6.Q.摂食時のトラブルの対処法を教えて下さい。

A.北海道大学歯学部附属病院  歯科学講座 教授 小口春久
 北海道大学歯学部附属病院特殊歯科治療部 講師 木下憲治
 北海道大学歯学部附属病院咬合系歯科小児 医員 弘中祥司

 食事を行っている時に最も気を付けなければならないのは「窒息」と「誤嚥」です。これは予防(起こさない)と早期発見・早期対応(最悪の状態にまで放っておかない)がとても重要です。
 次の3つの点を必ず守ってください。
 (1)意識レベルの良いときに食事を行う
 (2)少量ずつ、一口ひとくちの間隔をあけて与える
 (3)全身状態を良く観察しながら進めて、少しでも不安があったら中止する。
摂食中は家族や介護者による「注意深い観察ときめ細やかな配慮」がたいへん重要となります。たとえ誤嚥しても最小量で気づくこと、窒息する前に与えるのをやめることが大切です。
 万が一、誤嚥した場合や咽頭に残留した食物を除去するために吸引器は必需品です。また、緊急処置には、次の3つがあります。
(1) 指をつっこんで掻き出す
(2) 患者の背中にまわって患者の口を下に向けて、腹部を勢いよく圧迫して腹圧を
   あげ、強い呼気(はく息)を起こして吐き出させる(ハイムリッヒ法:図)
(3) 吸引する
 ハイムリッヒ法
大きな塊が咽頭や気管を塞いで窒息したときは、ハイムリッヒ法を行います。
(1)一方の手て握りこぶしをつくり他方の手をその上にのせるようにして患者を抱きかかえる。
(2)手によって腹部に圧を加え、横隔膜を押し上げる。それによって胸腔内圧を高めて気道内圧を上げ、気道をふさいでいる異物を除去します。
 また、摂食時には「誤嚥」や「窒息」までいかなくても、さなざまなトラブルが生じます。表1に訴えの多いおもな症状とその対処法について簡単にまとめました。ただし、急に食べられなくなった場合には、表2のような急性疾患の合併の有無や全身状態のチェックが重要ですので、自分だけで判断するのではなく、医療機関との連携をとることが大切です。

参考文献:
1)藤島一郎「口から食べる嚥下障害Q&A」中央法規出版、1995.
2)金子芳洋,千野直一監修「摂食・嚥下リハビリテーション」医歯薬出版、1998.

図・表は後日掲載します。