KYUMA, Eido HOMEPAGE for movie 1998
久馬栄道の全く個人的な映画の感想 1998年版です
last updated Jan.11,1999
ホームに戻ります
これは久馬が映画館で見た映画の個人的感想です.
下に行くにしたがって古くなっています.
感想ください
E-mail:
kyuma@dpc.aichi-gakuin.ac.jp
過去に見た映画の検索用に、
名前のリスト
を作りました。
どうぞご利用ください。
以下は12月に見た映画です
- 『ルル・オン・ザ・ブリッジ』
あの『スモーク』の原作のポール・オースターが、
原作、脚本、監督をした映画。
実にポール・オースターらしく、話が作り込まれています。
『僕は君のために死ねる』という言葉は、
最高の恋愛言葉なのかも知れませんが、
実際のところ、本当に死んだ人は私の廻りにいないこともあって、
ややもすれば、リアリティーを失いがちです。
古くは漫画『愛と誠』で、ガリベンの副主人公が言っていましたが、
このシーンはすぐにリアリティーを失い、
小林まことの名作『1・2の三四郎』でパロディーとして使われる
始末です。
このように、使われ方次第で失笑すら誘う危険な言葉を、
そこは実にポール・オースターらしく鮮やかに料理しています。
主人公のミラ・ソルビーノの怪しい雰囲気もいいけれども、
口の曲がったジーナ・ガーショウも私の好みです。
ただハーベイ・カイテルは、胸毛が濃すぎます。
- 『私のバラ色の人生』
主人公の少年は小さな頃から女装癖が有り、さまざまな問題を引き起こす、
という映画でして、まあ極めて現代的なテーマです。
最後は何となくハッピーだけど、なんか割り切れないものも有りますねえ。
- 『ニルヴァーナ』
イタリアのサルバトレス監督による、近未来サイバーパンク映画。
なかなかの出来でした。
『ブレード・ランナー』なんかよりは、こっちの方が好きです。
テレビ・ゲームの主人公がコンピュータ・ウィルスの影響で
意思を持ってしまう、という内容なのですが、これがなかなか
一筋縄ではいかない内容となっています。
- 『プリーチング』
いやあ、とにかく今のイギリス映画は元気が有る。
ボンデージ、SM、ピアッシング、何でも有りの映画でして、
とにかく、そういった人達がてんこもりで出てきます。
主人公のグィネヴィア・ターナーが、とにかく良いです。
それにしても、普通SMなんかだと、やけに暗い映画が多いですが、
ヨーロッパでは、歴史の違いからか、明るいんですねえ。
とにかく観る価値アリ。
- 『死の王』
去年見たのですが、もう2度と観ることはないと思っていたのですが、
『プリーチング』との2本立てで、見てしまいました。
段々人間の死体が腐って行く映画で、本国のドイツでは上映禁止、
フィルム没収となった映画なのですが、最後のエンド・ロールを
見ていると、特殊効果の人間が出てきますので、
やっぱりあれは特撮なのでしょうねえ...
- 『ゴダールのリア王』
あのゴダールだからなあ。
見に行こうかどうしようか、結構迷いました。
で、観て後悔しました。
私達が大学生の頃は、
何か難しい本を読んだり、難解な映画を見るのが、
(拷問のようでもあり)大学生のファッションだったりしたものです。
もっとも、それをどのくらいの人が理解していたかは
疑問ですが、とにかく難しいものに取り組むのが良いんだ、
という風潮だったですねえ。
現在、大学で教えるようになって、
そう言った風潮はあまり良いものではない、
と思っています。
わけ分からないものを作り出す人と言うのは、
大学教授などでは、自分がわけが分かっていない場合が多いのです。
本当にわけの分かっている大学教授は、
『難しいことを易しく、易しいことはより深く』するものです。
まあ、ゴダールがわけが分からず作っているとは思えませんが...
確かにゴダールの長編デビュー作『勝手にしやがれ』は
画期的だし、今では多くのコマーシャルでその映像表現が
使われてしまっていて、何が画期的か分からなくなっていますが、
それぐらい影響力が有ったわけです。
ところが、最近はコマーシャルや音楽ビデオ出身の優れた
映像作家が出てきて、
『ダーク・シティー』を見ても分かるように、
彼らは革新的な映像で、しかもわかりやすいのです。
現代、芸術的と言われる『プロスペローの本』なんかでも、
ゴダールに比べれば分かりやすいです。
とにかく、今見ると何て変な映画を撮ったものよ、
でもゴダールだから、ありかな。
見所は、そもそもこの映画は脚本をノーマン・メイラーが
書く予定だったのですが、1晩で喧嘩別れしてしまって
破綻した、と言う経緯があるのです。
その罪滅ぼしと言うわけでも無いでしょうが、
ノーマン・メイラー親子が本人の役で出ています。
その外、ウッディー・アレンはなぜこんな所にいるのか、とか、
ずいぶん安く撮れるのに、と思ったら、
140万ドルもこの映画にかかってる、とか、
わけのわからなさは格別です。
- 『ナイト・ウォッチ』
イアン・マクレガー主演のサスペンス。
はっきり言って恐かった。
というよりも、掟破りの手法です。
もっとも『セブン』のように完全な掟破りではなく、
映画として許容できるぎりぎりの範囲ではないでしょうか?
監督はオール・ボールネダルで、
彼はオランダで『モルグ』という映画を大ヒットさせ、
そのリメークとしてハリウッドで本作を作ったわけです。
ですから非常に脚本(あの、ソダーバーグも協力している)
とか背景の使い方(ガラスに映った姿の使い方など)とか、
洗練されていまして、
初めから完成度の高い作品となっています。
その脇を固める俳優陣がまた豪華で、
プロデューサの力の入れようが、伺い知れます。
まず、フランケンシュタイン顔のニック・ノルティーの
圧倒的な説得力。
ユアン・マクレガーの恋人役に、『トゥルー・ロマンス』が
大変印象深かったパトリシア・アークエット。
彼女がスタイルも表情もだらけきって演じた『アメリカの災難』は、
ここ何年かのベストのコメディーでしょう
(ただデビット・リンチの『ロスト・ハイウェイー』はわけ分からなかったけど)。
その『アメリカの災難』で競演したジョシュ・ブローリン。
なかなか実力派の俳優を揃えた物です。
あと、メイン・タイトルをデザインしたカイル・クーパーは
好きです。
なかなかメイン・タイトルも見ものです。
- 『従姉ベット』
従姉の名前がベットなのですが、
これをジェシカ・ヤングが演じていまして、
なかなかのブ女ぶりで、良かったです。
モーパッサン原作で、19世紀のフランス、
したたかにたくましく生きるベットの復讐物語なのですが、
ベトベトせずに、かるやかな音楽に乗って、実に鮮やかに
復讐するのです。
まあ、出てくる女の全てたくましいこと。
男は全てわき役ですねえ。
特に、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』では
単にかわいいだけだったのに、
ポール・バーホーベンの『ショウ・ガール』や
『リービング・ラスベガス』ではえらく成長した
演技を見せてくれたエリザベス・シューの
お尻は良かったです。
- 『地球は女で回ってる』
あのウッディー・アレンの最新作。
今回は作家の役と監督をしています。
それにしても彼のジョークで満ち満ちていまして、
とにかく、来るところまで来てしまった感じですねえ。
かつてはヒット作を作ったのだが、最近スランプ気味の
作家のハリー。
彼の作品の登場人物は、彼の身近な人が
モデルなことが多いので、
彼は廻りからは殺したいほど嫌われています。
で、そのうち小説と現実の区別がつかなくなり、
チンプンカンプンな世界に取り込まれて行くのですが、
なかなかこの作家、一筋縄ではいかないのです。
とにかく現実と小説中の人物が出てきますから、
登場人物の多いのには参りますが、
そのぶん個性豊かな俳優
(デミ・ムーア、ビリー・クリスタル、だいぶぼけてても必ず分かる
ロビン・ウィリアムズ等など)が多数出ていまして、
なかなか楽しいのだが、
私は途中でわけが分からなくなって困った。
- 『キュリー夫妻』
言わずと知れた、あのキュリー夫妻の伝記映画。
正統的なカッチリ作られた映画でして、
つまらないかと思ったら、これが以外と良い出来でした。
まあ原作は舞台劇で、きっちり作り込まれていますから、
誰が作ってもある程度の出来には、なりますが。
日本では黒柳徹子(ぴったりですねえ)が主演で、
かなりロング・ランしたらしい。
それにしても科学が抱える問題というのは、
100年以上前から、何も変わっていませんねえ。
- 『始皇帝暗殺』
古い時代の中国を描くというのは、以外と大変ではないだろうか?
