伝わってきて、
それが彼の魅力だと思います。
(それにしても、スティーブン・セガールもどうなっちゃったんだろう。
警察の武術指南になるために、本当に警察学校の試験を受けたそうですが、
もう映画は引退なんだろうか。)
だから、リー・リン・チェンの本当の正しい使い方は、
『リーサル・ウェポン4』のような悪役
(それも史上最悪の悪役)が良いと思います。
- 『太陽は僕の瞳』
それにしても、なんでイランでは、こんなに優秀な子供映画が
次から次ヘと生まれるのでしょう。
まあ検閲の厳しい国なので、逆に子供映画くらいしか作れないのでしょうけれども、
とにかく粒が揃っている。
本作も、監督が『運動靴と金魚』のマジッド・マジディーなので、
期待して行ったのですが、期待以上でした。
要するに貧しい家庭で、全盲の子供が必死に生きるのですが、
なんかそんなことはどうでも良く、
この子の姿をカメラが追うだけで、ああ全盲と言うのは
こういうことなんだなあ、と言うのが、実に良く分かるのです。
その辺の撮影の仕方が上手です。
だから、彼の心象風景が分かってくるので、
よけい彼の訴えが胸を打ちます。
(ほとんどの人が泣いていた。)
『運動靴と金魚』でも、よくも運動靴が無くなっただけで、
これだけストーリが出来るもんだ、と感心しましたが、
本作も、ストーリが抜群で、とにかく面白かった。
- 『風雲ストーム・ライダース』
香港の人気時代活劇マンガの映画化らしいのですが、
安っぽい路線で行くのか、『マトリックス』のような
絢爛豪華で行くのか、いまいち中途半端な気がした。
まあ、ミエミエのワイヤーで吊ったアクションも、それなりに楽しいのだが、
私にはチョット...でした。
ちなみに、確か、この手の映画には、王家衛(ウォン・カーウァイ)が監督して、
クリストファー・ドイルが撮影した『東邪西毒』(邦題『楽園の瑕』)と言う映画が
有ったのですが、
あっちの方がハチャメチャ度がずば抜けていて、
しかもクリストファー・ドイルの撮影が実に秀逸で、
私は個人的には『東邪西毒』の方が好きです。
それにしても、ソニー・チバ(千葉慎一)って、まだ現役だったのですねえ。
- 『SLAM スラム』
要するに、SLAMって、詩の朗読のことらしいのだが、
これが物凄い力が有るのです。
なかなかこの力が、出口の無い迫害されているアフリカ系アメリカ人の
救いになりそうで、嬉しいのだ。
それにしても、昔はこう言った映画は、救いがないか甘ったるい救いしかないか、
どっちにしても納得できなかったけど、
この映画とか『アメリカン・ヒストリー・X』とか、
何とか救いの一歩手前ぐらいには、行けたかも知れない。
- 『ロゼッタ』
去年、大方の予想を裏切り、見事カンヌ映画祭でパルム・ドール
(グランプリ)を受賞したベルギーの映画。
それにしても、この映画がパルム・ドームに値する映画かどうかは
議論の分かれるところですが、この映画が選ばれること自体が、
カンヌ映画祭の際だった特徴なのだと思います。
カンヌ映画祭の場合、審査委員が独断
(今回も審査委員長は、あのクローネンバーグだものなあ)で決めるので、
時々とんでもないものが選ばれますが、
それこそがカンヌであります。
それでも、とんでもないけれどもさすがカンヌと
思わせる力がどの映画にもあります
(ここら辺りが、アカデミー賞と異なる所です)から、
とりあえずパルム・ドールの映画は見ておいて損はないと思います。
そもそも、カンヌ映画祭は、持ち込まれた400本からの映画から、
主催者が一人で20本の映画に絞り込むので、
もう選ばれただけで力のある映画なのです。
だからパルム・ドールかどうかは、あまり意味がないのかも知れません。
さて映画ですが、主人公ロゼッタの物語。
彼女にないもの、金、職業、友達。
反対に有るもの、持病、ろくでなしの母親、まっとうな職業倫理。
(実際、良くこんなろくでなしから、
こんなまっとうな職業倫理感を持った娘が出来たのか不思議です。)
ところが、彼女のエネルギーたるや、もう暴力的ですらあるのです。
まあ、私としては、こう言った友達がいたら、あまり付き合いたくないです。
でも、だからこそ、彼女は何をしでかすか分からないので、
目が放せないのです。
でもまあ、やや退屈なところもあり、
もう少しストーリ性が有っても良いのではないだろうか?
最後に、ベルギー人って、本当にベルギー・ワッフルを
食べるのですねえ。(それも大量に。)
- 『理想の結婚』
オスカー・ワイルドの原作の映画化。
要するにワイルドは、ビクトリア時代、新興勢力のブルジョワ階級に押され、
衰退して行ったダンディズムを、小説で復活させたわけですが、
かんじんの主人公のルパート・エベレットが、
すっかりおじさん顔で、ちっともダンディーに見えないので、
あまり映画も面白くなかった。
- 『オール・アバウト・マイ・マザー』
スペインの大変な才能の監督、ペドロ・アルモドバルの最新作で、
この映画は今年のアカデミー外国映画賞を受賞しました。
この監督の映像の生命感には独特な力強さがあり、
『ライブ・フレッシュ』なんか大好きですが、
本作も、独特な生命感にあふれていて、
生と死の描き方が上手です。
- 『アメリカン・ヒストリー・X』
監督はイギリス出身の新人トニー・ケイ
(どこかで聞いたことが有るような名前ですが)ですが、
またこれは、大変な才能が表れてきたものだ、と言う映画。
映画の内容も、人種差別の問題を扱っているのですが、
こう言った映画にありがちな、ドロ臭さとは一線を引き、
たいへん聡明な感じがします。
この監督さん、コマーシャルの世界ではそうとう有名らしいです。
だから映像もコマーシャルの人らしく、
高速度カメラを多用し、
大変にシャープで美しい映像です。
この映像を見に行くだけでも、価値が有りますが、
それに加え、エドワード・ノートンの演技が素晴らしい。
エドワード・ノートンは、『ラリー・フリント』の頃は
「こんなおぼっちゃまに、こんな大事な裁判を任せて大丈夫?」
と言う感じで、「君はウッディー・アレンの
『世界中がアイ・ラブ・ユー』のように、
脳天気に歌い踊っているのが、似合っているのではないか?」と
思ったものですが、その後『ラウンダー』あたりから
グッと引き締まり、『ファイト・クラブ』では
見事な演技でした。
そして本作は、エドワード・ファーラングと共に、
長くその演技は残るでしょう。
それにしても、この映画の監督は、
始め90分に編集したらしいのですが、
興業上の問題で、配給元がもっと長い映画を望んだらしいです。
普通、監督と制作者がぶつかる場合は、これと逆な場合
(つまり、制作者は短い映画を好みますが、監督は自分の思い入れの
強い部分をドンドン付け加えて、ダラダラしたディレクターズ・カット
が出来上がることが、良くありますので、私は監督完全版は、
あまり好きでは有りません)が
ほとんどなのですが、これは例外なのです。
思うにこの監督は、本当に美的センスが尖っているので、
自分の本当に好きな映像だけを繋いだら、
短くなりすぎたのではないでしょうか?
それでどうなったかと言うと、
長いバージョンの映画を強引に作って
(一説には、エドワード・ノートンが編集したらしい)、
監督を無視して公開しようとしたので、
監督は名前を削除して欲しいと、申し出たらしいのです。
そんなわけで、監督は映画のプロモート何かには
一切関わっていないのですが、
それにしても元のフィルムが素晴らしいから、
まあどういじくっても、素晴らしい映画には成ります。
- 予告編の音楽『ボーイズ・ドント・クライ』
今年のアカデミー賞の主演女優賞になったヒラリー・スワンクの
『ボーイズ・ドント・クライ』が、もうすぐ公開されますが、
その予告編で使われている音楽は、
70年代のロック・バンド、ハンブル・パイの曲なのですが、
曲名が出てきません。
- 『ガラスの城』
あの、素晴らしい超大作『宗家の三姉妹』を作ったメイベル・チャンの
映画なのですが、『宗家の三姉妹』ほどは、面白くなかった。
70年代と90年代、異なる世代の2つの恋が、
同時進行で進みます。
- 『ベリー・バッド・ウェディング』
実生活で90日の牢屋生活を送ったクリスチャン・スレータが、
その実生活を引っ提げて復帰第1作で、
シャレにならない映画に出てしまった、と言う所でしょうか。
それにしても、女は恐い。
- 『パゾリーニ・スキャンダル』
私が人生で最大にショックを受けた映画と言えば、
まだ AV も裏AV も無い頃に見た『ソドムの市』でしょう。
何しろ、数多くの少年少女が、素っ裸で、***や***なんですから、
凄いものが有りました。
原作は、もちろんマルキド・サドなんですが、
何しろ他の彼の作品と違って、これは牢屋の中で限られた紙に、
自分の妄想を小さな字でびっしりと書きためたものです。
ですから、内容も支離滅裂なのですが、
彼の妄想が一番良く出ていると言われています。
で、この監督のパゾリーニが、その後謎の死を遂げるのです。
この映画は、死ぬ前を描いたものですが、
私が聴いている噂とは違っていました。
私が聴いた噂は、ホモダチの少年に、三角関係のあげく、
殺されたという物です。
まあ、どっちにしても、グチャグチャですね。
- 『イグジステンズ』
うわーーー、デビッド・クローネンバーグだ〜〜〜〜、と言う映画。
久しぶりに有機体的彼的な映画を見たような気がします。
交通事故フェチと言う全く新しい分野を開拓した『クラッシュ』の
ようなインテリ映画(か?)も良いですが、
やはり両生類ゲーム機を脊髄に直結すると言うアイデアは、
クローネンバーグそのものです。
ただ、私の趣味を言えば、もっとエロでグロでも良かったような気はしますが。
出演者のジェニファー・ジェイソン・リーも、本当に存在感が有りますねえ。
彼女は昔は単なるかわいこちゃんだったのですが、
『ベルリン最終出口』あたりから一気に存在感の有る役者になって、
『黙秘』などは最高でした。
その他、ジュード・ロウ、ウィリアム・デフォー、
わたし好みの濃い役者が目白押しです。
- 『アメリカン・ビューティ』
とにかく、やっと話題作が見れて嬉しいです。
まあ『シックス・センス』や『グリーン・マイル』の
ような大傑作は期待していなかったけれども、
それなりに優れた秀作だと思います。
私個人的には、ケビン・スペイシーのたるんだ顔が、
何ともいえず良かったですが、
アネット・ベニングの毒が有りすぎる演技も好きです。
役があまりにプロト・タイプ過ぎると言う言い方も有りますが、
私はこのあざとさこそがフィクションだと思っていますので、
ここまであざといのは、好きです。
それにしても、今年のアカデミー賞は、やけにアネット・ベンングが
出ていましたけれども、今年は彼女の年なのでしょうか?
