KYUMA, Eido HOMEPAGE for movie 1997
久馬栄道の全く個人的な映画の感想 1997年版です
last updated Feb. 6, 1998
ホームに戻ります
これは久馬が映画館で見た映画の個人的感想です.
下に行くにしたがって古くなっています.
感想ください
E-mail:
kyuma@dpc.aichi-gakuin.ac.jp
過去に見た映画の検索用に、
名前のリスト
を作りました。
どうぞご利用ください。
以下は12月に見た映画です
- 『ロザンナのために』
これは死にそうな妻のために必死に(滑稽に)がんばるジャン・レノの
映画なのですが、実にいい味出しています。
彼はメキシコのプロレスラーの映画とかで、なかなか味のある演技を
していますから、これくらいはやるでしょうけどねえ...
もっとも最後はイタリア映画的いいかげんですきですが。
ニュース23で、築地哲也さんが、この役はマルチェロ・マストロヤンニが
やった方がいいんじゃないか、というようなことを言っていたが、
もし彼がやれば、それは全然違った映画になるのであって、
より良くなるとは思わないのですが...
(それにそこまで言うのであれば、監督はもちろんフェリーニで...)
もっとも、音楽はニーノ・ロータの方がいいと思う。
この映画の音楽をやっていた人は、『ラスト・オブ・モヒガン』も
やっていたが、退屈な音楽だったなあ...
ただ『クルフ・ハンガー』のような音楽もやっているのだから、
才能はあると思うのだが、この映画の音楽にはあわないと思う。
- 『ポネット』
どっかの映画祭でこの映画の主人公の女の子が4歳(最年少)で
主演女優賞になったそうですが、私は退屈しました。
この4歳の子が演技できるのか、というのが話題になっていましたが、
子供というのは『ゴッコ』というのは、相当小さい頃から出来るそうなので、
問題はないのでしょう。
- 『タイタニック』
ジェームズ・キャメロン監督、レオナルド・ディカプリオ主演なので
きたいたっぷり、ただケイト・ウィンスレットっていやあ、
『いつか晴れた日に』ではエマ・トンプソンに負けていたし、
『日陰のふたり』では、ええいうっとうしい、って感じの映画で
ケイトもやけに下ぶくれした顔の女優で、今まで全然印象に残っていない
女優だったので全く期待はしていなかったのだが...
ところがいざ映画が始まってみると、もうすごいすごい。
とにかく感動の嵐だったです。
だいたいが今時制作費の巨額なことを宣伝文句にするなんて、
古いと思っていたのです。
『2001年宇宙の旅』の時代なら普通の映画に何十億位かけていたときに
100億円かければすごいと思うし、それに『2001年宇宙の旅』
の時には制作費なんかは別に話題にならなかったように記憶して
いますが。
現在は普通の映画に100億以上かけている時代に260億
(その時の通貨レートで変わる)といわれても、
なんかたいしたことないように思える。
まあ、『遠すぎた橋』のように、いくらお金をかけた映画でも駄目なものは
駄目ということだってあるし。
しかし制作費にお金をかけたのは正解だったのです。
やっぱりこれだけ巨大なものを
質感を出すためには、実物大の模型を巨大な水槽に浮かべるしかないだろうなあ
、ということです。
いかにSFX の発達した現在でも、質感の問題はあります。
これを感じるだけでも映画館に足を運ぶ価値はあります。
次にキャメロンの演出は冴え渡っていて一部の隙もありません。
最初は三時間以上の上映時間に、長そうだなあと思っていたのですが、
最後まで退屈することはありませんでした。
まあとにかく最後まで凄い凄いできてしまった、という感じですねえ。
そして特筆すべきは俳優陣のがんばり。
とくにケイトは内に強いものを秘めた女を見事に演じきりました。
とにかく私は感動の嵐で泣きまくりましたねえ。
楽団員の言葉だけでも泣けました。
こんなに感動したのは『アラビアのロレンス』以来かもしれない。
- 『見覚えある他人』
ある精神科医の元に患者が訪れ、だんだん妻殺しを告白していくと
いう内容で、途中まではおもしろかったのに、最後が納得できん。
しかし、藤子F藤雄の『笑うセールスマン』みたいな人は、
なかなかよかった。
『ペダル・ドゥース』にもでていたが、どちらもよい味がでている。
次はぜひ彼を主役に『笑うセールスマン』をしてほしい。
- 『家族の気分』
クラピッシュ監督。
『猫が行方不明』とか『百貨店大百科』とか、なかなかいい調子
だったのに、私はこの映画は飽きました。
原作者と脚本家も出演しています。
- 『エアー・フォース・ワン』
出だしはわくわくドキドキで、さすが『ネバー・エンディング・ストーリー』
や『ボディーガード』の
アウフガング・ピーターゼン監督と思ったんだが、いかんせん
飛行機の中は狭いのは、後半の演出のもたつきが気になった。
それと私にはこの映画のハリソン・フォードがちっともかっこよく
見えないんですが、彼も歳をとったのかなあ...
しかし一番いかんのは、ゲーリー・オールドマンの悪役が
『コーン・エアー』の悪役に負けているところだろうなあ...
彼には『レオン』のような悪役を期待していたんだが...
- 『セブン・イヤーズ・イン・チベット』
実在の登山家が数奇な運命にもてあそばれてチベットにたどり着き、
そこで若き日のダライ・ラマ14世に出会い、友情を深める、
といった内容。
当然、中国政府の協力は得られないので、南米にそっくり
セットでチベットを再現しただけでもすごいなあ。
ジャン・ジャック・アノー監督は『薔薇の名前』や『愛人(ラ・マン)』が
大好きなので、期待が大きすぎた分だけやや物足りなさが残った。
でも、素直な気持ちでみれば、上出来の映画だと思う。
映像はすごいし、テーマもよいし、映画のテンポもよいし、
そういった意味ではなかなかの映画だと思う。
- 『タクシー』
監督は『カルメン』のカルロス・サウラ。
『カルメン』はオペラ歌手のプラシゴ・ドミンゴ主演、私の大好きな
世界的フラメンコ・ダンサーのアントニオ・ガデス振り付けの
豪勢な映画で、いい出来だった。
映画の内容は、今ヨーロッパで問題になっている、極右とかネオ・ナチ
が問題なので、ゴスタ・ガプラス監督の『背徳の日々』や『オルゴール』
のような内容なのだが、なかなかよくできていた。
日本人はどうも太平洋戦争は一部の軍国主義者が起こしたと
今でも信じているようなのだが、多くのふつうの人々も実は(隠れ)
軍国主義者であったという事実から、なぜ目を背けるのだろう。
そして、そのことの
恐怖が日本の映画にはテーマとならないのはなぜなんだろう。
(ヨーロッパには『1900年』などのように、ごくふつうの人々が
軍国主義者になっていく恐怖を描いた映画はたくさんある)
なぜ軍国主義がでてくるかというと、過去の経験からいうと
それは貧乏が最大の原因で、
日本でも失業率がうんと高くなったら、あっというまに
軍国主義の国になりそうなのに。
日本人の付和雷同型の性格なら、軍国主義になっても
だれもあえて逆らわないだろうなあ...