我々がよく知っているべん髪とか、チャイニーズ・ドレスなどは、
みな遊牧民族の風習で、遊牧民族が中国に王朝を立てた
元以降だから、それ以前に中国人がどのような格好をしていたか、とか、
どんな髪型をしていたか、などというのは、日本人はほとんど
知らないかも知れない。
今回は中国で作られたので、そう言ったことも、ちゃんとしているのだろうが、
結構違和感が有って、楽しかった。
でも始皇帝って、あんな人物だったのだろうか?
私にはだいぶ疑問が残る(特に始めの方で、飛び跳ねて来るあたり)。
監督は陳凱歌。
この人の演出に、そつがあるわけはない。
見事な映像。
これほど多くの人間を動員することは、人件費の高い国では
ほとんど不可能であろう。
これだけの大セットにこれだけの人の多さ。
これだけでも観る価値はある。
でも、どうしてもデビット・リーンなんかの、大作が山ほど作られた
時代と比較してしまうと、沢山人がでてくるシーンに
ムラが有るのです。
後の戦闘シーンで、あれほど人を出すのだったら、
始めから出せば良いのに、と思ってしまいます。
それでも『ベンハー』の競技場よりも広いところで
撮影された映像は、圧倒されますが。
- 『トゥルーマン・ショウ』
映画というのは、しょせん虚構の世界なわけで、
その中でどのくらいリアルかが勝負なのですが、
この映画は初めからそれを逆手にとる、
面白いです。
でも、何よりも、ジム・キャリーが演じすぎていないのが良い。
いよいよもって、大スターの王道を歩き出した風格さえ
感じられます。
ただ、これだけスケールの大きな話しなのに、
以外と小さくまとまってしまったのは残念です。
あと、溺れそうになったときに、後ろから撮る映像は、
どこにカメラが有ったのだろうか?
- 『ダーク・シティー』
今、一番お勧めの映画。
初めはミステリー仕立て。
虚構と現実の狭間で、人間の不安を上手く表現しています。
それが、どんどんスケール・アップして行き、
とてつもないストーリになって行きます。
このスケールの大きさは、夢野久作の『ドグラ・マグラ』
(ただし桂シ雀が主演した映画ではなく小説の方)に
匹敵するんじゃあないだろうか。
映像表現もすばらしいの一言。
虚構と現実では『トゥルーマン・ショウ』も同じようなテーマですが、
こちらの方が遥かにすばらしい。
トレバー・ジョーンズの音楽は、同じことの繰り返しで退屈なものが
多いのですが、今回はサンプリング音を駆使して、
『クリフ・ハンガー』以来の良いできです。
ただ、ブランキー・ジェット・シティーの音楽だけはいただけない。
こういう使い方は良くない。
これだけすばらしい映像に、ただ乗りした感じです。
昔『風の谷のナウシカ』で安田成美が歌った
(もう誰も覚えていないだろうけど)ようなものです。
ブランキーの音楽自体はすばらしいので、独自で
ビデオ・クリップを作ったら良いのに。
以下は11月に見た映画です
- 『イヤー・オブ・ザ・ホース』
ニール・ヤングのバンドをジム・ジャームッシュが
ドキュメンタリーで取った映画。
昔、60年代のアメリカのロックというのは、
クリーデント・クリアーウォータ・リバイバル(C.C.R.)なんかに
代表されるように、汚い感じがしたものです。
でもその中でも、ニール・ヤングは妙にあか抜けした、
ハイ・センスな感じがしたものです。
今回、最近のニール・ヤングを見るに、
20年かかって、あの汚い感じに同化してしまったか、
ということですか。
音楽自体は相変わらずすばらしいのに、
どうなっているんだ。
特に、あのズルズルの単パンは止めて欲しいなあ。
音楽はお勧めなので、目でもつぶって観てください。
- 『アンツ』
コンピュータ・グラフィックを駆使して、
アリの世界を実にドラマチックに描いた作品。
C.G. というのは、C.G. しか出来ないことに
使うべきだと思っていましたが、
この映画の、アリの大群衆(6万匹)のシーンは、
正しい使い方です。
『ムーラン』の雪の中で馬が走るシーンもそうなのですが、
やっとさりげなく使えるようになりました。
まあ、昔トールキン原作の『指輪物語』映画化するのに、
莫大なお金(あれはC.G. ではないですが)をかけて、
大失敗したことも有りましたが、
やっと、まともなものが見れるようになりました。
- 『裏町の聖者』
日本で人気の漫画『Dr. クマひげ』を元に、
最近『不夜城』で人気のリー・チー・ガイ監督が、
昔取った映画。
この監督、『世界のはてに』は女優の目付きが悪いのが
災いしていましたが、
今回はトニー・レオンが実に良い味出していまして、
こういった映画が好きな人には、良いでしょう。
- 『大閲兵』
『さらば我が愛』で有名な陳凱歌監督が、こんな中国共産党のための
国策映画を取っていたなんて。
と言ってもさすがに名監督、とても面白い。
これは、中国のある部隊が、天安門広場の閲兵式に出るまでの、
無意味で苦しい訓練の模様をドキュメンタリー・タッチで
取ったもので、昔から見たいと思っていましたが、
やっと見れました。
まあ中国の監督の場合、国の要請により、こういった物を
取らなければならないことは、しばしばらしいですが、
それにしても良いできです。
- 『ハーフ・ア・チャンス』
まあアラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドが出るとなれば、
内容はともかく、見に行かないわけには行かないでしょう。
でも監督はパトリス・ルコント。
この人にソツが有るわけないし、実に見事な出来でした。
私は、落ち目な俳優を何人起用しても、
駄目なものは駄目だと思っていましたので、
なかなかの驚きです。
最近は音楽でも、昔有名だった人が、色んな人と組んで
コンサートをやっていますが、1人でパワーが有ったときにかなうわけがない
場合が多いように思います。
大学生になってから見たジャン・ポール・ベルモンドの映画と言えば、
リバイバルでゴダールの『勝手にしやがれ』『きちがいピエロ』
(『きちがい』は差別用語なので、使って駄目なのかなあ。映画の
本などには、このまま使われているが)なんかで、
わけ分からない人を演じていましたが、
そう言えば、小学校のとき、『華麗なる大泥棒』とか
『おかしなおかしな大冒険』なんかで、
完全にアクション・スターだったのを、思い出しました。
当時はフランス映画は、今と違った意味で元気が有って、
エンターテイメントな映画を数多く作っていました。
アラン・ドロンなんかより、外国では人気が有ったというのも、
分かります。
まあ、どちらにしても、パトリス・ルコントが映画を作って、
つまらないものを作るわけは有りません。
絶対見る価値アリ。
- 『モンタナの風に抱かれて』
はっきり言って、この映画はお勧めです。
