久馬栄道の全く個人的な映画の感想 1999年版です
last updated Jan. 6,2000
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これは久馬が映画館で見た映画の個人的感想です.
下に行くにしたがって古くなっています.
感想ください
E-mail:
kyuma@dpc.aichi-gakuin.ac.jp
過去に見た映画の検索用に、
名前のリスト
を作りました。
どうぞご利用ください。
1年間、ご愛顧ありがとうございました。
西暦2000年分は、
ここ
に有りますので、
引き続きご覧ください。
以下は12月に見た映画です
- 『海の上のピアニスト』
とにかく待ちに待った、
あの『ニュー・シネマ・パラダイス』のジョゼッペ・トレナトーレ監督の最新作。
待ったかいだけあって、素晴らしい出来でした。
とにかくこのところ、トレナトーレ監督、『みんな元気』とか
『明日を夢見て』とか、そう悪い映画ではないけれどもジリ貧
(映画監督で一番危険なのがジリ貧で、日本でも大御所と言われて
満足しているジリ貧監督が大勢います)
の映画が続いていたので心配していたのですが、
とにかく一安心。
この監督には、『ニュー・シネマ・パラダイス』だけが良かった、
などとは言われたく有りません。
音楽がエンニオ・モリコーネ。
ニーノ・ロータが死んでからイタリア映画はだめになったと
言われていますが、
モリコーネでまた盛り返して欲しいものです。
今回は『ワンス・アポンナ・タイム・イン・アメリカ』以来の
良い出来だと思います。
そしてティム・ロスの演技も見ものです。
ティム・ロスは、本当にピアノを弾いているように見えるのです。
何を当たり前のことを、と思うかも知れませんが、
例えば『シャイン』では一人のピアニストの人生を4人の俳優で
描き切っていましたが、4人のうち2人はピアノを弾いているようには
見えませんでした。(ピアノを弾くのは重労働で、もっと
前に重心がないと弾けないと思いますが。)
ティム・ロスは『グリッド・ロック』でも見事に
エレクトリック・ピアノを弾いていましたし、
たいしたものです。
それにティム・ロスの役どころって、どれも似ているようなのに、
よくよく考えてみればどれも似ていない。
最近の映画だけでも、
『フォー・ルームズ』のとぼけた味、
『孤独の絆』の切実な兄弟愛、
『世界中がアイ・ラブ・ユー』、
『グリッド・ロック』の切れたミュージシャン、
『ライアー』のしたたかな奴と、
似ているようで似ていない、凄い演技力です。
ところで、やっぱり世の中には知られていない名ミュージシャンが
いるわけですから、こう言った話も有るかも知れません。
例えば、旧ソビエトで外国での演奏が許されなかったために、
40歳過ぎるまでその演奏がソビエト以外では聴けなかったラザール・ベルマン。
その後、段々ソビエトのたがが緩んできたので、
多くの芸術家が外国へ行けるようになったのですが、
あのままだったら、未だに幻になっていたかも知れません。
私が高校生の頃(23年前)、彼の演奏するリストの『超絶技巧練習曲』を
聴いてぶっとんだのですが、
それまではワイゼンベルクのように器用に演奏する人はいても、
彼のように力任せにねじ伏せる人は、いなかったのです。
だから、びっくりしました。
そんなわけで、幻のピアニストがいても不思議ではないような
気がします。
- 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
とにかく、今一番の問題作が登場なのですが、
私は恐くなかった。
もっと恐い映画を作ってくれよお。
しかし手振がひどく、気持ち悪くなる人は何人かいたようです。
もっとも300万円だか700万円だかで作られたと思えば
たいしたものです。
(もっとも、もっと安く作れそうですが。)
そんなことより、この映画、
その宣伝方法とか撮影方法の方に興味が有りまして、
そういった意味では、そうとう面白かった。
宣伝に関しては、いかにも映画のような事件が有ったがごとく
デマをインターネット上で流し、
都会伝説を巧みに利用したのが新しい。
だからこの映画も、事件後遺族が遺されたフィルムを
会社に頼んで繋いだ形になっている。
それと撮影方法なんですが、
話は、映画の撮影に森に入った3人の若者の恐怖体験を
ドキュメンタリー風に描いたものなので、
本当にドキュメンタリーにしてしまったところが新しい。
実際にどうしたかと言うと、
スタッフは3人とは接触せず、
毎朝、紙にその日に何を撮影するかが書いてあるわけです。
でまあ、スタッフの仕事は、肝試しよろしく、
周りで3人を恐がらせ、
それを3人が自分たちのドキュメントとして撮影するわけです。
ですから俳優は、本当に恐がっていたらしい。
まあやはり、インディーズはアイデアで勝負ですねえ。
でも私は、低予算を考慮に入れても
『シックス・センス』の方が良かったけど。
- 『ワイルド・ワイド・ウェスト』
西部劇のメカ満載、ハチャメチャ・コメディー。
なかなか機械のデザインも秀逸だし、
ウィル・スミスも
ケネス・ブラナーも切れてたし、
テンポも良かったんだけど、
いまいちストーリがつまらなかった。
- 番外遍『CD、インスパイアド・バイ・バッハ』
先に紹介した同じ題名の映画に触発されて作られたCDがあり、
買ってしまいました。
と言っても、別にサントラ版と言う分けではなく、
中身は普通のクラシックのCDです。
バッハの無伴奏チェロ曲全6曲が聴けます。
ところで、このCDを聴いていると、
ふと故桂枝じゃくが落語のまくらで良く使った言葉「省略と想像」と言うのを
思い出しました。
要するに、落語と言うのは省略の美学であり、
省略するから、人間が想像力を働かせる余地があり、
それが芸術になる、
と言うような話だったと思います。
このバッハの無伴奏チェロ曲も、
クラシックとしては省略の極致なのですが、
そこにこそ人間の想像力が介在出来、
だからこそ聞こえない何かを感じることが出来るのです。
ところで、前に映画で紹介した「ミュージック・ガーデン」に
アクセスできないと言うことでしたが、
最後の "html" は "htm" の間違いでした。
情報をいただいた石井さん、ありがとうございました。
この庭のホームページ
をクリックしてみてください。
- 『ジャンヌ・ダルク』
とにかく良かった。
ミラ・ジョボビッチの魅力に尽きる映画だと思う。
監督のリュック・ベッソンは大好きな監督で、
まだ無名時代『グレート・ブルー』(当時はこの題名だった)
を見てぶっとんだものです。
その後も『ニキータ』『レオン』と期待通りだったのですが、
『フィフス・エレメント』では、チョットなあ、
と言う気持ちだったです。
もちろんソコソコ良い映画なのですが、
リュック・ベッソンの映画にしては、物足りない感じがしました。
しかしこんどは、完全に予想以上に素晴らしかった。
リュック・ベッソンが妻(映画完成後に離婚)
ミラ・ジョボビッチの魅力を知り尽くしているからこそ
作れる映画だと思う。
まあ、ジョン・カサベテスが妻の為に作った『グロリア』の
ようなものです。
リュック・ベッソンの映像には一部の隙もなく、
大合戦シーンでも実に画面の隅々まで、
緊張感あふれる映像です。
(この当りが、以前角川映画で『天と地と』と言うのが有ったのですが、
テレビで見るとそれほどでもないのでしょうけれども、
映画館の大画面で写すとエキストラがだれているのが
分かってしまうのです。
緊張感がないのです。
黒沢明などは、絶対こんなことは無かったのだけど。)
前作『フィフス・エレメント』がいまいちな感じがしたのは、
一つには音楽がエリック・セラでないこととも関係が
有ると思いますが、今回はまたエリック・セラが
帰ってきました。
この二人の関係はフェリーニとニーノ・ロータみたいなものです。
それと、ミラ・ジョボビッチも良かったんですが、
脇を固めるジョン・マルコビッチ、フェイ・ダナウェイも
良かったです。
ジョン・マルコビッチはここのところひげをはやした
『コーン・エアー』の悪役のイメージが強いのですが、
ひげがない馬鹿面もなかなかのものです。
さてそれで、リュック・ベッソンが名古屋で舞台挨拶すると言うので、
並んで見てきました。
リュック・ベッソンは間近で見れるし、
映画は満員の映画館で前から6番目のど真ん中と言う、
最高の場所で見れたし、本当にラッキーな一日でした。
(それにしても一人で3つも質問しようとした馬鹿女、
自分は何様(インタビュアー?)のつもりなんでしょうか。
完全に一人で舞い上がっていて見苦しかったし、
周りから罵声は浴びせられる...)
それにしても、なんでカソリックの神は、地球全体(宇宙全体?)
から見れば小さな一地方であるフランスの戦争に
関わるのか、不思議です。
これがユダヤの神(カソリックの神と同じなのでしょうか)なら
ユダヤの戦争に荷担するのは分かりますが。
- 『ヨーヨー・マ:インスパイアド・バイ・バッハ、1番〜6番』
全く凄い映画も有ったものだ。
これは、ヨーヨー・マがバッハの無伴奏チェロ曲を
さまざまな角度から、色々な芸術家と共に
作品を作って行く話で、ドキュメントとも言えるし、
新たな作品でもあるし、
とにかく面白い。
我々はプロの仕事場と言うのはどうなっているのか
知るチャンスがほとんど無いのですが、
これはそういった物を知れる希有な機会でも有ります。
前にピカソが絵を描くところを描いた『ミステリアス・ピカソ』と言う映画が
有りましたが、これもそれと同じ位凄い。
しかしまあ、ある芸術家が他の分野の芸術家と組むと言うのは、
何か新しいことが出来そうなのですが、
実際はなかなか難しい。
私も悪い例を多く見てきました。
特に昔人気が有ったロック・ミュージシャンが、
もうパワーが無くなって一人では客が集められないので、
似たようなミュージシャンと一緒にやるのは、
失敗例が多いような気がします。
しょせんパワーが無いものが、
何人集まっても、パワーは無いのです。
しかし、ヨーヨー・マは現役バリバリのミュージシャン。
物凄いエネルギーが感じられます。
本当にオーラが出ているのです。
無伴奏チェロ曲は1番から6番まで、
それぞれが6つの楽曲に分かれていて1つが3分位なので、1曲当り
20分位かかります。
それで1つの曲に1つの芸術家が関わり、
それぞれが1時間の作品となっていますので、
全部見るのに6時間かかります。
これを2つずつ上映しましたので、3日映画館に通いました。
私は基本的にはクラシックは生で聴くものと思っていますから
普通はCDは買わないのですが、
このCDは買ってしまいました。
ところで画質がテレビのクオリティーなので、
出来たらフィルムのクォリティーにして欲しかった。
ハイビジョンを使えば良かったのに、
天下のソニーともあろうものが...
- 『第1番:ミュージック・ガーデン』
大庭園を音楽のテーマで作る、と言うお話。
そもそもこのような巨大プロジェクトは
作る過程自体が一つの物語りであり、
作る過程が音楽なのです。
だから、とても興味深かった。
どっちにしても不可能と思えたこの話、
ヨーヨーマが出かけて行って演奏すれば、
たいていの無理は通る(駄目だったこともありますが)ので、
その分得ですねえ。
しかしまあ、ビルの真ん中でヨーヨーが演奏するだけで、
もうジーンと来ますが。
ところで、
この庭のホームページ
はここのはずなのですが、
アクセス出来ません。
だれかやってみて。
- 『第2番:サウンド・オブ・ザ・カルチェリ』
カルチェリと言うのは、銅版画で牢屋を描いた建築家の名前。
ヨーヨーは、この想像(実際に建築するのは不可能らしい)上の
牢屋で2番を弾いてみたいらしい。
もちろん今だから、デジタル合成で
映像的にヨーヨーをこのような空間に入れることは可能です。
しかし彼はそれだけでなく、音場もそのような架空の空間で
演奏したいのです。
ですからエフェクターの技術を駆使して、
そのような音場を形成し、
その音場をヨーヨー自体が聴きながら、
演奏するのです。
バーチャル・リアリティーもなかなかやるものです。
監督は名作『レッド・バイオリン』のフランソワ・ジラール。
このシリーズの見どころは、
この当りのセンスの良さも光ります。
- 『第3番:フォーリング・ダウン・ステアーズ』
現代舞踏家のマーク・モリスが振り付けを付けるのであるが、
なかなか面白かった、と言うより、6作品中一番笑えた。
後の5番の坂東玉三郎が静寂の踊りなら、
こちらは動きっぱなし。
とにかく終わったときの皆の疲労は凄いものです。
わたし個人としては、一番有名なメロディー
「ミファソ、ドシド、(高)ド」の所の踊りが好きです。
- 『第4番:サラバンド』
6つの中では唯一ドラマです。
監督は、あの私の大好きな(制服趣味の人にはたまりません?)
『エキゾティカ』や『スィート・ヒアー・アフター』の
アトム・エゴイアン。
彼の映画の特徴は、いくつかのストーリが平行に走り、
それらがダンダン絡み合って行くのですが、
普通の映画ですと時間はほぼ同時進行にしないと
観客が混乱しますからそうなっているのですが、
彼の映画は時間も過去、現在、未来を入り組んでいまして、
それが同時進行なのです。
こう書きますと、何か難しい実験映画なのかとも思われますが、
彼の映画は必ずどこかに娯楽の要素が有るところが、
優れているのです。
- 『第5番:希望への苦闘』
こんどはなんとあの歌舞伎の坂東玉三郎との競演なのです。
そして監督が『レッド・バイオリン』を製作したニブ・フィッチマンなのです。
それにしてもまさか坂東玉三郎がこんなに喋るとは思わなかった。
と言うか、ふだんのことはあまりしゃべらないのですが、
こと芸術のことになると、実にいろんな言葉を用いて
ヨーヨーとコミュニケーションをはかるのです。
日本人は良く『言葉じゃないのだ心だよ』と言う傾向にあり、
特に芸術家はそういうことを言いそうですが、
坂東に関して言えば、彼は実に良く自分のことが分かっているから、
さらなる飛躍も出来るし、
そのことをまた言葉で論理的に説明できるから、
世界でも通用するのだと思う。
- 『第6番:6つのジェスチャー』
バッハ自身が登場し、彼の内面を説明する。
音楽に合わせてフィギュアー・スケートのアイス・ダンスなのですが、
これが実に良かった。
アイス・ダンスと言うのは、色々規制が有るので、
ペアのように投げたりリフトは競技では出来ないので、
フィギュアーの中では一番地味な印象を受けるのだが、
だからこそ彼らは制約された中に、
美を見いだそうとするのだと思う。
(それに彼ら自身はそれほど地味ではなく、
エキビジションになればやりたいほうだいやりますし。)
私は伊東みどりちゃんが小学生の頃から、
名古屋の大須のスケート・リンクで滑っていまして、
スケートは大好きですが、
なかなか世の中にフィギュアの面白さが分かってもらえないので、
こう言った映画は良いと思います。
とにかくスケートの軽やかさが、バッハにぴったしです。
- 『風と共に去りぬ、完全デジタル・リニューアル版』
ウーーン、やはり何回見ても物凄い名作ですねえ。
4時間弱なのに全く時間の長さを感じさせないストーリの面白さ、
あれほど長回しが多いのに全くだれない
ビビアン・リー、クラーク・ゲーブルの確かな演技力、
監督が7人も変わっているのに、
どこの撮影部分(アメリカでは日本と異なり、一般には
監督は撮影現場の最終責任者の意味合いが強い)
にも一切の隙の無さ、
そして人件費の安い時代だからこそ出来た人海戦術のスペクタクル、
これほど完成度の高い映画は長い映画の歴史にも
そう無いでしょう。
今回デジタルでリニューアルしたと言うことで、まずフィルムの傷が
無くなったのが気持ち良い。
音も良くなり気持ち良い。
ただほんのわずかセピア色がかった色までは補正しなかったのか、
それともわざと遺しておいたのかは疑問ですが、
私としてはもっと鮮やかな映像を期待していたので、少しがっかりしました。
もともと『風と共に去りぬ』は作られた当初からフィルムの色の退行現象に
対しては、そうとう気を使い、映画会社の大金庫の奥深く、
なるべくフィルムに物理的影響の無い環境に、
オリジナルのフィルムは保管されています。
それでもニュー・プリントが作られる度に少しづつ退行しているので、
そのときは色見本を素に補正しているそうです。
今回はデジタルで補正(それもフィルムの現像過程をシミュレート
(フィルムの現像過程は映画ごとに異なり、それによって映画全体の
色のイメージが決まってしまう)して
計算で色を割り出したそうです)したわけですが、
全体的にはやや暗い感じがしました。
ただアトランタの有名な大炎上シーンの色は、私が今まで見たどの
『風と共に去りぬ』よりも綺麗でした。
さて、この映画は1939年に作られた
(この映画を上海で見た日本陸軍の関係者は、マジで戦争に負けると
思ったそうですが、当たり前です)わけですが、
この頃から1940年代にかけて、映画史上に残る物凄い名作映画が
作られて行きます。
アニメですらディズニー史上最高と私は思う『ファンタジア』が
作られます。
ドイツに占領されていたフランスでさえ、ジャン・コクトーの
『美女と野獣』(ディズニーのアニメよりもさらに幻想的な映像で
私は大好きです)や『天井桟敷の人々』(私はイマイチ、どこが
名作か分からないのですが)が作られます。
何か、死に物狂いで戦っていた日本て、何なんでしょうか。
さて字幕も戸田奈津子さんの新訳なのですが、最後の
"Tomorrow is another day" と言うのは(確か)
『あしたはまた新しい日が来る』となっていました。
- 『エイミー』
これだから映画はたまりません。
時々ふと、こんな素晴らしい映画に出会えるのですねえ。
最近のオーストラリアは要注意です。
とにかく、オーストラリア、ニュージーランド、
カナダ、ドイツ、ベルギーと、以前だったらあまりマークしていない国から、
時々とても面白い映画が作られる。
しかしこう言った国のスタッフを見ていると、
皆さんとてもプロとして訓練されていて
(今の日本に足りないのはプロの映画人で、映画会社が不況を理由に
さぼってきたのですが)、いつ良い映画が出来ても不思議ではない状況で、
そういったところにたまたま才能の有る人がいると、
良い映画が出来るのです。
内容はロック・ミュージシャンだったパパが感電事故で死んでから、
しゃべれなくなった女の子の物語。
私は感電で死んだミュージシャンは知りませんが、
実際、昔の機材は不良品が多くて、私が高校の頃(25年前)
ロック・バンドにいたときは、そこら中から漏電していて、
すぐビリビリ来ていた気がする。
感電で有名なのは、グランド・ファンク・レイルロードが嵐の甲子園で
屋根もなしにコンサートをやったとき、マーク・ファーマは感電しながら
根性で演奏したそうです。
それにしてもこう言った映画を見ると、本当に音楽と言うのは
いろんな意味でコミニケーションだと言うことが分かります。
『依頼人』と言う映画では、大人を信じれない少年がさえない女弁護士と
絆を結ぶのは、レッド・ツェッペリンのファンだと言うことでした
(でもジョン・ボーナムのドラム・ソロは私は好きではないですが)。
『オーケストラの少女』では、気難しい名指揮者の心を動かすのは、
少女の信じられないような美しい歌声です。
この映画でも、歌がコミュニケーションのすべてと言う状況で、
少女の反応が実に新鮮です。
そしてこの映画は、少女が映画のすべてなのですが、
その歌が本当に素晴らしいのです。
- 『白痴』
ドストエフスキー原作なら黒沢明の素晴らしい『白痴』が有りますが、
これはそれとは全く別の坂口安吾原作です。
監督の手塚眞は最高の漫画家手塚治の息子ですが、
ビジュアリストとして完成している手塚眞に、
そういった情報は余分でしょう。
今までミュージック・ビデオなどを数多く手がけているので、
こう言った映像は実に手慣れている。
戦時中の日本の下町が実にシュールで面白い。
そして最後の『展覧会の絵、キエフの大門』にのせて、はでに
炎上するところなんか、本当に美しい。
ラストも良かった。
まあ、ちょっと不満を言えば、未来の映像がどことなく
手塚治の漫画風なのです。
これが石の森章太郎風の透明感のある映像(映画の『ガタカ』や
『未来世紀ブラジル』の恐怖感が良いですねえ)
なら、もっと良かったのに。
この映画のホームページ
- 『トーマス・クラウン・アフェアー』
ピアーズ・ブロスナン、レネ・ルッソ(私好みだけど、ちょっと歳をとったか)
主演の泥棒映画。
ピアーズ・ブロスナムは『ダンテズ・ピーク』も良かったし、
なかなかがんばっているんじゃないかなあ。
この映画も彼が自分で企画したのですが、
自分の持ち味の軽さを良く理解し、上手く仕上げています。
また監督が『プレデター』や『ダイ・ハード』のジョン・マクティアナだけど、
彼もピアーズを良く理解して、完ぺきに使いこなしたと思う。
この映画は、どうしても『エントラップメント』と比較してしまうのだが、
『エントラップメント』はもうこう言った泥棒映画の中ではほとんど完ぺきの
域に入っていまして、素晴らしいの一言です。
ただあまりにも完ぺきすぎて、どこかに遊びがない。
ゼータ・ジョーンズのキンキンに気が張ってる。
ショーン・コネリーも隙を見せない。
どちらかと言うと、面白いけどつかれる映画なのです。
その点、本作はピアーズの軽さが救いなので、
見ていて実に軽やか、リラックスして見れます。
この映画のホームページ
- 『ハート』
心臓移植にまつわる愛憎劇とでも言いましょうか、
実に興味深い映画でした。
今のイギリスには、アメリカの映画が取り上げない難しいテーマを
新たな切り口で取り上げようと言う意欲が見られます。
それにしても心臓移植に関して、実に色々勉強になる映画です。
初めから言われているように、
やはりコーディネータの力が非常に大事で、
アメリカなどはプロのコーディネータの育成に
かなり力を入れているようですが、イギリスではその辺が
いいかげんなのかなあ(この映画では、全く出てこない)。
日本もどうなのであろうか。
日本はどの分野でもプロの仕事をする人が減ってきているような
気がするので、将来イギリス並みに移植が行なわれると、
心配です。
最後の結末も意外だったし、ストーリも面白かったです。
- 『π(パイ)』
この世のすべての現象を説明できると(本人が信じる)数学者の物語。
私も数学者のはしくれのはしくれにしがみついている身ですが、
世間から見ると数学者って、こんな風に思われているのかなあ。
少なくとも私の周りに3桁の掛け算を暗算で出来る奴はいないどころか、
2桁の足し算が即座に出来なくて、
学生時代数学科でボーリングに行くと苦労した経験が有ります。
しかし全体にモノクロの映像は面白く、
いくつかの数学のエピソードも興味深いです。
もっとも日本数学会の分科会に行けば、この位へんてこりんな講演は
しょっちゅう聴けます。日本数学会は基本的に来るものは拒まないので、
どんな講演でも出来るのです。
私が聴いたのでも、仏教の経を分析して、この世のすべての現象を
説明できる数学方程式を発見した、と言った物が有りましたし、
私が数学の本を書いたら、読者の人から現代の数学は間違っていると言う
論文をいただきました(内容の評価はここでは止めましょう)。
だから映画の中のような数学者がいても、
不思議ではないです。
- 『ボクサー』
リュック・ベッソン製作、ジャン・レノ主演のボクサー映画なら、
誰でも興味が有るのでは無いでしょうか?
