5.Q.口腔機能の改善のための訓練

A.北海道大学歯学部附属病院  歯科学講座 教授 小口春久
 北海道大学歯学部附属病院特殊歯科治療部 講師 木下憲治
 北海道大学歯学部附属病院咬合系歯科小児 医員 弘中祥司

口腔機能の改善のための訓練
(弘中祥司、木下憲治、小口春久)
 口腔の機能である捕食、食塊形成、咽頭への移送は随意運動といって自分の意志によって調節することが可能な運動ですので、この機能が障害されたとしても筋肉の再教育訓練、筋力強化訓練、運動パターンの反復学習などの運動療法により機能が改善可能と言われています。実際の訓練には間接的(基本的)訓練と、直接的(摂食)訓練があります。
間接的訓練
 食べ物を用いずに嚥下器官への刺激や運動を加えることで嚥下機能を改善させる訓練です。食べ物を用いないため肺炎などのリスクが比較的小さいので、意識状態が安定しない患者や重篤な誤嚥が疑われる患者にも行うことができます。また、摂食前の準備体操として行うと誤嚥を減らす効果があります。
直接的訓練
 実際に食べ物を用いた訓練法です。したがってこの訓練は嚥下反射が確立して、慎重に食べることの条件設定を行えばこの人には安全な嚥下が可能となった段階から行う訓練です。「誤嚥」や「窒息」の危険性もありますが、嚥下機能は,安全な嚥下運動をすることによってもっともよく訓練されるため、安全に嚥下が可能な人にとっては最も効果的な訓練法です。あくまでも安全性に留意して、段階的に難度を増して行くことが重要です(図1)
 これらは患者さんの病態によって、必要な訓練が決まりますので(表1)、効果的な訓練を行うためには、専門家による評価を行って病態を把握し、的確な訓練法を選択する必要があります。
参考文献:
1)金子芳洋,千野直一監修:摂食・嚥下リハビリテーション.医歯薬出版,1998.
2)才藤栄一,向井美惠,半田幸代,藤島一郎編:JJNスペシャルNo.52 摂食・嚥
  下リハビリテーションマニュアル.医学書院,1996.
3)藤島一郎:脳卒中の摂食・嚥下障害 第2版.医歯薬出版,1998.