なかなかよくできた映画で、私は何回も泣いてしまった。
原題は『ホース・ウィスパラー』で、馬にささやく人の意味。
なかなか勉強になったのだが、馬は人間に飼われるようになる
新石器時代以前は、もっぱら食用に人間に狩われる物でして、
馬の深層心理には、人間は友達ではなく
狩う恐ろしいものという認識があるらしいのです。
ですから馬は深層心理では人間を恐れるのですが、
その恐怖を馬にささやいて取り除く、そう言った職業が
本当に何百年にもわたって、あるらしいのです。
現代でも、競馬で馬は友達、みたいなことを言ってますが、
勝てない馬はすぐソーセージ用の食用になってしまう
(9割とも言われていますが、はっきりした数字は分からないらしい)。
この間、有名な馬が競馬の最中に足を骨折しすぐ薬殺されて
カワイソウと日本中が悲しみましたが、
あんなの偽善もいいところで、
そんなのがかわいそうなら、食用になる競争馬はどうなのでしょう。
まあ競馬の世界に置いては、勝てないことが最大の罪悪なので、
その罪を受けた、というのでは、あまりにかわいそう。
少なくとも、勝つために利用できるときだけ利用するのならば、
馬と友と呼ぶのだけは、止めた方が良いと思います。
ところで、この映画は非常に優れた教育論でもあると思います。
まず、子供に問題がある場合には、多くの場合、
親の問題であることが多い、ということです。
この映画では、それと、馬の問題はその飼い主の問題である、
ということが二重になっていますが。
それと教育で一番大事なことは、待つと言うことである。
こんなことは、多くの教育の本に書いてあるのですが、
それの実践の難しさが書かれた本は少ないです。
だいたい普通の人間には、どう待ってよいのか分からない。
待つことと、ほかって置くことを混同している親も最近は多い。
まあ、この映画でも見て、勉強したら良い。
あと信頼がいかに難しいか。
なんかテレビなんかで教育論をやっていると、
今の教育が悪いのは信頼が無くなっている、なんてことを
簡単に言ってくれる人がいるのですが、
1クラス40人も生徒がいて、信頼関係が常に生まれるなんてことは、
私にはほとんど奇跡に思えるのですが。
それに昔は信頼関係があった、などと簡単に言ってくれるのですが、
昔だってそれはめったに無かったので、たまにあると
美談として今に伝わっているだけだと思いますが。
本当の信頼関係というのは、1対1の関係で作られるものだと
思いますし、それを学校の先生に期待するというのは無理じゃあ
無いかなあ。
まあたまたまそういう先生に巡り合えたなら、そういう先生は
大事にしましょう。
この映画の信頼関係は重いです。
物凄く重いです。
でも、それにたまたま巡り合えた主人公の女の子は幸せです。
結局、本当に信頼できる人に巡り合うには、
こういった1つ1つの本人の努力が大事なのではないでしょうか。
何でもかんでも、学校に押しつけたって、何も解決しません。
とにかく演技陣もすばらしいし、ロバート・レッドフォードは
『リバー・ランズ・スルー・イット』(でもこの映画、
戦前の小津安二郎の『父ありき』にそっくりだけど、誰も
言いませんねえ)
以来、すばらしい映画を作ってくれました。
- 『ブギー・ナイト』
1970年代後半から1980年代にかけて、
あるポルノ・スターの数奇な半生を描いた映画。
この時代は、まさに私の大学時代なので、
かかっている音楽がまず懐かしい。
でも、チョット長いかなあ。
あと30分は短くなるが...
- 『カンゾー先生』
去年、カンヌ映画祭で『うなぎ』でグランプリを取った、
今村昌平監督の最新作。
だいたい、有名な映画の次というのは駄目なケースが
多いのですが(黒沢明監督の『夢』や『8月のラプソディーなど』)、
この映画は結構お勧めです。
時代は第2次世界大戦末期、日本の田舎、結構皆真剣に生きているのだが、
どことなくゆとりというかユーモアがある。
何を診察しても肝臓炎という診断を下す医者を
柄本明がまじめに演ずる。
町の皆からはカンゾー先生と言って揶揄されているわけだが、
実は帝国大学を出てドイツに留学するほどの名医なのだ。
とにかく良く走る。
この走りっぷりは、タビアーニ兄弟の『グッドモーニング・バビロン』に
匹敵する走りっぷり。
この先生の脇を固める俳優陣も、なかなかの物である。
一見、医者のヒューマンな物語の形式を取っているが、
なかなか一筋縄では行かない人間ばかりなのです。
世良公則の外科医は、腕はいいのだが薬中で、この難しい役を、
自然に好演しています。
麻生久美子の演じるソノ子は、なかなかそのままで(お尻もセクシーで)
良かったです。
意外なところでは、ロマンポルノ監督だった山本シンヤも、
戦時中には居そうな勘違い人間を上手く演じています。
そして山下洋輔の音楽が、なかなか不条理な世の中の
気持ちを、上手く表している。
こういった芸術映画という物は、案外退屈と思われているのだが、
本当に評価の高い芸術映画というのは、隠し味として
ユーモアが必ずあるもので、それで最後まで見ることが出来る。
例えば小津安二郎なども、戦後は『東京物語』や『サンマの味』など、
一見退屈そうな映画なのだが、良く見ると実に巧みに
ユーモアが隠されていて、それでつい最後まで見てしまう。
それというのも、小津は戦前の無声映画時代は、アメリカのコメディー映画を
良く研究していて、『生まれては見たけれど』(私は小津の最高傑作だと
思っている)などを物にしているわけです。
だから、ユーモアも染み着いているので自然と出てくるんです。
この映画も、ユーモアのセンスというのはなかなかデス。
実は『うなぎ』も、考えてみれば悲惨な話なのだが、妙に肩の力の抜けた
ユーモアが評価されたんだと思います。
以外にジーンと来た台詞では、ソノ子が
『戦争になってからと言うもの、皆が自分のことしか考えなくなった』という
所です。
一般に戦争中、日本人は滅私奉公ということで、自分をなげうって
全員一丸となって働いたように思われがちですが、
なんか色んな資料を見ていると、そういう人はごく一部で、
やはり生活が苦しくなると、皆真っ先に自分のことを考える、
滅私奉公も、そうしないと自分の身が危ないので、
そのフリをしている、と言った感じを持っていたのですが、
やっぱりそうか、という所ですねえ。
というわけで、お勧めです。
- 『フラワー・オブ・シャンハイ』
19世紀末の上海の高級遊廓で繰り広げられる、女たちの物語。
監督は、ホー・シャオ・シェン。
とにかく小津安二郎を敬愛し、長回しする監督なので、
始めから延々とカメラは回ります。
徹底的にワン・シーン・ワン・カットの
見ようによっては極めて退屈な映像が続きます。
ところがこの退屈なリズムが、いつのまにか当たり前になり、
我々は遊廓での退屈なリズムと一体化しているのです。