ダニエル・デイ・ルイス主演の『ボクサー』より強いか、
『レイジング・ブル』のロバート・デ・ニーロより真迫の演技か、
とにかくボクシング映画には名作が多いから興味しんしんでした。
ところが、これがとんだまがい物。
ボクシングとはほとんど関係無い映画。
原題も『トリュフ』、つまり人生で得がたい味わい深いものの例えらしいです。
まあ『ボクサー』と言う題名を無視すれば、それなりに見れる映画なのですが、
この題名では詐欺師と言われてもしょうがないです。
リュック・ベッソンは監督としては本当に現場を愛し、
優秀なんでしょうけれども、製作した『タクシー』もいまいちだったし、
人材を育てようと言う意図は分かるけれども、
もうちょっとやり方を考えた方が良いような気がする。
以下は11月に見た映画です
- 番外、劇団四季ミュージカル『キャッツ』
今まで劇場で見たミュージカルって、あまり良いのが無かったので、
見に行く気は無かったのですが、妻と母親に連れられて見に行ったら、
物凄い良かった。
もう始めから、涙が出てきて、最後あまりに良すぎて、
席が立てなかった。
『キャッツ』と言えば、ロンドンの円形シアターが有名ですが、
名古屋の伏見に出来た、四季の常設劇場も凄いと思う。
劇場全体が町中の感じに作ってあって、
客席の中にもさまざまな仕掛けがしてあるのは、
常設劇場ならではです。
やっぱりお金がかけれます。
とにかく何が良いって、出てくる俳優さんたちが、プロに撤していて、
サービス精神旺盛だと言うことです。
これで1万円は安いと思います。
このサービス精神は、ふと宝塚を思い出しました。
(親が神戸出身で、私も小さい頃は宝塚が好きで、良く行ったのですが、
『ベルサイユのバラ』以降、宝塚も何だか敷居が高くなって、
あれからは行っていません。)
来年の7月まで延長が決定したので、
たぶんまた見に行くと思いますが、何度でも見に行く価値は
有ると思います。
- 番外『ホセ・カレーラス・リサイタル』
私は基本的には、オペラ歌手はオペラで聴くもので、
リサイタルはあまり好きでは無いのですが、
まあ、もうカレーラスも最後かも知れないので、
行ってきました。
はっきり言って、パバロッティよりは良かった。
まあ、パバロッティは神様ですけど、
何しろここのところのわがままぶりは、ひどすぎます。
まともにやればパバロッティの方が上でしょうけれども、
カレーラスは本当に「はかなげ」でした。
カレーラスで私が好きなのは、若い頃にやった『椿姫』の
アルフレッドですが、とにかくこの人、
やたらと人が死ぬイタリアの悲劇のオペラが良く似合う。
『トスカ』何かやらしたら、なんで俺は死ぬんだ、
と言うのが、本当に切々と伝わってくる。
この辺が、パバロッティだと、生命感にあふれすぎて、
死刑にしたって死にそうに無いからなあ。
『トゥーランドゥット』の王子様でも、
初めからちっとも死ぬ雰囲気がないから、
全然ハラハラしない。
まあやっぱり『道化師』のように、
死に際しても、どこかユーモアが有るのが持ち味でしょう。
これがカレーラスだと、どんな役をやっても死にそう、
もうだめ、と来てしまう。
実際、リサイタルでも悲しい曲を切々と歌っていましたが、
本当に良かった。
何しろ実生活でも死にかける大病をして、
そこから奇跡の復活を遂げたのだから。
最後に、アンコールを5曲もやってくれたのは良かった。
普通、場内の明かりがつけば終わりなのだが、
明かりがついてから、まだあの『グラナダ』をやってくれたのだ。
それにしても信じられないのは、
私の1つおいて隣に坐っていたじい様。
なに様か知らないけれど、カレーラスに合わせて歌っているのです。
いったいこのじい様が何様か知らないけれど、
とんでもないろくでなしの大馬鹿物で有ることは、間違い有りません。
3曲目で私が注意しましたが、なぜ誰も注意しないのだろう。
とにかく3階席で2万5千円もしたのですが、
この金は少なくとも、どこの誰か分からない奴の歌を聴くために
払ったのではないことだけは確かです。
- 『プリティー・ブライド』
要するに、あの名作『プリティー・ウーマン』のメンバーが
集まって作った映画なのですが、
内容は全く関係有りません。
ジュリア・ロバーツの口は、相変わらず巨大だったが、
全く先の読めない展開は面白く、私は最後泣いてしまった。
まあ『ノッティング・ヒルの恋人』よりもストーリは面白かったが、
『ノッティング・ヒルの恋人』はウェールズの怪人が良かった分、
若干歩が有るか?
ところで私はリチャード・ギアーと言う俳優、
『プリティー・ウーマン』以外、全く印象にないのです。
『愛と青春の旅立ち』は『トップ・ガン』との2本立てで見に行ったので、
『トップ・ガン』の印象に負けていたし、
『八月の狂想曲』では、こんなことしてていいの、と言う感じだったし、
『コットン・クラブ』はデューク・エリントンに感動して、
リチャード・ギアーの印象がないし、
『ジャック・サマースビー』は話が練れていないと思うし、
唯一印象に残っているのは『ノー・マーシ 非常の愛』かなあ。
もっと『ノー・マーシ』のようなシリアスな映画に出た方が良いと思うのだが。
ところで、映画の中で出てきたポーチド・エッグ、
私は大好物なのです(特にポーチド・エッグ・オン・ザ・トースト)。
イギリスでは非常にポピュラーなタマゴ料理で、
前にイギリスに行ったときには毎日食べていました。
ところが今年の夏、イギリスに行ったときには、
1週間いて、一度も食べれなかったのです。
イギリスの大学教授(Prof. Hindley)の家に泊まったときも、
食べたかったので奥さんに言ったら、不思議なことに
(私のイギリス人の友達は、皆作り方は簡単と言います)作り方を知らなくて、
なんとか作ってもらったものは、
ちょっと違う食べ物でした。
だれかポーチド・エッグの完ぺきな作り方を教えてください。
この映画のホームページ(でも私は繋がらない)
- 『スパイシー・ラブ・スープ』
中国のさまざまな年代の今風の愛を、オムニバス形式で描いた映画。
こう言った映画は、台湾や香港では有ったような気もするが、
やっと中国でも作られたか、と言う感じです。
それにしても、1つ1つの話が良く出来ていて、
純粋に映画として見ても、そうとう高いレベルの映画だと思います。
今まで中国の映画と言うと、何を描いてもどれを描いても、
とにかく肩に力が入りすぎだったのが、
やっと肩の力が抜けた普通の映画が作れるようになった(しかも高いレベルで)。
嬉しいことです。
- 『アイ・ラブ・ペッカー』
ジョン・ウォーターズと言うのは、悪趣味で有名な監督らしいけれども、
私は幸い(?)にして、まだ1つも見ていないので、
どんな悪趣味な監督か分からない。
とにかくこの映画、『I shot アンディー・ウォーホール』のリリー・テイラーや、
『アダムス・ファミリー』の妖怪顔が『バッファロー’66』では
やけに可愛かったクリスティーナ・リッチとか、アクの強い俳優
(と言っても『肌鮫男と桃尻娘』ほどではない)で、ペッカーの
周りを完全包囲している。
でもそうすると、どうしても主役のペッカーが難しいのですが、
それをエドワード・ファーロングが、さらりとやってのけました。
このナチュラルな演技、私は好きです。
- 『フー・アム・アイ』
ジャッキー・チェン主演、監督の待望の新作です。
(しかし私としては、中国語の題名『我是誰』の方が、笑えますが。)
とにかく私はジャッキー・チェンが大好きで、
ほとんどの映画を映画館で見ていますが、
そのきっかけとなったのが、今から20年前、
大学2年生のとき東京に遊びに行って、
帰りの夜行バスを待つ時間がだいぶ有ったものですから、
フラっと映画館に入ったら、そこで『酔拳』をやっていたのです。
こんなに笑って感動したのは、黒沢明の『椿三十朗』以来でした。
その後も、ジャッキー・チェンの映画は、見る度にパワー・アップし、
いつも感心したものです。
彼は本当のエンターティメントが分かっています。
でまあ、彼の絶頂気は『プロジェクトA』『ポリス・ストーリ』辺りだと言うのは、
皆の意見が一致する当りでしょう。
ところがその後、『ミラクル』辺りから、なんか時々のれない作品
(『炎の大捜査線』等)が有って、最近でも、『ラッシュ・アワー』は
「何か違うんじゃない」と言うか、なんぼハリウッドに進出できたからと言ったって、
ちょっとジャッキーが可愛そうだし、
『レッド・ブロンクス』も、サモ・ハン・キンポー(でしたっけ)の
演出がいまいちだったし、
最近の心境としては、「しっかりしてくれよう」と言う感じだったのですが、
やっと見たいジャッキーが帰ってきた、と言う映画です。
それとこの映画は、あまり人が死なない(と言っても、9人は死にますが)
のも good です。
それにしても、沢口靖子も上手くなったもんだ
(昔、NHKの連続ドラマで、台詞が憶えれなくって、脚本家の
ジェームス三木さんが、沢口の台詞だけ短くしたと言う伝説の持ち主)
と思って見ていたら、ミッシェル・フェレと言う別人なんですね。
山本未来はなかなか『不夜城』の独特の雰囲気とは別で、
まあ良かった。
- 『ディープ・ブルー』
レニー・ハーリン監督の恐怖海洋物。
うーーん、やっぱりレニー・ハーリンは上手いなあ。
と言っても『クリフ・ハンガー』には及びませんが。
一時は『カット・スロート・アイランド』の時には、
この人もどうしちゃったんだろう、と思ったものですが、
その次の『ロング・キス・グットナイト』では見事復活し、
そしてこの映画。
このように当り外れが少ない監督(今まではずしたのは
『カット・スロート・アイランド』だけだと思います)の
作品は、安心して見に行けますねえ。
- 『肉屋』
ヨーロッパで大流行したエロチィック小説をイタリアで映画化したもの。
確かに裸のシーンは多いです。
だいたいが、肉を食うと言うのは、(私は良く分かりませんが)
そうとうエロスで有るらしい。
男女の仲と言うのも、焼き肉を食べに行くようになれば、
(私は良く分かりませんが)深い仲らしい。
日本では肉屋には既に死んでいる肉が置かれていますが、
中国なんかでも、原則として、市場の肉屋で屠殺するらしいのです。
だから、肉屋という場所も、生と死を分かつ場所であり、
死はやはりエロスに繋がる。
つまり、話の内容以前に、話の設定がエロスなのです。
とは言っても、それほどエロク感じないのは、なぜなんだろう。
私には、パトリス・ル・コントの『イボンヌの香り』や『髪結いの亭主』の
方が、遥かにエロイですが。
- 『(ザ・)ディープ・エンド・オブ・(ジ・)オーシャン』
ミシェル・ファイファー主演の家族物。
それにしても、なかなか理想の家族と言うのは、難しいですねえ。
と言うよりも、これが理想の家族だ、と(この映画の父親のように)
決めつけた瞬間、それはするりと逃げて行ってしまう。
なんか、考えさせられました。
まあ、家族関係と言うのは、昔「積み木崩し」と言うのも
有りましたが、作ったと思ってもすぐ壊れ、
それをまた積み上げるような物かも知れません。
そういった物に、これが理想、と言ったって、なかなか上手くいかないかも知れません。
ところで、ミシェル・ファイファーは、自分で
ビア・ローザ・プロダクションを作って、
自分で映画の製作にも乗り出しているのですが、
どうも本作や『素晴らしき日』を見ている限り、
成功しているとは思えません。
自分で製作していると、自分の役を自分で決めつける傾向になって、
いまいちマンネリしてくるのかも知れません。
どちらかと言うと、『バットマン・リターンズ』や『エイジ・オブ・イノセント』
のように、周りから持ち込まれた役の方が、役のイメージが広がる気がするのですが。
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- 『オープン・ユア・アイズ』
前作『テシス・次に私が殺される』を若干23歳でヒットさせた
スペインの映画監督アレハンドロ・アメナーバルが、
こんどは26歳で撮影した映画。
まあ内容は、夢から覚めるとまた夢のよう、と言う、
『ダーク・シティー』や『マトリックス』のような最近はやりの
サイバー・パンクの流れの映画なのだが、
現実感はこちらの方が有る。
そしてラストの孤独感、恐いです。
ちなみに、これほどの才能ハリウッドがほかっておくわけがなく、
トム・クルーズがリメークの映画化権を買収したそうです。
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- 『娼婦ベロニカ』
かつて、高級娼婦と言われる人達が確固たる地位を確立していた中世ヨーロッパを
描いた映画。
日本でも江戸時代、吉原の高級娼婦は名誉も教養もあり、
無事年期を明ければ(ただし日本人の平均寿命が30歳ぐらいだから、
たいていは死んでしまい、年期を明けるのは大変だったみたいですが)、
大商人の後家として、引っ張りだこで、
その後は優雅に暮らしたそうです。
この映画はそんなこともあった中世ヨーロッパを描いていて、
その頃は嫁に行って家に縛られるより、
娼婦になる方がよほど自由が有ったらしい。
この映画は、
『恋に落ちたシェークスピア』の製作を担当したエドワード・ズウィックが
作った映画なので、まあどうしても比較してしまうが、
やはり主役のキャサリーン・マコーマックがこれからの人で、
女優として完成しようとしているグウィネス・パルトロウと
比較すると見劣りがするのは仕方がないところですが、
それを無視すれば、なかなかの映画だと思います。
ただ、こう言ったコスチューム・プレイの映画は、
『恋に落ちたシェークスピア』よりも優れている(と私は思う)
『ファイアー・ライト』や『レッド・バイオリン』や『鳩の翼』や
『モル・フランダース』など、
とにかく良質の映画が最近でも大量に有るので、
もうちょっとどこかで特色を出さなければ難しいのでは無いかなあ。
ところで、なんか久しぶりのジャクリーン・ビセットが良かった。
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- コロンビア映画75周年記念映画祭『ある夜の出来事』
クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール主演、
フランク・キャプラ監督の古典的恋愛映画。
フランク・キャプラと言う人は、こう言った軽い映画が得意なので
巨匠とは呼びにくい監督なので、コロンビア映画75周年記念映画祭を
締めくくる映画としてこれが良いかどうかは疑問が残るが、
この映画は良い映画です。
まあでも、良く考えてみるに、こんな安易なストーリ、今時
少女漫画でもやらないだろうに。
それに、クローデット・コルベールも、いまいち可愛くないし。
しかしそれを補ってあまりある二人の演技と
キャプラ監督の独特の間。
やっぱり上手いですねえ。
ところで、結婚式のとき牧師さんに質問されたときに、
どうやって答えるのだろう。
この映画では "I will" と言っているし、
ロバート・デ・ニーロ主演の『ディアー・ハンター』でも
メリル・ストリープは鏡の前で練習するときに "I will" と言っていたので、
私は『ルパン3世カリオストロの城』で "Yes" と言っているのは
間違いだと思っていたのですが、
この間『アナライズ・ミー』を見ていたら "Yes" と言っていた。
どっちでもいいんだろうか?