なんてったって、(大人世界でも、子供世界でも)いじめでさえ
見て見ぬ振りで解決できない国なんだから。
- 『メン・イン・ブラック』
これが超一級のエンターテイメントといわれても困るけれど、
まあふつうの映画と思えば、まあ面白いかな。
それにしても、ここまでチープなSFXなら、『マーズ・アタック』の
ようにそれを逆手に取ってもよかったのに。
内容は、なんかアメリカには、UFOが目撃されたところには直後に
政府関係者と名乗る黒ずくめの男が表れいろいろ調査していくという噂が
あるらしく、それを漫画にしたものが原作です。
- 『陰謀のセオリー』
本屋に行けば日本には陰謀だらけ。
とっくにユダヤ人に支配されているらしい。
で、世の中にはこういった陰謀を本気で信じ、人に警告しまくっている
人もいるらしい。
メル・ギブソンはそういった役柄なんですが、
はっきりいってこの映画は相当面白い。
ジュリア・ロバーツも一時の落ち目から復活しつつあるし、
なかなか脚本が良く出来ているし、全体にパワーがある映画です。
- 『ブラッド・アンド・ワイン』
犯罪と親子の対立を軸に描いたドラマだが、
結構面白い映画だった。
それにしてもジャック・ニコルソンってこんな役ばっかですねえ。
息子の役やってた人も良かった。
- 『ラジオの時間』
僕は結構好きです。
こういった映画が作られるという事は、日本映画も体力を
付けてきたかなあ、というかんじです。
いぜん NHK で、『市民ケーン』の前の
オーソン・ウェルズが演出したラジオ・ドラマ
『火星人来襲』があまりにリアルだったために、全米で600万人が
非難した事件を描いたドラマをやっていたが、
あれはプロの集まりが本当に全力で自分を殺し
いい(?)仕事をした結果であった。
この映画はその逆。
出てくる人々は脚本家以外はプロ。でもみんな自分を殺さずだとどうなるか?
どうなるんでしょうねえ...
- 『萌の朱雀』
監督の河瀬(最近結婚して姓が変わったらしい)直美さんが何となくに取ったら、
カンヌ映画祭で新人賞を
とっちゃったわー、という感じの、肩に力が入っていない演出はなかなかだと思う。
最近、日本映画の若手監督の層が厚くなってきたような気がするが...
でも河原しゅん(だっけ)監督はどこ行ったのでしょうか?
『櫻の園』は好きなのに...
以下は11月に見た映画です
- 『世界中がアイ・ラブ・ユー』
ウッディー・アレンとかジュリア・ロバーツなどが,頑張ってミュージカルに
(振り替え無しで)挑戦しているのが楽しい。
映画『ラリー・フリント』で弁護士役をやっていた人も
頑張っています。
とにかく,往年のミュージカルを彷彿とさせる楽しい映画。
それにしても,ゴールデン・ホーンは歳をとったなあ...
最後のダンスのシーンは最高だけど...
- 『百貨店大百科』
『猫が行方不明』のクラピッシュ監督のフランス映画。
この監督の持ち味は,何気ないしぐさを巧みに撮影する所だと思うが,
上手に取れていた。
要するにつぶれかけた百貨店をモーレツ社長と社員が一丸となって
立て直す,まあ『スーパーの女』のフランス版なのだが,
そこはそれ,個人主義のフランス人,なかなかどうして。
結末は好きですけどねえ。
- 『フェイク』
アル・パチーノはちょっと迫力不足。
ジョニー・ディップに完全に負けていた。
やっぱ,男の友情は渋いねえ。
それにしても,FBI潜入捜査官って,絶対に割に合わない職業だよなあ...
- 『N.Y.検事局』
監督は,あの古典的名作『12人の怒れる男』のシドニー・ルメットだが,
この人の『Q & A』はあんまり面白くなかったので期待せずに行ったが,
意外と良かった。
アンディー・ガルシアとかリチャード・ドレイファスとか出演者は豪華。
レオ・リオンも私の大好きな『蜘蛛女』いらい頑張っているし
(でもちょっとしわが目立ってきたけど)。
まあ,世の中一筋縄ではいかない,という事を2時間の映画にしたら,
こうなる。
- 『プレッシャー』
チャーリー・シーン主演の,いわゆるプッツンもの。
でも,このたぐいの映画って,過去に名作が多いし,
やっぱり難しいよねえ。
- 『ファーザーズ・デイ』
ビリー・クリスタルとティム・ロビンスという,当代きっての人気コメディアンが
共演しているので期待十分で1+1=5ぐらいを期待していたのに...
まあ0.7+0.7=1くらいの映画かなあ。
まあ,久しぶりのナターシャ・キンスキーが出ていたからいいか!
- 『カーテン・コール』
ゲイでエイズのバレー・ダンサーの話。
バレーが大変に美しい。
それにしても,あれだけアイスクリームを食べて,よく太らないなあ...
- 『イベント・ホライズン』
この映画は、そうとう『2001年宇宙の旅』を研究していると思う。
『2001年宇宙の旅』を超えるSF映画はいまだに存在しないと思っている
映画ファンは多いと思うが、この映画は、(ストーリーのわかりにくさも含めて)
かなりええせん行ってるんじゃないかなあ...
『2001年宇宙の旅』が、宇宙の闇を通して人間の心理の深淵をあらわしているとすると、
この映画のねらいもそこにあると思う。
この意味でこの映画でもこの意図は見事に成功している。
『シャイニング』が正確にはホラー映画でないように『2001年宇宙の旅』ってのも
正確にはSF映画ではなく、なにか別のもの(私はそれこそがモダン・ホラーと思っているが)
なんだと思う。
はっきりいえば、この映画は見る麻薬です。
だから音響的にも映像的にも、どぎつい演出となっています。
過去にも『J.F.K.』とか『セブン』なんかは見る麻薬じゃあないかと
思ったもんですが、この映画はぎりぎり許容範囲内で許せる内容です。
とにかくインパクトだけはあった。
- 『東京日和』
写真家のアラーキーさん夫妻を描いた映画。
本人も出ています。
とにかく意図的にとられた映像がきれい。
でも中山美穂はやっぱりおかしい。
- 『ボルケーノ』
トミー・リー・ジョーンズ主演の天災もの映画。
ロス・アンジェルスの中心地でいきなり火山が爆発するといった内容。
それにしても、アメリカ人の責任感の強さには感心します。
ちょっと家族愛が強すぎる面もありますが...
まあまあ、面白かった。
- 『コーリャ愛のプラハ』
いまいちかなあ...