やっと DreamWorks も CastleRock などと肩を並べた感じですねえ。
以下は4月に見た映画です
- 『マーシャル・ロウ』
デンゼル・ワシントンにアネット・ベニングにブルース・ウィルスと、
俳優陣は申し分無いのに、
なぜかわくわくしてこないのは、どうしてでしょうか?
一つは、アメリカで戒厳令と言うことは、
それがよほどのことなんでしょうけれども、
その「よほどのこと」が、
確かにひどいことではあるけれども、
何となく私には説得力がない。
まあ、面白さも中くらいかな、です。
それにしても、今年はアネット・ベニングの年なんでしょうか?
私にとって彼女は、
『バグジー』でのウォーレン・ビューティとの競演と
その後の彼との結婚くらいなのですが、
映画自体が印象にない映画なので、
要するにどうでも良い俳優さんだったのです。
ところが今年のアカデミー賞授賞式で、
何度彼女の顔が大写しになったことやら。
もちろん『アメリカン・ビューティー』絡みなのですが、
その他でも、ウォーレン・ビューティが特別賞をとった時など、
本当に良く大写しになっていました。
これは去年のグィネス・パルトロウのように、
ハリウッド一押し女優と言うことなのでしょうか?
- 『ザ・ビーチ』
うーーん、この映画は面白い映画なのだろうか?
映像は確かに綺麗だし、音楽はデビッド・リンチの
すべての音楽を担当しているアンジェロ・バダラメンティで、
なかなか来ているし、
そう悪い映画ではにのですが、
なんせ監督が『トレイン・スポッティング』のダニー・ボイルで
主演がデュカプリオと言うことを考えると、
もうちょっと来ていても良いような気がします。
要するに、何か薄っぺらいのですが、
『トレイン・スポッティング』の時は、
その薄っぺらさが映像と相まって、
なかなかの効果を出していたわけです。
ところが本作、いちおう大作を狙った分、
その薄っぺらさが楽園の薄っぺらさにつながり、
何となく後味の悪さが残るのです。
それと、デュカプリオにここまでやらせるのならば、
もう一味、毒のある演技でも良かったのではないかと思います。
彼の中途半端さが、
全体の中途半端に見えてしまうのです。
それにしてもダニー・ボイルも、
『普通じゃない』っていう普通な映画を作ってしまうし、
本作も中途半端だし、
『トレ・スポ』の時が一番良かったなんて
言われるのは、やなんですが...
- 『スペシャリスト』
ドイツ・ナチスで、ユダヤ人の虐殺に大きな役割を果たしたアイヒマンは、
第2次世界大戦後に南米に潜伏していたのですが、
1960年イスラエルの諜報機関によって逮捕され、
イスラエルで裁判が行なわれ、絞首刑となりました。
その裁判を写したフィルムが、350時間分も発見され、
この映画はそのフィルムを繋いだドキュメンタリー映画なのですが、
デジタル処理が使われ、なかなかの出来になっているのです。
それにしても、ナチスと言うのはしぶといですねえ。
これが「遠山の金さん」ならば「恐れ入りました」で終わるのですが、
とにかくアイヒマンは決定的証拠を示されても、
徹底的に粘るのです。
それと、彼らは確信犯だと言うことも、良く分かりました。
この辺りが、日本の軍人と、大きく違うところではないでしょうか。
もちろん例外もありますが、日本の軍人は、
「あー、中国で戦争になっちゃったー、どうしよう」と
言っている間にドンドン戦場が広がって、
いつのまにかナアナアで戦争をやっている。
戦争と言うのは、始めるよりも終わる方が遥かに難しいと言うのが、
軍人の常識ですが、どうやって終わらせる
(講和条約を結ぶのか、中国全土、アメリカ全土を完全に
占領する)のか、考えた形跡すらない。
それで、終わってからの言い訳が、
「日本のためにやった」
「アメリカに追い詰められて、他に選択肢がなかった」
と言うのですから、情けないですが、
これが私が気に食わない理由を、述べましょう。
まず、「日本のためにやった」と言うのが有りますが、
本当でしょうか?
どうも軍人連中が、この当りのこと
(戦争を行なうと、どのように日本のためになって、
それはやらない場合に比べ、どのくらい良いのか、というようなこと)
を本気で議論したとは思えない。
ただ(山本七平流に言えば)「空気」で戦争やっていたとしか、
思えないのです。
まあ軍人に限らず、日本人は何か1つのスローガンの
空気に包まれると、誰もそれに反対できなくなるのです。
例えば幕末の「尊皇譲位」でも、あとからの幕末の志士の回想で分かることは、
要するに皆良く意味も分からず、使っていたらしいのです。
学生運動華やかな頃、「安保(再)締結反対」と言っていたのですが、
あれは新しい安保の方が日本に有利なのに、
締結せずに古いままの方が良いと言う意味だったのでしょうか?
これも学生が議論した形跡は、有りません。
最近の銀行不祥事、警察不祥事、官僚不祥事、
昔の企業の不祥事、政治家の不祥事、
どれもこれも(田中角栄以外は)その組織の中の空気に流され、
ナアナアでやってきたことで、
別に確信犯では無いところが、情けない。
とにかく皆、自分の頭で考えず、空気に流され、
善悪の区別がつかなくなっている。
そして捕まれば「皆やってる」と言う小学生の理屈を言う。
本当に大脳皮質が有るのでしょうか。
まるで爬虫類です。(と言うと爬虫類に失礼か?)
だから、私は日本は先進国の中では、
一番ファシズムに近い国だと思っています。
今は餓死者がでると言うほどは、まだ貧しい国ではないので、
何とか持っていますが、
今の100倍くらい貧しい国になれば、
あっと言う間にファシズムだと思います。
あと、戦後に戦犯が言うのに、
「アメリカに追い詰められて、他に手だては無かった」と言うことですが、
この当りは外務省が無能と言うことでしょうねえ。
日本の外務省の能力の低さは、世界的に有名ですから。
例えば、真珠湾攻撃のとき宣戦布告が送れて、
日本が卑怯者呼ばわりされたのは、
前日大使館員が宴会やっていて遅れたと言う、
信じられない事実が有るのですが、
誰も責任をとっていません。
当時の状況から言えば、例え日本から何も言ってこなくても、
一人前の外交官なら、雰囲気で察知して、
臨戦体制でなければいけないと思うのですが、
本当に脳天気な連中ですねえ。
あと自衛隊の人が言ってましたが、
外交官の危機管理能力は低く、
外交官から秘密がばれたとしか思えないことが多々有るので、
大事なことは彼らには話せないとか、
信じられない話が有ります。
湾岸戦争のときには、あの辺の大使が、
有給休暇を取って、エジプトに逃げていたらしいです。
たぶん他の国では厳しく処罰されるのでしょうけれども、
外交官どうしかばって、日本では問題となりません。
この当りは、戦時中に陸軍士官学校出身者どうしがかばい有って、
ナアナアでやっていたのが、日本が作戦負けした原因と言われているのと
似ています。
良く、日本はアメリカに物量作戦で負けた、と
信じられていますが、
アメリカに物量作戦で負けるのは、太平洋戦争の後半でして、
前半はそれほど物量で劣っていたわけではないのに、
作戦で負けたと言う、自衛隊の人の研究が有ります。
とまあ、映画とは関係の無い話ばかりなのですが、
要するに言いたいことは、ナチスと言うのは、
日本のなあなあ軍人とは違い、確信犯でしぶといと言うことです。
- 『ボーン・コレクター』
フィリップ・ノイス監督の猟奇殺人物映画。
この監督、『硝子の塔』はいまいちだったけど、
『今そこにある危機』や『パトリオット・ゲーム』
はたいへん面白かった。
(ちなみに「パトリオット」はアメリカ人の発音では、
「ペイトリオット」としか成らないと思うのですが...
ちなみにアメフトのチームに「ペイトリオッツ」と
言うのが有ります。)
主演のデンゼル・ワシントン
(それにしても、ワシントンがリンカーン
(と言う名前の)の役をやるなんて。
アメリカに留学した人に聴いたら、
黒人は息子に立派な人になって欲しくて、
こう言った名を付けることが多かったそうです)も
凄いけど、
あの大根役者のジョン・ボイド
(『真夜中のカウボーイ』は良かったけれども、
あとはボーとした役が多い)の娘、
アンジェリーナ・ジョリーがこんなに上手だなんて。
彼女は今年のアカデミー賞で、
『17歳のカルテ』で主演女優賞を取りました。
映画の感想としては、こう言った猟奇物の映画は、
ここのところ流行っていますが、
『羊達の沈黙』や『セブン』以上の映画はなかなか出てきません。
本作もこれらの映画に比べれば、衝撃度は足りませんが、
その分、主人公達が芸達者で、それなりに楽しめます。
ストーリも、マアマア良く出来ています。
- 『NYPD 15』
題名はニューヨーク15分署の意味で、
そこはチャイナ・タウンで、チャイナ・マフィアの抗争と
それを追う刑事を描いた映画。
で、主役がチョウ・ユンファ。
まあ予想通りその演技と来たらクサイことクサイこと...