- コロンビア映画75周年記念映画祭『オペラ・ハット』
ゲーリー・クーパー、ジーン・アーサー主演、
フランク・キャプラ監督の映画。
ある日、遺産を相続する羽目になった田舎の若者が、
ニューヨークに出てきて、まあ色々ある話なんだが、
どうも私にはゲーリー・クーパーが重すぎて、
やや軽さに欠けるんじゃないかと思えるのだが。
どうも昔からこの映画は、いまいち好きでないのは、
その当りです。
- 『アナライズ・ミー』
まあ、ロバート・デ・ニーロと言う人は、
もともとは器用な人
(すでに『キング・オブ・コメディー』や『ミッド・ナイト・ラン』のような映画
も有ることだし)だから、これくらいはやりますよ。
それにビリー・クリスタルが製作・主演なんだから、
つまらないわけがない。
それにしても、久しぶりにチャズ・パルミテリを見る気がするのですが、
彼はどうしていたのでしょう。
もともと舞台俳優だったのが、自分の小さい頃を自伝的に綴った
『ブロンクス物語』を一人芝居で演じ、
それをロバート・デ・ニーロに認められて、
デ・ニーロが映画化し、彼も映画に入ってきたような人なので、
演技力は確かなのだが。
もう一度、『ユージュアル・サスペクト』や『狼たちの街』のような
映画に出て欲しい。
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- 『将軍の娘』
予告編で、レイプより悪いこと、と言うのがキーに
なるのですが、確かにこれはひどい話だ。
この映画を見た人は、だいたいはひどい話と言ってます。
まあ、見ごたえはタップリ有ります。
それにしてもジョン・トラボルタと言う人も、
『サタディー・ナイト・ヒーバー』で大ブレイクした70年代、
鳴かず飛ばずの80年代、
そしていきなり復活した90年代、
どの時代も全くのマイ・ペースと言うのも凄いですねえ。
そして、この映画では、そのマイ・ペースに
ふてぶてしさが加わって、
役には合っていると思います。
- 『ノック・オン・ヘブンズ・ドアー』
不治の病に侵された2人の若者が暴走する話なのだが、
この暴走が、『リーサル・ウェポン』何かとは異なり、
適度に抑制されててちょうど良い暴走なのです。
なかなか気持ちの良い、そしてのれる映画です。
ドイツでヒットしたのも分かります。
最近のドイツ映画は、なかなか良いですねえ。
ちなみに題名は、もちろんボブ・ディランの名曲(天国の扉)の
題名からとったのですが、私はエリック・クラプトン版が
お勧めです。
- 『シックス・センス』
だいたい私はホラー映画はあまり好きではない。
理由は恐くないから。
私はコチコチの佛教徒だから、当然釈尊の教えを守り、
霊魂のことについては議論してはいけないのです
(本当の釈尊の教えは、こうなのです)。
だから幽霊も恐くないし、地獄も恐くありません。
だからホラー映画を見てもだいたいは何も感じないのですが、
この映画は凄い。
そして手ごわい。
今一番お勧めの映画です。
ちなみに沢木耕太郎が11月1日の朝日新聞の夕刊に、
この映画についてなかなか良い評論を書いています。
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- 『梟の城』
篠田正浩監督の歴史映画。
まあ、大阪城などをコンピュータ・グラフィックで見せるのは新しいが、
たぶん間もなく『マトリックス』の映画のレベルがC・Gの標準に
なるだろうから、その意味ではもうちょっとがんばって欲しかった。
忍者のリアルな姿を映画で再現するコンセプトには賛同できるが、
篠田映画が黒沢映画になれない最大の原因は、
本当の意味のエンターティメントが分かっていないんだと思う。
まあ篠田監督の色彩感覚はそれなりに楽しめるし、
中井貴一の忍者も物足りないけれども、
ファンにはそれなりに良いかも知れないし、
まあそれなりの映画ですねえ。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『アラビアのロレンス』
やっとコロンビア映画75周年記念映画祭の大本命が出てきた
感じですねえ。
やっぱりこの映画は、コロンビア映画を代表するばかりでなく、
映画全体を考えても、代表作なわけです。
もう私としては、何度見ても大感激するわけです。
もちろんビデオでも持っていますが、
やはりビデオではなく、スクリーンで見る方が遥かに良いですねえ。
4時間弱の長い映画なのですが、全く時間のことは感じません。
それにしてもあらためてみるに、
(淀川長治さん辺りが言い出したのだと思いますが)、
やはりこれは(隠れ)ゲイの映画なのだろうか。
まあデビッド・リーンと言う監督も、つくづく変わってまして、
女が全く出てこない戦争スペクタル
(『アラビアのロレンス』や『戦場にかける橋』)か
正当でない恋愛物(『逢引き』や『ライアンの娘』や
(私が英語の勉強に使った)『ドクトル・ジバコ』)に
限られると言うのも、何か変ですよねえ。
それと『インドへの道』のように分け分からない映画とか。
とにかく、まともな女性の恋愛を描いた映画は無いのです。
それにしても、デビッド・リーン。
さすが、デビッド・リーン。
これほどの大スペクタクルを作って、その演出に一点の曇りもない。
例えば最近の映画だと『始皇帝暗殺』の演出の歪み。
やはり舞台が大きいと、演出も難しいのだと思いますが、
もともとデビッド・リーンは『逢引き』の頃から、
その恐ろしく正確に意図が伝わる演出の手腕には定評が有りましたから、
これほどの大舞台になっても、実に正確に演出がなされています。
そしてフィルムのどこにも少しのたるみもない。
隅から隅までピーンと張り詰めた緊張感。
これこそ映画の中の映画。
まことに凄い映画です。
ところで、この映画は4時間弱なのに、ちっとも長く感じられないのは、
やはり前半と後半、全くロレンスと言う人物が変わってしまい、
別の映画の趣が有るからでしょうか。
とにかく前半は、『Nothing is written!』つまり、
『そんなことは(聖書には)書かれていないんだ』
(字幕の役では『運命などないんだ』)と言う強い意思で
運命を切り開く男ロレンスの姿に圧倒されます。
ところが後半は、段々と運命に弄ばれ、最後は狂気の戦いを経て、
失意のまま帰国するロレンス。
どちらのロレンスも我々の胸を打ちます。
それにしても、この映画。
製作企画段階では、誰もヒットするとは思っていなかったらしいです。
だいたい当時無名だったピーター・オトゥールは、
ロレンスに顔が似ている
(しかし実在のロレンスは、背が低いことにコンプレックスを抱いていて、
ピーター・オトゥールのように、背が高くは有りませんが)
と言う理由で起用されただけだし、
オマー・シャリフも当時は無名だし、
いちおう名前の通っている俳優と言えばサー・アレックス・ギネスだけ。
それに、だいたいアラビアの話なんて、誰も興味を持たない
と思われたし、砂漠でラクダで戦争しても、迫力有る映像は
撮れないと思われていた。
これほど不利な状況が揃っているのに、見事映画会社から金を抽出し、
俳優を1年以上も砂漠に釘付けにし、成功させるのだから、
正しくデビッド・リーンは『Nothing is written!』そのもので有ります。
それにしても、最近の映画は、本当の意味のスペクタクルは
無くなってしまって、『タイタニック』のように、
特撮で何とかしてしまう。
俳優は合成された絵の前で演じているだけ。
まあ最近スペクタクルらしいスペクタクル、
本当に現場で撮影したのは、レニー・ハーリン監督の『クリフ・ハンガー』
ぐらいしか思い付きません。
映画もどうなってしまうのだろう。
以下は10月に見た映画です
- コロンビア映画75周年記念映画祭『タクシー・ドライバー』
この映画を始めてみたのは、大学生の時、
今池の場末の小さな映画館で、『レイジング・ブル』との2本立て
(凄い2本立てですねえ)で見たので、
かれこれ20年前なのですが、
何度見ても最後の銃撃戦のシーンは、圧巻ですねえ。
あれから20年経つのに、
この銃撃戦を越える映画は無いように思える。
なんて凄いんだろう。
良くこの映画は、学生を集めて上映会をやったので、
さんざんビデオでは見たのですが、
あらためて映画館で見て、より凄いと思った。
この映画は、言うまでもなくマーティン・スコセッシ監督と
ロバート・デ・ニーロの原点のような映画ですが、
本当に映画人マーティン・スコセッシの
映画人としての本領を発揮した、
一番映画らしい映画だと思う。
世の中に色々な映画が有りますが、
こんなに映画の匂いがプンプンしている映画も珍しい。
だいたい私が映画にのめり込むきっかけになった映画です。
ロバート・デ・ニーロは、この後、
(半裸の身体が本当に体重30kg増える)
『レイジング・ブル』や、
若きドン・コルレオーネを見事マーロン・ブランドの物まねで
再現した『ゴッド・ファーザー・パート2』などで
スターの道をかけ登るのですが、
『アンタッチャブル』のアル・カポネ役以後、
どうもここ10年くらい、ぱっとしませんねえ。
また、『タクシー・ドライバー』のような凄い役をやって欲しいです。
またジュディー・フォスターは、自分では
「あのころはかわいこちゃんで、皆にちやほやされた」と
言ってますが、
私には、やけにはれぼったい顔に見えるのですが。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『ジョルスン物語』
1946年製作の、20世紀初頭にショー・ビジネスで活躍した
アル・ジョルスンの半生を描いた物語。
それにしても、昔は音楽映画が沢山作られたのに、
最近全く無いのはどういうわけなんでしょう。
この映画が作られた頃でも、ぱっと思っただけで
『オーケストラの少女』『赤い靴』『パリのアメリカ人』
『イースター・パレード』と名作が目白押し。
その少し後でも『サウンド・オブ・ミュージック』
『ウェスト・サイド・ストーリー』『マイ・フェア・レディー』
『シェルブールの雨傘』なんて、本当に別格の映画が並ぶのに、
このところ、本当に音楽映画が有りません。
まあちょっとひねったところでは、ウッディー・アレンの
『世界中がアイ・ラブ・ユー』が例外ですか。
(だから、私はインド映画にはまるのですが)
とにかく、上質な音楽映画を見たいものです。
ところでこの映画、音楽は良いし、ジョルスンのショーマン魂には
感動するし、ストーリーも良いですが、
何かこう1つ、映画に華やかさがない。
思うに音楽映画は女性が主人公の方が良いのではないだろうか。
まあ私がいまいち好きでない音楽映画は
『パリのアメリカ人』や『5つの銅貨』。
やはり男が主人公。
逆に私が好きな音楽映画は『赤い靴』『シェルブールの雨傘』
『オーケストラの少女』『イースター・パレード』と言った
ところですか。
女性が主人公の映画に偏ります。
この当りも昔良く学生を集めて上映会を行ないました。
まあ『サウンド・オブ・ミュージック』
『ウェスト・サイド・ストーリー』『マイ・フェア・レディー』
は別格ですが。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『ラスト・ショー』
ピーター・ボグダノビッチ監督の映画には、独特の哀感が有りますねえ。
それにしても若い頃のシビル・シェパードって、
『タクシー・ドライバー』の颯爽としたシティー・ウーマンの
イメージと異なり、こんな役をやっていたのですねえ。
とにかくシビル・シェパードのストリップが見れるだけでも見ものです。
それにしてもジェフ・ブリッジスも若いし、
皆若いですねえ。
それにしても「古き良きアメリカ」と言う言い方が有りますが、
この映画の時代が朝鮮戦争の頃だから、
その頃からアメリカってこんなんだったら、
一般にベトナム戦争でアメリカが悪くなったと言われていますが、
その前からひどかったんですねえ。
「古き良き」なんてのは、いつの話なんだろう。
『大草原の小さな家』の頃なんだろうか。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『コレクター』
あの名作中の名作『ベンハー』や『ローマの休日』を監督した
ウィリアム・ワイラーが、こんな映画も監督していたなんて。
本当にこの人は巨匠ですが、巨匠でもデビッド・リーンや
ヒッチコックのように、一生同じ映画しか撮らない人もいますが、
ワイラーは、(『噂の2人』なんてのも有りますが)何でも撮れるところが
凄いですねえ。
ところで、確かに(オーストラリア映画の『プリシラ』で
ゲイの役を怪演した)テレンス・スタンプの変質者の演技は見ものですが、
ワイラーには他に素晴らしい映画は沢山有るので、
コロンビア映画75周年記念映画祭としてなら、
他の映画を見たかったです。
最後に1997年に同名映画が有りますが、
あまり関係はなさそうです。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『イージー・ライダー』
ピーター・フォンダが製作をし、デニス・ホッパーが監督をして、
それぞれが主役で出演した映画。
始め、ステッペン・ウルフの『ザ・ビッチ』(でしたっけ)の音楽で始まり、
続いてステッペン・ウルフの『ボーン・トゥー・ビー・ワイルド』辺りから
段々映画は軽快に走りだします。
でも音楽も段々泥臭くなり、話も歪みだす。
それにしてもこの映画、以前も見たはずなのに全く印象にない。
たぶんその理由は、最後があまりに酷すぎて、
無意識に記憶から消そうとしていたのではないだろうか。
とにかく、このラストシーン、嫌いです。
アメリカって、本当にむちゃくちゃな国ですねえ。
あれから、アメリカがよくなっているかと言うと、
最近の銃乱射事件などのように、ますます悪くなっているとしか思えない。
ホントに日本に生まれて良かったと思いますよ。
それにしても、アメリカの南部と言うのは、
本当に保守的なんですねえ。
まあ、アメリカの田舎なんか関係無いと思っているかも知れませんが、
この南部の保守層が、大統領選挙のときには大きな力となり、
アメリカの政策に大きな力となるのですからたまりません。
とにかく「アメリカのばかやろう」を100回位言い続けた映画ですねえ。
- 『チンパオ』
第二次世界大戦の中国での、日本軍による食料徴収を
描いた映画。
かつて日本では、第二次世界大戦の映画と言えば、
広島の原爆、大空襲、特攻隊、学徒出陣と、
被害者としての日本人が描かれた映画が多かったわけです。
もちろんこう言った視点も大事なのですが、
当然加害者として、外国に行って、そうとう悪いこと
(南京大虐殺は、個人的には私は?の気分なのですが)
もしたでしょうし、被害者としての日本だけを描くのは、
片手落ちなような気もします。
しかも外国へ行って悪いことしたのは、
極端な軍国主義者だけでなく、
昨日まで普通の一般人だった人々も、
徴兵で軍にやられ、
(さまざまな理由は有りましょうが)
何がしらかの迷惑を外国にかけてきたらしいのです。
例えば外国映画なら、『1900年』のように、
普通の村の普通の人々が、段々ファシストとなって行く
様を描いた映画もあるのですが、
日本のそういった映画は、未だ見たことはないような気がします。
まあ、色々書きましたが、
『チンパオ』は加害者としての日本軍を描いた珍しい映画です。
ただ映画では、日本軍は負けだしてから、
しょうがなく食料徴収をやったように言っていましたが、
私が知る限り、日本軍は初めから食料を補給する気はなかったと言うか、
そういったことはしてなかったようですから、
食料は常に現地調達、つまり『7人の侍』の盗賊の
ようなものだったんじゃあ無いでしょうか。
(詳しい人がいたら、教えてください。)
それ以外にも、日本人特有の問題として、
たとえ正義を貫いたとしても、
『名誉の戦死』でなくただの『戦死』(つまり軍に、はむかった)場合、
先祖代々の墓に入れてもらえない、
しかも戦後になってもそのままと言うのは、
あまりに馬鹿のやることですねえ。
この当りは、ユダヤ人を大量に救った杉浦ちうねさんが、
政府の命令を守らなかったことで外務省を首になるのが、
戦後だったとか、
その名誉回復も、イスラエルから言われて外圧で名誉回復するとか、
まあ日本人のどうしようもなく嫌な面です。
でまあ『チンパオ』の面白いところは、
日本の進歩的知識人が良く言うように、
日本は悪いことしましたから反省しましょう、
と言うような安易な態度にも一石を投じているところです。
私も良く思うのだが、そんなに簡単に本当の反省なんかは出来ない
(たとえ本人が深く反省していても)し、
この主人公の悩みもそこなのです。
(その先に何が有るかが大事なのですが。)
また逆に、あれは過去の出来事で、今の世代には関係無い、
と言う意見もありますが、
なかなか実際中国に行きますと、
そんなに簡単に割り切れるわけではないと思います。
まあ、全く中国と関わり合いに為らなければ良いですが、
なんと言っても隣の国、本人が関わり合いに為りたくなくても、
関わってしまうこともあるわけですし、
その時に何も知りません、では、やっぱり都合も悪いと思うわけです。
最後に、この舞台となった桂林は、
本当に良いところなので、
一度行かれることをお勧めします。
ただし最近は、あまりに観光化しすぎていますので、
悪徳商人には十分注意しましょう。
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- コロンビア映画75周年記念映画祭『追憶』
当時『ファニー・ガール』で一流俳優の
仲間入りをしたバーバラ・ストライサンドが、
まだ売り出し中のロバート・レッドフォードを起用して成功した、
あまりに有名
(ストライサンド自身が歌う歌だけが有名かも)な古典的恋愛映画。
それにしても、映画の中のストライサンドは、
ストライサンドそのものの役のようですねえ。
とにかく良く言えば信念の人。
悪く言えば頑固。
映画の中で20年、変わらないのです。
こんな女と付き合うと大変だから、
だいたいラストも予想が付くけど、
それでも泣いてしまった。
そして驚くべきことに、この映画から24年が経っているのに、
ストライサンドが全く変わっていないことです。
そんなもんで、何年か前、
アカデミー賞の授賞式で、
司会のビリー・クリスタルがストライサンドの物まねをし、
『私が一番偉いのよ』とやって大爆笑を取っていたのですが、
やっぱり皆、そう思っているのですねえ。
それにしても24年、実生活でも変わらないのは立派です。
- コロンビア映画75周年記念映画祭『地上(ここ)より永遠(とわ)に』
フレッド・ジンネマンがリアルに描く
(と言っても『西部戦線異常なし』や『僕の村は戦場だった』ほどでは
無いですが)戦争映画の古典的名作。
アカデミー賞を確か8つも取った。
私の好みとしては、
やたら格好付けるモンゴメリー・クリフトよりも、
バート・ランカスターの方がかっこいいねえ。
それと、フランク・シナトラって、
黒沢明の『7人の侍』の東野栄二郎みたいに、
チンケな役ですねえ。
まあ、コロンビア映画75周年記念映画祭と言っても、
あまりに有名な映画ばかりなので、
全部ビデオで持っていますが、
やはりスクリーンで見るのは違いますね。
- 『ホーンディング』
ヤン・デ・ボン監督のホラー映画。
ヤン・デ・ボンはオランダで、ポール・バーホーベンの
元で撮影監督をし、
ポール・バーホーベンが世界的に評価されるのに、
大いに貢献しました。
その後、二人はハリウッドに招かれ、大成功するわけです。
でまあ、ヤン・デ・ボンはハリウッドで、
『ブラック・レイン』や『ダイ・ハード』や
『リーサルウェポン3』の撮影監督を勤めた後、
『スピード』で監督デビュー、大成功と為るわけです。
ただしヤン・デ・ボン、前作の『ツイスター』でも
そうなんですが、
確かにカメラ・ワークは凄いのですが、
そっちが凄すぎて、
人物が描かれていないのです。
『ツイスター』の登場人物が、さっぱり思い出せないのですが、
確かに竜巻は凄かった。
それと同じで、
この映画も、リーアム・ニーソンとか、
『エントラップメント』がとっても良かった
キャサリン・ゼーダ=ジョーンズとか、
『I shut アンディー・ウォーホール
(アンディー・ウォーホールを撃った女)』の
演技が物凄く印象的だったリリー・テイラーとか、
けっこう俳優は良いのに、
その印象が無いのです。
どうなったんでしょうか。
- 『運動靴と赤い金魚』
イランの映画なのですが、これが予想通り良かった。
だいたい映画というのは、変な国で突然面白い物が作られる。
(オランダの『キャラクタ・孤独な人の肖像』とか、
ベルギーの『ありふれた事件』とか。)
イランも、インドのように量産はしないが、
ときどき忘れた頃に、良質な映画(『友達の家はどこ』みたいに)が
作られるところが面白い。
もちろんイスラム社会なので、厳しい検閲があり、
そのためにどうしても、子供を扱った映画に偏りがちなのは、
しょうがないですが、
そういったハンディーを乗り越えて、良い映画を作っています。
それにしても、子供の事情というのは、
なかなか面白かった。
妹の靴がないだけで、これだけドラマになるのだから。
- 『リトル・ボイス』
なかなかの秀作だった『ブラス』のマーク・ハーマンが監督した音楽映画。
と言っても、この映画は主演のリトル・ボイスを演じた
ジェイン・ホロックスの為の映画でして、
ひとえに彼女が素晴らしい。
このホロックスと言う人、素晴らしい声の持主でして、
もともと彼女の当り役の舞台を映画化したわけです。
とにかく彼女の声は、映画で聞いてもらえれば良いですが、
驚くべきことに、映画で歌うシーンは、
すべて彼女が撮影中ライブで歌ったものが、
そのまま使われているのです。
その他、ラストの方ではさまざまな声で色々な芸を連発します。
だから、もっと彼女の歌声を入れるべきと思っている人は、
多いと思います。
そして、この映画の良い所は、単に音楽映画で終わらず、
人々の生活もしっかり描かれているところです。
だからこそ、歌に夢を描くわけです。
まあ、イギリスの田舎と言うのは、本当にこう言った感じです。
イギリスはもう何十年も不況をやっている
(元気が良いのは、ロンドンだけ)し、
未だに階級が有るから、
日本と違って、一般庶民が金持ちになるのは難しい。
だからこそ人々は、ささやかな生活の中に楽しみを見つけるのが上手なわけで、
イギリス社会は成熟している、と良く言われるけれども、
それは長い不況から来た、庶民の知恵な訳です。
そんなわけで、最近のイギリス映画は、
この当りの庶民を描かせると、実に上手いですねえ。
何しろ題材は、そこら辺に転がっているわけですから。
ところで、ユアン・マクレガーが、意外と良かったです。
彼は『ナイト・ウォッチ』や『ベルベット・ゴールドマイン』は良かったけれども、
『普通じゃない』では普通の人間で、つまらなかったです。
やっと新しい魅力が出てきた感じです。
母親役のブレンダ・ブレッシンの存在感も、相変わらず抜群です。
マイク・リー監督の『秘密と嘘』では、
暑苦しい顔で泣いてばかりだったですが、
『ガールズ・ナイト』といいこれといい、いるだけで凄い存在感です。
まあ、とにかく良かった。
- 『シンプル・プラン』
まあ、誰もが言うことですが、この映画、
コーエン兄弟の名作『ファーゴ』に似ている。
しかも『ファーゴ』は越えていない。
まあ、サム・ライミ監督のファンとか、
ビリー・ボブ・ソートンが好きなら、
見に行く価値はあるかもしてないが...