やっぱ子供のかわいさだけでは限界かも。
それにしても、東欧の女優さんって美人が多いなあ。
- 『ミクロコスモス』
昆虫の映画なんだけど、とにかく理屈抜きに面白い。
リュック・ベッソンの『アトランティック』とか、最近のフランス映画は
変に面白いよなあ。
- 『チャンス』
ウーピー・ゴールドバーグ主演のコメディーなんだけど、これが意外と大穴で
面白かった。
名古屋では次の『ラブ・アンド・ウォー』との2本立てだったんだが、
お値打ちだったと思う。
内容はウーピーが女性差別を受けながらも、知恵と努力で出世していくというもの。
まあ、男の武器、女の武器、色々よねえ...
- 『ラブ・アンド・ウォー』
リチャード・アッテンボローらしい古臭い演出。
それが良いかも。
サンドラ・ブロックはエマ・トンプソンと同じく、喋らない方がいいよねえ。
それにしてもオドネル扮するヘミングウェイはちょっとねえ...
以下は10月に見た映画です
- 『シド・アンド・ナンシー』
元祖パンク映画。
セックス ピストルズの伝記的映画。
若きゲーリー・オールドマンがなかなか凄い演技を見せてくれています。
これなら『レオン』の怪演も納得です。
この調子で『フィフス・エレメント』も頑張ってほしかったのに...
- 『アジアの瞳』
日本とポルトガルの合作映画。
戦国時代のキリシタン弾圧をちょっと変わった視点で見ている。
まあ遠藤周作の『沈黙』の方が良いと思うが、この映画もなかなかだと思う。
- 『輝きの大地』
よい映画。
南アフリカのアパルトヘイトを救いのないストーリーに乗せて
描くのだが,どこか牧歌的で救いになっている。
力強く、テーマが確かで、感動させる、骨太の映画。
監督は『サラフィナ』の人。
- 『ハーモニー』
オーストラリアかニュージーランドの映画。
最近はこの地域の映画は凄いですねえ。
内容はある神経科の病院で治療のためにオペラをやるはめになる話で、
こういった映画は『日のあたる教室』のように、
さあ感動させるぞ、さあ感動させるぞ、という意識がたいていは強くなり
すぎて,えてすると肩に力が入りすぎるものだが、
この映画は妙な力の抜け具合が良い。
- 『コーン・エアー』
やっぱり娯楽映画は,こうでなくっちゃー...
ニコラス・ケイジ(めずらしく正統派の正義の味方)もさることながら,
これでもか,これでもか,というくらいにサービス過剰な悪役陣。
『ファーゴ』で変な顔の人も凄い悪役で出ているし...
プロデゥーサの J.ブラッカイマーは『バッドボーイズ』
(この映画も面白かった)のように無名の監督を使うのが
上手なのかなあ...
- 『ラジュー出世する』
これが噂のインド娯楽映画です。
とにかく濃い顔の主人公たちが、繰り広げる絢爛豪華な世界は、
宝塚をも彷彿とさせるのです。
恋あり、仕事あり、文字どうり出世あり、アクションあり、歌あり、踊あり、
いやー本当に映画って良いですねえ。
- 『悦楽共犯者』
チェコのモーション・ピクチャーの作家のヤンシュワンク・マイクルの
新作です。
前作の『メフィスト』では金のないぶん根性で人間と人形を同時に
モーション・ピクチャーで撮影するという無茶をやって、
驚いたものですが、今回はそれほどでもないかな...
でもストーリーの意外性はさすがです。
- 『スノー・ホワイト』
白雪姫を原作に忠実に映画化するとホラーになった、
というのがうたい文句なのですが、
それほど原作に忠実というわけでもなさそうだし、
ホラーとしても物足りないし...
いったいこの映画の見所ってどこなんでしょう...
それにしてもシガニー・ウィバーは歳をとったですねえ...
- 『男と女・うそつきな関係』
有名な『男と女』のクロード・ルルージュ監督が作った映画なんだが、
はっきりいって飽きた。
カウンター・テナーが聞きどころかなあ...
- 『夕べの星』
これは『愛と追憶の日々』の続編。
この映画が好きな人には良いかも。
- 『恋におぼれて』
メグ・ライアンの男歩きが良いが、それにしてもあの濃い化粧は
ゴールデン・ホーンの道を歩いているのであろうか?
ただ彼女の別の恋愛映画に比べるとやや落ちるのは仕方がない所か...
しかし、なんぼ復讐でもここまでやるか?
- 『ブエノスアイレス』
僕はワン・カーウェイの映画は無条件で好きなので、この映画も好きです。
それにしても、監督がこれほど好き勝手な事をしているのに、撮影監督の
クリストファー・ドイルはよく破綻しないものだなあ...
フランク・ザッパの曲はカッコいい。
台北の市場で『死んだはずだよお富みさん』がかかっていたのが
何となく不思議だ。
で、レスリー・チャンはどうなったのだろう...
- 『日陰の二人』
暗くてじめじめしていて、イギリスの天気そのものの映画。
保守的でイギリスの悪い面が全部出ている映画。
こんなつまらない映画にお金を払うなんて...
同じ原作者でも『テス』のほうは、ロマン・ポランスキーの素晴らしい映像と
ナターシャ・キンスキーの美貌で救いがあったのだが...
- 『マルタイの女』
ああ面白かった。
あのわざとらしい女優が良い。
伊丹映画の中では、上から4〜5番目くらいの出来かなあ...