ハリウッドで撮った映画だけれども、香港映画そのものなのです。
ただ監督が、あまり力量の無い人で、
その分チョウ・ユンファの臭さも発揮出来ずに、
それがほどほどの映画に仕上がって、
ちょうど良いかも知れない。
それよりも競演のマーク・ウォールバーグは、
ここのところ、巨大な・・・の持ち主のポルノ・スターを演じた
『ブギー・ナイト』や、『スリーキングス』で
御機嫌な演技を披露してくれていて、
『ビッグ・ヒット』の腑抜けたのとは大違いで、嬉しいです。
- 『真夏の夜の夢』
言わずと知れたシェークスピアの原作を、「恋の闇、愛の光」や
『素晴らしき日』のマイケル・ホフマンが監督した映画。
俳優陣も、
私の大好きな『予告された殺人の記録』ではアラン・ドロンの
息子と共に竹宮恵子のマンガに出てきそうな典型的美少年が
すっかりおじさん顔に成ったルパート・エベレット、
相変わらず美しいソフィー・マルソーに、
妖精の女王様がピッタリのミッシェル・ファイファー、
脇役のケビン・クラインもたっぷり見せてくれて、
テレビ・ドラマ『アリー・my・ラブ』のキャリスタ・フロックハートも
映画専門の俳優を向こうにまわして一歩も引けをとらず、
なんと言っても『キャメロット・ガーデンの少女』や
『グリーン・マイル』の凶悪な殺人鬼役で芸風の広いところを
見せてくれたサム・ロックウェル
(最後の映画中劇で、女形を見せてくれた人)。
とにかくこれだけ芸達者な俳優を集め、面白くないわけがないのですが、
これがどうにもこうにも、今一つパンチが足りないのです。
何が悪いのでしょうかねえ。
『真夏の夜の夢』と言えば、
美内すずえのマンガ『ガラスの仮面』のマンガ中劇で、
主人公の北島マヤが演じるパックが印象的だったのですが、
この映画のパックは、全くさえません。
まあ、この映画の唯一の見どころは、
フェリーニゆかりのイタリアのチネチッタ・スタジオで、
いかにもフェリーニの昔に戻ったような
セットの使い方でしょうか。
ちなみに、私の一番好きなシェークスピアの映画は『十二夜』です。
逆にあまり好きでないのは、ケネス・ブラナーやエマ・トンプソンが
喋りまくる、シェークスピアの映画です。
- 『遠い空の向こうへ』
素晴らしい映画なのに、この題名のセンスの無さは、どうしたことか。
これではまるで、アイドルの曲の題名ではないか。
原作の「ロケット・ボーイズ」か、
アメリカでの映画の題名の「オクトーバ・スカイ」または
「10月の空」のままの方がよっぽど良いと思うのですが。
日本の配給会社の人が考えた題名だと思いますが、
何とか成りませんかねえ。
とにかく私は素直に何回も泣けた。
ストーリはそう凝った所も無く、
まあ言ってみれば、30分先に何が起こるかは、
だいたい分かりますが、
それでも泣けてきて、そういった先読みをしながら
(不純に)映画を見ている自分を、恥じる気持になりました。
手製小型ロケットを飛ばすことに、夢を託す少年達の物語なのですが、
夢の前には、当然現実と言う大きな壁が有ります。
石炭のとれなくなった炭鉱、寂れて行く町、
頑固な父親やアル中の父親。
それらの問題は子供たちにとっては、
あまりにも大きな問題です。
良く「夢」と言うことが言われますが、
本当に夢を語る資格のある人は、どれくらい有るでしょうか。
まあ私の周りでは、「夢」とは宝くじとか、
車とか、旅行とか、何か違う感じがするのですが。
所で、バブルの頃から、学生の科学離れが言われてきましたが、
それはコンピュータなどによって世の中がブラック・ボックス化してきて、
科学が見えにくくなってきたからです。
(コンピュータを自作でもすれば別ですが)
私が子供の頃は、NHK教育番組で「子供の科学」と言うのが有って、
そこら辺に有るもので、放射能測定器やミクロン単位で物の厚さが
計れる測定器などを作ったものです。
でまた最近、バブルもはじけ、しっかり足を大地につけなければいけないと
思われてきたのか、物作りが見直されてきているようです。
私は国立豊田高等工業専門学校(略して「高専」)に勤めていたので、
ロボット・コンテストは毎年ワクワクして見ています。
あれが人気が有るのは、技術と言うものが、
実に分かりやすく目に見えるからでは無いでしょうか。
さらに言わせてもらえば、
ロボット・コンテストの起源はアメリカの某大学ですが、
日本の先駆けは、NHKの高専大会でして、
そのあと大学や工業高校なども開かれているようですが、
やはり一番面白いのは、高専だと思います。
やはり工業高校では、使える工作機械が限られているので、
どうしてもロボット自体が見劣りします。
この映画でもそうですが、やはり本物の工作機械で作るのは、
大事なのです。
(でも断っておきますが、私は工業高校がどの程度の
工作機械を持っているかは、あまり知らないので、
テレビでロボット大会を見ての推測です。)
大学生は、(例外は多々有るでしょうし、ひいき目かも知れませんが)
高専生の方が情熱が有るように思えます。
つまり高校生の情熱と、大学の機材の良いところがミックスしたのが、
高専なのです。
(しかし、高専大会も色々な疑惑(技官や近くの工場の人が
実質上作っている学校が有るとか、規定の値段内では入手不可能な
強力モータを、近くの工場からタダ同然で譲ってもらったとか)があるらしいです、
良く知らないけど。)
- 『ヒマラヤ杉に降る雪』
工藤由紀ちゃんが、
(松田聖子と異なり)
ちゃんとハリウッドのオーデションを受けて、
出演した、(あの名作『シャイン』の)スコット・ヒックス監督の映画。
この映画は、実に深みのある素晴らしい映像なのです。
こんな美しい雪景色は見たことがない。
例えば去年の『ポッポや』辺りと比べても、
全く描き方の深みが違う。
『ポッポや』の雪はただ白く雪をそのまま撮っただけなのに対して、
本作はまるで水墨画のような美しさなのです。
(しかも環境に優しく食べられる人工雪も、大量に使われたらしい。)
この色の深みは、『バグダット・カフェ』や『ファイヤー・ライト』に
匹敵すると思います。
それだけでも見に行く価値が有るのですが、
ストーリはアメリカの日系人差別と殺人事件の話なのですが、
なかなか興味深い内容で、面白かったです。
まあ工藤由紀ちゃんは、ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』で
カンヌ映画祭で最優秀芸術貢献賞を取っているから、
いちおう向こうでは名前が通っているのですが、
それでもチャンとオーデションを受けているから立派です。
それにしても、ハリウッドの主役の扱いと言うのは、凄いですねえ。
契約のときに自分の犬を連れて行く、と言うことに成ったので、
ホテルはもちろんスィートなのですが、
ちゃんと犬も泊まれる所らしいです。
しかし、今年のアカデミー賞で、この映画が全く出てこなかったのは、
やはりアジアの話はハリウッドでは無視されると言うジンクス通りだったですねえ。
要するにハリウッドの人間は、ユダヤ人の人種差別
(ハリウッドはほとんどがユダヤ資本で、俳優も
白人のような顔をした隠れユダヤ人が多い)や、
アフリカ系アメリカ人の人種差別の問題には敏感なのですが、
アジア系アメリカ人の差別問題は、
なぜか無視されるのです。
どうしてなのでしょうか?
だから駄目だろうなあ、と思っていたのですが、
やっぱり駄目だったです。
- 『スリー・キングス』
確かに、これは面白い新感覚戦争映画ですわ。
私は戦争をまじめに扱っていない映画は嫌いなのですが、
なかなかこの映画は、奥深いところが有る。
話は湾岸戦争後、サダム・フセインがクェートから持ち帰った金塊を、
ジョージ・クルーニが探しに行くと言う、
ドタバタ・コメディーで始まるのですが、
なかなか一筋縄では行かないストーリなのです。
だいたいが、アメリカがイラン国内の反体制派を支援しながら、
それを最後に見捨てたと言うのは、
なかなか有りそうです。
私たちは、アンジェイ・ワイダ監督の『地下水道』などで、
ワルシャワ蜂起(第2次世界大戦中、
ナチスに占領されたワルシャワで、ソ連が後押しするから、
と言うことでポーランド人がナチスに対して蜂起したのですが、
結局ソ連軍は来なくて、多数のポーランド人が死んだ事件)
でソ連を非難するのですが、
まあアメリカも同じことをやっているわけです。
以下は3月に見た映画です
- 特別編『アカデミー賞』
今年もアカデミーの季節で、
そして今年も『なぜ?』の連発でした。
だいたいが『シックス・センス』と『グリーン・マイル』が
全く選ばれなかったのは、誰が考えたっておかしい。
もっとも『シックス・センス』は公開が早かった
(アカデミーは前の年の1月から12月まで公開された映画から選ぶので、
後に公開される方が有利と言われている)とか、
監督がインド人で、アジア系の映画は圧倒的に不利
(逆にイギリス映画は、アメリカ人のイギリス・コンプレックスで有利で、
去年の『恋に落ちたシェークスピア』はそれが原因と思われる)だとか、
色々考えられます。
しかし『グリーン・マイル』は
作品賞か監督賞か助演賞の内1つくらいはとっても
おかしくないと思いますけれどもねえ。
まあしかし、結局アカデミー賞と言うのは、
アメリカのハリウッドに住んでいる映画人の気まぐれで決まる賞、
と言うことなんでしょうねえ。
作品、監督、主演、撮影、脚本と、主要な部門をほとんど受賞した
『アメリカン・ビューティ』。
でも公開が待ちどうしいかと言うと、そうでもないのです。
去年の『恋に落ちたシェークスピア』もそうなのですが、
こんなに賞を取ると、『グリーン・マイル』よりも凄いことを期待してしまいますが、
よしんば同じ位だったとしても、落胆するでしょうねえ。
同じことは、脚色賞と助演男優賞を取った『サイダー・ハウス・ルール』にも
言えます。
助演男優賞を争った『シックス・センス』のぼうやや、
『グリーン・マイル』の巨人より、
本当に優れているのでしょうか?
これがもしアカデミー賞を取っていなかったら、
別にどうってこと無いのでしょうけどねえ。
順当な所では、外国映画賞のペドロ・アルモドヴァル監督の映画。
彼の『キカ』や『ライブ・フレッショ』なんか大好きだから、嬉しいです。
音楽賞の『レッド・バイオリン』も良いですねえ。
そして美術賞の『スリーピ・ホロウ』。抜群です。
『マトリックス』が音響賞、特殊効果賞、編集賞を取ったのも、
当然です。
特別賞にアンジェン・ワイダ
(『灰とダイヤモンド』や『地下水道』や『コルチャック先生』も
好きですが、
私が一番好きなワイダの映画は『大理石の男』です)が
受賞したのは当然過ぎるくらい当然ですが、
もう1つの特別賞に、ウォーレン・ビューティが受賞したのは、
納得できません。
確かに『レッズ』は、東西冷戦真っ盛りの時代に、
アメリカ中の映画館で共産主義をたたえる「インターナショナル」が
かかったんですから、凄いものが有りますが、
その後『ディック・トレイシー』とか『バグジー』とか、
どこかふぬけな映画ばかりで、私の趣味には合いません。
最後に余談ですが、
過去の映画音楽を振り返る所で、
初めに『真夜中のカウボーイ』の「噂の男」をやってましたが、
なんかあの映画を思い出すと、物凄くジーンと来るものが有ります。
とにかく初めは「噂の男」の明るい曲なのに、
どんどん悲惨な話になって、
最後ダフティン・ホフマンが長距離バスの中で
オシッコを洩らしながら死んで行くシーンが記憶に蘇ります。
- 『グリーン・マイル』
やっと話題作が見れて嬉しいです。
それにしても、監督があの名作中の名作『ショーシャンクの空に』を撮った
フランク・ダラボン。
原作も『ショーシャンクの空に』のスティーブン・キング。
内容も同じ刑務所と来れば、
(朝日新聞に沢木耕太郎さんも書いていたけど)
なかなか歩が悪いのではないか、と思われたのですが、
本作も物凄く良かった。
(ただ名作中の名作『ショーシャンクの空に』と比べて
どちらが凄いか、と言うのは、難しいですが、
私の好みでは『ショーシャンクの空に』の方が、ちょっと良い。)
内容は、死刑囚専用の監獄で起きるさまざまなエピソードなのですが、
それらが実に手際良くまとめられていて、
3時間以上と言う長い映画なのに、
全く退屈な所は無かったです。
この辺りも、さすがフランク・ダラボンです。
とにかく、今一番お勧めの映画です。
- 『救命士』
監督マーチン・スコセッシ、脚本ポール・シュレイダーと言う、
『タクシー・ドライバー』のコンビの映画と言うのが売りらしいですが、
そんなことは抜きにしても、面白い。
(それにしても『タクシー・ドライバー』と言って、
今の人、知っているのだろうか?)