- 『グロリア』
ジョン・カサヴェテス監督の同名映画のリメイク版。
まあ、予想通りと言いましょうか、やっぱりと言いましょうか、
シャロン・ストーンのグロリアは、
元の映画のジーナ・ローランズの線の太さには、
(シャロン・ストーンはかなり意識しているのだろうが)かないません。
だいたいが、元の『グロリア』はジーナの為の映画のようなものであり、
ジーナの旦那のカサヴェテスがジーナの為に書いた映画なのだから、
シャロン・ストーンでは、それを越えれるわけもないのですが。
それならいっそう、全く異なる映画にすれば良かったものを、
何とも中途半端な作りとなっています。
それにしても、シドニー・ルメットというのは、
本当にあの名作『十二人の怒れる男』の監督なのでしょうか。
最近の映画(『Q & A』や『N.Y. 検事局』など)の中途半端さには、驚きます。
以下は9月に見た映画です
- 『ノッティング・ヒルの恋人』
まあ恋愛映画には優れた映画が多くありますから、
それらを凌いでこれが一番良い映画
(特にジュリア・ロバーツには『プリティー・ウーマン』という、
シンデレラ・ストーリの典型があり、
これを凌ぐのは、やはり難しい)というのには無理が有りますが、
それなりに面白かった。
大体が、ヒュー・グラントという人は、
正統的2枚目をやらせると、実に似合わない
(『モーリス』辺りが限界か)不思議な人なので、
このところ、ちょっとはずす役
(『ウェールズの山』などか)が多かったように思うのですが、
久しぶりの2枚目を全面に出した役。
彼も歳をとり、それなりに貫禄も付き、
何となく肩の力が抜けて、上手くなったもんだ。
ちょっと前までは、本当に演技力が無かったもんなあ。
ジュリア・ロバーツも歳をとり、
まあこの辺りが良いところでは無いでしょうか。
しかし、映画の内容はそうとう練れてあり、
かなり笑えます。
特にウェールズの変人(イギリス人に聴くと、ウェールズ人は
変わり者だそうです)は凄かった。
ただしおしむらくは、笑える部分の大部分は、
予告編で使ってしまっているので、
予測が付いてしまうのです。
この辺り、もう少し考えた方が良いと思います。
ただ、他の映画の引用はそうとう笑えた。
『恋人たちの予感』は、やはりあそこだよねえ、
ということですし、
『プリティー・ウーマン』と『ゴースト』は、
公開時期がほとんど同じなので、
まあそういうことも有りますよ。
ただ『ゴースト』の時のデミ・ムーアは、
すでに『俺たちは天使でない』などで出ていて、
かなり有名だったけれども、
『プリティー・ウーマン』のジュリア・ロバーツは、
無名だった分、インパクトが有りました。
『鳩の翼』は、マニアックですねえ。
- 『マトリックス』
要するに、サイバー・パンク映画なのだが、そうとうお勧めである。
とりあえず、どの映画見ようか迷っている人は、
この映画を見れば良い。
驚異の画像というが、私には「それほど」と思えた。
まあ今の技術をもってすれば、この位は出来るでしょう。
(『スター・ウォーズ』は(金のかけ方が)別格として、
『ダーク・シティー』や種類は違うが『ミクロコスモス』等、
驚異の映像なんて、今はいくらでもあるように思う。)
しかし、映画監督がこの技術をしっかり自分のものとし、
完全に使いこなしているのには、驚嘆した。
例えば、この映画で最大に話題の技術は、
空中で静止した物体を、静止したまま写しているカメラが、
そのものを写しながら回る所であろう。
(何言っているのか良く分からないかも知れないが、
映画を見た人ならすぐ分かるでしょう。)
これは『バッファロー’66』でも使われていたけれども、
ブレッド・タイムとかフローモーションと言われている技術である。
まあ種を明かせば、撮影したい物体の周りに
多数(この映画では120台)のカメラを取り囲むようにして置き、
いっせいにシャッターを切り、
そのフィルムを繋げば出来ることでして、
もともとはイギリスで発明された技術です。
(私もイギリスの動物番組で見ました。)
しかし、この映画の偉い所は、こう言った技術をひけらかして使うのではなく、
映画の必然性から使っているのです。
映画の製作の前に、マンガ家を動員して完全なるイメージ・ボードがあり、
それを実写で実現しているわけです。
ブレッド・タイムでも、ただこれを使うのではなく、
その前に完全な振り付けしによる美しいポーズがあり、
それをブレッド・タイムとコンピュータ・グラフィックを組み合わせて、
完全な映像が有るわけです。
それにしても、この映画を撮影したウォッシャウスキー兄弟。
聞いたことない名前だなあ、と思ったけれども、
あの(私の大好きな)『バウンド』を撮影した監督なんですねえ。
確かに『バウンド』は良い映画であり、エンターティメントとして
良く出来ていたけれども、
それだけではただの
(『ユージュアル・サスペクト』のブライアン・シガーには負けるけど)
インディーズの才能有る監督、で終わるところです。
でもその次が難しい。
ブライアン・シガーも次の『ゴールデン・ボーイ』は
確かに面白い映画ではあるけれども、
それほど凄い映画か?となると、難しいと言わざる得ない。
その辺りが、ジョージ・ルーカスやスティーブン・スティルバーグが
凄いところなのだが、
このウォッシャウスキー兄弟も、次の映画が勝負の分かれ目の
ような気がします。
ひょっとしたら大化けで、ジョージ・ルーカスのように
なる可能性も有ります。
なお、ホームページにはパスワード付きの部分が有りますが、
それはパンフレットに載っていますが、
自分で探すのも面白いでしょう。
この映画のホームページ
- とりあえず、夏休みにヨーロッパ旅行したときのスケッチだけ、
ここにまとめましたんで、
良かったら見てやってください。
旅行記はそのうち書きます。
- 『サイコ』
言わずと知れた、ヒッチコックの最高傑作を、
『グッド・ウィル・ハンティング』(この映画は、相当お勧めです)の
ガス・ヴァン・サント監督がリメークした映画。
もう冒頭から、旧『サイコ』とまるで同じタイトルバック、同じ音楽。
撮影の雰囲気も同じなら、(ヒッチコック映画には、
必ずどこかで監督自身が遊びでチラッと出ているのであるが)
ヒッチコックが出ているところまで同じ。
しかし、私が最大に疑問に思うのは、旧『サイコ』は
ヒッチコックの執念(始め内容が問題となり、
(ヒッチコックほどのヒット作を連発する監督であるにも関わらず)
ほとんどの映画会社から拒否をされたのを、強引に低予算で作った)と、
原作の良さと、何よりアンソニー・パーキンスの
物凄い演技によって成功した映画なのだが、
新『サイコ』のヴィンス・ボーンは、顔はパーキンスよりも恐いが、
演技はホラー映画の役者そのものであり、
これが新『サイコ』最大の弱点になっている。
(この辺りが、『ダイヤルM』と決定的に違うところで、
『ダイヤルM』はその点、根本的に良く練れていると思う。
また、ヴィネス・パルトロウの新しい魅力を引き出した功績も大きい。)
もともと映画と言うものは、荒唐無稽なストーリに、
いかにリアリティーを持たせるか、という物だが、
『サイコ』のストーリというのは、
それこそ(当時の)世間の常識からは見て荒唐無稽なのを、
ラストのパーキンスの一世一代の演技により、
それまでは単なるドラマだったのが、
観客はリアルな内容として感じるわけです(だから恐いのです)。
つまりパーキンスの演技により、この映画は完結するわけなのですが、
新『サイコ』では、それが無い。
とにかく、多くの映画人が言っているように、
果たしてこんな映画作る意味が有るのだろうか。
新『サイコ』を見るよりは、旧『サイコ』を見た方が良いような気がします。
というような感想をここまで書いて、
他の映画のホームページも覗いてみたら、
やっぱりと言うか、なんと言うか、
新『サイコ』がゴールデン・ラズベリー賞
(最低映画を決める賞)の3部門にノミネートされて、
ガス・ヴァン・サントは見事、最低監督賞を受賞したらしいです。
私の意見としては、そこまでひどい映画とは思いませんけれどもねえ。
まあそのホームページには、「『グッド・ウィル・ハンティング』の栄光が
ふっとんだ」と書いてありましたが、もともとあの映画は、
主演のマット・ディモンとベン・アフレックスが良いのと、
この二人が書いた脚本が優れていたわけでして、
ガス・ヴァン・サントの力量としては、
やはりインディーズの雄と言ったところで、
未知数の部分が多いわけで、
こんなもんだろう、とは思いましたけれども。
- 『エリザベス』
イギリスに栄光をもたらした、エリザベス1世の若き頃を
描いた歴史大河映画。
仲々の出来栄えでして、私は満足でした。
主役のケイト・ブランシェットは、映画のキャリアはほとんど無名ながら、
この仲々に難しい役を、実に巧みに演じたと思います。
ただどうも、ジョセフ・ファインズは、すぐ最近に『恋に落ちたシェークスピア』で
シェークスピアの役をやったばかりなので、
どうも同じ時代の別の役というのは、いごごちが悪そうです。
(日本の時代劇でも、松平健が将軍以外の役で出てくると、
何か変な感じがするのと同じようなものです。)
どっちにしても、イギリスの歴史というものは、本当に血にまみれています。
私が思うに、私の知っている範囲で一番血塗れなのは、スコットランド。
スコットランドの王様は、半分以上は暗殺されていまして、
まともに天寿をまっとうするのは、きわめて難しい国です。
その次にイングランドとか中国が、やはり凄い血の歴史ですねえ。
これらの国に比べれば、日本や他のヨーロッパ諸国は、
まあ平和なものですよ。
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- 『オースティン・パワーズ・デラックス』
おまぬけ映画の最高傑作の1つ、『オースティン・パワーズ』が
さらにパワー・アップされて帰っていたので、
これは見ないわけにはいきません。
それにしても、前作のラストにもってきたギャグを、
こんどはオースティンみずからが、タイトル・バックで演じるなんて、
まずここで大爆笑です。
でも最後は、ややパワー不足の感じもしましたが、
とにかく笑えました。
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- 『黒猫・白猫』
あの名作『アンダー・グラウンド』の
エミール・クストリッファが監督するのだから、
期待は大だったのだが、
内容は『アンダー・グラウンド』を小粒にしたような感じで、
前作と比べると不満は残りました。
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- 8月終わりから、9月中旬まで、3週間ヨーロッパを
旅行していまして、この欄のアップ・デートが出来ませんで、
申し訳有りませんでした。
旅行中は
物凄い
体験をしましたので、
その報告を兼ねて、いずれ
ヨーロッパ・スケッチ旅行として、
ホームページに掲載したいと思っております。
以下は8月に見た映画です
- 『アルナーチャラム・踊るスーパースター』
あの『ムトゥー・踊るマハラジャ』のスーパースター・ラジニカーント主演の
最新映画。
まあ、いつもの調子で、歌って踊って暴れて、大活躍。
それに加え、大浪費作戦というのが、目新しい。
『ムトゥー』程では無いにしても、『ヤジャマン・踊るマハラジャ2』よりは、
遥かに面白い。
政治家に転進が噂されているラジニカーント。
次回作が最後ともいわれているが、このテンションは永遠です。
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- 『エントラップメント』
エントラップメントとは、
要するに、罠(トラップ)をかける事ですが、
仲々にこの映画は、罠をかけ、罠をかけられ、
最後までハラハラドキドキ、上手く作ってあります。
ショーン・コネリーのパワー不足を、
キャサリン・ゼタ=ジョーンズの色気が補っています。
キャサリンは『マスク・オブ・ゾロ』も相当良かったけれども、
それを上回る出来の良さです。
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- 『セレブリティ』
ウッディ・アレン監督の新作映画。
ケネス・ブラナーがウッディ・アレンのようにしゃべりまくります。
前作の『地球は女で回ってる』が結構面白かったので、
期待して行ったけど、さっぱりわけが分からなかった。
- 『ファミリー・ゲーム、双子の天使』
うーん、私は泣けました、それも途中からずっと。
(私の妻は、「まさか!」と言っておりましたが。)
だいたい涙もろい私は、親と娘が抱き合っただけで
ジーンと来る方なんです。
それも双子だから倍、それぞれの親も絡むので、
さらに順列組み合わせで、
(モーツァルトの『コシ・ファン・トゥッテ』のごとく)
無数の抱き合うシーンが有って、
その度にジーンと来てしまうのです。
原作はドイツの名作『二人のロッテ』
(それにしてもドイツ語だと「ダス・ドッペルテ・ロッテチェン』とでも
読むのでしょうか、ウーン、ドイツ語のこの硬さは、ロマンも
吹き飛ぶと思うのですが)なんですが、
最近のディズニーは仲々やるなあ、と思います。
とにかく、汚いアメリカ英語や、人が沢山死ぬ話や、女の裸だけの映画は、
どっちか言うと、もううんざりです。
例えばパトリス・ル・コント監督の『イボンヌの香り』では、
裸はないのに物凄く官能的です。
もうちょっと、工夫して欲しいです。
家族で行くにはこの夏一番のお勧めですが、
別に家族で行かなくても、お勧めです。
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- 『ホーホケキョ・となりの山田君』
何しろジブリが朝日新聞連載漫画を長編劇場映画にするので、
以前映画の予想パロディーで、山田一家にナウシカやラピュタの
ような冒険をさせる話が有ったけど、
それに近いものが有りました。(しかもあの図柄で。)
ジブリは偉いなあ。
映像的には凄く手間もかかり、金も時間もかかることをやっているのに、
映画を見ている瞬間にはそんなことは全く忘れ、
映画だけに集中して楽しめる。
それだけでも凄いと思います。
(それにしても、あの絵柄で、背景が立体的に動くのは、
物凄い手間ですねえ。)
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- 『ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・バレル』
いやあ、見事な物だ。
多くのろくでなしが、すったもんだの騒動を起こすのですが、
登場人物が多いのに、全く混乱しないように出来ている。
そしてその登場人物の絡みも、最後まで破綻しません。
とにかく一気に最後まで見せてくれてスカーとする。
エンターテイメント映画の手本のような映画ですねえ。
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- 『ラン・ローラ・ラン』
なんて、あざとい、映画なんだろう。
最近のドイツ映画は、『ドーベルマン』でもそうだが、
こう言ったあざとさが、得意なんだろうか。
とにかく私は、こういうあざとさが、大好きです。
それに、もともと虚構を作り出すのが映画なんだから、
あざといのは当たり前だと思っています。
とにかくストーリなんかどうでも良い。
ローラは恋人のために走り続ける。
もちろん、途中止まったりするのだが、
それでも映画の中の半分くらいは、
走っているんじゃないかなあ。
見事な走りっぷりです。
初めは、でかい尻と胸でドカドカ走り、
なんか走りが重くて大丈夫かなあ、と見ていたのですが、
太い腕をまっすぐに後ろに振りおろし、
大きなストライドでしっかりと大地を蹴る、
見事なランニングです。
大体が、映画で走るシーンというのは、本当に難しいと思います。
私も今までたくさんの映画を見てきましたが、
満足行く走りをした映画というのは、そんなに無いのです。
有名な所では、『7人の侍』で、いきなり木槌がなったときに、
みんな一斉に走りだすのですが、
本当に早そうなのは、(以外や意外)宮口精二だけだったですねえ。
いきなり本番をやらせてみて、これには黒沢明もびっくりしたそうですが、
逆に他の人は、早そうには見えなかった。
他の映画で、本当に早そうに見えたのは、タビアーニ兄弟の
『グッドモーニング・バビロン』ですか。
あの職人の兄弟が、何かを決意して走りだすシーンは、
大好きです。
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- 『バッファロー'66』
とにかく、ビンセント・ギャロの趣味一色に塗りつぶされた映画でして、
彼が好きな人にはたまらない映画でしょうねえ。
彼自身が『マスター・ピースを作ってしまった』と言ったのも、
うなずける作品です。
予告編で使われた、イエスの『燃える朝焼け』とキング・クリムゾンの
『ムーン・チャイルド』も使われています。
でも『燃える朝焼け』は、初めのリック・ウェークマンの
ハモンド・オルガンの独特の音色の所(私はここが好きなのに、
しかもこの映画で使われている『こわれもの』バージョンしか聞けないのに)は
入っておらず、クリス・スクワィエルのベースの音に、リック・ウェークマンの
メロトロンの音(これがどんなものかは、前出の『バッファロー’66予告編』
を見てください)がかぶさっていき、それにスティーブ・ハウのエレキ・ギターの
音がかぶさっていく所からしか、やっていないのです。
(予告編では、一番カッコ良い、曲の一番初めの所をやったのに。)
それでも、この使い方は凄いなあ。
『ムーン・チャイルド』の使われ方は秀逸の一言ですねえ。
グレグ・レイクの美しい声が、このシーンにぴったしです。
ところで、この「バッファロー」は、バッファロー・ビルズの
バッファローなんですねえ。
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- 『アイズ・ワイド・シャット』
ついに話題の問題作を見ました。
キューブリック監督のベスト5
(ベスト3を選べと言われたら『博士の異常な愛情』『2001年宇宙の旅』
『時計仕掛けのオレンジ』になるのですが、
あと2つ選ぶとなると、これは難しい)には入るのではないでしょうか。
とにかくキューブリックは他の監督とは格が違う事を
しらしめた事は、間違いない映画です。
ただキューブリックの最高傑作かというと、他に傑作が有りすぎるので、
しょうがないですね。
(黒沢明の『乱』を映画館で見たときは、ついに黒沢も最高傑作かも知れないものを
ものにしたなあ、と思い、身震いしたのを覚えていますけれども、
この映画は身震いはしなかった。)
ところで題名ですけれども、『アイズ・シャット』なら目を閉じる事ですが、
ワイドというのは、何がワイドなのか、私には分かりません。
(瞼の厚さという説も有りますが。)
映画は実にキューブリックらしく展開します。
ストーリも、実にキューブリックらしい、
いっさいのタブーを排したヤバサが有ります。
そして何より、キューブリックらしい独特の柔らかく丸い明るい映像。
映画館で見て思ったのは、明るい印象だけれども、
本当はそれほど明るくはないことです。
それでも明るく感じる。
何なんでしょうかねえ。
そして何よりホッとしたのが、汚い言葉が少ないことです。
なぜ今のアメリカ映画は、あんなに言葉が汚いのでしょうか。
アメリカ人の人倫は、そんなに低俗なのでしょうか?
(そうなのでしょうねえ)
この映画は(『ファック』という言葉を過剰供給する)アメリカ映画の中で、
『ファック』が本来のセックスの意味のみで使われるという事は、
非常に希な事です。
キューブリック追悼のホームページ
- 『タンゴ』
カルロス・サウラ監督の映画で、
アルゼンティンでタンゴのミュージカルの映画を製作しようとする
監督と、その映画を描いた作品。
まあカルロス・サウラと言えば、(私の大好きな)アントニオ・ガデスが
振り付けをして、(3大テノールの中では一番嫌いな)プラシゴ・ドミンゴが
主演した『カルメン』とか、アントニオ・ガデスの『血の婚礼』
(ガデス舞踊団の出し物は、『カルメン』と『血の婚礼』しかなかったのですが、
それでも高い評価を受けていた)『恋は魔術師』(題名をなんとかして欲しい)
なども監督した人だから、ラテン系の踊りのある映画には、
何か期待できる人です。
もっとも、カルロス・サウラは、『タクシー』のような社会派の映画も
とる人で、要するに器用なのですねえ。
この映画を語るときにどうしても比較してしまう映画に、
サリー・ポッターの『タンゴ・レッスン』が有ります。
『タンゴ』も決して悪い映画
(カルロス・サウラは、大体はどんな映画をとらせても、
平均以上の出来にしますから)とは思いませんが、
映画自体の出来は、『タンゴ・レッスン』の方が面白かった。
『タンゴ・レッスン』のホームページ
『タンゴ・レッスン』という映画は、監督のサリー・ポッター自身が、
自らタンゴにのめり込み、タンゴ舞踊団でも実際に活躍した
腕前を映画で披露し、とにかく英国人サリーが外国人の目から見て
タンゴの魅力を存分に引き出した映画なので、
当然面白いです。
特に3人でピアソラの『リベル・タンゴ』
(テレビでサントリーの宣伝でヨーヨーマが弾いているので、
あまりにも有名になってしまいましたが、
元のピアソラの演奏も、野性身あふれていて、好きです)
で踊り狂うシーンは、非常に上質の出来栄えになっています。
タンゴと言う踊りは、社交ダンスの種目にも有るのでイギリスでも
盛んなような気もするのですが、
社交ダンスのタンゴはコンチネンタル(南米大陸の意味)・タンゴとは
やはり違うと思います。
だいたい、社交ダンスというのは、もともとウィーンで
大流行したウィーンナ・ワルツ(男女が身体をぴったりと付けて
(それまで踊られていた踊りは、せいぜい男女が手をつなぐ程度で、
身体を密着させる踊りは無かった)、
早いリズムで一晩中踊り続けるという、非常に猥雑な物だったのです)
が普通の人には踊れないので、ゆっくりにして、ワルツ
(だから今でも、ウィーン・フィルの演奏するワルツは、
早いテンポだった2拍子のウーンナ・ワルツをゆっくりにした、
という意識が有るので、3拍子ではなく、やや2拍子気味にナマッている)
という、誰でも踊れる踊りにしたのが始まりです。
その後も、どん欲に世界中の踊りを取り入れ、
フラメンコはパソドブレとしてとり込められ、
タンゴも取り入れられたのです。
ただやはり、誰でも踊れる、という社交ダンスの基本コンセプトが有るので、
コンチネンタル・タンゴでは、ステップが人によってずれるのですが、
それだと見知らぬ人と踊る可能性の有る社交ダンスでは良くないので、
ステップを統一して、誰と組んでもすぐに踊れるようにしたわけですけれども、
それがタンゴにとって良かったか悪かったかは、良く分かりません。
それはさておき、『タンゴ』というのは、(サリー・ポッターがタンゴ自体の
魅力を描こうとしたのと比べると)
カルロス・サウラは、
さらにアルゼンチン人の血に迫ろうとしたのですが、
私にはそれが余分だったように思えます。
もっと踊り狂えば良かったのに。
ところで映画『タンゴ』の音楽をやっているラロ・シフリン。
どっかで見たことある名前だと思ったのですが、
彼は『スパイ大作戦(テレビシリーズ)』(最近有線放送で深夜に
やっているので嬉しい)のテーマ曲を作曲した人なのですねえ。
もともとアルゼンチン出身の彼は、アメリカに渡り、
ガレスピーの楽団にいた人です。
その後ピアソラの音楽上のアドバイザーなんかも、やっていたらしい。
前から不思議に思っていたのは、ピアソラの音楽の、
何とも矛盾に満ち緊張感あふれる演奏。
ジャズの影響かなあと思っていたのですが、
たぶんシフリンのアレンジも、関係しているのですね。
ところでタンゴを描いた作品は、
『ネイキッド・タンゴ』のような作品も有るのですが、
パトリス・ルコント監督の(私の大好きな)『タンゴ』は
踊りのタンゴとは全く関係有りません。
以下は7月に見た映画です
- 『クンドゥン』
私の大学の英語のアメリカ人の先生が絶賛していたのですが、
だから見に行ったわけではなくて、
やっぱりマーティン・スコセッシ監督だから
見に行ったわけです。
彼女はアメリカ人ですが、摂心という、
朝の3時半から夜の9時まで坐禅を行う会にも参加するし、
菜食主義で私の家のパーティでも、
自前で菜食料理を持ってくるし、
独特のアジア文化の理解が有ります。
だから彼女と話していると、
やはり映画を見る視点が全然異なり、面白かったです。
例えば、最後の砂の曼陀羅のシーンとか、
鳥葬のシーンとか、そういった物に引かれたようです。
私はどちらかというと、いかにも映画人の中の映画人
マーティン・スコセッシが、どれくらい映画臭い映画を
撮ってくれるか期待したのですが、
そういった意味では、やや期待外れだったのですが、
彼女との会話で、やや見方も変わりました。
まあ、どっちにしても、私はチベットの事は良く知らないのですが、
新きょうウイグル自治区に行った感じでは、
やはり中国政府があの辺りを自分の領土とするには、
無理が有るような気がします。
私はウイグル自治区には5回ほど言ったのですが
(私が撮ったタクマラカン沙漠とパミール高原の立体写真が、
私のホーム・ページに有ります)、
とても漢民族が溶け込んでいるとは思えません。
あちこちで不穏な動きも見かけましたし
(日本ではほとんど報道されません)、
漢民族は現地人を恐れているのか、
固まって軍隊か警察の隣に住んでいます。
漢民族は、現地の地下資源をもらいに来ているのと、
原爆の実験を行うためだけに来ている感じです。
しかしそんな辺境の地でなくても、
広東などに行った感じでも、
何か北京の言うことなんか聴く感じではないですねえ。
(良く分かりませんが)
もうほとんど、経済力を背景に独立国にちかいんじゃあないかなあ。
やはり中華思想もほどほどにしておかないと、
今の時代には無理が有るのでは無いでしょうか?