- 『ペダル・ドゥース』
文字どうり楽しいゲイの映画なのだが、
とにかく面白かった。
わたしのランキングの中では、今年のコメディー映画の No.1 を
『アメリカの災難』と競い合っています。
私の妻は2回見に行った。
わけあって、4月〜9月は映画を見ておりません。
以下は3月に見た映画です
- 『101』
最近ちまたに溢れているぶち模様の原因の映画。
基本的には私は子供や動物のかわいさのみを
だしに使った映画は嫌いなのですが
(だいたいが哺乳動物は赤ん坊を育てる期間が異常に長いので、
小さくて、もぞもぞ動くものは自動的に好きになるように
本能づけられていて、人類のその本能を映画という商売に
利用するのは嫌いである)
いくつかの映画は単に映画としてのみでも面白く
(例えば去年見た『グース』なんて、美しかったです)
これもそういった映画です。
とにかく
私も思わず大きな小犬の絵を車に貼ってしまったではないか。
原作は言わずと知れたディズニーのアニメの『101匹わんちゃん』を
実写で再現した映画です。
とにかく私はこのアニメが大好きなのです
(断っておきますが、私はいわゆる「アニメオタク」ではありません)。
実写版を見た後すぐに家に帰ってビデオでアニメの方も見てみたのですが
(ちなみにこのビデオは限定販売なので、見つけたら
すぐ買った方が良いですよ)不思議な事に
アニメの方がリアリティーがあるのです。
アニメも実写版もどちらもそれなりに面白いのですが、
まずはアニメの方を説明しましょう。
ディズニーの映画は小学校のとき色々見たはずなのですが、
印象に残っているのはこの映画と『ファンタジア』
(しかしこんな映画を戦時中に作っていたなんて、
日本は負けるはずです。最近も映画館で見る機会があったので
見たのですが、スクリーンが小さい。大スクリーンで見たいです)
と『白雪姫』だけなのです。
それでなぜこんなにも印象に残っているのか、
長年の疑問だったのですが、去年ビデオを買ってあらためて見てみて
その疑問が晴れました。
とにかく『101匹わんちゃん』はオシャレな映画です。
実写版と比べても、ズーーーーとオシャレで軽快でとにかく
軽いタッチなのです。
それに当時毛皮に反対する先見性は見事です
(今なら当たり前だけど)。
思えばディズニーはアニメ版を作った1961年当時は
アニメの長期じり貧状態だったと思うのです。
そこで起死回生の十分大人の鑑賞にも耐えられるだけのクオリティーを
求めて、こんなお洒落な映画を作ったんだと思う
(でもじり貧状態は結局は『リトル・マーメード』
(個人的にはあまり好きな映画ではない)まで続くのですが)。
とにかくアニメ版は、これでもかこれでもかと、イギリスの
雰囲気をふんだんに盛り込み、絵のタッチもいわゆる
(少年サンデーのごとくの)アニメ画ではなく、大人のテイストです。
だから動物たちが喋ったりするのですが、それでも実写版より
リアルに感じるのです。
トワイライト・バーグ(黄昏の遠吠え)もリージェント・パークから
おこなったり、このお洒落な雰囲気は大好きです。
さて実写版の方は、アニメ版のセンスの良さ軽さとはきれいさっぱり
おさらばして、とにかくパワーアップに成功しています。
この潔さが、この映画の成功に繋がったんだと思います。
特に本当のラストのシーンでは映画館全体にどよめきの
様なものがおき、後ろの女の子も「これは凄すぎる」といってましたが、
こういった雰囲気は映画館独特のものですねえ。
やっぱりこういった反応は素直にありたいものです。
特にクルエラ・デ・ビルを演ずるグレン・クローズの怪演ぶりは
まさに噂どうりでして、とにかくリッパです。
彼女はプロです。
それを見るだけでもこの映画を見る価値アリ。
それにしても夫婦役をやっている人たちの重さって、
どうにかならないかなあ、とも思いました。
特に奥さんの役をやっている人は、どこかで見た事あると思ったら、
ケン・ラッセル監督の『チャタレイ夫人の恋人』でチャタレイ夫人を
やっていた人ではないですか
(しかしこの映画は期待外れだった...だってあのケン・ラッセルナンデスヨオ...
嫌でも期待しますよねえ)。
とにかく夫婦そろってバタ臭い顔なのは何とかならんかったんだろうか。
でも旦那の職業をコンピュータ・プログラマーにしたのは
ストーリ的には成功したように思う(アニメ版の作曲家も
捨て難いけれども)。
まあシベリア・タイガーの毛皮には笑えたし、芸達者な犬たち
(でも演技が決まりすぎていてチョットかも)もたいしたもんだし、
なかなか素晴らしい出来なのですが、
この映画のクライマックスである小犬の救出シーンだけはアニメ版の方に
旗を揚げてしまうのです。
これだけはアニメ版の方が良いと思います。
とにかくアニメ版と実写版、両方見る価値はあると思います。
最後に『リトル・マーメード』以降のディズニー・アニメの
好きな映画を書いておきます。
『美女と野獣』
これでディズニー・アニメが完全復活したといってもいいのではないでしょうか?
とにかくアニメでしか表現できないものを
持っていると思います。
ただ私の個人的趣味としてはジャン・コクトーがナチスに占領されていたときに
フランスで作った実写版『美女と野獣』も
捨て難い魅力です。
『アラジン』
絨毯が楽しい。
『ノートルダムの鐘』
もう冒頭のシーンで泣けてしまいました。
- アイルランド紛争の映画を2本続けて見たので次に書きます。
- 『マイケル・コリンズ』、ニール・ジョーダン監督、
レーアム・ニーソン、ジュリア・ロバーツ主演
ベネチア映画祭グランプリ、主演男優賞なので
見に行ったわけではなく、あの『クライング・ゲーム』の監督なので
見に行ったのです。
しかし『クライング・ゲーム』ほどは面白くないのは確かである。
内容的にはアイルランド紛争の歴史の一部がわかってよかったのだが、
『シンドラーのリスト』よりも少し太目のレーアム・ニーソンと
ジュリア・ロバーツの描きかたが甘すぎて、私にはついていけなかった。
それにしても我々は西洋の事を知らなすぎる事は良く分かった
(フランスが核実験をしたときでも、マスコミは「あの芸術の
国がなぜ」なんていう感想ばかりだったけど、あの日本以上の
超官僚国家が一度動き出したら身動き取れない事は明らかではないか?)。
イギリスも諺に「恋と戦争はどんな手段を使っても良い」なんてのが
あるらしいが(詳しくはシリマセン)「どんな手段」とは
「どんな卑怯な手段」という意味だったのね...
それにしてもラクビー場で無差別殺人をやるなんて...
どうりで近代になってからイギリスは戦争で負けた事がないわけだ...
と納得したのですが、このあたりの事、だけか詳しく教えて
くれませんか?
- 『ナッシング・パーソナル』
『マイケル・コリンズ』がアイルランドを自由にしたズート後の
1970年代の北アイルランド紛争を描いた映画。
『マイケル・コリンズ』は北アイルランドをイギリス領に残したので、
それが今でも爆弾騒ぎとなっているのです。
それにしても『バック・ビート』でまだロクデナシだった頃の
ジョン・レノンを演じたイアン・ハートはケン・ローチ監督の
『大地と自由』でも芸達者なところを見せ、『マイケル・コリンズ』では
またぜんぜん異なる役どころだったが、この映画でも芸達者な
ところを見せています。
それにしても『フィオナの海』のあの女の子も、こんな運命になるなんて。
ところで本作品は一夜の出来事を描いたものなのですが、
私の個人的趣味としては、『第3の男』のキャロル・リード監督の
『邪魔物は消せ』(でしたっけ)のようなタッチで描いても面白いと思うが。
実際のところ、パンフレットの表紙はそのような雰囲気です。
さて
そういえばこのところ、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、
などの映画がやけに来ますねえ。
『ウェールズの山』とか『トレイン・スポッティング』とか
『フィオナの海』とか。
やはりケルトブームなのでしょうかねえ。
- 『マイ・ルーム』, メリル・ストリープ, レオナルド・ディカプリオ,
ダイアン・キートン, ロバート・デ・ニーロ出演
まあ一昔前ならアカデミー賞の顔だった人ばかり, よくもこんなに集めたもので
あるわいな...という映画で, とてもこんな映画では感動できんぞう,
と思ってみていたのであるが, 最後にカーリー・サイモンの『リトル・
シスター』がなったときには不覚にも泣いてしまったのであった.
やっぱり病気ものの映画は強いナア...