ホー・シャオ・シェン監督のワン・シーン・ワン・カットの映画は
数あれども、この映画はある意味で、その完成形かも知れない。
しかし遊廓での毎日は退屈なのですが、
それはそれ、結構いろんな事件が起こるのです。
なかなか最後まで、予断を許さない展開となります。
面白かったです。
- 『雨あがりの駅で』
アーシア・アルジェント、ミッシェル・ピコリ主演。
ピーター・デル・モント監督・脚本のイタリア映画。
はっきり言って、ミッシェル・ピコリ以外馴染みのない人ばっかり。
内容は徘徊するボケ老人と、
その後をつけることを依頼された若い女性との触れ合いなのですが、
まあ私の実家にもボケ老人が居るのですが、
そんなあ、雨上がりの駅でにっこり笑って終われるほど、
現実は甘くないと思うのですが。
それにしても元気の無い映画で、最近のイタリア映画の低迷を
代表するような出来に思えるのですが。
最近のイタリア映画と言えば、思い付くのは
『ニュー・シネマ・パラダイス』か
『イル・ポスティーノ』くらいなものです。
それに比べれば最近のイギリス映画、フランス映画は元気ですねえ。
- 『ダイヤルM』
言わずと知れた、アルフレッド・ヒッチコックの名作のリメークです。
とはいっても、これほど有名な映画をリメークするのですから、
よほど考えた内容となっています。
事実私も、原作のことはしばし忘れて、映画に夢中になりました。
新聞の映画欄にも書いてありましたが、マイケル・ダグラスが
出てくると、だいたい映画の内容が分かってしまうというのも、
困ったものです。
でもグウィネス・パルトロウの美人なことで、許してしまおう。
彼女のあいまいな表情は、こういった役でないと、
生きてきません。
まあ『大いなる遺産』は失敗だったんじゃあないでしょうか。
- 『相続人』
ジョン・グリシャミ原作なので、やはり期待度は大きいです。
ケネス。ブラナーの控え目の演技はなかなか良かった。
もう『ハムレット』のような濃い演技は、どうでも良いですねえ。
でも題名で結末が分かってしまうので、
もうちょっと工夫した方が良いかも。
- 『マーチュリー・ライジング』
国家の暗号機密に関わる話。
それにしても、こういった話は十分おきうる話しです。
良くある話としては、新しい暗号を発明した大学教授などが、
その暗号の強度を試すために、
懸賞をつけて大学生に出題することがあります。
ですから、それを懸賞雑誌で行ったとしても、
さほど不思議ではありません。
また自閉症の人が、恐るべき知的能力を持っていることは、
映画の『レイン・マン』などでも描かれています。
あの映画では、博打のブラック・ジャックで
大儲けするわけです。
現在行われている賭博で、唯一ディーラーに勝てる物は、
ブラックジャックなのでして、数学者が書いた本まであります。
でもディーラー側もそれを防ぐために、
現在はトランプを6組使っています。
以前は4組だったのですが、それですと既に出た絵札を全て
覚えることが出来るので、ディーラー側は確率的に負けるらしいのです。
でもレイモンドは6組のトランプでも全て覚えることが出来るので、
勝ってしまうわけです。
そんなわけで、この映画には相当の信憑性がありますが、
それにも増して、ブルース・ウィルスの役が良いですねえ。
それと子役の演技が凄いです。
ダフティン・ホフマンにも負けていません。
以下は10月に見た映画です
- 『キャラクタ・孤独な人の肖像』
いやあ、良い映画でした。
最近のオランダ映画の充実ぶりは、たいしたものですねえ。
とにかく出てくる人間全てが、人間だー、って感じなのです。
これだけそれぞれのキャラが立つなんて、大変な物ですねえ。
またふるいオランダの町並みを再現するスタッフの努力も、
大変なものです。
話は一昔前のオランダ。
皆に嫌われている差し押さえ執行官が殺され、容疑者の
青年が逮捕されるが、と言ったサスペンス仕立てですが、
とにかく皆のキャラクタに圧倒されて、
最後までグイグイ行ってしまいます。
- 『マスク・オブ・ゾロ』
今まで怪傑ゾロの話は沢山映画化されているそうですが、
1959年生まれの私は、当然アラン・ドロンが主役を
演じた物しか見たことがありません。
でもアラン・ドロンでは、
いかにフランス人とて、ラテン系のヒーローを演じるのには
無理があるのではないでしょうか?
今回アントニオ・バンデラスが映画に出演する気になったのも、
今までラテン人が演じたゾロがいなかったからで、
さすがにはまっています。
しかしあまりにラテン系を強調しすぎると物凄く濃い映画になりすぎるので、
薄めるためにイギリス人俳優のアンソニー・ホプキンス、
キャサリン・ゼタ=ジョーンゾ、スチュアート・ウィルソンなどで
脇を固めているわけです。
話は単純明解、大好きですねえこういった話は。
ただアントニオ・バンデラスも、アンソニー・ホプキンスも、
マスクをとった方がカッコ良いのは、納得できないなあ。
- 『ライブ・フレッシュ』
スペインの異色の監督、ペドロ・アルモドヴァの最新作です。
彼の作品は、『キカ』の恐るべきセンス、
『私の秘密の花園』の出来の良さ、
私は彼のセンスが好きですねえ。
この映画は、『ライブ・フレッシュ』という題名からは
なんのことやら分かりませんが、
原作の邦題の『肉体の軋み』という方が、
よりこの映画の雰囲気を伝えていると思います。
- 『生きない』
たけし軍団のダンカンが脚本主演した異色の映画。
それにしても、ダンカンの絶対笑わない演技力は、鬼気迫もるのがあります。
よほど普段から、たけし軍団でいじめられて
表情作りに勤めているのでは無いでしょうか。
とにかく、このような内容の映画で、2時間ももつかいな、と
初めは思っていたのですが、出てくる人間が全て
おそろしく癖のある人間ばかりでして、
それを見ているだけで楽しいです。
- 『スライディング・ドアー』
今のりに乗っているグウィネス・パルトロウが主演の恋愛映画。
ある時、もしもあの時地下鉄に乗れたら、乗れなかったら、
という事で、2つのドラマが同時進行していくのです。
彼女の魅力は、美人の顔にふと表れる虚無の表情だと思うのですが、
それが『大いなる遺産』ではマイナスに働く時もあるのですが、
この映画は良いですねえ。
だいたい私は過去を振り返らない、と言う心情でやって来たので、
『もし....だったら』と考えるのはあまり好きでは無いのですが、
この映画はそういう事抜きにして、ストーリーがあまりに面白いので、
いっきに最後まで見てしまった。
とにかくこの映画の成功は、実に巧みな脚本にあると思います。
- 『アヴェンジャーズ』
昔、テレビシリーズで有名だったらしい『おしゃれ丸秘探偵』の
映画のリメークらしいのですが、
元ネタを知らないので、まあどうでもいいや、
という感じで見に行ったのですが、