主演もニコラス・ケイジにパトリシア・アースクェットと、
実に興味深いメンバーです。
- 『BULLET BALLET バレット・バレエ』
『鉄生』『鉄生II』の塚本晋也監督の最新作。
内容は、普通のサラリーマンだった男が、
恋人の死をきっかけに、ダンダン暴力と狂気の世界に
はいって行くと言うものですが、
まあ内容はどうでも良いです。
それにしても、この映画を見ていると、
つくづく、この監督は映画が好きなんだろうなあ、
と思ってしまいます。
自分で脚本書いて、自分で主役して、
自分で撮影して、自分で気に入るまで編集する。
本当にこの人、幸せだと思います。
これこそがインディーズの王道でして、
金はないけど暇はある、
とことんアイデアと編集と力技で勝負するところが良いですねえ。
- 『鉄生II』
それにしても塚本晋也監督、まさにインディーズの王道を行きますねえ。
たいしたものです。
自分のやりたいことを、とことんやり抜く、
その根性が好きです。
- 『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
キューバ音楽を(『パリ・テキサス』の音楽を担当した)ライ・クーダ
がCDをプロデュースして出して、大ヒットしたらしいのですが、
再度キューバに行くと言うので、ヴィム・ベンダースがくっついて行って、
撮影したドキュメンタリー映画。
ヴィム・ベンダースも『パリ・テキサス』や『ベルリン・天使の詩』の
頃は本当に良かったのですが、『夢の果てまでも』
『時の翼にのって、ファラウェイ・ソー・クロース』辺りで
大丈夫?と言う感じで、『リスボン特急』や
『愛のめぐりあい』や『エンド・オブ・バイオレンス』は
全く分からなかったので、待望の映画です。
私は、年寄りがよぼよぼの音楽を演奏して、そのよれよれの音で
人々が癒される映画だと思っていたのですが、
大間違いでした。
(今まで高齢の超有名なクラシックのピアニストの演奏を聴きに行って、
がっかりした経験が有るので、高齢の演奏家の演奏は、
信用していないのです。)
一人一人の演奏を聴くと、やっぱり高齢で正確さなどは落ちますが、
それを補うのに、
彼らの演奏にはミュージシャンとして必要な、華があり、
歳を経た分、演奏には懐の深さが有るのです。
この辺りが実に偉いなあ、と思うのですが、
その能力を引き出すライ・クーダのプロデュースの力も大きいです。
ちょっと雑談ですが、
私は、毎年佐渡で行なわれる民族音楽の音楽祭に行って、
演奏もしてきていたし、中国の奥地で演奏を撮影したり
楽器を買ってきたりしているので、
けっこう世界中の民族音楽は聴いています。
ところが生で聴いて良いなあと思っても、
実際CDを買ってみると、全くダメな物もけっこうあるのです。
録音機材の影響かとも思うのですが、
中国人の人と演奏することもあって、日本で録音された
中国音楽の演奏のCDも参考のために持っていますが、
生は素晴らしいのに、CDになると今一つかなあ、
と思えることがあります。
この辺りがやっぱりプロデューサの実力で、
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』でも
そうライ・クーダが何をやっているわけではないのですが、
ほんの少しの味付けが、分かりやすくするのに
大きな影響力を持っているのです。
(最近アイルランドの音楽が流行っていますが、
あれもプロデュースの力が大きいです。)
- 『ストレイト・ストーリ』
久々に、デビッド・リンチの良い映画を見た気がします。
私はリンチ映画は、わけの分からないけど好きな『イレイザー・ヘッド』、
一見ヒューマンなんだけどしっかりリンチ的な『エレファント・マン』、
物凄く好きな『ブルー・ベルベッド』『ワイルド・アット・ハート』と、
ここまでは好きなんです。
テレビ・シリーズの『ツィン・ピークス』も、全部ビデオで持っています。
ところが、このあと、『ツィン・ピークス、ローラ・パーマ
最後の7日間』や『ロスト・ハイウェイ』は、
まあ分けが分からないわけだったのですが、
やっとリンチ映画が戻ってきた感じです。
私は年寄りが説教する映画って、あまり好きではないのですが、
本作の主人公のリチャード・ファーンズワースは、もう
そこにいるだけで良い、と言う存在感で、
こうなったら演技も糞もないですねえ。
一見あまりにまともな話なので、見せ物小屋的リンチ世界ではない
ような気持ちますが、
映像や演出も実にリンチ的、音楽のアンジェロ・バランタインも
『ツィン・ピークス』の頃に戻ったみたいで、嬉しいです。
- 『クッキー・フォーチュン』
待望のロバート・アルトマン監督の新作。
内容は秘密ですが、ロバート・アルトマン特有の
ゆっくりしたリズムが何か心地よいです。
そして『ザ・プレイヤー』や『ショート・カット』のようなのですが、
本作の方がちゃんと筋が通っていて、私は本作の方が好きです。
- 『橋の上の娘』
パトリス・ルコント監督待望の新作です。
それにしてもこの監督、『髪結いの亭主』や『イボンヌの香り』でも
そうなんだけれども、本当にエッチなシーンが無くても
物凄いエロスを感じさせますねえ。
本作でも、2人を結びつけるのは、ナイフを投げるものと
投げられるものと言う関係だけなのに、
その間に横たわるエロスが凄いです。
ちなみにヒロインは、『ハーフ・ア・チャンス』で
アラン・ドロンかジャンポール・ベルモンドどちらかの娘の役をやった
ヴァネッサ・パラディです。
少しルコント作品を紹介しておきます。
まずエロチック系。
- 『髪結いの亭主』言わずと知れた代表作。
個人的にはアラブの変な踊りが好き。
- 『イボンヌの香り』とにかくルコント映画の中では、
一番エロチックだと思っています。
でもルコントが凄いのは、それ以外のどんな分野でも撮れるところかなあ。
- 『ボレロ』これは短編なんだけど、物凄く面白いので、
見る機会があったら、是非見てください。
とにかく凄いから。
- 『タンゴ』いやー、笑った笑った。とにかく私の
コメディー映画の4本に入ります。
『大喝采』より面白いと思います。
- 『リディキュール』こういうコスチューム・プレイも
撮れるところが凄いところです。
- 『ハーフ・ア・チャンス』アラン・ドロン、ジャンポール・ベルモンドを
使って、こんな映画をさりげなく撮ってしまうところが、
この監督の力のあるところなのです。
- 『氷の接吻』
逃げる女アシュレイ・ジャッド、追う男イアン・マグレガー。
今が旬の2人が、なかなか見せてくれます。
監督は文字どおり楽しいゲイ3人の珍道中がお勧めの『プリシラ』を
監督したステファン・エリオット。
この監督は、なかなか見せてくれて、本作でも映像が素晴らしい。
ただし、脚本も監督が書いていますが、
脚本がちょっと弱く、もうちょっと意外性があっても良いと思います。
- 『ケイゾク/映画』
まあ世の中には、退屈な映画、難解な映画、Z級の映画など、
色々あるけれども、この映画くらいくだらない映画も珍しい。
これで今年のワースト2は本作と『マグノリア』で
決まってしまったではないか。
と言うよりも、私の人生の中で、ここまでくだらない映画は
初めてカモ知れない。
主人公達の意味の無い大げさな動作、笑えないギャグ、
全く斬新さがない映像
(『サムライ・フィクション』や『鮫肌男と桃尻娘』辺りと比べても、
遥かに劣る)、
そして見え見えの推理。(こんな程度で「私、分かっちゃったんですけれども」
と言われても、誰でも分かるさ、と言う気分。)
さらにひどいのは、この推理を解くのに、主人公だけが知っていて
観客には知るよしもない事実が使われていることです。
こんな推理物初めてです。
テレビ・ドラマの悪い面だけを拡大再生産したこんな映画、
作る必要が有るのでしょうか。
監督やスタッフの独り善がりでこんな映画作られても、観客が困るのですが。
何か続編を作るかも知れないことが最後にありますが、
まあこの監督、才能がないから、別の人にした方が良いです。
- 『破線のマリス』
黒木瞳主演のサスペンス物。
前半はテレビ局の裏側とか、報道とかわかって、
とっても面白かったのに、
後半はあと2回くらいひねっても良かったのではないか、と思います。
確かに先の読めないストーリと、
最後の顛末は意外でしたが、
どうしても「だから、どうなの」と言いたく成ります。
だいたいが前半で、あれほど面白く成りそうなエピソードが満載されているのに、
全く生かされてないのも不思議です。
まあ、テレビの報道に関しては、私は全く信頼していない、
特に街の声を聴きましたなんて、どうせ沢山とって自分の都合の
良い部分だけ繋げている(つまり編集する)に決まっていますから、
あんなもんだと思っていました。
じつは私が大学受験の発表のとき、私はいかにも漫画に出てくる浪人生そのものの
格好をしていて、テレビ局も絵になると思ったのか、
愛知県のほとんどのテレビ局(と週間プレイボーイ)のインタビューを受けました。
でまあ、インタビューの内容は、来年から実施される共通1次試験が
不安ではないか、と言うことが主だったのですが、
私は今年の入試に全力を注いでいて来年のことまで考える余裕は無かったので、
全く不安ではなかったです。
でまあ、私以外にも、不安ではないと答えていた人は沢山いたと思います。
ところが夕方の地元ニュースを見ていたら、
不安でないと言う部分は見事にカットされていて、
どのテレビ局も「受験生は不安のようです」と、
ことさらに不安をかき立てる内容に成っていたのです。
でまあ、それ以来、テレビ局は、信用していません。
- 『シャンドライの恋』
何か、久しぶりのベルナルド・ベルトリッチを見た感じがします。
でも彼も、『ラスト・エンペラー』の後、
『シャリタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』『魅せられて』と
3つも映画をとっているのに、
嫌いな『シェリタリング・スカイ』以外の2本は、
印象すら無いのです。
どうなっちゃって、いるのだろう。
でまあこの映画は、本当にベルトリッチらしい映像で、
私は嬉しいです。
特にフィルムの不安定なつなぎ方なんて、
『1900年』のドナルド・サザーランドが子供を殺すシーンを彷彿とさせて、
本当に上手です。
それにしても、主演の2人も面白いです。
サンディー・ニュートンは、『グリッド・ロック』とは全く別人で驚きです。
デビッド・シューリスも、
『恋の闇、愛の光』のノホホンとした役や、
(私の大好きなコーエン兄弟の)『ビッグ・リボウスキー』の
とぼけた味とは別人です。
ちなみに、私の好きなベルトリッチは、
『暗殺の森』『1900年』『ラスト・エンペラー』、
逆に嫌いもしくはわけが分からないベルトリッチは、
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』『シェルタリング・スカイ』です。
- 『追憶の上海』
レスリー・チャン主演の1930年代の上海を舞台にした恋愛物。
でも私は、ちょっと甘すぎるストーリに、
酔うことが出来なかった。
もっと引いた演出でも、良かったのではないかと思います。
- 『シビル・アクション』
それにしても、ジョン・トラボルタに正義の弁護士は似合わないと
思ったのですが、これがなかなかハマッていた。
なかなか訴訟社会アメリカは、弁護士物は優れた作品が多いですが、
この映画は実話にもとずいているので、アリウッド的な展開は見せません。
でも、相手の弁護士のロバート・デュバルも、
さすが『地獄の黙示録』でワグナーをかけながら突撃して、
兵隊にサーフィンをやらした人だけあって、しぶとい。
このしぶとさだけでも、面白かった。
- 『ロッタちゃん、はじめてのおつかい』
「長くつ下のピッピ」と言う有名な童話が有るらしいのですが、
それと同じ原作者のアストリッド・リンドグレーンの原作を元にした童話。
それにしても、挿絵のイメージとあまりにピッタリで、
しかも可愛い顔の女の子を、良く見つけてきたものです。
とにかくロッタちゃん、気に入らないことは気に入らない、
でも一生懸命やっていると何とかなるところが、偉いです。
それにしても「3つ子の魂100まで」と言いますが、
この子はどんな子に育つんでしょう。
(ひょっとして、我の強い、付き合いにくい人間に成らないだろうか、
と心配です。)
- 『ダブル・ジョパディー』
追う人、トミー・リィー・ジョーンズは、『逃亡者』『追跡者』と
彼の定番で、
本当に生き生きと演じています。
本作でも、なかなか良い味を出しています。
まあアクションはアシュレィ・ジャッドもそうとう頑張っていますが、
『追跡者』の方が良かったけれど、
その分、色々なアイデアで勝負していて、
それなりに面白かった。
- 『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』
007と言えば、やはり初期の知恵
(ドアに髪の毛を張りつけるとか)と体力で勝負していた頃の方が
面白いので、小物に頼るようになってからは、あまり見ていないのですが、
本作は最近の中では1番の出来だと聴いて、見てきました。
まあまあ面白かったし、ソフィー・マルソーも可愛いだけでなく
演技も出来るところを見せ、歴代ボンド・ガールとは
一味違う所を見せたので、良かったとは思いますが、
いかんせん、ピアーズ・ブロズナムの顔がアップになると、
疲れた顔に見えるのです。
こんなブロズナムを見るくらいなら『トーマス・クラウン・アフェアー』や
『ダンテズ・ピース』の方が、
よっぽど良かったです。
拾い物は、ロバート・カーライル
(この人の『フル・モンティー』や『カーラの歌』や
『司祭』は好きで、本当に芸達者です)の悪役ですか。
私の説では、男優は悪役で輝く、と思っています。
例えば『ダイ・ハード3』のジェレミー・アイアンズは良かったです。
ロバート・カーライルは『トレイン・スポッティング』では、
凶悪なアル中を演じ、『フェィス』のような映画もあるのですが、
やはり悪役としてはイマイチでした。
本作ぐらい徹底してやった方が、面白いです。
その他、なんで車がアストン・マーティンでないんだ、とか、
なんで時計がオメガなんだ、とか、
色々言いたいことはありますが...