- 『ダンテズ・ピーク』, ピアーズ・ブロズナン, リンダ・ハミルトン主演,
いわゆるパニックものの映画である.
同僚の英語の先生がつまらないと言っていたので, どうつまらないか
見に行ったら, まあまあ面白かったです.
少なくとも『インディペンデンス・デイ』よりは納得できたし面白かった.
もっとも市長(あの『ターミネーター』のリンダ・ハミルトン)は
とても美人とは言えないし, 火山学者ならヘルメットぐらいするだろうし,
なんぼNASA の発信機でも, 炭坑の中からの電波が届くというのは
無理があるように思えるし, 終わりかたも, もうちょっと工夫があっても
いいとは思うし, そのほかにも色々納得できんところは
あるのだが, それでも全体的な映画の出来としては私は
1400円くらいなら見に行っても良いと思う.
コンピュータ・グラフィックの使い方も良いと思う.
何しろ最近の特撮ものはあまりにもコンピュータ・グラフィックに頼りすぎて
つまらなさ過ぎるので(そういう点では本当にジャッキー・チェンは偉い)
この映画くらいがバランスが取れてていちおうハラハラドキドキも
出来ましたわ.
- 『リディキュール』, パトリス・ルコント監督
それにしてもパトリス・ルコントはいっぱい映画を撮っていますねえ.
前の『大喝采』からすぐにこの映画, いや見事見事.
こういった映画の良いところは, ヨーロッパ人が常識で持っている
歴史認識を知る事が出来る点だと思うのですが.
確かに歴史の本にはフランスの宮廷ではエスプリの
利いた言葉を喋れるかどうかが出世の基本と言う事が書いてありますが,
まさかこれほどまでとは.
これじゃあ, 革命も起きるわなあ...
ちなみに, 題名の意味は, 「滑稽な」とか「物笑いの種」とかということだそうです.
しかし最後までユーモアとエスプリがどう違うのかはわからなかった.
それにしても, パンフレットの解説をタモリ倶楽部で尻の評論をやっていた
山田五郎さんが書いていたのにはびっくりした.
まともな人なんですねえ.
ところで私の好きなパトリス・ルコントの映画を上げておきます.
『イボンヌの香り』
この映画こそ典型的なパトリス・ルコントのタッチだと思います.
イヤラシイシーンは一切ないのに, ものすごく濃厚に香い立つエロス
そのものがこの人の真骨頂.
一見の価値あり.
『タンゴ』
いやあ, 笑った笑った!
こんなに笑ったのはフランキー堺の『幕末太陽伝』以来かなあ.
『大喝采』にはまった貴方, お勧めです(はまっていない貴方にも).
『髪結いの亭主』
この映画を見て髪結いの亭主にあこがれた人も多い事でしょう.
最後はようわからんかったけど, とにかくこの映画で私もパトリス・ルコントに
はまったわけです.
幼いころに髪結い屋で女性の胸が頬にあたる感触,
これこそがエロスそのものですよね.
あのわけのわからないアラビアン・ダンスは別の映画のネタに
使った方がよかったような気もします.
そういえば今週号のアエラにパトリス・ルコントの顔が表紙に出ていました.
以下は2月に見た映画です
- 深夜のテレビで『ノスフェラトゥ』という吸血鬼ものの
映画をやっていた.
主演はまだ髪の毛も豊富なブルーノ・ガンツとイザベル・アジャーニ
なのですが, まだブルーノ・ガンツに髪の毛があったころに
既にイザベル・アジャーニがあんな風だとすると, 彼女って
いったい何歳なの...実は彼女は人の生き血を吸う...
などど思ってしまった.
吸血鬼ものとしては大変格調高い映画でして, 私は好きですねえ.
- 『秘密と嘘』, マイク・リー監督脚本
いちおう話題作なのと, マイク・リーはその前に『ネイキッド』が
まあまあ面白かったので見に行った.
それにしても妙にバタ臭い顔をした親子が延々とうっとおしいい
会話を繰り返すので, 始めはいやになってきたのだが(また
バタ臭い顔がうっとおしさに拍車をかける)まあ最後は
なかなか盛り上がってまずまずの映画に落ち着いたと思う.
まあイギリスファンの私としては, 「ヤッパリイギリス人って
アメリカ人の発音(スタローンの発音)がわからないのね」とか,
「なんでイギリス人はこんなにエスキモーのキスをするの」とか,
色々興味深かったです.
映画を終わってパンフレットを買ったら英語の題名は
秘密も嘘も複数形, 妙に納得しました.
まあでも, この映画で一番興味深かったのは写真を撮影されに
くる人々だろうなあ...
- 『恋の闇 愛の光』, メグ・ライアン, ロバート・ダウニー・Jr主演,
ヒュー・グラント助演
それにしてもメグ・ライアンは『戦火の勇気』以来, 本当にいい女に
なってきましたねえ...
なんとも言えない荒々しさの中に独特な爽やかな色気があって
この映画の最大の収穫かなあ...
それに引き換え Jr ってなんて存在感がないの?
何で彼を使うの?
それともう一つの収穫は, ヒュー・グラントの嫌らしい顔の
何と良く似合う事よ.
『9ヶ月』とか『いつか晴れた日に』(この映画は個人的には
いつも喋りすぎるエマ・トンプソンが押さえた演技をしていて
好きですが)とか, いつも中途半端な2枚目ばかりで『モーリス』
ファンをがっかりさせてきたヒュー・グラントが
『ウェールズの山』で正統的2枚目になってきて,
この映画で一段と成長したようです.
私の持論では, 2枚目俳優は悪役で演技を磨くべきなのです.
キアヌ・リーブスでもケネス・ブラナーの『空騒ぎ』が大変よかったし,
ジェレミー・アイアンズも『ダイ・ハード3』が大変よかった.
それにしても精神病院で患者を寝せるために血を抜くとは...
でもまあ, 睡眠薬を乱用するのとどちらが危険かはわからないが...
モーツァルトも血を抜かれすぎて死んだことだし...
- 今晩深夜テレビで, ウィノナ・ライダー主演の
『シザース・ハンド』以前の
『スクエア・ダンス』という映画をやっていた.
13歳の役なのでたぶんそのくらいの歳の頃の映画であろう.
ロブ・ロウも出ていたし, 入浴シーンが新鮮であった.
この映画のウィノナ・ライダーをそのまま大きくすると
今のになりそうなので, 昔から芸達者だったんだなあ...
ちなみに私の子役映画のベストはだいたい次のように
なります.
『ピン・ボールの魔術師』
ルイ・マン監督の『プリティー・ベィビー』以前の
小学生のブルック・シールズが素っ裸で走り回っていたのが
新鮮だった.
『ケープ・フィアー』
何といっても, この映画のジュリエット・ルイスを
このまま大きくすると『ナチュラル・ボーン・キラー』や
『フロム・ダスク・ティル・ダーン』になります.
『オーケストラの少女』
豊田高専に勤めていたときに学生とよく授業をサボって
ビデオで投影してこの映画を見ていました.