これがなかなか良かった。
もっとも最近は、スパイス・ガールズが主演した『スパイス・ザ・ムービ』や
60年代ファッション炸裂の『オースティン・パワーズ』等の
イギリスお間抜け映画にだいぶ脳味噌が犯されているので、
そういった意味では、この映画はお間抜けパワーが足りないような
気もしますが、まあ良いでしょう。
とにかく特筆すべきは、ユマ・サーマンの怪しい魅力に尽きるのでは
無いでしょうか。
『ガタカ』の彼女は違和感があるし、『バットマン&ロビン・ミスター・
フリーズの逆襲』ではシュワルツネッガの迫力に負けて
彼女の魅力はいまいちだし。
この映画の彼女はいいです。
また、レイフ・ファインズも、『シンドラーのリスト』を
やるような厚みのある俳優ではないので、
この映画くらいがちょうど良いのではないでしょうか。
- 『プライベート・ライアン』
プライベートとは、兵卒のことです。
ゴールデン・ホーン主演の『プライベート・ベンジャミン』と同じ使い方です。
私の友達で、原作を読んであまりに酷いので、映画には行かないと
言ってましたが、まさしくそうでした。
冒頭の30分は『西部戦線異常なし』のラストのシーンや
『僕の村は戦場だった』や『ディアー・ハンター』とともに、
長く語り継がれるでしょう。
それにしても人間というのは、なんて脆い生き物なんでしょう。
簡単に手はもげ、足はちぎれ、水中であろうと弾は安々と体を
貫通し、いとも簡単に生命を奪って行きます。
兵士に逃げ場はありません。
この恐怖。
そして、圧倒的な重火器の威力、戦車の威圧感、
今までの戦争映画にはなかった存在感です。
これだけでもこの映画を見る価値があります。
感動ねらいのスピルバーグには飽き飽きして、
もう『アミスタッド』で十分と思っていたのですが、
やれば出来るじゃない、というとこですか。
以下は9月に見た映画です
- 黒沢明は死んだ
今月の最大のニュースと言えば、黒沢明が死んだことでしょう。
それにしても、テレビなどでのはしゃぎようは異常ではないでしょうか。
ウーン、死んでからこれほどもてはやすのであれば、生きている間に
もっとやっといてやれば、どんなに喜んだでしょうに。
生きている間は実に冷たかったように思える人々が、
これに便乗していかにも黒沢明を敬愛していたように語るのは、
何だかいやだなあ。
黒沢明を語るときに、どうしても避けれないのは、
昭和40年(1965年)『赤ひげ』を撮影してから、
昭和55年(1980年)『影武者』を撮影するまでの15年の間でしょう。
この15年の間に、実にさまざまなことがありました。
まず自殺未遂、いったい何があったのかは詳しくは知りませんが、
当時小学生の私は新聞でこの記事を見て、
漠然と日本映画はもう駄目だと言われていましたけれども、
ついに来るところまで来たなあ、というイメージを抱いたことを
覚えています。
とにかく黒沢明の廻りには、次から次へと不幸が訪れます。
三船敏郎はいったい何があったのか
『赤ひげ』以降は黒沢映画に出ていませんし、
東宝は日本映画の斜陽とともに黒沢に協力する気も体力も無くなり、
黒沢組と言われた優秀なスタッフも去り、
おまけに詐欺しまがいのプロデューサには騙され、
そのごたごたで、それまで親友だった脚本家の菊島隆三(でしたっけ)も去り、
どう考えたって、普通の人間だったら、はいそれまでよ、だと思います。
その後昭和45年に『どですかでん』を発表します。
現在はカルト的な人気のある映画ですが、カルト的な映画では、
いかんせん黒沢ファンは納得しませんし、
この映画はある意味では、私にとっては日本映画の斜陽を決定づけた映画の
ようにも思えます。
当時小学校高学年だった私は、『2001年宇宙の旅』に衝撃を
受けたばかりだったのですが、
それに比べると世界の黒沢がこれじゃあねえ、という感じだったです。
しかし、その黒沢を救ったのは世界でした。
日本人がそっぽを向いたときに世界が助けてくれたのです。
この辺りが、黒沢が死んで騒ぐ日本人に違和感を感じるのです。
この時期に救いの手を差し出した人が黒沢を賛えるのでしたら分かりますが、
どうもねえ。
とにかく、まずソビエトが三顧の礼をもって迎え、黒沢を最大限尊敬する
スタッフで廻りを固め、新たなる黒沢組の誕生です。
なにしろ撮影に野性の虎が必要ならば、本当に探検隊を派遣して、
捕まえてくる連中です。
それにしても、65歳になって、言葉も通じない国に行って、
はじめて外国で映画を撮影するなんて、
ものすごいエネルギーだと思います。
とにかく『デルス・ウザーラ』は完成するのですが、
まだ日本国内の反応は冷たいような気がするし、
全盛期には程遠い気もします。
で、ジョージ・ルーカスやスピルバーグが協力して、『影武者』が
完成して、70歳にしてカンヌでグランプリも取り、やれやれなのです。
黒沢明55歳から70歳、普通の人間だったら、
もう晩年で、体力も衰えてくる頃に、
必死に戦ったのは、凄いと思います。
しかし『影武者』も、当時の日本映画としては破格の5億円を
使った映画なのですが、今思うとやはり予算不足は否めません。
予算をけちった分だけ、映画館で見ると映像も厚みがないように
思います。
やはり『乱』の方が遥かにすばらしい映画だと思います。
まあ、その後の映画もすばらしいですが、ある意味でおまけみたいですからねえ。
ちなみに私の好きな黒沢映画は、
時代順に『酔いどれ天使』『隠し砦の三悪人』『椿三十郎』『乱』という所ですか。
もちろん『7人の侍』も『生きる』も『用心棒』も、その他の映画も皆好きですが。
三船敏郎に関しては、昭和20年代の三船というのは、
出る映画出る映画、全て異なる役だった(『酔いどれ天使』を見たときなんざ、
三船と分からなかった)昭和30年代はわりかしと役が決まり、
昭和40年の『赤ひげ』で、もうやる役が無くなった、という感じだと思います。
しかし、彼の台詞は分かりにくいですねえ。
日本で黒沢の映画がいまいち評価されなかったのは、
三船の台詞が分かりにくいからだ、という説があるくらいですからねえ。
- 『サムライ・フィクション』
これは日本の時代劇なのですが、監督が多くの
ミュージック・ビデオを手がけた中野祐之なので、
実に映像がすばらしい。
それだけでも見る価値は十分なのですが、
内容も面白いし、俳優も風間杜夫以下、ミュージシャンの
布袋寅泰や谷啓、とにかく皆良い味出してるとしか言えないのですが、
本当に面白いのです。
最近の日本映画と言えば、ビートたけしか、その他の芸術映画か、
不倫物かアニメか、もう分野が決まっているような感じなのですが、
この映画のように本当に面白い映画を私は待っていたのです。
こういった映画が10本くらい出てくれば、
『幕末太陽伝』が作られた頃の日本映画のように、
本当に元気が出てくると思うのですが...