- 『ストーリ・オブ・ラブ』
ロブ・ライナーと言うのは、本当に上手な監督だと思いますよ。
私の奥さんが好きな『スタンド・バイ・ミー』、
メグ・ライアンの魅力が爆発し本当に傑作な『恋人たちの予感』、
キャッシー・ベイツが本当に恐かった『ミザリー』、
ストーリが面白かった『ア・フュー・グッド・メン』、と
傑作揃いなのですが、
私としては、もう一度『恋人たちの予感』のような映画を
撮って欲しい思っていました。
(ちなみに『彼と彼女の第2章』は、ビリー・クリスタル主演ですが、
関係ありません。)
ところが、ここのところズーと印象に残る作品がありません。
でまあ、心配していたのですが、
本作は傑作『恋人たちの予感』に近いタッチになっていて
嬉しいです。
とにかく芸達者なブルース・ウィルスとミッシェル・ファイファーが、
わらわかしてくれます。
そしてラストのミッシェル・ファイファーの熱演。
良かったです。
そう言えば、ロブ・ライナー自身が太った人の役で、出ています。
- 『スリーピー・ホロウ』
天才監督ティム・バートンの世界が、
これでもか、これでもかと堪能できる映画。
それにしても、ここまでやるなんて、私は満足です。
役者陣も、ティム・バートンの映画には書かせないジョニー・デップ、
悪魔顔がピッタリのクリスティーナ・リッチ、
冒頭のシーンで殺されるのは、『エド・ウッド』の吸血鬼役者の
役をやったマイケル・ランドン、
でまあ本当に吸血鬼の役で有名なクリストファー・リー、
そして究めつけは『ディアー・ハンター』の鬼気迫る役をもう一度、
と思っていたクリストファー・ウォーケン。
本当にティム・バートン好みの役者を、よくもこれだけ、集めたものです。
ちなみに、私の好きなティム・バートンの作品は、
『シザース・ハンド』『エド・ウッド』『マーズ・アタック』と言う
ところですが、
本当は初期の短編アニメ『ヴィンセント』も、
彼自身の暗い子供時代を描いて、なかなかブラックです。
- 『季節の中で』
ベトナム難民出身のトニー・ブイ監督が、
ハーベイ・カイテルの指示を受け、
ベトナムで撮影した映画で、
サンダンス映画祭でグランプリを撮りました。
内容は、ベトナムのさまざまな人々を描いているのですが、
素晴らしい撮影になっていて、これだけで見る価値は有ると思います。
原題は「Three seasons」で、私はベトナムには冬がないから
3つの季節かなあと思ったのですが、
そうではなく、ベトナムには雨期とそれ以外の2つの季節しかないのですが、
それ以外のもう一つの季節を感じて欲しいと言うことらしいです。
- 『本当のジャクリーン・デュ・プレ』
天才的なチェロ奏者ジャクリーン・デュ・プレが、
若くして病に倒れ死ぬまでを、
姉の原作を元に描いた作品。
クラシックの世界では、成功した人だけが注目されますが、
実際は若くから一人で外国暮らしを余儀なくされ、
その上で物凄い競争があり、
精神のバランスを崩す人の話も良く聴きます。
我々は才能があれば、どんなに幸せに成れるだろうかと思いますが、
才能が有るのと幸せになるのとでは、次元が違うのですねえ。
さて、主演のエミリー・ワトスンはもちろんですが、
姉の役のレイチェル・グリフィスは『フル・モンティー』
『マイ・スィート・シェフィールド』『ハーモニー』
『エイミー』など優れた秀作に多く出ていますし、
バレンボイムの役をやったジェイムズ・フレインとか、
本当にイギリスの映画界
(グリフィスはオーストラリア出身ですが)は人材抱負ですねえ。
それにしてもエミリー・ワトスンの演奏シーンは、
本当に凄いですねえ。
『ニューヨーク・ニューヨーク』ではロバート・デ・ニーロが
音楽に合わせて指を動かすのに驚愕し、
『アマデウス』の頃は、役者がピアノを弾くだけで
驚いていましたが、
今や『シャイン』でも『レッド・バイオリン』でも『海の上のピアニスト』でも
(『グリッド・ロック』でも)、上手く弾いているように見せるのは
当たり前の時代になって、役者も大変ですねえ。
もっとも役者には自ずから限界がありますから、
エミリー・ワトスンも早引きの所は手だけしか写りませんが、
それよりも全体の雰囲気が凄いのです。
それにしても、バレンボイムがジャクリーン・デュ・プレと
結婚していたなんて知らなかった。
それにしても、バレンボイムの60年代モッズ風のスーツは
似合っていないので、なんとかして欲しかった。
- 『ガラスの脳』
手塚治のマンガを元にした映画。
生まれた時から意識不明の少女に、
1万回キスしたら目が覚めた、
と言う話なのですが、
1日1回弱、1年で333回として、1万回するには30年弱かかるので、
つじつまは逢いませんが、
この場合の1万回は『針千本』のように、単に多い比喩なのでしょう。
役者はジャニーズの関係らしいが、いまいちだったが、
病院の雰囲気とかは、なかなか良かった。
『リング0』も、これくらい頑張ったら良かったのに。
- 『ノイズ』
ジョニー・デップ主演のSF・ホラー物。
内容はあまり恐くなかったし、
物凄いサスペンスでもなく物凄い特撮でもないのですが、
全体の雰囲気はなかなかの出来で、私は好きです。
特にヒロインのシャーリズ・セロンは、
『トゥー・ディズ』『ディアボロス・悪魔の扉』と出て、
私の好きな『マイティー・ジョー』にも出ている、
なかなか達者な人です。
ただし題名は『ノイズ』は止めた方が良いと思います。
(原題そのまま『宇宙飛行士の妻』で良いんじゃあ無いでしょうか。)
- 『マグノリア』
この映画、どう評価したら良いのでしょう。
確かにトム・クルーズの演技は、ゴールデン・グローブ賞に値しますし、
序盤に次から次へと現れるエピソードも凄いし、
最後の物凄いエピソードは映画史上に残るかも知れないし、
音楽のセンスもなかなか良いのです。
でも、どうしても「だからどうなの」と言ってしまいたいのです。
それくらい、見終わった後に何も残らない。
内容は多くの人が同時進行で色々なエピソードを見せる形式です。
こう言った映画はあまり撮る人もいないのですが、
ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』や『ショート・カッツ』、
私の大好きな
アトム・エゴイネン監督の『エキゾティカ』
(制服フェチにはたまりません)や『スィート・ヒアー・アフター』が、
最近の代表的な作品でしょうか。
確かに本作はエピソードは凄いのが並んでいるのですが、
上記の映画達ほど印象がないのはなぜだろうと、思っていましたが、
3月6日の朝日新聞夕刊で、沢木耕太郎さん
(月に一度、彼は朝日新聞に書いていて、私は映画批評は普通は
読まないのですが、これだけは読んでいます)が、
ロバート・アルトマンの新作『フォーチュン・クッキー』と比較して、
切れ味さわやかに解明してありました。
やっぱり同じこと考える人は、いるのですねえ。
- 『13・ウォーリアーズ』
アントニオ・バンデラス主演で、
『ジュラシック・パーク』『デスクロージャ』『ライジング・サン』
テレビの『ER 緊急救命室』のマイケル・クライトンが原作で、
監督が(私の好きな)『プレデター』『ダイ・ハード』『レッド・オクトーバを追え』
『トーマス・クラウン・アフェアー』のジョン・マクティアナン。
どう考えたって、このメンバーで大金をかけて、
古のバイキングの冒険映画を作れば、
つまらなくなるはずはない気がするのですが、
これがどうにも私はワクワクしない映画なのです。
何が悪いのか、それとも私が悪いのか、
だれか教えてください。
- 『リング0』
『リング』は本当に恐かったのに、
その続編の『らせん』と『リング2』は全く印象にありません。
しいて言えば、松嶋某が可愛かったとか、深田某が恐い顔で死んでいたとか。
それらに比べると、『リング』ほどではないですが、まあだいぶ恐いです。
ただ時代設定が今から30年くらい昔なのに、
病院がやけにモダンだったり、
服装も今風なので、違和感がありました。
でも、こんな夢が出てきたら、嫌ですよねえ。
以下は2月に見た映画です
- 『チェルビダッケの庭』
指揮者の故チェルビダッケの姿を息子が撮影したものを、
編集したもの。
完璧主義者で、録音嫌いで、全くレコードを出さなかった
チェルビダッケがこんなに映像が残っているなんて、驚きです。
私は、クラシックの世界で、チェルビダッケのような完璧主義者は、
さぞや楽団員にとってやりにくいだろうなあ、と思っていたのですが、
この映画を見ていて考えが変わりました。
彼は確かに完璧主義者なのですが、
それ以上に恐ろしく深い理論的な音楽の理論が有るのです。
だから常に楽団員にたいして出される指示は、具体的です。
例えば「音を大きく」「2つの楽器は一体化して」という具合です。
楽団員は、ただ出された指示に忠実に従うことに集中するだけで、
後から完璧な音楽が、付いてきます。
だからこの方が、かえって楽なような気がします。
この当りが、名指揮者とスポーツの名監督が似ていると思いました。
私も少しだけアメリカン・フットボールのコーチをしたことが有るのですが、
そのときに注意されたことは、「指示は必ず具体的に」という物です。
これが簡単そうで難しい。
だいたい弱いチームは、ピンチになると、「頑張って行け」とか
「ここが踏んばりところだぞ」などど言う指示が出ますが、
こんなことは選手が一番肌で分かっています。
でも分かっていても、身体が動かないことが多いのです。
強いチームは「お前は10番につけ」とか「位置をもう少し左に」とか、
とにかく具体的らしいのです。
私がサッカー名古屋グランパスにいたベンゲル監督を尊敬しているのも、
そのあたりです。
もちろん彼の頭の中には、物凄い理論が渦巻いているのだと思いますが、
それ以上に凄いのは、その理論を具現化するのに、
いつも指示がシンプルかつ具体的で、
例えば「2回ボールに触ったら、反対サイドに蹴り出せ」と言う具合です。
それと同じで、チェリビダッケの頭の中では、
音楽に対する完璧な理論が有るのですが、
それを具現化するために出される指示は、実に具体的なのです。
でもそれ以上に尊敬するのは、
もうこれ以上無いくらい完璧に理論は仕上がっているのに、