意外に今の学生でも, このような映画は見ますよ.
名指揮者ストコフスキーのおっかない顔に
タビア・ダービンはピッタリだったですなあ.
そして最後に人生の喜びを歌い上げる名曲
『トラビアータ(椿姫)』の歌声.
この映画でこの歌詞の素晴らしさが分かった次第です.
(もっともオペラ『椿姫』ははじめに人生の
素晴らしさを歌い上げて, 後はどんどん落としていく
内容ですがねえ.
そう言えば『プリティー・ウーマン』でリチャード・
ギアーが連れて行くオペラが椿姫だったよナア...
これって...)
『綴方教室』
この映画の高峰秀子は本当に天才だったです.
番外として外国の映画監督にもファンが多い
『生まれては見たけれど』の突貫小僧
(本当にこういう芸名なんです)は凄いの一言.
オズ安二郎監督は戦後ののんびりした映画が日本では
有名な気がするのだが, 戦前の映画の方が
よっぽど切れ味が鋭く凄い映画の気がするが.
(たとえば『父ありき』なんて, 完全に
『リバー・ランズ・スルー・イット』にパクられたんじゃ
ないのかなあ.)
これだけお客さんを引き付ける力があるからこそ,
戦後ののんびりした映画でもとりあえず最後まで見る気に
なるんではないか...
- 『身代金』, ロン・ハワード監督,
リチャード・プライス脚本,
メル・ギブソン,
レネ・ルッソ主演
脚本はなかなかの出来だと思うので, まあ誰が監督しても
こんなものであろう.
リチャード・プライスは前作『クロッカーズ』が
なかなか凄かったので(監督が(たしか)『マルコムX』の
スパイク・リーということもあるが)期待感十分である.
あとは『I Shot Andy Warhol』でアンディー・ウォーホール
を撃ったソラナスさんはこんなところで誘拐犯に
落ちぶれていたのね, とか, ニック・ノルティーの
息子は似ているなあ, とか...
それと, 『ラストマン・スタンディング』で胡散臭い
名前の代表の「ジョン・スミス」はこの映画でも
ヤッパリ胡散臭いことになっていたので, やっぱり
アメリカ人にはそのように感じるのかなあ, とか...
- 『パラサイト・イヴ』, 葉月里緒菜主演
きっと原作は面白いんだろうなあ...
まあ葉月里緒菜の光り輝く(小ぶりで形の良い)胸が
見れたのだから
よしとするか...(でも『南京の基督』の...までは
いかなくても『おこげ』の...くらいのヌードはあっても
良いのに...)
それにしてもヌードであれだけ動き回って胸しか
見えないのはやはり不自然だよなあ...
だいたいが, ミトコンドリアが反乱すれば,
それは『インディペンデンス・デイ』ぐらいには
凄いことになりそうなのに, 起こったことと言えば
学会で女が変なことを口走るとか, 人体発火が起こるとか,
せこい事件ばかりで, これじゃあサイエンス・ホラーでは
なくて2流のオカルト映画ではないか, と思ってしまう.
せめてレバーを塩焼きにして食べるとか,
『寄生獣』並みに頭でもパックリ割れれば面白かったのに.
- 『ラストマン・スタンディング』,
ウォルター・ヒル監督, ブルース・ウィルス主演,
クリストファー・ウォーケン助演
なにせ原作があの黒沢明の『用心棒』なので,
どうしても比較されてあちこちで評判が良くないのですが.
エグ味では『荒野の用心棒』にかなうわけないし,
カッコ良さやスタイリッシュではコーエン兄弟の
『ミラーズ・クロッシング』に勝てるわけないし.
そもそも映画の出来自体を考えた場合に『用心棒』が
完璧なので分が悪い.
そんなこと気にせずに単に映画として見れば
なかなかの出来だと思う.
何といってもウォルター・ヒルのアナログな演出
(今時撃たれて吹っ飛ぶ人間をスローでは見せんと思うけど)
にライ・クーダーのギターはピッタリだった
(ジャームッシュ監督の『デッドマン』のニール・ヤングの
ギターを彷彿させる).
まあラストぐらいは
『荒野の用心棒』ぐらい(バック・トゥーザ・フューチャー
でもパロっていましたが)
にはもう少し工夫しても良かったかも.
ストーリー展開も甘い(たとえば何故女を助ける必要が
あるのかこれでは納得できんぞ)
ところがあるのだが,
まあクリストファー・ウォーケンの怖さに免じて許そう
(それにしてもタランティーノ原作の『トゥルー・ロマンス』
の中でオペラの曲をバックにクリスチャン・スレータの
父親とのやりとりは, 本当に恐かった).
それにしても「ジョン・スミス」という名前は
『ポカホンタス』以来胡散臭い名前と思っていたけれども
「桑畑三十郎」と同じくらい胡散臭かったのね.
『用心棒』ではジャイアント馬場が重要な役割を演じて
いたので, 私としては(アメリカのプロレスラーの)
アンダー・テイカーとか(死んじゃったけれど)ブルー・ザ・
ブローディーくらいにやってほしかったなあ...
それと水戸肛門がやっていた居酒屋の主人とか
棺桶屋とか細かいキャラクターでは『用心棒』が
絶品であった.
ちなみに『7人の侍』(これは別格なので)以外の
私の好きな
黒沢映画を上げておきます.
『椿三十郎』
笑って泣けて最後の決闘で度肝を抜かれる.
また奥方とか小林某さんの捕虜ぶりとか, それぞれの
キャラクターが実に光っている.
とにかく何もかもが破格に完成度が高い
日本映画を代表する傑作だと思う.
『生きる』
この映画と『椿三十郎』の2本立を超満員の映画館で見て
私は映画の虜になりました.
何故見に行ったのかというと, 河合塾の牧野先生という
方に薦められたのです(もちろん浪人中, 授業をサボって).
『酔いどれ天使』
エルマン・ノルミ監督の『聖なる酔っ払いの伝説』のように
アル中が主人公の映画は好きですが, この映画は
酔いどれ(志村喬)ではなく若き三船が本当に凄かった.
そしてヤクザの描きかたの(本当なんだけれど)容赦ないこと.
今こんな映画を作ったら(『ミンボーの女』の伊丹監督の
ように)後ろから刺されるよ.
『隠し砦の3悪人』
黒沢映画の中ではおそらく一番面白い.
何しろ主人公たちは一定時間経つと必ず危機に陥るのに,
それが実に巧みな方法で助かるのである.
ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』の元話と
しても有名(ほとんど同じなので原作と言っても
いいんじゃないかなあ)であるが,
R2-D2 と C3-PO の原形がこんなんだったとは...
番外編として山本カジロウ(字がわかりません)監督の
次の作品はぜひ上げておきたい.
『馬』
黒沢が助監督として撮影している戦前の映画.
映画の出来が物凄く良い.
こんなのと比べると今の日本映画は駄目だ
(私はそれほど思わないが)といいたくなるわなあ...