ちなみに、この監督は黒沢明のファンなのですが、
確かに登場人物たちの人間性の味付けというのは、
『椿三十郎』の小林桂樹や入江たか子なんかに通じる
物がありますねえ。
特に風間杜夫と谷啓は。
すると布袋は中代達也だが、それほどの迫力はないとしても、
それなりに良かったです。
- 『ムーラン』
最近は『アナスタシア』のように、ディズニー以外のアニメが
盛んなのですが、これはディズニーが威信をかけて巻き返しを
はかったアニメ。
でも、『アナスタシア』には勝てませんが、
それなりに善戦したと思います。
特に今回は、群衆シーンにお金がかけてあり、
雪の上を走る多くの馬とか、群衆がひれ伏すシーンなどは、
こういった技術に興味がある人には感動的です。
かつて、このような群衆シーンは、トールキン原作の『指輪物語』を
アニメにするときに、多額のお金をかけて見事に失敗しているのですが、
その点『ムーラン』は上手です。
- 『ミステリアス・ピカソ〜天才の秘密〜』
これはピカソが作品を仕上げて行く過程を撮影した、
ドキュメンタリー映画なのですが、
それにしてもピカソのサービス精神たるや凄いものがありますねえ。
彼は実に気さくに、撮影の注文に応じ、
それによって、映画の完成度はすばらしいものになっています。
監督はジョルゾ・クルーゾ。
彼はまだ世の中にホラー映画が無かった時代、
大いに我々を恐がらせてくれた名作『恐怖の報酬』の監督です。
また最近キャッシー・ベイツ、シャロン・ストーン、
イザベル・アジャーニの(まさに女のような悪魔をやらせたら天下一品の)
三人が競演しリメークした名作『悪魔のような女』のもとの映画も
作っています。
この監督は絵画も自分で描き、その才能はピカソに高く評価されていましたので、
ピカソも彼には全幅の信頼を寄せ、それがすばらしい作品にしています。
この映画の前半部分は、当時発明されたばかりのマジック・インクを
用いて、プラスチック・ボードの向こう側から書いてもらっています。
だから、ピカソも筆も見えないのですが、絵だけが出来て行くのです。
今時マジック・ペンなどと言うものは、珍しくもなんともないのですが、
当時は最新のインクで、ピカソもえらくその効果を気に入ったらしく、
思う存分書いています。
それにしてもあらためて思うのは、本当にピカソは上手ですねえ。
何げない線なのですが、実に見事な牛になったり裸婦になったり、
何の迷いもなく実に何げなく、スラスラっと描いて行きます。
ところが何が気に入らないのか、ある瞬間、まったく別の色が、
その見事なラインの上にベターと塗られ、全てはぶち壊しになり、
そこから、また描かれて行くのです。
ひたすらそれの繰り返し。
最後の油絵なんかは、本当に凄いです。
ところで、昔は東京に行くと良くブリジストン美術館に行き、
ピカソの青の時代の『ピエロ』を見たのです。
あまり人もいないし、間近でガラスを通さずに見れるので、
大変気に入っていました。
お勧めです。
- 『ドライ・クリーニング』
フランスのクリーニング屋を営む平凡な夫婦。
ある日何げなく入ったナイト・クラブで、ある姉弟に出会うのですが、
それから段々彼らの人生に狂いが生じてきます。
なかなか雰囲気のある映画。
こういった雰囲気が好きな人には、面白いと思います。
- 『グラン・ブルー』
あまりに有名なリュック・ベッソンの出世作なので、
そんな説明はいらないと思いますが、今回はじめて知ったことを
書かせてもらいます。
今回初公開から10年目ということで、記念して、2時間12分の
オリジナル・バージョンの公開となったわけです。
思えば10年前、何の前知識も無く、はじめて映画館のでかい画面で
英語版2時間の『グレート・ブルー』を見たときの衝撃は凄かったです。
それまで海の映画と言えば、魚がつきものでしたが、
ただただ暗いブルーの中をひたすら潜るのに感動しました。
そのあと、2時間48分版のロング・バージョンというのも公開されたわけです。
ここで、この3つの関係を整理しておきますと、
始めリュック・ベッソンは映画が出来たときは2時間48分で
作った(これがロング・バージョン)
のですが、あまりに長いので自分で世界公開用に2時間12分にカット
(これがオリジナル・バージョン)し、
さらに公開されるときに2時間にカットされたわけです。
僕の感想では、2時間48分のロング・バージョンは、確かにあまりにも長すぎます。
だいたい世の中には『未来世紀ブラジル』のように、監督と会社の間で
映画を短くするのをめぐって対立というのはあるわけなのですが、
では監督の希望する長いバージョンがそんなに面白いかというと、
そんなのはごくわずか、今あえて見たいと思うのは、黒沢明の『白痴』
くらいのものですか。
その変はリュック・ベッソンがえらいと思うのは、
映画と言う商売の分かっている芸術家なのです。
だから彼が自分でカットした、今回公開されたオリジナル・バージョンも、
ちょうど良い長さだと思います。
しかも2時間バージョンではカットされている
オチャメな日本人たちも出ています。
外国人と日本のガソリン・スタンドに行きますと、外国人には
スタンドの日本人が声を揃えてあいさつするのが、おかしくって
たまらないらしいのです。
だから外国人の目から見た日本人の体育会系のノリと言うのも、
この映画のように見えているような気がします。
最後に、主演女優のロザンナ・アークェットは、
TOTO(世界ではじめて MIDI をまともにコンサートで実用化したバンド)の名曲
『ロザンナ』の本人なのでスネエ。
追伸、ところでこの間、イタリアの(何とシシリーの)友達に聞いたところ、
イタリアでは『グラン・ブルー』は全然人気がないそうです。
登場人物たちが実在の人間で、彼らについてはイタリア人は
良く知っているので、映画に出てくる人物があまりにかけ離れていて、
リアリティーが無いそうなのです。
だから日本に来て、皆がこの映画を見ているのでビックリしたそうです。
- 『フラッド』
天災、強盗、クリスチャン・スレータ、うーん3題話みたいです。
天災ものはどうしたって『ディープ・インパクト』や『ツィスター』を
越えるのは難しいし、
強盗ものも出尽くした感がありますし、
クルスチャン・スレータって、私は『薔薇の名前』や『トゥルー・ロマンス』が
大好きな俳優ですけれども、最近は刑務所に入ったという噂や、
どうもパワーが落ちている感じがするし、
どれも映画では最近いまいちネタなばかりで、そう言ったものを組み合わせても
良いものは出来ないと言うのが、私の持論なのですが、
この映画に限っては上手く行ったのです。
一つには、『スピード』や『ブロークン・アロー』の脚本でも
大変成功したグラハム・ヨストが、大変巧みな
ストーリを展開して、最後まで息もつかせぬ構成になっているのです。
この脚本ならば、誰がやっても半分は成功したようなものです。
脇を固めるミニー・ドライバーやモーガン・フリーマンも渋いです。
最後に、冒頭のシーンは『フォレスト・ガンプ』の冒頭のシーンほどでは
ないとしても、この映画にかけるスタッフの情熱が伝わってくる
良い出来です。
- 『プルガサリ』
北朝鮮で作られた怪獣映画。
中に入っている人は、ゴジラの中にも入っていた人で、
その時の体験を書いた本は読んだので興味があって見に行った。
それにしても、予想通り、あまりにプアーな特撮にぶっとびましたけれども、
それが妙に興奮するのです。
それにしても北朝鮮の兵士は暇なのか、
これでもか、これでもか、とエキストラで出てきます。
こういった所は今の日本やアメリカでは無理なので、良いですねえ。
それにしても本当に火のついた岩(のようなもの)が、特撮なしで、
崖から人めがけて落ちて行くのには、ビックリしました。
ところで、この映画は、作られてから10年くらい政治的理由で上映が
禁止だったそうですが、それはやはり
映画の中で圧政をしている王が、金王朝の象徴と思われたのか、
それとも大きくなりすぎて身を持て余すプルガサリ自身が
金王朝の象徴なのか、それとも両方なのか、
何だったんでしょうかねえ。
- 『シティー・オブ・エンジェル』
まあ予告編を見れば、誰だってヴィム・ベンダース監督の名作
『ベルリン天使の唄』のリメークだと思うでしょう。
その通りなのですが、こちらはこちらの良さがあります。
ヴィム・ベンダース自身が『予想は完全に外れた』と言っているんですから、
その通りに受け取っておきましょう。
それにしても、その天使の存在感はともかくとして、
ニコラス・ケイジは、なんて胸毛の濃い天使なのでしょう。
- 『スプリガン』
まあ大友克洋が絡んでいる映画ですので、
名作『アキラ』を凌げとは言いませんが、
それでもある程度は期待していたのですが、
期待は見事に裏切られました。
まあ『アナスタシア』には完全に負けた、と思います。
『アナスタシア』は C.G. をさりげなく豪華に駆使して、
実に豊かな立体感を作っていましたが、
『スプリガン』は相変わらずの日本のお家芸の、
セル画でシコシコ動かすという方式で、貧相です。
C.G. もここぞと見よがしに出すのは、もう古いと思います。
『美女と野獣』辺りの C.G. と比べても負けています。
ところで『スプリガン』の原作は、少年サンデーということですが、
少年サンデーも私が小学生の頃は、さいとうたかおの『デビル・キング』や
園田みつよしの『ターゲット』など、えらくリアルな劇画が多数でていて、
『巨人の星』や『明日のジョー』を連載していた少年マガジンよりも
クオリティーは高かったと(個人的には)思います。
いまやアニメ画オンパレードの少年サンデーからは、想像もつきませんが。
ところで私は『デビル・キング』をもう一度読みたいのですが、
だれか持っていませんか?