この映画のホームページ
- 『54(フィフティー・フォー)』
1970年代の後半、ニュー・ヨークに有名なディスコ54が
有ったのですが、そこの物語。
私も当時は、雑誌のポパイを創刊号から買っていたので、
そこで54の記事は見た覚えが有ります。
ただ、その頃ジョン・トラボルタの
『サタディ・ナイト・フィーバー』が公開されたのですが、
全く踊りが迫力不足だったので、
ディスコには(結構行きましたが、真剣には)
興味が沸かなかったです。
(当時は私の母親はガンガンに競技ダンスに参加していたので、
競技ダンスのビデオを良く見たりしていたのですが、
それに比べて何と迫力の無いことよ。
その後15年後、『ダンシング・ヒーロ』や『shall we dance?』が
公開されるまで、競技ダンスは正当に評価されなかったですが、
本当は凄いんです。
いちおう私もモダンもラテンも2級まで取りました。)
まあとにかく、ジュリアナの遥か昔ですが、
ディスコもジュリアナのようになったら、おしまいです。
あれは開かれ過ぎました。
やはり、どこか秘密めいていないと。
(だからその後クラブが流行ったんでしょうけど。)
それにしても
私の大好きな『オースティン・パワーズ』の
マイク・マイヤーズの才能は凄いですねえ。
この映画のホームページ
- 『踊れトスカーナ』
面白かった。
お勧めの映画です。
イタリアで大ヒットしたのも分かります。
とにかくラテン系、イタリア人にフラメンコ、いかにもという感じです。
教科書風に言えば、ラテン世界というのは、昔ローマ帝国が支配していた
イタリア、フランス、スペイン、ポルトガルと言ったところでしょうか。
もちろんヨーロッパの専門家に言わせれば、どの国も違うのでしょうけれども、
まあだいたい似ていて、言葉も近いです。
(北京語と広東語より、遥かに近い。)
要するに情熱的でいいかげん。
ちなみに、オペラの『カルメン』はスペインの話ですが、
フランス語で上演されます。
(もっとも日本の話の『蝶々婦人』はイタリア語ですが。)
トスカーナというのはイタリアの田舎です。
最近は日本からも観光客が行くみたいですが、
そこはそれ、しょせん田舎。
いつも決まったメンバーで、
やることといったら他人の噂話。
全く日本の田舎と同じです。
だいたい、イタリア映画でこんなに単純にスカッとさせてくれるのは、珍しい。
日本で公開されるイタリア映画は(たとえ『ライフ・イズ・ビューティフル』でも)
どこか大作主義というか重い気がするのですが、
この映画は重くなくて、しかも良く出来た映画です。
やっぱり恋愛映画というのは、程々が大事なのですが、
そのサジ加減は本当に難しく、
なかなか上手く行っていないのではないでしょうか。
この映画は、その辺りが上手いのです。
それにしてもイタリアの田舎の映画で、
日本語が2回も出てくるなんて思わなかった。
この映画のホームページ
- 『スモーク・シグナルズ』
サンダンス映画祭で脚本が認められて、
NHKが支援する賞を取り、
その支援で完成した映画。
NHKもなかなか粋なことをします。
同じような経緯で作られた映画に『セントラル・ステーション』
(本当に良い映画でした)や『フラミンゴの季節』が有るので、
凄いものだと思います。
ところで原作・脚本のシャーマン・アレクシーは、今週号の
アエラ('99.7.26)によれば、詩の格闘家らしいです。
最近は日本でも、5分ずつ詩を読み会い何ラウンドかを戦い、
優劣を競うイベントが有るそうですが、
これはアメリカが本場。
そしてアレクシーはチャンピオンらしいのです。
だからセルフが面白いのですが、
やはり字幕になると面白さが半減するのか、
『それがどうしたの?』という物も有りました。
まあネーティブ・アメリカンによって、
ネーティブ・アメリカンを描いた映画ですが、
それを忘れて見ても十分楽しめます。
- 番外編『バッファロー’66』予告編
マルチ・タレント(日本で言うところの、
「少しずつ中途半端な才能が有るけれども、
結局どれも本物ではないので、
中途半端に色々手を出す」という、いわゆるマルチ・タレントではなく、
本当に色々な才能が有る人のこと)のビンセント・ギャロの
『バッファロー’66』の予告編を見ました。
別に予告編はどうってことないのですが、
音楽が、yes の『燃える朝焼け』とキング・クリムゾンの『ムーン・チャイルド』
(『ムーン・チャイルド』が入っていない予告編も有ります)が
使ってあって、なかなかです。
特に『燃える朝焼け』は、名作『こわれもの』のラスト(正確には違いますが)を
飾るにふさわしい曲です。
『燃える朝焼け』もその後、ライブで色々なヴァージョンが作られましたが、
やはり最初のビル・ブラッフォードがドラムを叩いているものが良いです。
リック・ウェークマンの初めのハモンド・オルガンの音も、
その後のヴァージョンでは正確に再現されない音
(これだけサンプラーが普及した世の中で、不思議ですが)
で、好きです。
『ムーン・チャイルド』も独特の雰囲気のある曲ですが、
原始的サンプラー(鍵盤の数だけテープレコーダが内蔵されていて、
テープの長さに限りが有るので、
長時間和音を出すのには、
色々音を区切るテクニックを要した)メロトロンの音に載せ、
グレッグ・レークの美しい歌声が聴けます。
こう言った音楽の選曲は、映画配給会社でやっているのでしょうか?
キューブリックの新作の予告編も良いけれども、
あの音楽はキューブリック自身でしょうねえ。
- 『ヤジャマン・踊るマハラジャ2』
言わずと知れたあの名作(?)『ムトゥー・踊るマハラジャ』の
続編かと思いきや、そうではない。
だいたい配給プロドゥーサの人自身が、
「『ムトゥー』より面白い映画はない」と言っているのであるから、
こんどの映画に期待しすぎるのは禁物である。
それでも『ムトゥー』のスーパースター・ラジニカーント
(それにしても、自分で自分のことをスーパースターと言っているのは、
世界的に見てもラジニカーントとにしきのあきら位でしょうねえ)と
ミーナが初競演した映画なので、
それだけでも見に行く価値はあると思いますが。
それにストーリの支離滅裂さも
(かつてのにっかつアクション映画並に)磨きがかかっていますし。
もっとも『ムトゥー』があれだけ評価されたのは、
(ある意味でのインド映画らしからぬ)映画の完成度
(たとえ馬車が空を飛ぶシーンがプアー過ぎたとしても)
の高さだと思うので、
そういった物を『ヤジャマン』に求めてはいけないのです。
ただやっぱり音楽は、ラフマーンがやった方が良いですねえ。
- 『スター・ウォーズ・エピソード1・ファントム・メナス』
いやー、まさか生きているうちにこの映画を見れるなんて。
そして、その出来栄えと来たら、あらゆる予想を裏切って、
素晴らしいの一語です。
私がはじめてスター・ウォーズを見たのは、大学生の時ですが、
いやー、熱中しました。
といっても、今の熱狂的ファンの人程ではないですが、
それでも一日最高4回見ました。
と言っても大学生の頃は、1日4回映画を見るのは普通だったのです。
それというのも、今から20年ほど前は、名古屋の映画館は
ほとんどが2本立てだったので、2映画館をはしごすると、
4つ見る事になってしまうからです。
お金がないから、朝からレーズン食パンを抱えて、
飢えをしのぎながら、一日中映画館にいたものです。
これのおかげで、当時見ないはずの映画を沢山見る羽目になって、
随分映画を見る幅が広がりました。
たとえば、私の妻と恋人時代にデートで映画を見に行ったとき、
私の妻は当時は同性愛に興味があったので『蜘蛛女のキス』を
見に行ったのですが、
同時上映が、あのテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』なのです。
(凄い2本立てですねえ。)
二人で、名古屋のシネプラザ1の巨大画面の前で、
4時間じっとこんな映画を見ていて、
その後のデートが散々だったことを覚えています。
とにかく『スター・ウォーズ・エピソード4』をはじめて見たときの
衝撃たるや、物凄いものがありました。
(おまけにストーリーが、黒沢明の『隠し砦の三悪人』と
同じ事にも驚きましたが。)
こんな衝撃は、小学生のとき『2001年宇宙の旅』を同じ映画館で見て以来です。
それでも映画館で見ると、ビデオで見るのとは別のアラが見えて、
当時の特撮のレベルが伺い知れますが。
たとえばライト・セーバが伸びるところでは、『エピソード4』では、
映画館で見ていると画面がピクッと動くのです。
つまり、このシーンは、一度フィルムを止めて、
長いライト・セーバーに持ち変えて、
またフィルムを動かして撮影して、
後でライト・セーバーが光るように処理をしているという、
非常に古典的な方法で撮影をしているのです。
とは言っても、その特撮技術は当時としては信じられないくらい素晴らしいもので、
物凄く感動したものです。
ところが、その次の『エピソード5・帝国の逆襲』は、
難しい特撮に挑みすぎて、えらく特撮のアラが目立ってしまっているし、
ストーリも暗いので、
私の興味も段々薄れてしまいました。
『エピソード6・ジェダイの復讐』は、
もう全然覚えていません。
ところが、こんどの『スター・ウォーズ』は、とにかく
特撮が素晴らしい。
もちろん現代の技術を持ってすれば、
これくらいのことが出来ることは分かっているのですが、
そういった予想を忘れさせるしっかりとしたストーリが有るのです。
つまりジョージ・ルーカスは、
特撮を特撮のために使うのではなく、
ストーリを語らせるために使い、
しかもこれだけしっかりとした、
実に映画らしい映画にしているのです。
実にたいしたものです。
とにかくお勧め。
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- 『メッセージ・イン・ア・ボトル』
『ダンス・ウイズ・ウルブズ』以来、
『パーフェクト・ワールド』もつまらんかったけど、
『ポスト・マン』では再起不能なのではないだろうかと
思わせたケビン・コスナー主演。
しかも原作は、私の嫌いな『マディソン郡の橋』と
比較される作品。
カップルで一人1000円だったから行ったのですが、
そうでなかったら、絶対行かなかった。
ところが意外と良かったのです。
主演女優のロビン・ライト・ペンは、
ショーン・ペンの『シーズ・ソー・ラブリー』や、
ショーン・ペン監督の『クロッシング・ガード』(意外と良かった)、
名作『フォレスト・ガンプ』、
そして私の大好きな『モル・フランダース』と
なかなかの名女優ぶりで、
もっと評価されても良い女優だと思います。
- 『レッド・バイオリン』
一台のバイオリンがさまざまな人々の手を経て、300年後の現在まで
どのようにして来たのかを描いた作品ですが、
とにかくスケールがでかくて、今一番お勧めの映画。
ぼくは、日本の若い人でクラシックが好きでない人が多いのは、
音楽の授業でベートーベンやブラームスを聴かせるからだと思うのですが。
確かにこう言った音楽もいいのですが、少なくとも
CDで聴いて良さが分かるとは思えない。
たまにまともな学校は、地元の声楽科のリサイタルを聴かせたり
するようですが、ああ行ったのもピンからキリまでで、
なかなか良い物は無いようです。
音楽なんてのは官能の世界なので、
一度脳みそがしびれるような音が身体に刻み込まれたら、
もう一生自分の物だと思うのですが、クラシックの演奏でも
なかなか難しい。
私が聴いた中で凄かったのは、ベルリン・フィル・コンサート・マスターの安永徹が
ベルリン・フィルの主席演奏者を連れて、
ホテル・ナゴヤ・キャッスルで、
400人くらいの観客でフランス料理を食べながら聴くコンサートです。
しかも意外と安かった。
何しろ超絶技巧の持ち主ばかりが、まさに目の前で
演奏してくれのですから、迫力満点。
次が、アントニオ・ガデスの踊りかなあ。
あれも凄かった。
インバル指揮のマーラも凄かったし、
この世にはいっくらでも凄いものがあり、
そういった物を一度知ると、薄っぺらい音楽など聴けません。
でもこの映画は、まさに官能のバイオリンを聴けます。
芸術などというなまっちょろい事なんかは、ぶっとびます。
とにかく人間の生、執念、ありとあらゆる物が混ざって、
バイオリンの音になっているのです。
いやー良かった。
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- 『ゴールデン・ボーイ』
あの『ユージュアル・サスペクト』のブライアン・シンガーが
ステーブン・キングの原作を映画化するのですから、
見に行かないわけはありません。
まあ、面白かったです。
あるナチスの話に取り付かれた少年の話しなのです。
隠れナチスの話ならばコスタ・ガプラス監督の『ミュージック・ボックス』
などの他の優れた作品もありますが、
これはこれでそれなりに。
ただ『ユージュアル・サスペクト』に比べると
どうしてもやや劣りますが、あれは名作ですから、しかたないですね。
それにしてもキングの原作映画は、名作揃いですねえ
(くだらないホラーもありますが)。
- 『ショーシャンクの空に』とにかく名作です。最後のさわやかさは格別。
- 『ミザリー』とにかく、キャッシー・ベイツが恐かった。
- 『シャイニング』キューブリックは特撮をほとんど使わず、ここまでやった名作。
- 『スタンド・バイ・ミー』私の妻は大好きです。
とにかく名作ですねえ。
- 『交渉人』
この映画に関しては、おすぎさんがテレビでさんざん宣伝していますが、
全くその通りでした。
とにかく絶対見なさい。
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- 『25年目のキス』
この間、高校の恩師が退官するので、山の上(千畳敷カール)で
そのお祝いの会がありました。
でまあ、家族で参加した人もいるので、中に現役の高校生もいました。
彼らを指して恩師は、『皆さんが高校生の時って、
随分幼い感じがするかも知れませんが、この位だったんですよ。』
と言われたのを聞いて、なるほどと思いました。
自分が高校生のときって、今思えば、子供で幼稚で、
しかも大人扱いして欲しいという、一番厄介な時期ですねえ。
自分が国立豊田高等専門学校の教官をしていたときでも、
一番下は15歳なのですが、とにかく子供なので、
苦労した覚えがあります。
それにしても不思議なのは、高校生の頃のあこがれの人、
ヒーローだった人は、どこに行ってしまったのでしょう。
特に私の高校は、進学校で女性が極端に少なく、
そのうえ理科系で、まことに悲惨な青春でした。
とにかく大学行って、女性とまともに話せるように
リハビリするのが、大変でした。
でまあ、この映画は、高校時代に悲惨な思い出しかない
新聞記者が、高校に潜入してルポを書く話なんですが、
高校生のときに人気者になるって、意外と簡単なんですねえ。
ところで、主役のドリュー・バリモアは、何とかなりませんかねえ。
女優というのはある作品で急にオーラが発生するものです。
まあ私の主観で、『恋人たちの予感』のメグ・ライアンが10点満点で10点、
『プリティー・ウーマン』のジュリア・ロバーツも10点、
『スピード』のサンドラ・ブロックが9点、
『ゴースト』のデミ・ムーアも9点、
『恋に落ちたシェークスピア』のヴィネス・パルトゥロウも9点、
だとすると、この映画のドリュー・バリモアは6点ぐらいでしょうか。
まあ今までが、5点以下なので、進歩はありますが。
彼女のはれぼったい目がブスに見える原因で、
話の初めは、それが効果的なのですが、
最後までそのままで、ちっとも輝いてこないのです。
彼女がオーラを発するときは、来るのでしょうか?
以下は6月に見た映画です
- 『キャメロット・ガーデンの少女』
うーーん、とにかく面白かったが、
大人と言うものは子供を無菌培養すれば良いように思ってしまうのですねえ。
でも子供というのは、普通はゲップとか汚いものが
好きなものではないでしょうか。
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- 『ハイ・アート』
女性写真家の物語で、面白かった。
監督も女性のリサ・チョロデンコ、
映画の中で使われているプライベート・フォトも
本当の女性写真家が撮っています。
つまり、女性による、女性のための、
女性が感じる映画だと思います。
(と、男性の私が表するのも変ですが)
- 『スパニッシュ・プリズナー』
この映画は相当面白い。
今一番のお勧め。
スパニッシュ・プリズナーとは西洋の古典的なサギの手口らしいのですが、
それにまつわるトリックの映画。
どんでん返しが素晴らしい。
監督・脚本のデビット・マメットは、
今までジャック・ニコルソンの『郵便配達人は二度ベルを鳴らす』とか
『アンタッチャブル』の脚本を書いているので、
もうベテランの人です。
ですから脚本も一筋縄で行くはずがありません。
とにかく面白い。
ただスティーブ・マーティンが出てきてギャグをやらないのは、
何か変です。
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- 『GAMA 月桃の花』
第2次世界大戦中の日本軍の沖縄の住民に対する虐待を描いた話。
だいたい、今までの戦争映画は、軍国主義者がいて、
日本人はそいつらに虐げられたかわいそうな奴、
という描き方だと思う。
日本人による沖縄の虐待は、
日本人が一番避けたいところなのではないでしょうか?