『銀嶺の果て』
黒沢が脚本を書いているのだが, 日本にこんな本格的で
本物のスキー映画があったとは驚きである.
当時の器材のことを思うと, 撮影は本当に大変だったと思う.
まだダイヤの原石だった頃の三船を見ることができる.
(最近も名古屋の木下ホールでやっていたが,
本当に今池界隈は渋いナア...
まあこれらの映画は映画館で見れるときに見ておこう)
- 今日の夕刊でアカデミー賞のノミネートの
発表があったが, 『ファーゴ』がいっぱい入っていて
うれしい.
『エビータ』はまったく入っていなくて
やっぱり, かな...
- 『フェティッシュ』, レブ・ブラドック監督,
アンジェラ・ジョーンズ,
何とか ボールドウィン主演
主演の何とかボールドウィンは, きっと
別のボールドウィンの兄弟であろう.
なんかゾロゾロいそうだなあ, この兄弟も.
とにかくこの映画の面白さをどのように伝えたら
良いのであろうか!
はじめは何となく盛り上がらないのであるが,
だんだんじわりじわりと効いてきて,
最後30分は絶品なのである.
まあ内容は見てのお楽しみ.
元々は監督がアンジェラ・ジョーンズ主演で撮った
短編映画がタランティーノの目に留まり映画化になった
という, 最近よくあるパターン(タランティーノの
『レザボア・ドックス』やブライアン・シガーの
『ユージュアル・サスペクト』も広い意味で
このパターンと思うのだが...)であるので,
アンジェラ・ジョーンズはまさにピッタリのはまり役
である.
なおよけいなお世話かもしれないが, ラスト・クレジットは
最後まで見ましょう.
- 『花の影』, チャン・カイコー監督, コンリー,
レスリー・チャン主演, クリストファー・ドイル撮影
ウーン, このメンバーなら『さらば, わが愛〜覇王別姫』
以来だから, さぞや見たい人は人は多いだろうなあ.
しかも撮影があのクリストファー・ドイル.
でも内容は...だったのよねえ.
チャン何とか監督, コンリー主演で20世紀はじめの上海の
ギャング団の話とくれば, どうしても去年見た
『上海ドール』と比べてしまうのだけれども,
まあ何もかも『上海ドール』の方が上のような気がする.
ましてや『さらば, わが愛』と比べるのはあまりにも...
私の個人的趣味としてはとしては,
この監督の『子供たちの王様』の
あのあまりにマニアック(?)な授業風景が好きなのですが,
どうもこの監督は(もう一人のチャン何とかと違って)
3割バッターというわけではないですねえ...
最後に.
私は個人的には香港人が英国名を名乗るのは嫌いです.
レスリー・チャンならまだ許せるのだけれども,
どこから見ても立派な東洋人顔で, デビッドとか
ケビンとか, 何とかしてほしい.
- 話は逸れますが, 真防正行監督の才能を一躍
『変態家族兄貴の嫁さん』で
見出した映画評論家の蓮實重彦さんが, 東大新学長に
選ばれたのにはたまげた!
どっかの大学の先生だとは思っていたけど, 東大だとは...
- 『エビータ』, アラン・パーカー監督,
アラン・パーカー, オリバー・ストーン脚本,
マドンナ, アントニオ・バンデラス, ジョナサン・プライス
主演
この顔ぶれでラテン・アメリカの話
(私は少なくとも『予告された殺人の記録』とか『赤い
薔薇ソースの伝説』くらいには期待した)となれば,
もうワクワクドキドキのはずなのだが, それがどうも
テンションが上がらないのです...
これって, とてもアントニオ・バンデラスが歌っているとは
思えない吹き替えが悪いのか, マドンナの能天気な演技
(まあ, エビータという役柄自体が能天気なのだが)が
悪いのか, それともドリカム並みに覚えにくメロディー
を作曲した人が悪いのか...
とにかく一生懸命歌っているのはわかるのだが,
アンドリュー・ロイド・ウェーバー(って「キャッツ」の
作曲者ですよねえ)の曲にぜんぜん乗れないのです.
本当にこんなに分かりにくいメロディーで,
これって, ミュージカルの舞台として成功したのかなあ...
このように全ての台詞を曲に乗せるミュージカル映画
としては
『シェルプールの雨傘』なんかがあると思うのですが,
今思い出せばいかにミッシェル・ルグランの
音楽が素晴らしかったか, ということなのかなあ...
収穫としてはジョナサン・プライスの渋い演技が見れた
ことくらいかなあ...
- 『アンフォゲタブル』, レイ・リオッタ主演
今では信じられない話だが, ほんの数年前まで名古屋では
ほとんどの映画が(ロードショウも含めて)
2本立てで見れたのです
(名古屋人がけちだからという説が有力です).
おかげさまで, 見たくもない映画も沢山見れましたが,
その中にはリュック・ベッソンの『グレート・ブルー』
(後に完全版『グラン・ブルー』になりましたが)とか
テリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』なんかが
あったわけだから馬鹿になりません.
エマニエル・ベアールがまだ17才くらいの時のヌードが
見れる『愛と宿命の泉』なんか, 1部2部の2本立てで
ロードショウやってました.
さて, この映画も次に書く映画のオマケで見たのですが,
これがなかなか良かった.
レイ・リオッタも『フィールズ・オブ・ドリームズ』の
ころの独特の目の光が半分くらい戻り
(でも肌は汚くなり歳を取りましたなあ...)ミステリアスな
雰囲気が良く出ていました.
しかし, こんな人体実験したら物凄い副作用がありそうだ.
まあ脳内ホルモンはほとんど麻薬みたいなもんだし,
あんなものはじめに注射した時点でぶっ飛んじゃった
だけなのかも知れないなあ...
- 『痩せゆく男』, スティーブン・キング原作
私の奥さんが「あー恐かった!」と言っていたので
見に行ったのだが, 私はあんまり恐くなかった.
キング原作だとどうもモダン・ホラーと言われる物は
恐くないのかも(『シャイニング』だって公開された当時は
『恐くない = つまらない』という評判だったような
気がするし...).
ちなみに私の中でのキング原作のベストの映画は
次のものです(時代順).
『シャイニング』(奥さんの役をやっていた人は, 後に
ロバート・アルトマン監督, ロビン・ウィリアムズ主演
で実写版『ポパイ』(それにしても凄い顔ぶれですね)を
やった時に, オリーブそのものだったのに
ビックリしたが...)
『ミザリー』(これは本当に恐かった)
『ショーシャンクの空に』(ティム・ロビンスは単に背が
高いだけの男かと思っていましたが, この映画で見直した)
『黙秘』
- 『ジェリコー・マゼッパ伝説』, バルタバス監督
これは正確には2月に映画館で見た映画ではないです.
たまたま2月4日に衛星放送でやっていてなつかし
かったので, ここで書いています.