- 『N.Y.ディドリーム』
日本でも人気が出てきた金城武がアメリカで撮った映画。
死神役でミラ・ソルビーノが出てきます。
なんかウッディー・アレンの『カイロの紫の薔薇』のような
幻想的な映像なのだが、どうももう少しストーリを
工夫できたのではないか、と思います。
- 『キスト』
とてもキュートなモリー・パーカーが死体愛好者をとても
素敵(?)に演じる、異色な作品。
モリー・パーカーの存在感だけで最後まで
行ってしまったのは惜しいような気がする。
もうちょっとストーリに工夫があってもよいのでは。
私としては、同じ美人を配するのなら、殺人事件フェチを描いた
『フェティッシュ』くらいの展開があってもよいと思う。
ところで『フェティッシュ』は神戸の小学生が殺された事件以来、
レンタルビデオ屋から姿を消したそうですが、
あの事件とはまったく関係無いと思うのに、馬鹿げたことです。
最後にドン・マクドナルドの音楽は良い。
でも映画の最後は嫌い。
- 『ウェルカム・トゥー・サラエボ』
そう言えば、かつて14年くらい前に、サラエボ・オリンピックと言うものが
ありましたっけ。
これもボスニア紛争を描いた映画です。
実話というので胸にグッと来ますが、
映画としての出来も大変良いと思います。
それにしても、画面の中にウッディー・ハレルソンがいるだけで、
『こいつはやばい』と思わせる、大変な俳優ですねえ。
『ナチュラル・ボーン・キラー』も『ラリー・フリント』
も『ワグ・ザ・ドック』も、
やばさだけは格別でしたっけ。
- 『アナスタシア』
これはディズニーに対抗して20世紀フォックスが作ったアニメーションです。
正直言って、初めは『ディズニーの真似したって、そう柳の下に鰍はいないよ』
と思っていたのですが、これが予想を遥かに越えて良く、
私は泣いてしまいました。
どうも『ノートルダムの鐘』でも泣いてしまったので、
最近この手の話には、弱いのですが。
とにかく、ストーリもいいし、ミュージカルシーンでは、
ちょっとパクリ過ぎかな(『サウンド・オブ・ミュージック』や
『パリのアメリカ人』や『マイ・フェア・レディー』や『赤い靴』などなど)
とも思えますが、すばらしかったです。
声優陣も気合いが入ってまして、メグ・ライアンにジョン・キューザックと、
このまま実写でもう一本映画を作ってもらいたいですよ。
皇太后役には顔でキャストしたのか、アンジェラ・ランズベリー、
でも彼女は『ジェシカおばさんの事件簿』で有名ですけど、
本当はれっきとしたミュージカル俳優なんですよねえ。
ラス・プーチンには、これまた顔でキャストしたのか
クリストファー・ロイドではまり役。
絵も非常にきめが細かく、味わい深いのですが、逆に言えば
ここまでやるのだったら、何もアニメーションでやる必要は
無いような気もします。
実写で『サウンド・オブ・ミュージック』に
『赤い靴』の幻想的な雰囲気を足してやっても面白いのではないでしょうか。
- 『ボンベイ』
インドの民族対立を描いて、世界中の映画祭で絶賛された映画。
1992年のボンベイの暴動が話しの中心です。
しかし、それ以上に特筆されることは、こんな深刻な内容なのに、
しっかりインド娯楽映画の伝統で、
主人公たちがイキナリ踊って歌い出してしまうのです
(もちろん多くのバック・ダンサーを引き連れて)。
ただ国際映画祭に出品する場合には、さすがに外国人には
理解されないだろうと思ったのか、そのようなシーンはカットされています。
完全版だと2時間21分ですが、カットされたものは1時間41分、
つまり40分も歌って踊るシーンがあるのです。
今回は完全版が上映されました。
で、音楽が『ムトゥ踊るマハラジャ』の A.R.ラフマーンなのです。
この人は最近の私の一番のお気に入り。
とにかくこの音楽は、癖になります。
私もアジアに行くと、色々現地の音楽のテープを買ってみるのですが、
いつも思うのは、音楽性の問題よりも、使用機材の安っぽさが音楽に
現れてしまうのです。
腐っても経済大国の日本では、こういったことはないと思いますが。
ところがラフマーンの音楽は、そう言った意味からも完成度が高いです。
ところで映画では、一応の解決を見たようになっていますが、
実際のインドは、ボンベイの暴動後、ヒンドゥー原理主義の BJP が
政権を取り、さらに核実験を行ったのは周知の事実。
映画の歌の文句にもあるのですが、ブッタの生まれた地に、
ブッタはいない、なかなか映画のようにはいきませんね。
以下は8月に見た映画です
- 『リーサル・ウェポン4』
何をかくそう、私はリーサル・ウェポン・シリーズが大好きなのです。
ダイ・ハード・シリーズよりも好きで、
ジャッキー・チェンのポリス・ストーリ・シリーズと同じくらい好きなのです。
まあ、なにしろ、メル・ギブソンの原点の役ですからねえ、
それに他のアクション映画を凌駕するふっきれ方が好きなのです。
どうせ荒唐無稽な話にするなら、このくらいめちゃくちゃの方が楽しいです。
で、今回は、いよいよメル・ギブソンには子供が、
ダニー・グローバーには孫も出来、
そして何と2人とも昇進してしまうのです。
で、体力も衰え、もう2人も駄目か、という所から.........