当然、沖縄人による義勇軍には、もっとも過酷な事をやらされるわけだし、
中には爆弾をしょって戦車に突撃させるようなことまで
やらせるのです。
しょせん、日本人にとって沖縄とは、
薩摩藩が琉球王国を植民地にした頃と何も変わっていないと
思います。
だからアメリカ軍が駐留しても、
日本人は知らん顔できるのです。
まあフランスが植民地でこの間核実験したようなものです。
自分の国の厄介なことは、皆押しつけるだけ。
新聞だって、沖縄の少女暴行事件のときだって、
報道までに1カ月くらいかかっています。
つまり基本的に興味がないのです。
そういった日本人の卑しさを日本人自身が知らないことに問題があるわけですが、
たまにはこう言った映画でも見て、バランスを保ちましょう。
- 『MABUI』
MABUI とは命のことでして、
戦後の沖縄の青春群像を描いた映画。
内容は相当面白いのですが、映画のレベルは今一つだと思います。
でもそれを補ってあまりある沖縄の自然
(ある意味で...な方法ですが)が素晴らしい。
最近は独立系の映画でも、素晴らしい映画は沢山有るので、
予算がないという事に甘えることなく、そういった映画の
レベルには達して欲しいです。
たとえば戦争映画だったら『ブコバルに手紙は届かない』とか
『ビフォアー・ザ・レイン』などか素晴らしいし、
サスペンスの『ユージュアル・サスペクト』とか
『スパニッシ・プリズナー』何かも大好きですねえ。
- 番外編『夏子の酒』
おとつい、お好み焼き屋に行ったら、越の寒梅(別撰)があったので、
もんじゃ焼きをつまみに飲んだ。
最近はワインばかりだったのですが、
それで次の日、何となく日本酒が飲みたくなって酒屋に行ったら、
菊姫があり、つい買ってしまった。
その帰りに本屋によったら、漫画『夏子の酒』が出ていたので、
つい買ってしまった。(以前、友達に借りて読んだだけなので。)
家で菊姫を飲みながら『夏子の酒』を読んでいたのですが、
やっぱり酒愛好家必読の本ですねえ。
それでも、以前菊姫の社長と一緒に旅行したときに聞いたのですが、
菊姫もだいぶ機械化が進んでいるらしいのですが、
それでも美味しい。
(ただし私の酒の美味しい基準は、いかに二日酔いにならないか、
が最大の基準ですが。)
それにしても、愛知県では越の寒梅は1万円以上するのですが、
これは高すぎるように思う。
いつもは新潟の寿司屋で、もっと安く飲んでいる。
とにかく日本の酒の値段というのは、馬鹿げて高すぎますねえ。
イギリスではどんなに良いスコッチでも5000円以上というのは
ほとんど存在しないですが、
日本では某有名メーカーSのYが5000円もする。
確かに美味しいが、この酒、20年以上前から疑惑が持たれている。
Yは地名で、ここだけで作られていると言う宣伝なのですが、
生産量と流通量の間に、大きな開きがあるらしい。
まあ、本当の酒飲みはSの酒だけは飲みませんがねえ。
(ある酒のみの独り言でした。)
- 『奇跡の輝き』
ロビン・ウィリアムズ主演で天国と地獄を描いた作品。
全体の出来は、まあまあだった。
まあやっぱり、コンピュータ・グラフィックだけは
凄かったですねえ。
でもあまりに色が多すぎて、
私の目にはきつかった。
(何しろ、この日寝不足で、3本映画を見たもので。)
それに、この色使いも、あまり私の好みではなかった。
それでもソコソコは、面白かったです。
- 『鉄道員(ぽっぽや)』
言わずと知れた浅田次郎原作の同名小説を高倉健主演で映画化したもの。
やっぱり健さんは立ってるだけでカッコ良いですねえ。
まあ監督が降旗康男で主役が健さんだから、
だいたいどんな映画になるかは予想もつくし、
その予想どうりの映画だったのですが、
それでもなかなか良い映画でした。
とにかくまじめで実直な健さん。
こういう人達が戦後の日本を支えてきたんだなあ、
などと郷愁にふけっていますと、
懐かしいピンク・レディーなどがかかっています。
それがまた懐かしさをもりたてます。
また、こう言った人達の蓄えが有るので、
現在の日本がむちゃくちゃになっても、
若者がプータロやっても、
まだなんとかなっているんだと思います。
私も3年前イギリスに行って、鉄道で旅して、
向こうの鉄道の意外にいいかげんなところを見てきたので、
やはり日本人は優秀だと思います。
(ハンバーガ・ショップでは、店員どうしが立ち話をして、
全く接待がなっていないし、
2階建てバスは道を間違えるし、
ロンドンの地下鉄では
エスカレータや自動改札機がしょっちゅう壊れています。
あげくに最後にロンドンに帰ってくるとき、赤信号に突っ込んだ
別の列車の列車事故で線が不通になり、
あやうく日本に帰れなかったところだった。
とにかく日本では信じられない事ばかりだった。)
しかし、映画を見終わってふと思うのは、
こう言った仕事一筋で家族も顧みなく趣味もなく、
と言った老人が現在大量発生して、
社会問題化しているとも言えるのではないでしょうか。
外国では若くして引退して趣味に走る人はけっこういます。
私の母も日本人離れしているところがありまして、
バリバリの幼稚園の雇われ園長だったのが、
50歳過ぎたらさっさと引退して、
趣味の世界で悠々自適に過ごしていました。
(今は、とある事情で、そういうわけにも行かなくなったのですが。)
とにかく、野球の外国人選手を見習って、
家族が病気になったら、やはり仕事は適当にしておいて、
家族を心配した方が良いと思います。
それと、映画のセットで、もうちょっと過去と現在がはっきり分かるように、
凝って欲しかった。
そういったところはハリウッドの映画は本当に上手で、
ジェニファー・ジェイソン・リーが主演した『黙秘』(でしたっけ)などは、
ホントに上手です。
最後に広末涼子さんには、なんの恨みも無いのですが、
それでも彼女は何とかして欲しかった。
他の人が演技しているのに、
彼女だけ浮いていました。
まあでも、こう言った演技できない人を客寄せパンダで
使わざる得ないところが、
今の日本映画の弱点なんでしょうねえ。
- 『ハムナプトラ、失われた砂漠の都』
まあ(監督も認めているように)、
明らかにインディー・ジョーンズ・シリーズを意識して作られている映画です。
ただ、インディー・ジョーンズ・シリーズ自体、
私は『インディー・ジョーンズ、魔宮の伝説』以外は
そんなに面白いと思ったことがない。
(『魔宮の伝説』は別格で、未だにこれを越える冒険映画は
無いと思っています。)
で、この映画は『魔宮の伝説』程では無いにしても、
それ以外のインディー・ジョーンズ・シリーズよりは
勝っているかも知れない。
ただ、主役がなあ。
もちろんハリソン・フォードは凄い俳優と思っていますから、
それを越える人はなかなかいませんが、
それにしても『ジャングル・ジョー』のブレンダ・フレンザーとは、
これはコメディー映画かよ。
(でもコメディーとして見るのも、それなりに見れますが。)
しかしヒロインのレイチェル・ワイズだけは、
何か違うような気がします。
彼女がイスラムの衣装で目だけ出している顔が
一番美しかったと思っているのは、
私だけではないでしょう。
それにこの人、マイケル・ウィンター・ボトム監督の
『アイ・ウォント・ユー』であまりにドロドログシャグシャした
愛を演じすぎて、どうしてもそのイメージがあるものでして、
どうにもシックリしません。
(この辺りは『日陰の二人』のケイト・ウィンスレットが
『タイタニック』でどうどうの演技をしたのとは、対照的ですが。)
まあそれで、前半はなかなか特撮に圧倒されて見てましたが、
後半はミイラ男のオンパレードで、
何か興ざめしてしまいました。
もっとも原題は『the mummy』つまり文字どうり『ミイラ男』の
映画でして、どうりでマンガチックだと思いました。
でも、そう思うと、それなりになかなかの出来の映画だと思いますし、
アメリカで大ヒットしたのも分かります。
- 『視線のエロス』
いや、これはいろんな意味において、ドキドキしましたねえ。
なかなかの映画です。
ある女の子を口説く男。
映画はすべてこの男の視線で語られるのです。
(ただ、冒頭のシーン、車を運転しているのですから、
女の子ばかりを見ずに、前を見て欲しかったけど。)
だから、女はじっとこっちを見ているわけなのですが、
これが、なかなかドキドキするのです。
普通は映画ではカメラ目線はタブーなのですが、
わたし好みのカワイイ女の子が、じっとこっちを見つめている、
まるで本当にデートしている見たいです。
もちろん人間の視線で描いた映画は、今まででもたくさんありまして、
『アンタッチャブル』でショーン・コネリーが死ぬシーンで、
殺し屋が侵入するところで、殺し屋の視線で描かれていますし、
浅野忠信主演の『フォーカス』(私の大好きな映画)では、
テレビ局のカメラのカメラマンの視線で描き、
そのカメラにダンダンと事件が刻み込まれ、
強姦や殺人までも撮影してしまうという凄い映画でした。
古くは、黒沢明監督の『素晴らしき日曜日』で、
最後に主人公がカメラ目線でこちらに向って話しかけるというので、
なかなかの効果がありました。
ただ、この映画、良く考えてみるに、
金も暇もある妻子持ちの中年男が、ただひたすら若い女を口説く
という内容でして、
まあ、フランスでは、どうやって若い女の子が中年男の
毒牙にやられるか、というサンプルみたいな映画と言いますか、
なかなかいろんな意味で参考になりました。
(こんどやってみよ、という事ではありません。)
- 『ヴァイラス』
『ヴァイラス』ってなんだろう、と思ったけれども、
"virus" つまりウィルスの事なんですねえ。
アメリカ人は "i" を『アイ』としか読めないので、
こうなるらしい。
("linux" を『ライナックス』と発音する
間違いも、アメリカ人かららしい)。
内容は、宇宙の果てから来た意識を持つ電磁波が、
人間を襲う話なのですが、意識を持つ電磁波などという
偉く高尚な概念を持ち出してきた割には、
マンガチックだった。
まあ、本当の "virus" ってなんだ? というのは、
それなりに面白かったが。
それにしてもドナルド・サザーランドは
こう言った役にぴったりですねえ。
- 『ファイアー・ライト』
ソフィー・マルソー主演の文芸物映画。
それにしても、最近のソフィー・マルソーは
『アンナ・カレーニナ』でも『女優マルキーズ』でも
そうなんだけれども、
本当に大女優の風格が出てきましたねえ。
彼女は『ラ・ブーム』の時は、単なるカワイコチャンだったのに。
本当は私は彼女にあまり期待していなかったんです。
ロミー・シュナイダーがビスコンティの『ルードヴィッヒ』で
輝いてもそれ以上の映画がないように、
同じくビスコンティの『イノセンス』で
それまで単なるエロティック女優だったラウッラ・アントネッリが
一度だけ輝いたように、
ソフィー・マルソーも監督に恵まれ
まぐれで輝いているもんだとばかり思っていましたが、
この演技力は本物です。
監督のウィリアム・ニコルソンは、
今まで脚本専門の人で、
『サラフィナ』とか『ネル』とか『トゥルー・ナイト』とか、
評価の高い秀作を数多く手がけています。
だから、この人が自分のために脚本を書けば
面白いのに間違いないのですが、
その通りでした。
あと、この映画の素晴らしい所は、
題名の『ファイアー・ライト』すなわち灯の光りの
撮影の素晴らしいことです。
暖炉の灯、ロウソクの灯、それが見事に再現されています。
映画の撮影監督の仕事は、
大部分が撮影することではなく光りを調節することなのですが、
この映画の撮影監督は見事だと思います。
光りが素晴らしい映画としては、やはり『バグダット・カフェ』に
尽きると思うのですが、キューブリックも凄いと思います。
『シャイニング』なんかでは、光りの加減だけで
特撮はほとんど使わずにあれだけの撮影をするし、
『バリー・リンドン』では、あくまでも電気的な光りではなく
自然な光にこだわり、室内ではロウソクを用いて撮影していますが、
この映画もその風合いに近いと思います。
この映画のホームページ
- 『グッド・バイ・モロッコ』
『タイタニック』のために20kgやせたケイト・ウィンスレット。
彼女はその後、体重が20kg太ったそうですが、
今はどうなっているのか見たくて、見に行きました
(まあ、普通ですよねえ)。
でもこの人も『いつか晴れた日に』はまだしも
『日陰の二人』ではとことん暗かったので、
とても『タイタニック』の力強いヒロインは信じられませんが。
映画の時代は1972年(原作では1968年)、
世の中のロック・ミュージシャンは皆麻薬を吸い、
ジャニス・ジョップリンもジム・モリソンも
(もちろんジミー・ヘンドリックスも)
皆麻薬を吸いながら死んでしまって、
ビートルズも麻薬を吸いながら解散した頃
(ポール・マッカートニが日本に入国しようとして
麻薬所持で逮捕されるのは、これより随分後)、
まあ世界中にヒッピーという現実逃避の人達が
いたわけです。
そういった時代、西洋の物質文明(何て陳腐な表現!)を嫌い、
西洋以外に逃避した人々がいたのです
(まあ開発途上国の人間にとって、
たいていの西洋人は金をばらまいてくれてこそ価値が有るわけですから、
ただ貧乏でトラブルを起こすだけの西洋人なんてのは、
たぶん現地の人間にとって、迷惑な存在だと思いますが、
そういった事は描かれていません)。
まあ今でもインドあたりで、
マジック・マッシュルーム所持で逮捕される日本人がいるので、
そういった人間たちと思ってもらえば良いのでしょうか。
そんな時代の映画なので、当然音楽も懐かしい。
砂漠を行くところで、アメリカ(というバンド名)の
『名前のない馬』(ところで私は、この曲の原題を
『nameless horse』と信じていたのですが、
『a horse with no name』なのですね)なんて言う
懐かしい曲がかかっていたと思うと、
いきなり山道でジェファーソン・エアプレインが
鳴り響くという選曲。
うーーん、たまりません。
この映画のホームページ
- 『ローニン』
ロバート・デ・ニーロ、ジャン・レノ主演のアクション映画。
ただ、うーん、この監督、誰とは言いませんがセンスが
少し古くありませんか(『大列車強盗』の時代じゃ無いんだから)。
まあ歳(69歳)だからなあ。
ただしカー・チェースのシーンは秀逸です。
最近アメリカでは、映画の普通道路を使った撮影は
規制が厳しくなったので、
わざわざヨーロッパで撮影しただけのことはあります。
それにしても私は往年の『スパイ大作戦』のイメージが有るのですが、
あれに比べると、
東西冷戦が終わって、1匹狼になったプロフェッショナルを
寄せ集めると、こんなにチームワークが悪くなるのですねえ。
もうちょっとちゃんとして欲しい。
そう言えば雑談ですが、
山登りをする人に聞いたんですが、
日本ではまだ本格的な山登りは登山クラブ主体で行われていますが、
エベレストなどの入山料が高くなったために、
外国では、お金がある人なら誰でも連れて行くツアー形式の登山が主体だそうです。
そのため寄せ集めの集団となり、いまや外国の多くの登山隊は、
チーム・ワークもマナーもガタガタだそうです。
その点は日本の登山隊のマナーの良さは、
比較的高く評価されているそうです。
まあこの映画も、こう言ったもんですかねえ。
そう言えば最後に、この監督、もうちょっと正確に
日本の事を勉強して欲しいなあ。
- 『菊次郎の夏』
北野武、監督主演の映画。
今年のカンヌ映画祭で話題になった映画だけれども、
話題になるだけのことはある。
面白かった。
日本では、どうもコメディーという物の地位が低いような気がしますが、
由利徹も言っていたように、悲しい話より笑わかす方が、
よっぽど難しい。
小津安二郎が外国で評価が高いのも、
必ずどんな深刻な内容でも、ユーモアが有るからです。
もっとも小津の場合は、若い頃外国のドタバタ喜劇をものすごく研究して、
『生まれては見たけれど』などの傑作をものにしているから、
凄いですけれども。
北野武の場合も笑いは「間」なんだけど、それが抜群に上手い。
インタビューで言ってたけれども、
編集作業に入ると完全に集中してしまうそうだけれども、
編集作業の妙が、あの「間」を産んでいるわけです。
北野監督の場合は、
バイオレス物でもそうなんだけれども、
『この夏一番静かな海』(私が大好きな映画)なんかでも、
「間」が上手い。
とにかくお勧めの映画。
ところで私がお勧めのロード・ムービは、
やっぱり一番好きなのはビム・ベンダースの『パリ・テキサス』。
しかし『菊次郎の夏』と対比してみるのならば、
小津安二郎の『長屋紳士録』(これをロード・ムービと
呼ぶかどうかは分からないが)なんかはどうでしょうか。
でも本当は、私が心のそこから愛しているロード・ムービは
ロバート・デ・ニーロ主演の『ミッドナイト・ラン』です。
この映画は本当にお勧めです。
この映画のホームページ
- 『グッド・ナイト・ムーン』
ジュリア・ロバーツ、スーザン・サランドン主演の家庭物。
ところがこれが予想に反して大変に良かった。
相当のお勧めなのです。
監督のクリス・コロンブスは、
『ホーム・アローン』とか『ミセス・ダウト』とか
こう言った映画ははずさないのですが、さすがです。
この映画のホームページ
この映画のホームページ
- 『猿の惑星』
30年前のSF映画のニュー・プリントによるリバイバル。
この年は『2001年宇宙の旅』も公開されていますが、
当時は『猿の惑星』の方が、遥かにヒットしました。
今、あらためて見るに、SF映画として当時は
特殊メークに何時間もかかった、
というようなことが話題になりましたが、
今見るとどうってことない。
それに比べると、『2001年宇宙の旅』は、
宇宙船の質感とか、宇宙服の感じとか、実によくできていて、
今見てもたいしたものだと思います。
当時は、画面の合成は、ものすごく大変だったので、
当時のSF映画は、たいていまぬけな映像なのですが、
キューブリックは完ぺきに撮影できるまで、
ひたすら繰り返して、
質感までも再現できる素晴らしい映像を作り出したわけです。
画面の合成が簡単に出来るようになるのは、
それから10年後の『スター・ウォーズ』で
コンピュータを用いて合成するまで、待たなければならなかったわけですから、
キューブリックがいかに凄いかがわかります。
それに比べると『猿の惑星』は、
宇宙船は玩具みたいだし、宇宙服は変だし、
とてもSFとしては『2001年宇宙の旅』には
かないません。
そのかわり、脚本とか、実に深みのあるスペクタクルらしい撮影とか、
そういった点では今の映画では見られないようなお金のかけ方でして、
その点では映画らしい映画です。
最後の有名などんでん返しも、撮影が良い。
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- 『グロリア』
ジョン・カサヴェテス監督の昔の映画のリバイバル。
さっそうとした中年女のグロリアがカッコ良い。
カッコ良いというか、自分のスタイルを貫くのが好きです。
ジョン・カサヴェテスは、アメリカ・インデペンデンス映画の素と
言われていますが、
独立していても、こんな映画が作れるのですねえ。
後にこのグロリアのカッコ良さは、
タランティーノが『ジャッキー・ブラウン』で
まねをしています。
この映画のホームページ
- 『ロリータ』
ロリータ・コンプレックスの語源となったナボコフの小説の映画化。
何しろニーノ・ロータ亡き後、もの悲しい音楽をやらせたら天下逸品の
エンニオ・モリコーネ(でもこの人は『荒野の用心棒』のような音楽も出来る
才人ですが)
が『ワンス・アポンナ・タイム・イン・アメリカ』の
調子で、延々と場を盛り上げ、
それにのって情けない中年男をやらせたら世界1のジェレミー・アイアンズが
眉間にしわを寄せて立っているだけで、
もうどんな映画かわかってしまいますよねえ。
(でも私は、ジェレミー・アイアンズは『ダイ・ハード3』のような
悪役の方が、本当は似合っているように思うのですが。
この人の場合、なさせない役があまりにはまり過ぎて、
かえって良くないように思います。)
それでも場がしらけないのは、『ナイン・ハーフ』や『危険な情事』で
相当危ないセックスを描いたエイドリアン・ラインのたまものでしょう。
この映画は、かつてスタンリー・キューブリックが映画化していますが、
エイドリアン・ライン版の方がより原作に近いです。
というより、キューブリックと言う人は、
『2001年宇宙の旅』でも『時計仕掛けのオレンジ』でも、
『シャイニング』でも、
原作のエッセンスと言う部分は全く骨抜きにして、
新たにキューブリックの世界を構築してしまう人なのです。
まあ、それだからこそ、キューブリックのキューブリックたる所以なのですが。
- 『ペイバック』
メル・ギブソンがテレビで言っているように、スカッとするぜ。
これこそが、私の待っていたメル・ギブソンです。
タフでクールで命知らず。
私は『リーサル・ウェポン』シリーズが大好きなので、
メル・ギブソンには社長とか騎士の役なんかやって欲しくなかったのです。
この映画は、もともとはアメリカで有名な悪漢シリーズの小説が原作で、
今まで何度か映画化されています。
ですから、もともと内容は完成度の高いものなのですが、
それをメル・ギブソン独特の雰囲気で、
実に良い作品に仕上がっています。
そして最後まで一気に見せる気持ちの良さ。
まあ、もともと主人公のご都合主義に出来ている映画なので、
映画に入り込んでいるときはのれて見れるのですが、
一歩引くとしらけるのです。
それを『L.A. コンフィデンシャル』で見事な脚本を物にした
ブライアン・ヘルゲイトが、初監督とは思えない仕上がりにして、
一気に見せてしまいます。
この見事さ。
また、脇を固める俳優陣も、わたし好みの美女、デボラ・カラ・アンガー、
悪役もクリス・クリストファーソンなんて、
何て渋いんでしょう。
(しかも役の名前が「ブロンソン」で、チャールズ・ブロンソンに
似ている...)