彼自身はそれで満足せず、常にその先を狙っているのです。
楽団員にも、能力以上の力が出るように、色々工夫します。
そして、上手く演奏できたときの褒めるのの、上手いこと上手いこと。
本当に凄いです。
- 『グレン・グールド 27歳の記憶』
これはピアニスト、グレン・グールドが「ゴールドベルグ変奏曲」で
鮮烈なデビューしてから4年後の27歳の時の、
普段の生活と、レコーディングの様子をとらえた映画です。
このグレン・グールド、カナダの片田舎でほとんど独学で
勉強したので、普通のクラシックでは常識で考えられないことを、
勝手にやるのです。
椅子の足は切ってしまい、極端に短くなるし、
服装はダバダバ、フォーマルな席でも、はだしの時もありました。
まあ、とにかく、何でもありなのです。
私が憶えている、何でも有りのエピソードとしては、
次ぎのような物です。
「ベートーベンの交響曲」はリストがピアノにアレンジしているのですが、
グレン・グールドは5番をレコード化しています。
中には楽譜が全部付いている、今では考えられない豪華版でした。
それで編曲したのがリストなので、とても難しい曲で、
多くの場合、2人で弾かれるのですが、
彼の場合、あくまでも1人で弾きました。
でもさすがに4楽章は難しかったのです。
ここが超絶技巧の持ち主ならば、何とかしたでしょうけれども、
グレン・グールドは、バッハが得意なタイプで、
ヴィルトオーゾと言うタイプではないのです。
それでどうしたかと言うと、半分のスピードで弾いたのです。
うーーん、私も初めて聴いたときには、たまげましたが、
これも、グレン・グールドだから許されるのですねえ。
- 『月光の囁き』
遂に出ました、喜国雅彦原作のマンガの完全映画化です。
何しろ内容が、高校生、純愛、フェチ、SMと来ますから、
どうなることかと思いましたが、
ヒロインを演じたつぐみさんが、全くイメージ通りの人で、
これだけで成功したと思います。
- 『雨あがる』
もう死んじゃった黒沢明の幻の脚本を元に作られた映画らしいですけれども、
どうも私、黒沢明は大好きですけれども、
その名前が宣伝に使われた映画(『トラ・トラ・トラ』や
『暴走機関車』など)で、良い印象を持っている映画が無いので、
こう言った商売はどうかと思っています。
(例外は、谷口千吉監督の『銀嶺の果て』ですけれども。)
これが不思議なことに、リメークとなると『荒野の7人』、
セルジオ・レオーネ監督クリント・イーストウッド主演『荒野の用心棒』、
『隠し砦の3悪人』のリメークの『スター・ウォーズ』と、
名作が綺羅星のように有るのに、不思議です。
まあ私としては、黒沢明監督の名前を冠して、逆につまらない映画だと、
今の若い人に「なーーんだ、黒沢明って、こんな程度なの」と
思われるのが嫌なのです。
ところが、この映画は、そういった危惧は全く不要でした。
まことにけっこうな映画に仕上がっています。
私はこの映画を見て、何だか『椿三十郎』の匂いが有ると思ったのですが、
原作は同じ山本周五郎なのです。
とにかく私は『椿三十郎』が好きで、私の中の黒沢映画のベスト1なのですが、
その理由はやはり、深い人間観察でしょう。
同じ山本周五郎原作の『赤ひげ』と言うのもありますが、
人間の深い描き方に加え、ストーリの抜群の面白さで、
『椿三十郎』は破天荒な映画になったと思います。
所で、もともと『椿三十郎』の三十郎のキャラクターは、
おっとりした性格だったらしいですが、
前年に世界的大ヒットした『用心棒』を受けて、
映画会社が同じキャラクターで是非、と言うことになったらしいです。
だから、もともとのキャラクターだったら、きっと『雨あがる』の主人公のような
キャラクターになったのでは無いでしょうか。
どっちにしても、日本映画もこんなのが撮れるなんて、
だいぶ復活して、懐が深くなってきたようですねえ。
- 『アンナと王様』
どっから見てもユル・ブリンナー主演の『王様と私』のリメークなのですが、
チョー・ユンファがスキン・ヘッドで無いのはおかしいです。
と言うようなどうでも良い指摘はともかく、
2時間半の映画なのに、その間に印象に残っているシーンが全然無いとは、
映画としては失敗ではないですか。
恋愛映画としても中途半端だし、さりとてスペクタクルでもないし、
映画としては、こう言った中途半端は一番危険です。
ジョディー・フォスターも次の出演作が勝負だと思います。
でないと、『ネル』の頃が一番良かった、などど、過去の人に
なる可能性があります。
- 『13F』
『インディペンデンス・ディ』で監督を勤めたローランド・エメリッヒが
製作をしたサイバー・パンク映画なのですが、
このところサイバー・パンク映画は
個人的に大好きな『ニルバーナ』、これも個人的に好きな『ダーク・シティー』、
サイバー・パンク映画の決定版『マトリックス』、
スペインの異色映画『オープン・ユア・アイズ』と、
古典的名作『トータル・リコール』を出すまでもなく、
最近の映画を出しただけでも名作が目白押しで、
この分野はそうとう頑張らないと難しいのです。
ところが『13F』はストーリだけをとっても、
今あげた映画全てに負けているのです。
もちろん映像も『マトリックス』に勝てるわけがない。
こう言った映画は、作る必要が有るのでしょうか。
- 『逢いたくてヴェニス』
ドイツ映画。
旦那に浮気された妻が、浮気相手の旦那を誘拐して、
不倫しているヴェニスに向かうハチャメチャ・コメディー。
とにかくドイツ女は『ラン・ローラ・ラン』を見ても分かりますが、
パワフルですねえ。
実際ドイツに行くと、巨人の国に下り立ったようです。
とにかく男も女も皆でかい。
で女は皆肩幅が大きく、たくましいこと此の上ない。
だからこの映画のパワーも納得できますが、
このパワーが気持ち良いのです。
- 『ハイ・ロー・カントリー』
いったいアメリカでは、いつぐらいまで本当のカウ・ボーイがいたのだろう。
西部劇のあまりに歪んだカウ・ボーイ像しか知らないから、
本当のカウ・ボーイも分からない。
この映画では、ほとんど最後のカウ・ボーイらしく生きた人間を、
あの存在するだけで血の匂いが漂うウッディー・ハレルソンが、
第2次世界大戦後のカウ・ボーイを好演しています。
何しろウッディー・ハレルソンといえば、
『ナチュラル・ボーン・キラー』では本当にやばく
ジュリエット・ルイスとのプッツン・コンビで
暴れまわりましたが、
『ウェルカム・トゥー・ボスニア』
『ラリー・フリント』
『心の指紋』などでも、
心の中に血の匂いを抱いて、
なかなか凄い役でしたが、
本作のカウ・ボーイ役もなかなかです。
そしてその枠を固めるパトリシア・アークェットは、
『アメリカの災難』などのような
身も心も緩みっぱなしの演技で大いにわらわかして
(この映画は、私のコメディー映画ベスト5に入る)
くれたかと思うと、
『ロスト・ハイウェイ』『トゥルー・ロマンス』『ロスト・ハイウェイ』など、
どれも似ているけれども違う役を微妙に演じ分けています。
もう1人のヒロイン、ペネロペ・クルス。
どっかで見たことは有るのですが、名前に聞き覚えがないと思ったら、
スペインのペドロ・アルモドバ監督の『ライブ・フレッシュ』とか
アレハンドロ・アメナバル監督の『オープン・ユア・アイズ』に
出ていたのですねえ。
どちらの映画も、とっても印象的でした。
あとテレビ・シリーズ『スパイ大作戦』のサム・エリオット何かも出ています。
- 『ナビィーの恋』
沖縄ある小さな島の話なのですが、これがなかなか素晴らしかった。
最近、小淵首相が見た2つの映画の内の1つですが
(もう1つは『地雷を踏んだらサヨウナラ』)、
なかなか良い選択だと思います。
だいたい我々は沖縄と言えば、
沖縄=戦争=悲惨
か、または
沖縄=元薩摩藩の植民地=(現在実質上)日本の植民地=
米軍基地の押しつけ=かわいそう
と言うようなイメージがありますが、
もう一つ、別の見方
沖縄=南国の楽園=精神的豊かさ
と言う見方を、意図的に見過ごしてきたのではないか、
と言う気がします。
もともと人類と言うのは、温かい所で生存してきたのを、
そこを追い出されたりして、段々北上してきて、
住みにくいところへ来たわけです。
どう考えたって、南の方が食料は豊かだし、
そうアクセクしなくても食っていけるわけです。
この映画でも、食いたくなれば、浜辺でつつけば、
何かしら食料がとれます。
それが、日本本土になると、段々食料が不足してきて、
農業をやって一生懸命働かないと食っていけないわけです。
(それでも縄文時代のように、人口が少なければ
1日2時間位の労働で食べていけました。)
段々、人間の生存も、関東のように本来食料がとれない地域になりますと、
もともとは非常食であったソバのような雑穀ですら、
小麦粉の変わりの、常食にしないといけないわけです。
だから現在ではソバを打つのはたいへん手間がかかり、
高級品になっていますが、
それはこれだけ手間をかけないと美味しく食べれない、
もともと食料としては向いていないことを表しています。
またダイエット食品ということは、
要するに栄養がたりないことでして、
飽食な現在ならともかく、栄養が恒常的に不足している
古代に置いては、あまり良い食べ物とはいえません。
さて話を元に戻しますと、沖縄はもともと食べ物が豊富だから、
日本本土の人間のようにアクセク働く必要がない。
この映画に出て来る人達も、
どこかズレてる感じが良いです。
特に登川誠仁と言う三線(サンシン)の名手を、こんな役で使うなんて、
物凄く良い味を出しています。
黒沢明の『椿三十郎』小林桂樹と同じ位、面白い。
(また、あのセクハラ発言が、何とも言えません。)
(しかし、彼が『三線のジミ・ヘンドリックス』と呼ばれるのは、
『星条旗よ永遠なれ』をやるからでは無いかなあ。)
- 『ロルカ、暗殺の森』
スペインと言えば、ピカソやチェリストのカザルスなど、
とんでもない芸術の天才が現れる国ですが、
ごく最近まではファシズムの国だったことは、
あまり知られていません。
(ヒットラーのような人間が最近まで政治を行なっていたと想像するに、
サッカーの城は大丈夫か、と思ってしまいます。)
それで天才詩人ロルカも1936年の内戦の犠牲となったわけですが、