それにしても、メル・ギブソンとレネ・ルッソのコンビは、
『身代金』ではまったく違う夫婦役をやっていたので、なんか変ですね。
ところで、今回の映画で最大の見どころは、
ジェット・リーことリー・リン・チェンが、
その凄すぎるカンフーを余すとこなく見せてくれることです。
とにかく中国武道大会で優勝して、
19歳で『少林寺』で、その凄すぎるカンフーを披露して以来、
その実力からすると、あまり恵まれた映画経歴とは言えませんが、
やっとハリウッド・デビューして、がんばってもらいたいものです。
最後に、もうちょっとエリック・クラプトンのギターが聞きたいです。
- 『オースティン・パワーズ』
いやー、それにしても60年代のロック大好き人間の私にはたまらないですねえ。
30年間冷凍保存されていたイギリスのスパイ、オースティン・パワーズが、
その60年代ファッションと60年代オマヌケ・ギャグで、
悪党どもをぶっ飛ばすのですが、いやはやその痛快なこと。
それにしても、そのデザイン・センスは、ルイ・マルの『地下鉄のザジ』や
ジャック・タチのおじさんシリーズに匹敵するものがあり、
目を見張ります。
- 『ボクサー』
ダニエル・デイ・ルイス主演のボクシング映画。
競演のエミリー・ワトスンと共にはまり役なのですが、
とにかく今のアイルランドの状況から行くと、どっちに転んでも、悲劇ですよねえ。
でもアイルランド顔には、ボクシングがよく似合います。
- 『スパイス・ザ・ムービー』
スパイス・ガールズというポップ・アイドルを主演にした
イギリス映画。
イギリスは伝統的にこういうオマヌケ映画が得意ですねえ。
- 『スクリーム2』
一応ホラー映画なのですが、私には全然恐くなかった。
この監督の『エルム街の悪夢』は大好きなのに、
どうしちゃったんでしょう。
- 『鉄仮面』
レオナルド・デュカプリオが2役やってますが、
それより脇を固めるジェレミー・アイアンズ、
ジョン・マルコビッチ、ガブリエル・バーン
(おまけでジェラール・ドバルデュー)の方が見ていて楽しい
私好みの俳優。
ストーリはあまりにも有名なので、可もなく不可もない。
- 『普通じゃない』
『トレイン・スポッティング』のメンバーを集めて作った割には、
それほどは面白くない。
ただキャメロン・ディアスの異常なまでの色気は見ものです。
- 『アサシン(ズ)』
どうも暗殺者というと、日本人にはゴルゴ13の隙の無さのイメージがあるので、
これに出てくる暗殺者の隙だらけには、参りましたね。
せめて指紋ぐらい、気をつけて欲しいけど。
まあ外国では、きっと警察が無能なので、
この程度でも逮捕されないのでしょう。
そんなわけで、内容は結構悲惨なのに、全然緊張感が無いのです。
- 『TAXI』
待望のリュック・ベッソンが製作脚本を行った映画。
売りは、あの狭いヨーロッパの街を時速250km で
特撮を使わずにぶっ飛ばす、というもので、
多数の元 F1 ドライバーも協力しているらしい。
確かにスカッとするのですが、映像とストーリーに
もう1工夫欲しかった。
それと5リッターのベンツ2台を、
なんぼ改造したとはいえプジョー406では、
やっぱ無理があるのではないかなあ...
- 『スウィート・ヒアーアフター』
エジプト生まれでカナダで活躍しているアトム・エゴヤン監督の作品。
カナダのある村で起こった、通学バスが湖に転落する事件を通して、
人間の癒しについて考えさせる映画で私は好きです。
この監督は前作の『エキゾティカ』でもそうなんですが、
独特な時間の使い方が特徴です。
普通映画では、ある時間を基準に、そこから過去を回想する形で
昔に戻るのですが、この監督はいくつかの時間、過去、現在、未来が
対等に平行して描かれ、それが最後に結び付くのです。
題名の『スウィート・ヒアーアフター』は、最後の方の台詞に
出てくるのですが、結局意味は分かりませんでした。
雑談ですが、この監督の『エキゾティカ』は
高校生制服フェティにはお勧めです。
- 『ゴジラ』
日本では、このアメリカ製ゴジラについて賛否両論らしいですが、
私は日本製ゴジラには、何の思い入れもないので、
この映画のゴジラは、大変すばらしい躍動感に満ちていて好きです。
私達が小学校の頃、夏休み映画に行くと言ったら怪獣映画が主だったのですが、
私は凄く子供だましなような気がして好きではなかった。
ヤッパリ小学生の頃『2001年宇宙の旅』なんかを見てしまうと、
駄目ですねえ。
最近当時の怪獣映画を少しまとめて見たのですが、
今見るとますます子供だましです。
それに当時も人気は下降だったような気がします。
それでゴジラに子供を作って子供のかわいさでごまかしたり、
(監督は大反対だったらしいですが)あげくの果にシェーをさせたり、
もう誰の目にも子供だましは明らかになり、誰も見なくなり、
怪獣映画は無くなったのではなかったでしょうか。
その後、大森監督ゴジラも、縫いぐるみ、支離滅裂なストーリー
(この点からもガメラの方が好きです)、と東宝ゴジラの
悪い点を全部ひきついていたのでした。
だから今回のゴジラは、やっとまともなものが出来たか、
という処でしょうか。
- 『ザ・ブレイク』
監獄を脱走した IRA がアメリカに渡り...という内容なのですが、
スティーブン・レイが渋い意外、
これと言って取り柄のない映画。
- 『ムトゥー踊るマハラジャ』
いやー、この間『ラジュー出世する』を見て以来、
待望のインド娯楽映画です。
とにかく面白い。
お客さんも満員で、ムトゥーがきめのポーズのタオルを首にまくシーンでは、
拍手が起こるのです。
こんなに満員で観客が興奮する中で映画を見るのは、
(まだまったく無名だった頃のジャッキー・チェンが一躍スターになった)
『酔拳』以来でしょうか。
内容は、とにかく意味もなく歌って踊って、暴れて、恋とロマンスと、
とにかく何でもありです。
- 『シッダールタ』
ヘルマン・ヘッセの原作を、アメリカ人の映画監督コンラッド・ルークスが
映画化したもの。
若きシッダールタ(と言っても仏教の創始者のことではありません)の
悩みを描いたものです。
それにしても、インドの時間はゆっくり流れます。
- 以下の映画はロマン・ポランスキーの初期作品3本です。
職人と言われる映画監督は多いですが、真に天才なのは
それほどいなく、ロマン・ポランスキーはその
数少ない一人ではないでしょうか。
ちなみに私が思う他の天才映画監督は、
スタンリー・キューブリック、ルイ・マル。
ロマン・ポランスキーは、ヒットラー政権下のパリで生まれ、
母親がユダヤ人だったため、収用所に送られ脱走するという、
なかなか大変な人生なのです。
しかし戦後、西側に来てからは、
あっちこっちで女の子に手を出しすぎて、子供が出来たり、
裁判で訴えられたり、いったいこいつはどうなっているんだ、
また相手の女性もナターシャ・キンスキーを始め美女揃い、
いったいこの小男のどこがいいんだよう、というような
人物です。
- 『水の中のナイフ』
鮮やかな疾走感、倦怠期を迎えた夫婦の心理的葛藤、
ジャズを用いた軽やかな音楽、
全てが才能あふれる作品。
- 『REPULSIONー反ぱつ(漢字がでてこない)ー』
いやあー、本当にカトリーヌ・ド・ヌーブはいいですねえ。
ぞくぞくします。
特に最後の幻想的なシーンでの演技は見ものです。
カトリーヌ・ド・ヌーブは、『昼顔』(でしたっけ)でも
いきなり鞭で打たれるシーンがあるのですが、
なかなか思い切った女優さんです。
何と言っても10代で撮った私の大好きな『シェルブールの雨傘』
の時には、既に未婚の母だったんですから。
- 『袋小路』
カトリーヌ・ドヌーブの姉のフランソワーズ・ドルレアックが出ています。
撮影がキューブリックの『博士の異常な愛情』を撮影した
ギルバート・テイラーだけあって、なかなか上手いです。