この映画を見たのは去年か一昨年, 場所は名古屋の
シネマ・テーク(ちなみに, この映画館は自主映画館では
日本唯一35mm映写機を自前で持っている映画館だというのが
名古屋の自慢なのだが...)で見ました.
さて, この映画はまったく見に行くつもりが無かったのに
見てしまった類の映画です.
見てしまって, 『なんて凄いものを見てしまったんだ』
と思う映画です.
見に行った動機は「マゼッパ」という名前が引っかかった
だけなんですけどねえ...
私の大好きなピアノの曲にリストの「超絶技巧練習曲」
というのがあるのですが(名前だけでも凄いですねえ..),
この中に「マゼッパ」というのと「雪」という
いかにもリストにふさわしい寒々とした曲がありまして,
私は大好きです.
でまあ, この名前に引かれて見に行った映画は,
「ジンバロ」の映画なのです.
で「ジンバロ」というのは何かというと,
「騎馬オペラ」なのです.
このジンバロについては, 最近はアエラに「アメリカに
上陸し, 大好評」だとか, 某芸能人がヨーロッパまで
ちょくちょく見に行っているとか, まあ知っている
人だけが知っているものなのです.
「騎馬オペラ」とは, 今のサーカスの前に19世紀に
存在したもので, 馬の騎馬の技術を民族音楽に載せて
見せるものです.
でもこんな説明よりも, 映画を見て驚くのは,
彼らの気高さです.
どうしてもサーカスというのはフェリーニの『道』のように
気高くないイメージが付きまとうように思えるのでが...
(まあ現在はそんなことはないと思います)
しかしジンバロは, 当時の貴族の待遇のはずである
軍人からも尊敬されているのです.
まあ, とにかく, 世の中にはこんな映画もあるのですねえ...
一見の価値あり.
以下は1月に見た映画です.
- 『リチャードを探して』, アル・パチーノ監督 制作 主演, ウィノナ・ライダー主演
アル・パチーノがシェイクスピアのリチャードV世を演じるために
色々と苦心する様子をドキュメンタリーのように(それとも本当に
ドキュメント?)追っていった映画.
アル・パチーノは『スケアクロウ』
以降はどうも演技過剰に思えるのは私だけであろうか?
(それでながらくアカデミー賞が取れなかったように
思えるのだが...)
それで, この映画のようにドキュメントタッチの映画に
彼の演技過剰は合うのだろうかとはじめは思ったのだが,
意外と良かったのですこれが.
これからは, おもにこの路線を狙ったら面白いと思います.
ウィノナは出番こそ少なかったが, なかなかこれが
シェークスピアの演劇をシリアスに
演技して良かった. 『ナイト・オン・ザ・プラネット』のようなのも
良いけれど, こういうもまた良い.
こういった映画が面白いかどうかはともかくとして,
こういった映画が勉強になることは確かである.
とにかく2時間だまって座っているだけで
シェークスピアのことがわかったような気にさせるのは
偉いと思う.
- 『カンサス・シティー』, ロバート・アルトマン監督, ジェニファー・ジェイソン・リー主演
これはなかなかに映画らしい映画でして, 私はこういう映画は大好きです.
まず音楽のジャズが良いですねえ...
そして『ザ・プレイヤー』以来, 映画らしからぬ映画ばかり監督していたロバート・アルトマンが, なんて映画臭い映画を作ったんでしょう.
惰性で作った『プレタポルテ』や『ショート・カット』よりも, やはりこの人はこういった映画の方がよいと思います.
ジェニファーはキャッシー・ベイツと名演技した『沈黙』のような自然な演技も良いですが, このような作り過ぎた表情もなかなかですねえ...
『ブルックリン最終出口]』の時は何がなんだかわからんかったが.
- 『クラッシュ』, クローネンバーグ監督, デボラ・アンガー, ホリー・ハンター主演
この映画を見終った後に映画館の中に充満したため息は何だったんだろう...
とにかくカップルで見に来ているのが多かったですなあ. うらやましい.
ホリー・ハンターはほかっておいて, とにかくデボラ・アンガーがよかった.
それにしても交通事故フェチというのは, まさしく全身創痍で快感を感じるのですね.
- 『I shot アンディー・ウォーホール』
元祖ストーカの映画.
彼女は完全にウォーホールを誤解している.
彼は誰かに何かをしてくれる類の人間ではないのに...
でもあの時代の雰囲気が楽しめるので, 私は好きな映画です.
- 『大地と自由』, ケン・ローチ監督
きっとこれは素晴らしい映画なんだろうなあ...
でももう少し見る人のことも考えてくれてもいいのに...
やや飽きたです.
- 『ピノキオ』
これはなかなかの映画でした.
テレビ版のスパイ大作戦で変装の名人だったマーティン・ランドーも『エド・ウッド』に続いて上手に化けているし.
- 『ジャイアント・ピーチ』, ティム・バートン監督
ティム・バートンは大好きなのだが, 個人的にはこの映画はあわなかった.
次のマーズ・アタックに期待します.
そういえばこの映画の前にやっていた短編映画はティム・バートンのブラックな好みが上手に出ていて面白かったのに.
- 『train spotting』
こういうろくでなししか出てこない映画は好きです.
しかもエディンバラの街をイギー・ポップの曲にあわせて逃げるなんてなんておしゃれなんでしょう.
とにかくスコットランド・ファンの私にはたまらん映画です.
ちなみに私はインバネスで危うく麻薬を飲まされそうになったのだが, どうもイギリスでは簡単に麻薬が手に入るらしい...それにしても本当にろくでなししか出てこんなあ...
- 『死の王』
ドイツ語でやっていたのできっとドイツの映画であろう.
ドイツ人のメンタリティーで死体で作るとこうなるのね...
あまりにもあの死体は凄すぎるなあ...
でも飽きたぞ!
- 『太陽と月に背いて』, アニエスカ・ホランド監督, レイナルド・ディカプリス主演
ホランド監督は個人的には『秘密の花園』が好きです.
シリアスな映画はシリアスすぎてどうも...
それにしても詩人とは結婚してはいけないですね.
『ヴェルレーヌがこんなにランボーものとは...』という映画.
- 『ファーゴ』, コーエン兄弟 製作・監督
やっとコーエン兄弟のまともな映画を見れて嬉しいですわ.
内容の面白さ, 脚本の巧みさ, 俳優のあまりに個性的な顔, と見所おおい映画であるが, 私はとにかく妊婦が雪の上を歩く度に『あっ!危ない』と思い, 最後まではらはらしていました.
- 『クロッシング・ガード』, ジャック・ニコルソン主演, ショーン・ペン製作・監督・脚本
『デッドマン・ウォーキング』で泣きまくっていたショーン・ペンだが, あれは彼の本性だったのね...
それにしても, あまりにセンチすぎてついていけないのだが...
- 『Focus』, 浅野忠信 主演
やっぱり映画は脚本だよなあ... ということだと思う.
もうめちゃくちゃカッコイイ映画.
今年の邦画のベストかもしれない.
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