この映画はその謎に迫る映画です。
でもそんな背景は抜きにしても、十分映画として面白い。
とにかく面白かった。
ところで、私の大好きだったスペインの舞踏家アントニオ・ガデスの
出し物は、たった2つ「カルメン」と「血の婚礼」だけだったのですが、
「血の婚礼」はロルカの作なのですねえ。
- 『ビーナス・ビューティー』
とあるパリのエステ・サロンのエステシャンの恋物語。
まあ、皆典型的な先進国病で、恋もセックスも自由なので、
恋愛の尺度が分からなくなっているわけです。
だから迷走するわけですけれども、
いったいどこに行き着くのか分からなく、面白かった。
それともう一つ先進国病の典型で、
先進国では見せかけの男女平等なので、けっこう中年の女性は
臆病になっている。
その半面、男性もちゃんとした出合いが無いから、
男性はロマンチックに走ることが多いわけです。
どっちにしても、もっと素直なら楽なのに。
以下は1月に見た映画です
- 『ジーンズ・世界は二人のために』
これはインドのA級娯楽映画の王道を行く映画。
始まりの音楽を聴いた瞬間、
このあか抜けた音楽はA.R.ラフマーヌに違いない、
と思いましたが、やっぱりそうでした。
ただCDで聴き比べると、音楽は同じラフマーヌでも、
『ムトゥー・踊るマハラジャ』や『ボンベイ』の方が良いです。
まあこの2本は、あらゆる意味でインド映画の中では別格ですから
しょうがないですが。
今回はコンピュータ・グラフィックを使って、双子のオンパレード。
これでもか、これでもか、と出てきます。
ただそれが災いして、映画は3時間以上の長丁場。
本当にハリウッドに進出
(そんな野心はもちろん無いでしょうけれども)を考えるのなら、
もうちょっとストーリを切って、2時間半位にした方が良いように思うのです。
少なくとも私は、やや退屈しました。
- 『ナトゥー』
日本のテレビ局の企画で、ウッチャン・ナンチャンの南原が、
インドの映画にでると言う企画で作られた映画。
まあ、日本のテレビ局の製作費も、特番だと下記の韓国映画の
『シュリ』の製作費よりも多くなることがあるそうだから、
インド映画1本分位の費用は出るのであろう。
とにかくインドのB級映画の基本は、全部きちんと抑えてある。
(特に刑務所を脱獄するときに、わざわざ『これから脱獄することを祝って、
踊ろう』と言う分けの分からない展開は笑えた。)
ただ、あまりにていねいに抑えすぎて、
同じB級映画でも王道を行く『ボンベイ to ナゴヤ』には、
かないませんが。
『ボンベイ to ナゴヤ』は名古屋のみで公開され、
大いに名古屋人を楽しませていましたが、
東京国際映画祭に凱旋上映され、
東京人にも大受けだったそうです。
それにしても『ボンベイ to ナゴヤ』は製作費が数百万円だそうで、
名古屋のインド料理の店の店長が、個人的に金を出したそうで、
この額は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』と良い勝負なのですが、
たぶん『ナトゥー』はこれ以上の金は出ていると思います。
やっぱりテレビ局の力は偉大ですねえ。
なお歌は全部吹き替えですが、インド人は、ハリウッドの人が
オードリー・ヘップバーンが『マイ・フェア・レディー』で
歌を吹き替えたことに避難したような野暮なことは言いません。
ほとんどのインド映画は吹き替えなので、良いのではないでしょうか。
- 『トゥルー・クライム』
絶体絶命の主人公が、数秒の差で助かると言うストーリは、
かつてはハリウッドで山のように作られましたが、
あまりにストーリがご都合主義に走りすぎる嫌いがあり、
最近見ないなあ、と思ったら、この映画です。
ただし、映画の出来は非常によくできていました。
ストーリもご都合主義な所はあまり目につかず、
脚本と原作が良いのでしょう。
もともと私は、クリント・イーストウッドと言う
監督さんは、あまり信用していません。
『許されざるもの』はいまいちで、なんでアカデミー賞が
とれたのか分かりませんし、
『マディソン郡の橋』は旦那の出張中に浮気をすると言う
シチュエーションが好きでないし、
『パーフェクト・ワールド』は甘すぎて
ケビン・コスナーは再起不能
(最近良い映画が無い)になるし。
ただ、『真夜中のサバナ』だけは、
グッグーと来る映画だったので、
この映画も期待していましたが、
まあ期待通りでした。
- 『レザレクション』
クリフトファー・ランバート主演の怪奇ミステリー。
『セブン』を水で2割くらい薄めた感じの映画。
でも私は『セブン』の毒気は好きではないので、
この位薄めた方がいいのかも知れない。
- 『シュリ』
韓国のアクション映画。
そこそこ面白かった。
宣伝文句は「ハリウッドを越えた」と言う物らしいですが、
この宣伝文句は20年位前に日本映画でもさんざん聞いて、
しかもすべて期待外れだったので、
日本映画では使われなくなって、
その後日本映画は別路線を開拓するようになり、
それが現在の日本の監督たちの個性的な顔ぶれ
(名前が出てこないのですが、『桜の園』の監督
(最近SM映画を撮られたそうで、めでたいことです)や、
『ワンダフル・ライフ』の監督や、
『サムライ・フィクション』の監督や、
『鮫肌男と桃尻娘』の監督など)になっているのだと思う。
でまあ、こんなクサイ宣伝文句、最近ついぞ聴いたことがないなあ、
と思っていたら、韓国映画で使ってきましたか。
しかし、本当に越えたのだろうか。
例えば、この映画をオスギさんがテレビで宣伝していますが、
同じオスギさんが宣伝していた映画なら、
『交渉人』の方が遥かに面白いと思う。
たぶん極めて公平に見れば、
『シュリ』はハリウッドの映画の中では上の中から下ぐらいでしょう。
しかしこの映画の驚異的な所は、
製作費が3億円であることであろう。
ハリウッドの本当の一級品の映画と2桁違えば、
比べるのはやはり無理があります。
そして3億円で監督の驚異的なこだわりが、にじみ出ているところが
良いのです。
だから宣伝文句は忘れて、監督のこだわりに身を任せるのが良いのです。
ところで3億円と言う製作費は、今の日本映画と比べると、
例えば『踊る大捜査線』と比べても、だいぶ安いらしいです。
『踊る大走査線』は飛行機の中で中国語の字幕
(題名が『跳躍大走査線』だったです)で見ただけですけれども、
それでも『踊る大捜査線』と比べると、
遥かに『シュリ』の方が面白いです。
- 『カーラの結婚宣言』
『プリティー・ウーマン』のゲーリー・マーシャル監督が、
軽い知的障害のあるカップルをさわやかに描きます。
主演のジュリエット・ルイスは、『ケープ・フィアー』や
『ナチュラル・ボーン・キラー』や
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』などなど、
プッツン娘のイメージが強いのですが、
ジョニー・ディップや(知的障害者の役をやった)デュカプリオと競演した
『ギルバート・グレイブ』のような役もあり、
なかなか多才な人です。
それにしても、知的障害者の自立、尊厳、セックス、結婚など、
なかなか扱いにくいテーマを、真っ正面から扱い、
好感が持てる出来栄えになっています。
この間もエミー賞を受賞した、奈良の脳性麻痺の夫婦の
子育てのドキュメントを見ましたけれども、
(このカップルに比べれば、映画のカップルは
金銭的に恵まれていますが)、
本当に大変なのですねえ。
それにしても、この映画で上手いのは、
うしろで常に意識されている映画『卒業』でしょう。
特に「ミセス・ロビンソン」がかかると、
ついダフティン・ホフマンの愛車アルファ・ロメオ・
スパイダー(だっけ)がガスケツで止まるところが思い出されて、
何か心臓の鼓動が早くなります。
- 音楽編『ラスベガスをやっつけろ』
下記の映画『ラスベガスをやっつけろ』は原作が『ラスベガス☆71』なので、
当然60年代、70年代の音楽がてんこもりで、
私のように当時のブリティッシュ・ロック・ファンにはたまりませんが、
その中でも、渋い一曲がかかっていました。
初めの砂漠のシーンで、ヒッチハイクを下ろして走りだすところで、
ベック・ボガード&アピスの『レディー』がかかったのです。
このバンド、なかなか数奇な運命をたどった幻のバンドなのです。
もともとは、ジェフ・ベックがボガードとアピスの強力リズム・ユニットに
ほれ込んで、バンドを組むことを持ちかけたのですが、
ボガードとアピスは、別のバンドの仕事をしていたので、
待ってくれるように頼んだのでした。
そうこうしているうちに、ジェフ・ベックも仕事の為に、
新たにジェフ・ベック・グループを結成するので、
逆にボガードとアピスが暇になっても、一緒に活動が出来ません。
で、数年後、相思相愛でこの3人は結ばれるのですが、
(当時)超わがままなジェフ・ベックについて行けなく、
2年くらいで解散したバンドなのです。
腕は確かな3人なので、その微妙な緊張感あふれる演奏は好きです。
お勧めは、やはりライブ版の『レディー』ですかねえ。
- 『ラスベガスをやっつけろ』
あのテリー・ギリアムがジョニー・ディップを主演に映画を撮ったのですから、
見に行かないわけには行きませんが、
映画としてはそうとうブッ飛んでいましたが、
テリー・ギリアムの他の映画の完成度が高いので、
ちょっと拍子抜けしました。
ちなみに他の映画を紹介しておくと、
- 『未来世紀ブラジル』
鬼才、テリー・ギリアムのブラックな笑い満載の恐怖の近未来物映画。
とにかく恐かった。
また、ラストをめぐり映画会社と敢然と戦い(その内容は
『バトル・オブ・ブラジル』に詳しい)、監督が勝った
(ハリウッドでは普通、監督に最終編集権は無い)珍しい例。
- 『バロン』
私個人としては、この映画を高く買っています。
いわゆる『ほら吹き男爵の冒険』なんだけれども、
単なるほら吹きの話を特撮で見せるだけの映画ではなく、
その奥にある真実が面白かった。
なかなか味わい深い映画で、さすがテリー・ギリアム、
どんな映画でもだたではすまさない。
- 『フィッシャー・キング』
テーマの雄大さといい、俳優たちの演技といい、
テリー・ギリアムの最高傑作かも知れない。