とにかくお勧め。
以下は5月に見た映画です
- 『カラー・オブ・ハート』
黒白テレビの世界に普通の世界の人間が入り込む話なのですが、
黒白に色が付いて行くのがとっても効果的で面白い。
監督のゲーリ・ロスは『ビッグ』の脚本とかで、
こう言った話はお手の物だから、手慣れたものです。
映画の出来も、なかなかです。
このように、白黒に色を付けるの、
昔から黒沢明の『天国と地獄』とか、『シンドラーのリスト』とか、
効果的に使われています。
ただ家でビデオで見るより、
映画館で見る方が、
周りが暗い分、相当の効果が有ります。
ただこの映画の内容だったら、
私はウッディー・アレンの『カイロの紫の薔薇』の方が、
面白かった。
まあ監督としてのキャリアが違いすぎるから、
しょうがないですが。
- 『エネミー・オブ・アメリカ』
今、国会で問題になっている政府による盗聴がいかに恐ろしいかを
描いた映画。
国会議院も反対運動をするより、
この映画の上映会をやった方が、よっぽど国民にアピールするのに、
残念ながら日本ではこの映画あまりヒットしなかったようです。
しかし内容はムチャクチャ面白かったです。
とにかくラストまで、一気に退屈させずに持って行くのは、
脚本が良く出来ているのと、
『トップ・ガン』『トゥルー・ロマンス』で
テンポの良い映像には定評の有る監督トニー・スコットの腕前です。
俳優も良いです。
今がもっとも旬のウィル・スミスと、
ジーン・ハックマン。
とにかく抜群です。
その他にも、『真夜中のカウボーイ』の
いなか臭さがすっかり消えたジョン・ボイド、
ちらっとでてくるガブリエル・バーンと、渋い配役です。
とにかく今一番お勧めなのですが、
名古屋では終わってしまいました。
- 『バージン・フライト』
この映画は泣けました。
良い映画です。
とにかく身障者と自然に接することが、
いかに難しいか、
身障者のセックスの問題、
いろいろ考えさせます。
俳優が良い。
今まで『眺めの良い部屋』や『ハワーズ・エンド』などの
文芸物、コスチューム・プレイ主体だった
ヘレナ・ボナム・カーターが、ひねくれた身障者を演じます。
またケネス・ブラナーも、しゃべりすぎないのがよい。
身障者につい幼児言葉でしゃべってしまったりするって、
有りそうなのですが、
考えてみれば、
見かけはどうであれ、彼らは頭の中身は
普通の大人と変わらないかも知れないのに。
それに本人の前で、
『こういった気難しい身障者は慣れてますから』
と言うのも有りそう。
とにかくいろいろ考えさせられました。
- 『ラウンダーズ』
マッド・デーモン主演の、プロのポーカー師を描いた映画。
と言っても、日本人にはあまりなじみの無いスタッド・ポーカー。
いまいちルールがわからん。
俳優陣は楽しい。
脇からいくと、おなじみ『スパイ大作戦(テレビシリーズ)』で
変装の名人だったマーティン・ランド。
その変装の名人ぶりは『エド・ウッド』でアカデミー助演賞で
証明されました。
ジョン・タトゥーロも悪人面のジョン・マルコビッチも期待道理の演技。
そして、『世界中がアイ・ラブ・ユー』では歌って踊って、
『ラリー・フリント』では「こんな頼りなさそうな弁護士で大丈夫?」
という役だったけど、この映画では見事な演技を見せたエドワード・ノートン。
内容も面白かった。
ただし私はバクチは基本的に嫌いなので、こう言った映画はどうかとは
思うが。
私は愛知県一宮市で育ったので、高校生の時に
一宮競輪や笠松競馬に行きましたが、
なんか薄汚い連中が、信じられないような大金をかけている。
はっきり言って、そんなお金を使うぐらいなら、
他に使うことが有るだろうに、
と思ってします。
「夢」と良く言うけれども、
冷静に考えれば、逆にあれは夢のための資金を、食いつぶしている
としか思えません。
ああいった姿を見て、公営賭博は、
貧乏人から金を巻き上げる別の税金だなと思ったものです。
良く言われるように、公営賭博で家を建てた人はいないのです。
だいたい阿部譲二も言っているように、日本ではテラ銭は25%ですが、
これは犯罪行為です。外国では10%ぐらいなので、
楽しめるのですが、
日本では、楽しむどころかどんどんお金をすって、
熱くなって、破滅するように出来ているのです。
全くバカバカしい。
- 『天井桟敷のみだらな人々』
とにかく俳優陣が楽しい。
スーザン・サランドン、クリストファー・ウォーケン、
その他もろもろの俳優が怪演を演じます。
映像も凝っているし、セットも凄いし、
細部にまで監督ジョン・タトゥーロの
『この映画をありふれた映画にしたくない』というこだわりが感じます。
ところが、この映画、俳優は必死に演じているのに、
映画自体が走りださないのです。
誰かが必死に走りだすと、急にブレーキがかかり、
また誰かが必死に走りだすとブレーキがかかる。
なんなんだいったい。
そんなわけで、私にはとっても退屈だった。
思うに監督としても俳優としても、
この映画ではジョン・タトゥーロは考えすぎではないのか。
もっともぶっとんでもいいように思うのだが。
- 『ニュートン・ボーイズ』
これは兄弟4人組の銀行強盗のお話。
と言っても、普通は『明日に向って撃て』のように
破滅型が多いのですが、
この映画は冒頭で「もっとも成功した銀行強盗」と出てくるように、
普通の銀行強盗とは違う。
とは言っても、なかなかハラハラドキドキ。
まあ、そんなにセンセーショナルでもないけれども、
それほどつまらなくもない映画。
しかし彼らの人生はなかなかある意味で凄い。
役者もイーサン・ホークが、今までのナイーブな若者の役から、
ちょっと違っているし、
スキート・ウーリッチは『タッチ』の神秘的な
雰囲気を保っているし、
マシュー・マコノヒーは渋いし、
今まで怪物役が多かったビンセント・ドノフリオ
(『月の上の草』は良かった)も味のある役だし、
まあそこそこ楽しめます。
- 『BAR(バール)に灯ともる頃』
これは幻の名画と言われていた映画なのですが、
やっと見れました。
今は無きマルチェロ・マストロヤンニと、
あの『イル・ポスティーノ』のマッシモ・トロイージが
父と子で競演して、
二人とも同時にベルリン映画祭で主演男優賞を取った映画です。
マッシモ・トロイージは、『イル・ポスティーノ』が
あまりにも有名ですが、
その前からイタリアでは監督も脚本もこなす実力派俳優なのです。
ところで私はマルチェロ・マストロヤンニが名優だと
思ったことがないのです。
はじめて映画館で見た彼の映画は『ひまわり』なのですが、
これはどこが名作だか、サッパリわかりません。
要するにイタリアにいいかげんな男がいて、
彼は懲役拒否をするために仮病を使うのですが、
どうしてもセックスがしたくて病院で奥さんとセックスをしている
所を見つかって前線送りと言う、情けない男。
ところが前線でも行方不明。
奥さんが探しに行ったら別の女と暮らしていたという
全くもってどこが名作なのか、わかりません。
もっとも、こう言った情けない役をやらせたら、
彼の右に出る者はいないので、
そこが名優なのでしょうか。
- 『ボンベイ to ナゴヤ』
しかし、こんなインド映画が有ったなんて、全く驚きです。
とにかくインド人が名古屋で踊りまくる。
明治村で、名古屋港で、名鉄百貨店の屋上で、
名古屋駅前のシンボル(でも、良く考えたら、凄い撮影デス)で、
名鉄パノラマ号(しかもなぜか、見えないはずの海が見える)で。
でまた、さすがのディープな名古屋人も、
唖然呆然状態でして、
回りの人間もどう反応してよいやらわからない。
この人々の反応を見ているだけでも面白い。
まあ、はっきり言って、映画の完成度は
『ムトゥー踊るマハラジャ』や『ラジュー出世する』には
遥かに及ばないけれども、
昔の日活のアクション映画に比べれば、
良い勝負かも知れない。
とにかく名古屋人必見です。
ところで、私の友達と、ばったり映画館で会ったのですが、
彼は新聞の映画欄に『ボンベイ』とだけ書かれていたので、
あのヒンドゥー教徒とイスラム教徒の争いを描いた名作『ボンベイ』と
間違えて来たらしいです。
こういうのって、救済できないのかなあ。
- 『ワンダフル・ライフ』
世界中の映画関係者の間で『今年必見の希少な1本』と言われているだけあって、
とってもすてきな映画でした。
だいたいこう言った宣伝文句は当てにならないのですが、
これはその通りの映画でした。
監督は『幻の光』でベネチア映画祭で金のオッデラ賞を受賞した是枝裕和。
この『幻の光』もたいへん素晴らしい映画でした。
それに、まだ無名時代の江角マキコのセミ・ヌードも見れるし。
後に『ショムニ』で大ブレークする彼女とは全く異なります
(話は違いますが、映画って『おこげ』とか『南京の基督』とか、
ときどきとんでもない人がヌードになっていますね)。
この映画は、死んだ人があの世に行く間の話です。
1週間の間に自分の人生の中で一番良いものを選んで、
それを映画にしなければならないのです。
で、その映画とともに幸せな時が蘇った瞬間、
その思い出だけを持ってあの世に行ける、という話しです。
なんか宗教的な話のようでもありますが、
監督も言っているように、
宗教色は全く有りません。
で、実際に思い出を語るのは、
500人からインタビューした中から選ばれた人達が、
本当に自分の人生を語るのですが、
それがなかなか良いのです。
それにしても、撮影された建物がまた良い。
良くこんな風情が有る建物を見つけてきたものだ、と思います。
しかもこの監督の凄いところは、
これだけでもう十分映画になっているのに、
それにストーリが多層的に組合わさっていて、
映画に深みを与えているのです。
そこは素人の人々に混じって、
プロの俳優が演じています。
- 『永遠と一日』
なんせ、あのテオ・アンゲロプスが監督だから、
見に行こうかどうか、迷いました。
この人の映画、とにかく長い緩いゆっくり、といった映画でして、
私は苦手です。
大学生のときに『旅芸人の記録』を見て、
途中で寝てしまって、意味不明になってしまいました。
まあそれでも、映画祭での受賞率というのは、驚異的なものが有りまして、
映画祭で受賞すれば良いと言うものでもないでしょうが、
それでも凄いと思います。
しかしこの映画、これまでの大作主義から一変して、
有る詩人の晩年の一日を追うという、ささやかな内容の映画でして、
これがテオ・アンゲロプスのリズムと実に一致しまして、
『詩情豊か』という言葉が、これほどピッタリの映画も珍しい
出来になっていまして、カンヌ映画祭でパルム・ドール大賞
(ある意味でのグランプリ)を取ったのもうなずけます。
今までは1シーン1ショットの長回しにこだわるあまり、
しかもそれを、歴史的な時間の流れの中で、それを1ショットで
撮ろうとする、無謀とも思える試みをしているせいで、
『ユリシーズの瞳』なんかではアラも見えるのですが、
今回はそれほどの大作ではないので、
そんなに無理をせずに1ショットを撮ってまして、
自然な流れの中で1シーン1ショットが生きています。
題名の『永遠と一日』の意味も、
伏線の後、明かされるわけですが、こう言った謎解きは
得てして分けわからないものになりがちなのですが、
これは分けがわからない1っ歩手前で、上手くやっています。
- 『恋に落ちたシェークスピア』
やはり見どころは、今年私が一押しだった『プライベート・ライアン』を
アカデミー賞の数で上回った映画、という所でしょうか。
なかなかそれなりに、見せる映画だったです。
ただし、アカデミー7部門に輝く映画かと言えば、かなり
クエスチョン・マークが付きます。
去年の『タイタニック』と言いこれといい、
やはりアカデミー賞は数ではないのですねえ。
もっともグウィネス・パルトロウの演技は驚くべきものが有ります。
今までは、ちょっと眉をよせて困ったような表情するくらいしか
無かったのに、この映画では、その10倍はいろんな表情を
見せています。監督のジョン・マデンは『至上の恋』で、
こう言ったコスチューム・プレイはお手のものだし、
『至上の恋』でビクトリア女王だったジュディ・デンチは、
いかにも女王にぴったりだし。
しかし、なぜこんなにアカデミー賞が取れたかと言えば、
やはりアメリカ人のイギリス・コンプレックスでは無いでしょうか。
昔からアメリカのアカデミー賞はイギリス映画には甘く、
その他の国の映画には冷たい事はことに有名です。
今年イタリア映画の『ライフ・イズ・ビューティフル』が賞を取ったのは、
ある意味で驚きです。
原因は、これも良く言われているように、
アメリカでは英語帝国主義がはびこり、
英語以外の映画は冷遇されること。
彼らは英語以外は、まともな言語と思っていなく、
日本のように字幕で映画を見る習慣すら、ほとんど有りません。
そして、たいてい外国映画でヒットすると、
英語映画にリメークします。
その結果、『ニキータ』のリメークの『アサシン』などと言う
ひどいものも平気で作るのですが、
彼らは英語映画ならば、どんな出来でも上だと思っているのです。
まあもっとも、アメリカで字幕映画がほとんど無いのは、
アメリカ人の識字率の驚くべき低さとも、関係が有るそうですが。
もう一つ原因は、アメリカの伝統コンプレックス。
アメリカは出来てまだ200年しかたっていない国で、
伝統とか貴族とかに、じつは凄く弱いらしいのです
そんなこんなで、取れたのでしょう。
- 『8mm』
スナッフ・ムービー、つまり本当の殺人現場を
写した映画の物語。
まあ『セブン』の脚本家が書いた話なのでもっと恐いかと思ったけれども、
それほどでもなかった。
ただ、アメリカの裏社会はかなり丹念に描かれていて、
それだけでも興味深い。
もっともそれほど恐くないのは、
この内容で本当に恐いものを作ると、
下手するとハリウッド追放になる(マイケル・パウエルの
『血を吸うカメラ』)ので、
このぐらいにしてあるのかな、とも思いましたが、
監督がジョエル・シューマーカーで、
この人の演出はピンボケが多いので、
つまらないのかも知れない。
スナッフ・ムービーを描いた映画では、
ジョニー・デップ主演・監督の『ブレイブ』なんかの方が、
まじめにつくってある分、見る気がします。
以下は4月に見た映画です
- 『エバー・アフター』
売りは、魔法を使わないシンデレラの話。
当然シンデレラは、自分で考え自分で行動する
現代的な人物として、描かれています。
それにしても、何とも中途はんぱな映画でして、
スペクタクルでもなければ、
人物の演技で見せる映画でもない。
何ともなりません。
主演のドリュー・バリモアは、
首は太いし、ドシドシ歩くし、
この人が開花するのは、いつなんでしょう。
- 『マイティー・ジョー』
動物、女、子供、ディズニーとくれば、今月一番期待して
いなかった映画なのですが、
これがけっこうまじめに作られていまして、
最後には(みえみえのラストであったにも関わらず)泣けました。
だいたいアメリカ映画というのは、人が死にすぎるのですが、
この映画はあまり人も死にません。
出てくるのも、ちょっと大きいゴリラ、
そんなに残酷シーンも無いのです。
でも程々のところで、これだけの出来に仕上げるのは、ひとえに
監督のロン・アンダーウッドの力です。
この人の『トレマーズ』はなかなか好きなのですが、
明るい処の恐怖と言うものが、
実に上手に演出されていました。
- 『バジル』
もともとクリスチャン・スレータというのは、
『薔薇の名前』でもわかるように、
歴史映画に向いている顔ではないかと思っていたので、
こう言った映画には向いていると思います。
内容はウィルキー・コリンズ原作の古典的ミステリーなのですが、
なかなか面白かった。
『ジョー・ブラックをよろしく』では、
単なるお嬢さんの役だったクレア・フォーラニが、
なかなか深みが有る役をやっていました。
とにかくイギリスの僻地が好きな私には、
湖水地方の側のウィンダミアとか、
いちおうイギリスでは風光明媚とされている所
(と言ってもしょせんイギリスですので、知れてますが)
が多くでてきて嬉しかった。
- 『ライフ・イズ・ビューティフル』
まあ、この映画も『ニュー・シネマ・パラダイス』のように、
長く語り継がれて行く映画でしょうね。
とにかく素晴らしかった。
私は子供をだしに使った映画はあまり好きでは無いので、
イタリア映画でしばしば使われるかわいいだけの子供というのは
あまり良い印象を持っていないのですが、
この映画は子供というのはあくまでも脇役で、主演、監督、脚本の
ロベルト・ベニーニがとにかく素晴らしいのです。
ユダヤ人の強制収容所を描いた映画は、『夜と霧』にしても
『シンドラーのリスト』にしても、
何しろ、そこで行われたことがあまりにも悲惨なので
描き方も難しいのですが、
この映画は全く別のアプローチで見事に成功しています。
もちろん子猫が服の山のところにいるシーンなどは本当に恐いのですが、
そういった事を前面に出さずに、あくまでもさりげなく描いています。
それにしても、ロベルト・ベニーニがいかに才能あふれているか、
という事は、アカデミー賞のパフォーマンスを見てもわかりますが、
今までジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー』くらいしか
私は知らないのですが、
もっと有名な映画に出ていてもいいのに、と思います。
- 『隣人は静かに笑う』
ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス主演のサスペンス映画。
初めの1時間はあまり面白くないのだが、
後半はなかなか盛り上がり、本当に恐い。
でもこの恐がらせ方は、『セブン』と同じで反則じゃあないか、
と思うのですが。
ですからラストもなんとなくいごごちが悪いのです。
そもそも映画と言うものは、所詮は虚構の世界でして、
その中で観客はいかに気持ち良くだまされるか、
という事が大事でして、
そのために映画には観客と作る方の間に文法と言うものが
存在するのだと思います。
確かに、この文法を破ることによって、新しい感動を得る事もあります。
アトム・エゴヤン監督の『エキゾティカ』『スィート・ヒヤー・アフター』
なんかは、映画のフラッシュ・バックの約束ごとを無視して
時間感覚をあやふやにすることによって、新しい感動を作っていますし、
古くは黒沢明監督が、『7人の侍』の冒頭で、
集まった農民をぶった切ってズーム・アップ(今では誰でもやってますが)
するなど、文法を破ることも悪いわけではないですが、
まあ『セブン』やこの映画の文法破りは私は嫌いです。
- 『レッサー・エヴィル』
まあ『ユージュアル・サスペクト』や『揺りかごを揺らす手』程ではないにしろ、
内容は他の普通のサスペンス映画に比べれば、抜群に面白かった。
22年前に起こった殺人をめぐるミステリーなのだが、
こう言った話は最後まで破綻せずにもって行くのがむつかしいのだが、
この映画は最後の最後まで上手くもって行っている。
監督デビット・マッケイ、
出演キャスト・コームフェオーレ、
トニー・ゴールドウィン、
アーリス・ハワード、
デヴィッド・ベイマー、
脚本ジェレミー・レヴィン、
ステファン・シュルツ、
音楽ドン・デヴィス。
とにかく知らない名前ばかりなのだが、
これほど面白い映画を作るのだから、次も期待したい。
- 『自由な女神たち』
衝撃的だった『蜘蛛女』のレナ・オリン、
レオナルド・デュカプリオと競演した『ロメオ+ジュリエット』では
ちっとも美人で無かったクレア・デーンズ、
そしてコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』や
ブライアン・シガー監督の『ユージュアル・サスペクト』で渋い演技をみしている
ガブリエル・バーンが競演しているので、
興味ある映画だったのだが、
出演者たちの演技は魅力有るものだったのに、
映画自体はつまらんかった。
- 『ギャング・シティー』
内容は凄く面白いので、この題名を何とかして欲しい。
この題名じゃあ、お客さんは来ないよ。
なんと言っても、伝説のラッパー、トゥパク・シャクールが
出ています。
彼がティム・ロスと競演した『グリッド・ロック』は
本当に面白いのですが、とにかく彼らが演奏する音楽が
抜群なのです。
もう死んでしまったのが、残念です。
- 『シン・レッド・ライン』
うーん、テレンス・マリック監督だからなあ。
この独特の光の使い方は『バグダット・カフェ』と双璧をなすものですが、
今回の興味は、ずばり『プライベート・ライアン』と
どちらが面白いか、と言うことでしょう。
はっきり言ってしまえば、この映画は哲学過ぎた。
『プライベート・ライアン』がアカデミー賞を取れたのは、
ひとえにわかりやすかった、という事ではないでしょうか。
アメリカ人を、『シン・レッド・ライン』の退屈さに付き合わせるのは無理です。
それにこの映画は、テーマが定まらず、どうにも見るものを混乱させる
傾向にも有りまして、それが退屈さを助長させる要因にもなっています。
この映画は、無能な上官
(とはいえ、戦争は結果責任ですから、一概に無能とは言えませんが)
を描いた映画なのか、
自然を描いた映画なのか、
とにかく何が言いたいのかわかりません。
ところで、この映画はガナルカナル島の話なので、
やはり日本人が死んで行くのには、胸が痛みます。
もっともほとんどの日本人が知っているように、
この島では日本軍は食料がほとんど無く、
人肉を食べる必要まで有ったらしいですから、
そういった中でこれだけ戦ったのは、
凄いと思いますが、本当にあんなに弾薬は有ったのでしょうか、
という素朴な疑問は沸きます。
ガナルカナルの話だと、ドキュメントの『ゆきゆきて進軍』を思い出しますが、
あの映画を見るまでは、私の興味は人肉食が本当に有ったのか、
という事だったのですが、あの映画の中では証人たちは有った
ことは当然のこととしていまして、
白人を白豚、現地の人間を黒豚と呼び、白豚を食べていたとか、
生々しい話がたくさん有り、勉強になりました。
- 『ガールズ・ナイト』
これは本当にお勧めの映画です。
親友で義理の姉妹でも有る人達の物語なのですが、
妹がガンに侵されていることを知って、
一度ラスベガスに行きたいという願いをかなえる話なのですが、
まあストーリはどうでも良く、
2人の交流がいいのです。
主役のブレンダ・ブレッシンは、マイク・リー監督の『秘密と嘘』
(この映画も良かったけれども、私はマイク・リー監督の
『キャリア・ガールズ』の方が好きです)で、
やけにバタクサイ顔で泣いていた人です。
この役で、カンヌ映画祭主演女優賞やゴールデン・グローブ賞を取りました。
最近、イギリスの映画は、ワーキング・クラスの中年の悲哀を描かせると
上手いですが、この映画も本当に良い映画です。
それにしてもイギリスでは、ガンの告知を本人にはするけれども
家族にはあえてしないというのは、驚きですねえ。
- 『ガメラ3』
いやあ、大人の鑑賞にも耐えうる怪獣映画、というコンセプトは
上手く行ったと思います。
なかなかの出来でした。
だいたい私はストーリが支離滅裂なゴジラ・シリーズはあまり
好きではないのですが(ゴジラでも人気の高い初代ゴジラや『モスラ対ゴジラ』は
わかりやすいですよ)、ガメラは昔からストーリが有ったので、
好きでした。
以前、大森一樹監督のゴジラが完成したときに、
衛生テレビでその特集が有ったのですが、
試写を見終わった人々の感想は、
ストーリがわかりにくいとか、とにかく評判が悪かったです。
それにしてもNHKが凄いのは、
さんざん皆に悪口を言っておかせて、
そのあとに監督やらプロデゥーサを入場させたのです。
もちろん観衆にはあらかじめそのことは伝えてありません。
その後のトーク・バトルは面白かったですが、
大森監督は、ストーリは監督の息子でもわかる、と言ってましたが、
それは無理でしょう。
ところで、今回、なぜ日本だけがこれだけ怪獣にやられるのか、
その真相が明らかになるという事だったので期待していたのですが、
要するに日本だけマナというものが不足している、
という事らしいのですが、それだけでは説明になっていないと思います。
なぜマナが不足しているのか知りたいです。
- 『リトル・シティー』
ロック・ミュージシャンのジョン・ボン・ジョビ主演の恋愛映画。
彼の前の映画の『妻の恋人、夫の愛人』は全く気の抜けたサイダーのような
映画だったので、この映画も期待していなかったのですが、
つまらん映画だった。
内容は、サン・フランシスコは野心の無い人間ばかりで住みやすいのだが、
その分やることがなくて、みんな恋愛にいそしむわけです。
ところが、町がリトル・シティーというよりは、皆世間が狭いので、
同じような仲間の間でとっかえひっかえセックスをしているわけです。
この辺りは、テレビ・ドラマ『ビバリー・ヒルズ青春白書』で、
登場人物が限られている中で恋愛するから、