- 『12モンキーズ』
そこそこの映画にはなっているが、あと一つかなあ。
映画としてはなかなかだが、それ以前の3作には及びません。
てとこですかあ。
で、『ラスベガスをやっつけろ』なんですが、
この映画を楽しむには、少し予備知識が必要なんです。
アメリカには、ハンター・S・トンプソンと言うとんでもない
作家がいるらしいのです。
とにかくカルト的信者の読者がいっぱいいるらしい。
ジョニー・ディップも彼のファンらしいのです。
それで、その作家の自伝的小説を映画化したのが本作なのです。
あのジョニー・ディップの物凄い演技は、
じつはハンターに密着してその動作を忠実に真似たものらしいのです。
そう思うと、そら恐ろしい映画かも知れない。
でも私は、テリー・ギリアムには、
次にはもっと『バロン』や『フィッシャー・キング』のような、
正統的な大作映画を作って欲しい。
- 『地雷を踏んだらサヨウナラ』
最近、小淵首相が見た2本の映画(もう1本は沖縄の映画)の内の
1本だそうですが、
なかなか良い選択だと思います。
前から言っているように、映画というのはただ2時間坐っているだけで、
なかなか勉強になるのです。
小淵首相も、東南アジア訪問の勉強の為に見たのでしょうけれども、
なかなか良い映画を見ました。
雑談ですが、かつては政治家と言えば、とにかく野暮天ばかりで、
コンサートなどで政治家が(途中で入ってきたり出ってたりして)
顰蹙を買う場面も多かったのですが、最近は小泉純一郎のように、
オペラも見るし、映画もちゃんと見る
(ニュース番組で『シックス・センス』をほめていた)人が増えて、
良いことだと思います。
(出来たら『エネミー・オブ・アメリカ』も見て欲しいけれども。)
さてこの映画は、実在の日本人戦場報道カメラマン一ノ瀬泰造の
物語りである。
戦場カメラマンの話にハッピーエンドが有るわけもなく、
なかなかジーンと来ました。
ただ冒頭で、放蕩息子の代表のような奥山和由の名前が有ったので、
気になった(だって、この人の映画、どれも中途半端を絵に書いたような
映画で、面白くないんですもの)のですが、
他のスタッフが良いのか、なかなか見ごたえ有りました。
- 『ファイト・クラブ』
世紀末映画の大本命が来た、と言う感じですねえ。
なんと言っても監督は『セブン』のデビット・フィンチャー。
前作『ゲーム』は意外につまらなかったし、
『セブン』は反則と言う感じで、
私は素直に映画に乗れなかったので、
ついにこの監督も、大本命作を物にした感じです。
ブラッド・ピットよりもエドワード・ノートンが、
いつのまにこんなに貫禄が出てきたんだ、
と思いました。
『ラリー・フリント』の時には、
こんなたよりない弁護士で大丈夫、と言う感じで、
「まあ君はウッディー・アレンの『世界中がアイ・ラブ・ユー』のように
暢気な役が良いのでない」と思っていたのが、
マッド・ディモンと競演した『ラウンダー』では、
いかにも、と言う役をふてぶてしく演じ、
そして本作です。
たいしたものです。
前半の悪趣味は大好きです。
とにかく悪趣味がプンプン匂っています。
これこそデビット・フィンチャーの本領発揮。
そして、痛みこそが生きているあかしとなる後半、
(クローネンバーグが交通事故フェチを描いた『クラッシュ』を
彷彿とさせますが)、話はフィンチャーらしい暴走を始めます。
ちゃんと仕掛け(『シックス・センス』ほどではないですが)も有りますし、
なかなかたいした脚本です。
そう言えば、今までは(私のお勧めの)『眺めのいい部屋』や
『ハワーズ・エンド』のような文芸物に多く出演していたヘレナ・
ボナム・カータが、いかれた役で出ているのも見ものです。
彼女が超ひねくれた身障者の役を演じた『バージン・フライト』は、
そのヒネクレぶりが大いにケネス・ブラナーを苦しめ、
楽しませてもらったので、
これくらいの役はやると思っていましたが、
なかなか大した女優です。
とにかく、今までのフィンチャー映画の中では、一番面白く素直に楽しめた。
- 『エンド・オブ・ディズ』
シュワルツネッガーも、ここのところ
『キンダーガーデン・コップ』や『トゥルー・ライズ』や
『バットマン & ロビン・Mr.フリーズの逆襲』の
ように、はずした役が多かったので、
久しぶり正統的ヒーロで嬉しいです。
映画の出来は、マアマアではないですか。
- 『ターザン』
最近のディズニーに私の涙腺は狂いっぱなし。
『ノートル・ダムの鐘』や
(アニメでは無いけれども)『マイティー・ジョー』に続いて、
この映画も泣けました。
それも初めからズーと。
(私の奥さんは『まさか』と言っていましたが。)
それにしても、噂の3次元に自在に動くジャングルの描写は
見事です。
これは、物凄くお金がかかっているのが分かります。
そして、このスピード感だけでも、見に行く価値が有ります。
この映画のスタッフは、宮崎駿のアニメで育った世代だそうですが、
宮崎アニメの浮遊感を徹底的に研究し、
それをコンピュータ・グラフィックを駆使して、凌駕したと思います。
(まあ『隣の山田君』も、あの画風を3次元に動かし、
それなりに凄かったけれど。)
こう言った、実写では実現不可能な映像をアニメで見せるのは、
正しいアニメの方向でしょう。
ただ気になるのは、
こう言ったアニメに、莫大なお金がかかるようになったことです。
『ムーラン』が(あの出来で信じられませんが)、
『美女と野獣』の何倍(何十倍?)もお金がかかったそうですが、
こんどはさらに何倍もかかっています。
この次は、(『タイタニック』級の)よほどの大ヒットでも
回収が難しいのでは、と言われていますが、
ディズニーもすべてがベストの映画ではなく、
『リトル・マーメイド』や『ムーラン』など、
たまにはずすのが気になります。
- 『御法度』
おそるべし、大島渚。
はっきり言って、あまり期待せずに見に行ったのです。
だいたいもう歳だし、一度病気で倒れているし、
前作の『マックス・モン・アムール』は期待外れ
(私の奥さんは好きだけど)だったし。
まあ、この人には、テレビのバラエティーで
どなっていてもらうのが、おにあいかなあ、などど、
そうとう失礼なことを、考えていたのです。
ところが、なんと、画面の隅から隅までピーンと張り詰めた空気。
これだけでも、この映画を見る価値あり。
昔はこのように、空気だけで見せれる映画がけっこう有ったのに、
最近はあまり見ません。
(『梟の城』には見習って欲しいよ。)
それだけに、この映画は貴重です。
この張り詰めた空気が、新撰組と言う刹那的な集団に
ぴったりなのですが、
その中で、松田龍平や武田真治や浅野忠信が美しいのは
もちろんなのですが、
おじさん顔の、ビートたけしやトミーズ雅までも美しいのです。
(本当なのです。)
私は見る価値ありと思います。
- 『ゴースト・ドッグ』
ジム・ジャームッシュ監督の映画。
日本の葉隠れを愛読し、武士道に傾倒する
(『ローニン』よりはよっぽど日本を勉強しています)殺し屋を、
フォレスト・ウィテカーが好演しています。
ウィテカーと言う人は、ずうたいはでかいので、
そんなに機敏に見えないのですが、
これがなかなか早い。
高校時代アメフトをやっていたらしいのですが、
アメフトと言うのは、5m10m
(アメフトは競技中に100m以上を走ることは無いので、
長距離を走る練習はない)をひたすら繰り返して走り
(それにしても不思議なのは、瞬発力が必要な野球が、
なぜあんなに長い距離を走るのだろうか。
あれが日本の野球選手の瞬発力の無さの原因と言われていますが)
瞬発力を鍛えるので、
巨体の選手でも(小錦を見れば分かるように)1歩2歩3歩が早い。
だから、素早く感じるのです。
- 『Pola X』
うーん、レオス・カラックスも『ポンヌフの恋人』で金を使いすぎて映画界を
干されているものとばかり思っていたので、
この復活には驚きです。
それにしても2000年の始めてみる映画がこれとは。
確かにレオス・カラックスと言う人は、才能の固まりみたいな
人だと思います。
でもそれは、人と異なることが出来る才能であって、
一つ間違えればただの変わり者となってしまいます。
『ポンヌフの恋人』の頃、確か雑誌アエラの表紙にでていたときも、
日本の男子高校生(女子だったら、それはそれで凄いが、でも有りそうだから
恐い)の詰め襟制服を着て、写っていたっけ。
彼によると、日本の高校生の詰め襟は最高らしく、
デパートでいくつも買い、大事なインタビューの時には、
いつも着て行くらしいのです。
(やっぱり変わってらあ。)
それにしても、彼の映画はどれも同じに思えて区別がつかないのですが、
全く同じかと言えばちょっとづつ進歩が有るところが面白い。
似ていると言うのは、毎回浮浪者女の話で、
彼女の目が恐いところ。
そんなわけで、ストーリの区別がつきません。
進歩している所は、『汚れた血』では目が恐いジュリエット・ビノーシュに
なった所だろうか。
それが、次の『ポンヌフの恋人』では、
ジュリエット・ビノーシュの目はそれほどでも無くなったんですが、
予算が沢山ある分、セーヌ河でハデに花火を打ち上げ暴走する
と言うことになったわけです。
でも、実際の印象として、『ボーイ・ミート・ガール』や『汚れた血』より
『ポンヌフの恋人』の方が良さそうなのは、
巨大な費用をかけてポンヌフ橋を再現したのと、花火と言うのは、
さびしい感じがします。
そんなわけで、『Pola X』には大きな期待が有ったのですが、
どうもこの監督、今までの呪縛から解けていないらしいのです。
もっとも、放浪女は、ジュリエット・ビノーシュよりもさらに
目つきの悪いカテリーナ・ゴルベワ。
そして主演も『めぐり逢う朝』(なかなか古楽器の世界がわかって、
お勧めの映画です)で父親のジェラールド・ドバルジュー
(それにしても父親に似ないハンサムで、良かったですねえ)と
競演してデビューしたギョーム・ドバルジュー。
俳優陣はたいしたものです。
結局、レオス・カラックスと言う監督は、
戦後の小津が一貫して一つの映画を作り続け、
それ全体で一つの映画のように評価されるように、
同じテーマでずーーーーと、取って行くのでしょうねえ。
でも、どこまで映画会社とファンはついて行けるのだろう。