とっかえひっかえ同じ仲間内で恋愛したり、
『トゥイン・ピークス』で、小さな町の中、不倫につぐ不倫で、
住民皆兄弟状態なのと、良く似ています。
つまり、狭い世間の中で、とっかえひっかえというのが、
今のアメリカの状態なのでしょうかねえ。
- 『至上の恋』
ジュディ・リンチ扮するヴィクトリア女王の恋、
と言っても、そこはやんごとなきお方なので、
なかなか麗しい話となっています。
今までジュディ・リンチの映画というのは、
ケネス・ブラナーの『ヘンリー5世』とか『ハムレット』くらいしか
見たことなかったのですが、実際のところ印象は無かったです。
だから今年のアカデミー賞で『恋に落ちたシェークスピア』の
エリザベス女王役で助演女優賞を取ったときでも、
何かさえないばあさんが出てきたもんだ、
くらいに思っていました。
ところが、この映画のジュディ・リンチは輝いているのです。
さすがに大英帝国の女帝として君臨した人間の威厳を感じさせます。
大したもんです。
これなら十分『恋に落ちたシェークスピア』も期待できます。
ところで映画というのは、なかなか勉強になるものです。
私も本で、英国のアフタヌーン・ティーは午後5時と知っていても、
実際イギリスに行ってそんな時間に紅茶が出たことが無いし、
何か変な時間ですし、
これは絶対間違いだと思っていたのですが、
ヴィクトリア女王は午後5時アフタヌーン・ティー、
午後8時45分夕食という、
われわれの理解を越えた生活習慣なのです。
それにしても、本当に英国というのは花も何も無いですね。
イギリス人があれほどガーデニングに夢中になるのもわかります。
そしてあの寒々とした時に、水浴びをする神経。
理解不能です。
もっとも英国は8月でも十分寒く、
その寒いときにTシャツ着ている奴がいますからねえ。
もっともスコットランド・ファンの私としては、
スコットランドのハイランドがいっぱい出てきて嬉しかったです。
- 『リング2』
言わずと知れた『リング』の続編。
『リング』は本当に恐かった。
そのおかげで口コミで大ヒットしたわけです。
やはり映画は口コミですねえ。
私も映画を実際に見た人の言葉を信じます。
さて『リング』の続編のはずの『らせん』は全然面白くなかったので、
『リング2』が作られたのだと思いますが、
残念ながらこれも全く面白くなかった。
大体が続編というのは、
元の映画の倍くらい面白くないと評価されないと思いますが、
元の映画の半分くらいでした。
- 『死国』
うーん。
私は基本的には、映画の粗筋をここで述べるのは反則だと思っているので、
ここでは映画のストーリには言及しないようにしてきたのですが、
この映画はあまりに出来がひどい
(『パラサイト・イヴ』と同じくらいひどい)ので、例外として述べます。
大体が幽霊というのは、霊魂のみで神出鬼没だから恐いのですが、
何しろこの映画の画期的な所は、
霊魂に肉体が宿ってしまうのです。
でもそうすると、それは単なるただの人間でして、
映画のストーリも、ただの人間の3角関係の話となり、
全然恐くないのです。
しかもよみがえった人間は、
単に怪力なだけが強みの人間でして、
こんなのどこが恐いのか。
これでは単にフランケンシュタイン女ではないか。
見て損した映画です。
- 『パッチ・アダムス』
ロビン・ウィリアムズ扮するユニークな医学生が、
体制批判しながら自分の理想を貫こうとする物語。
まあ、いわゆる良い映画です。
見て損は無い。
- 『バグズ・ライフ』
この間も『アンツ』と言う、同じアリを主人公にしたアニメ映画が
公開されたばかりなので、
これも、またか、という感じですが、
それをのぞけば、前編3Dコンピュータグラフィックの技術は、
確かに凄い。
ディズニーは『トロン』以来、この分野での野望を強く感じさせます。
まあ、こう言った映画が作られる背景には、
コンピュータ・グラフィックの技術が進んで、
多くの者を一度に動かす技術が発達し、
それを最高に有効に見せるにはアリが良かった、と言うことでしょう。
まあ、一画面に出てくるアリの数では『アンツ』の方が遥かに多いのですが、
その分、『バグズ・ライフ』は、一つ一つのキャラクターが大きくなって、
その個体差をはっきりと表現できるようになっています。
最後のタイトル・バックは見ものです。
- 『鮫肌男と桃尻女』
望月峯太郎原作の漫画の映画化。
この映画に言えることは、とにかくキャラクターがすべての映画。
このキャラクターを見るだけで十分映画料金を払う価値が有ります。
何しろ出てくる人間すべてが見ているだけで面白く、
主人公たちも粗筋も、どうでも良くなる。
でも一見ストーリが無いようにも思えるのですが、
じつは聴衆の予想を見事に裏切り続ける登場人物たちの不可解な行動が、
これまた楽しい。
それを納得させてしまうだけのものを、それぞれが持っているのです。
以下は3月に見た映画です
- 『レ・ミゼラブル』
私はもともとこう言った話は嫌いです。
私はあと『小公女』や『フランダースの犬』なんかも嫌いです。
私が小学校の頃良く読んだ本は、
『小公子』や『岩窟王』や『トム・ソーヤの冒険』や『宝島』と
言ったところでしょうか。
テレビのアニメでは『あらいぐまラスカル』
(今有線テレビでやっているので嬉しい)や『赤げのアン』などが好きです。
とにかく明るく前向きに生きる話が好きで、
貧しくてもつつましやかに辛抱して、というような話は嫌いでした。
まあそれでも、改めて映画で見るに、フランスという国はやはり変ですねえ。
日本人は芸術の国と誤解しているけれども、
もともとルイ14世の頃からの日本以上の官僚国家で、
何しろ原爆の実験を最近も植民地で行う、
という蛮行をする国ですからねえ。
中国は奥地の砂漠で(漢民族は認めないと思うけれども)まあほとんど
植民地のような所(最近は独立運動も有るらしい)でやっているけれども、
それでもまだ陸続きだけれども、
フランスはまったく別の海の向うの植民地
(かっこ良く、信託統治とか言うのかしら)でやるからひどい。
それに『死刑台のエレベータ』などのフランス映画を見ても、
フランスの警察というのは、能力が低いのかしら、と思えることばかり。
そんな国に生まれれば、
まじめにやってこうとするジャン・バルジャンもかわいそうですねえ。
しかし逃亡犯が市長になることなんかあるんかいな、と思いますが、
日本でも脱獄犯が隠れて働いていたけれども、
人望が有って皆に押されて社長になったケース(しかもこの人何回も)有るらしいです。
やっぱり才能なんですねえ。
ところでこの映画、俳優はおもしろい。
レーアム・ニーソンは『シンドラーのリスト』よりよほど良い。
ユマ・サーマンはガイコツ女にピッタリだし、
クレア・ディーンズはデュカプリオと競演した『ロメオ+ジュリエット』
(こういうあざとい映画は私は大好き)では頬がはれぼったくて
変だったけれども、この映画では頬もやせてちょっと美人になった。
とにかくそれぞれの俳優が良かった。
- 『パーフェクト・カップル』
まあとにかく、ジョン・トラボルタという人は、
こういう抜けた役をやらせると上手い。
それに尽きる映画。
それにしてもエマ・トンプソンも、
もともと演技力の有る人なのだが、すっかりアメリカの俳優になってしまって。
ケネス・ブラナーと、いかにも私はイギリスの俳優なのよ、と力んでいた頃より、
遥かに力の抜けたこう言った演技の方が好きです。
その脇を、『卒業』のマイク・ニコルズが監督・製作。
あとキャッシー・ベーツと『スリング・ブレイド』
(これも良かったなあ)のビリー・ボブ・ソートンが固めます。
それにしても描かれている大統領選挙の内容は洒落にならないが、
それほど深刻な内容でもなく、
まあリラックスして見れます。
- 『鳩の翼』
初期ビートルズを描いた『バック・ビート』がなかなか良かった
イアン・ソフトリーが監督を勤める映画。
文豪ヘンリー・ジェイムズ原作で20世紀初頭の没落イギリス貴族を描く
映画なのですが、
なかなか出てくる俳優さんがおもしろい。
ジェームズ・アイボリー原作の同じような映画
『眺めのいい部屋』(私は大好きでおすすめです)や『ハワーズ・エンド』に出ていた、
こう言った映画にはピッタリのヘレナ・ボナム・カーター。
シャンプーの宣伝では、またまったく違った美人なのですが、
『この森で天使はバスを降りた』(これも、ものすごくおすすめ)では
独特な雰囲気を醸していたアリソン・エリオット。
そして、意地悪ばあさんを一度やらせて見たかったシャーロット・ランブリング。
これだけ女性陣が強いと、あとはそれに翻弄されるだけの役にぴったりな
ライナス・ローチ。
まあ良かったです。
- 番外編・アカデミー賞
今年もアカデミー賞の季節となりましたが、去年の『タイタニック』が
納得いかなかったのに比べれば、今年はあまりにまともな選考で、
それはそれで良かったような気がします。
まず冒頭で、今までの映画史の中で、印象に遺っているシーンと言うのが
出たのですが、私は古い映画はわかりませんが、
それでも『西部戦線異常なし』のラスト・シーンとか、
最近だと『チャイナ・タウン』でロマン・ポランスキーが
鼻にナイフを入れる所とか、『タクシー・ドライバー』で
デ・ニーロが「You talk about me?」と言うシーンとか、
『恋人たちの予感』でメグ・ライアンが「yes, yes, yes』と言う所とか、
まあだいたい皆、印象に遺っているシーンは同じなんですねえ。
毎年、死んだ映画関係者を紹介する所では、
黒沢明のところで一段と拍手が大きくなっていましたが、
もしキューブリックが死ななければ、
もっとまとめて紹介されたのに、と思うと残念です。
まあ、しかし『プライベート・ライアン』が音響の2つの部門で
取ったのは妥当でしょう。
あの映画は音が画期的なのであって、
家でビデオで観たって、全然だめだと思います。
しかし5つ取ったとはいえ、
主だった賞は監督賞だけなので、
やはり数ではないと思います。
まあ、いちおしなので、とにかく取れて良かったです。
なんか、あんまりスピルバーグが賞ねらいに必至なので、
なんかおなさけでもらえたというか、
もうみんなスピルバーグの賞ねらいの映画には飽きてきているので、
ここらで花をもたせて、
もう昔のように、良質な娯楽映画に戻ってもらいたい、
という皆の願望で取れたような気がするのですが。
逆に、トム・ハンクスは、2つも取ってもう十分だろう、
というか、確かに名優ですが、3つという前例がない程すごいか、
という、バランス感覚が働いて、
取れなかったような気がします。
その他の映画は見ていないのでわからないのですが、
『恋に落ちたシェークスピア』が脚本賞と主演女優、助演女優賞を
取ったと言うことは、
良質な映画を作るために不可欠な、
良い脚本と良い俳優に恵まれた、ということで有って、
それだけでも見に行く価値は十分だと思います。
ただ、主演女優のグウィネス・パルトロウは、
私は信用していないので、
彼女がどの程度の出来だったのか、楽しみです。
この人は、基本的に演技の出来ない人だと思っていますので、
彼女の独特の美貌の中に気の抜けたような表情を使いこなせる
監督でないと良さが出ないのですが、
この映画はきっとうまく言ったのでしょう。
ただほんとうに彼女が成長したのか、
それともただのまぐれなのか、興味は有ります。
それにしても『ダウン・バイ・ロー』では、
さえない味を出していたロベルト・ベニーニが自分で脚本、監督、主役した
『ライフ・イズ・ビューティフル』で、
主演男優賞、外国映画賞、作曲ドラマ賞を取るなんて、
すごいですねえ。
去年の『グッド・ウィル・ハンティング』みたいに、
自分のやりたい映画の脚本を自分で書き、自分で主役をやり、
映画にするというのが、一番良いのかもしれません。
その『グッド・ウィル・ハンティング』の
マッド・ディモンとベン・アフレックスのコンビが、
今年はプレゼンターで登場したのが、
日本人女性、伊比恵子さんが受賞した、短編ドキュメンタリー賞ですが、
彼女のスピーチはとっても良かったです。
その昔、カンヌ映画祭で工藤ユキちゃんがやったスピーチとおなじくらい
良いですが、それにしても今の日本、女の方が遥かに元気が良いように
思うのは、私だけでしょうか。
あまりに彼女の印象が良かったのか、
アカデミー賞の締めくくりでも、
ウーピー・ゴールドバーグが
『皆さんも、先ほど賞を取った日本から来た女性のように、
映画の世界に飛び込んでください』
と言うほど、印象が有ったのだと思います。
ところで、今回 MIRAMAX の映画が強かったですが、
やはり見る目が有るのでしょうか。
ところで、アカデミー賞の前日、駄作映画を決めるストロベリー賞は
どうなったのでしょうか。
新聞に出ていないのですが。
去年の『ポスト・マン』はまったく納得だったですねえ。
ケビン・コスナー自身があきらめて、
賞をもらう席にいたぐらいですから。
- 番外編・日本アカデミー賞
同じアカデミーと名が付いていても、
なんでこんなに違うんだろう、という賞ですねえ。
もっとも、アメリカのアカデミー賞だって、
ロス・アンジェルスの周りでヒットしたローカルな映画を、
ロス・アンジェルスの映画人が勝手に決める、という類のもので、
そんなに凄いとも思わないですが、
それでもカンヌ映画祭よりは選考方法はマシだと思います。
もともと日本のは全然興味が無いのですが、
今年は北野武監督の『HANA-BI』がどうなったのだろうという
興味だけだったのですが、まあ結果は皆様ご存じの通りです。
でもテレビのワイド・ショーなんかで、
『タケシ落胆』とか言うのは、まったく変ですよねえ。
もともと、日本の大手の映画会社の関係者が多く
会員になるような規則にして有る日本アカデミー賞は、
昔から組織票の噂が絶えず、
大手の映画会社の間で賞を回しているという
噂を否定できる厚顔無知な人は、そういないでしょう。
だから権威とは信頼とかとは、まったく縁の無い賞で、
当然、北野さんもそんなことは百も承知だから、
落胆するはずは無く、どちらかというと『日本の映画界もしょうがねえなあ』
と言った『苦笑』という所でしょう。
でまあ、『大杉蓮さんくらいは取れても良さそうなのに』という
北野監督の意見が、一番妥当でしょう。
それでも、『愛を乞う人』はそんなに悪い映画では無いですがねえ。
『カンゾー先生』でお尻を見せてくれた人も良かったし、
そういう意味では、やっと日本でも、
こう言った賞にふさわしい人材が育ってきた感じですねえ。
それにしても情けないのは、
授賞式に出ている人のキャラクターが弱いのか、
授賞式の間がもたないので、
その度に北野監督に振るのは止めて欲しいなあ。
まあ出てくる俳優たちは、俳優と言うよりは芸能人と言う感じですが、
それにしても芸が無さ過ぎますねえ。
それこそアカデミー短編ドキュメント賞を受賞した伊比恵子さんが、
英語であれだけ感動的なスピーチをしたのとは対照的で情けない。
- 『ニノの空』
フランスの西部、まあ言ってみれば辺境の地、と言っても
普通に町もあれば普通に交通も有る。
でもいろんな移民が入り乱れている。
そんな所だから、いろんな価値観が有るわけだけど、
やっぱりニノは変わりすぎています。
それでも何とかなるから不思議なのですが、
そんなニノでももてるのが不思議ですねえ。
最後に関係者の関係している国、地域が名前とともに出てくるのが良い。
- 『セントラル・ステーション』
なんか、予告編を見ると、かわいそうな少年がいて、
その少年が皆の善意で救われる、というような
内容かと思いますが、全然違っているように思う。
だいたい、ブラジルの悲惨さと言うものは、
人間の小さな善意など吹き飛ばしてしまうほど、
ひどいらしいのです。
我々はブラジルというと、何となく良く知っているような
気になってしまうのですが、
実は何も知らないのですね。
私が以前読んだ本では、ブラジルでは子供の誘拐がしょっちゅうあり、
彼らは血を大量に抜かれて解放されるのです。
その血が、アメリカの製薬会社を通じて日本にも入ってきているそうですが、
そんなムチャクチャも、この映画を見れば納得できます。
ところで、この映画の音楽の演奏者の中に、バンデイロの名手の
マルケス・スサーノがいたので、
相当期待したのですが、
バンデイロの音は私には聞こえませんでした。
ちなみにバンデイロというのは、
タンバリンにピック・アップを付けた楽器なのですが、
物凄く表現力が豊かで力強く、
最近注目されている楽器です。
マルケス・スサーノは、
低音が出るように革は緩めてあるのですが、
低音で革がびびらないように、
ガム・テープを張ったり、
廻りの金属のシャラ・シャラ鳴る所は、
ピック・アップが拾いすぎるのでゴムがはめてあったり、
相当工夫されていて、
なかなか凄い楽器です。
それにしても、この映画はサンダンス映画祭で脚本のコンペティションがあり、
それに日本のNHKなどが賞を出し、それで映画化が可能だったそうですが、
こういうのは、非常に良いですねえ。
日本でも浅野忠信主演の私の大好きな『フォーカス』などが、
東京映画祭から生まれたのですが、
夕張映画祭でも同じような試みがあり、
色んな映画の登竜門が出来るのは、良いことです。
それにしてもサンダンス映画祭から生まれた映画というのは、
タランティーノの『レザボア・ドッグス』ブライアン・シガーの
『ユージュアル・サスペクト』等など、
単に映画として優れているだけでなく、
商業映画としても非常に優れた映画が多いところが、良いですねえ。
- 『女と女と井戸の中』
女2人というのは、恐いですねえ。
キャッシー・ベイツとジェニファー・ジェイソン・リーの『黙秘』とか、
ジョージ・ガーショウの『バウンズ』とか『ショウ・ガール』とか
(どれもお勧めの映画ですが)、
普通のサスペンスよりも、より人間の性が深いのか、
感情が極端に揺れるので、恐いです。
でも、もっと恐いのは、眉毛の無い女でしょうか。
- 番外編・スタンリー・キューブリックは死んだ
イヤー、死んでしまったのですねえ。
私にとっては、黒沢明監督の死よりもショックです。
黒沢監督の場合は、もう過去の監督と言う感じで、
『8月のラプソディー』とか『まあだだよ』とか
この人先が長くないのに、こんな映画作っていて大丈夫、
って感じだったけれど、
キューブリックの場合は、ガチガチの現役監督という感じで、
ショックが大きいです。
とにかく私が映画好きになったのは、
小学校5年のときに『2001年宇宙の旅』をロード・ショーで
巨大スクリーンで見たからで、
私達の世代であの映画を巨大スクリーンで見たことあるのは
わりかしと少ないので、自慢です。
私の親は無類の映画好きで、
私は幼稚園の頃から『ベンハー』とか『サウンド・オブ・ミュージック』に
連れて行ってもらったものです。
何しろ生活費がなくても、映画には行ったそうです。
その後も、小学校の頃には『マイ・フェア・レディー』や
『モダン・タイムズ』なども見に行きましたが、
私が最大に衝撃を受けた映画が、
『2001年宇宙の旅』だったのです。
この映画は見る映画ではなく、まさしく体験する映画です。
だからもう一度巨大スクリーンで見たいのですが、
リバイバルで来るのは、いつも小さな映画館ばかり。
その他にも、大学生の頃、大学祭と言えば
必ず『博士の異常な愛情』をやったので、これも相当見ました。
また『ロリータ』を見たときには、
こんな肉感的な12歳がいるものか、と思いましたが、
最近ではこんなのは当たり前になってきて、
時代が追いついたのですね。
後、『シャイニング』は上映されたときの評価は低かったのですが、
私は個人的には大好きです。
特にロビン・ウィリアムズが主演した実写版の『ポパイ』で
オリーブの役をやっていた奥さん役の人が、良かったです。
『時計仕掛けのオレンジ』も大好きですが、
そろそろ強姦シーンはボカシ無しでも良いのではないでしょうか。
『フル・メタル・ジャケット』は、
似た映画が沢山あり不利だったと評価されていますが、
私は全くそうは思いません。
他のどの戦争映画にも、似ていないのではないでしょうか。
とにかく、合掌。
- 『スネーク・アイズ』
うーーん。
ブライアン・デ・パルマが監督で、ニコラス・ケイジが主演なら、
こうなるよなあ、という映画。
とにかく話題なのが、初めの13分間ノン・ストップの長回し。
これが凄いのです。
でも考えてみれば、こういうのに興味がない人には
あまり面白くないかも。
初めの長回しで緊張感が一気に上がった後で、
後半はやけに物足りなく感じるかも知れない。
でもそれは、最後のラスト・クレジットの謎解きも
含めて考えれば、納得できるのだが、
いかんせん、この謎解きが難しすぎるのです。
1時間40分という長さを考えれば、
後半20分くらい別のエピソードを入れて、
もうちょっと盛り上げても良かったと思います。
とはいえ、実は私はデ・パルマは好きなので、
こういう長回しのあざとさも、良いと思います。
特にこの映画では、
長回しを意識させない完璧な撮影、
見事なもんです。
長回しと言えば、『フォレスト・ガンプ』の初めのシーンとか、
パトリス・ル・コントの短編映画の『ボレロ』なんかが好きですが、
こういった物は、いかにもヤッテマスという感じで、
少し嫌な感じもするもんです。
『アンタッチャブル』でショーン・コネリーが死ぬシーンは
なかなかの物ですが、あれもイカニモという感じでした。
今回のは、なかなか良いです。
- 『完全な飼育』
題名から言って、危ない映画のようですが、
これを竹中直人と小島聖が微妙なバランスで、
見事に演じています。
面白かった。
それにしても、これが実話なんて。
- 『ランナ・ウェイ』
クリス・タッカー主演の喋りまくりアクション映画。
映画の出来としては、クリス・タッカーも、『ジャッキー・ブラウン』や
『フィフス・エレメント』の方がよいけれども、
それは映画監督のかくの違いと言いますか、
全く無名のブレット・ラトナーにタランティーノやリュック・ベッソン
以上のことを期待するのは無理と言うもので、
それを承知で見れば、これもなかなかの映画と思います。
競演のチャーリー・シーンは一時麻薬で太ったり逮捕されたりしたときに
比べれば、だいぶ良くなってきましたが、
それでも存在感が無く、
その分クリスの存在感が際だっていて、
私はこれくらいの映画でちょうどクリスの魅力が出てきたと思います。
最後のアクション・シーンもなかなか切れがあって良い。
少なくとも『ラッシュ・アワー』よりはずっと良い出来です。
- 『マイ・スィート・シェフィールド』
シェフィールドというのは、あの『フル・モンティー』の舞台になった町で、
脚本も『フル・モンティー』の人が書いています。
要するに、停滞、失業、ワーキング・クラスの喪失感、という
今のイギリスを象徴するような町なのです。
内容は、電力会社の高圧電線の鉄塔のペンキ塗りを依頼された人達の物語。
相当重労働で危険な仕事で、
しかも保険も何もなく1日80ポンド(1万円ちょっと)なのは
安すぎる気もしますが、イギリスは物価が安いからまあこんなものでしょう。
内容は淡々と過ぎていきますが、これが意外とドラマがあるのです。
それにしても人間の作った巨大建造物というのは、
そのまま撮影しただけでも相当面白い存在だと教えてくれました。
でもラストは、はっきりさせて欲しかった。
- 『アイ・ウォント・ユー』
エルビス・コステロの歌声にのせて、
内容は『アイ・ウォント・ユー』そのもの。
なかなかグイグイ来る力強い内容だったです。
監督のマイケル・ウィンターボトムは、
『タイタニック』のケイト・ウィンスレットが
やけにブスだった『日陰の2人』は嫌いですが、
『ウェルカム・トゥー・サラエボ』はなかなか凄かった。
どっちにしても力強さがこの人の信条ですねえ。
以下は2月に見た映画です
- 『ユー・ガッタ・メール』
最近何かとおさわがせの、インターネット上での電子メールのお話。
と言っても、やってることと言えば、
いい大人が昔ながらの文通ごっこなのです。
だからこれを見て、もっと皆がインターネットに対する偏見が
無くなれば良いと思います。
最近のニュースで話題になるのは、不法な物がインターネット上で
売買されているとか、そんな話題ばかりなのですが、
もともと裏路地で売買されていたものがインターネット上に
乗っただけで、
裏路地に罪がないように、
インターネット自体にも本質的な罪はないと思います。
ただ、そういった空間が一般の人にも簡単に解放されすぎた
きらいがありますが、
それもすぐに下火になると思います。
それというのも、インターネットの匿名性と言うのは、
意外とないのだと言うことが、世間で分かってきたからです。
どっちにしても警察が本格的にプロバイダーを調べれば、
ほとんどすぐ分かるし、
外国に置いた場合も、最近は協力してすぐ分かってしまいます。
だから最近の素人が行うインターネットの犯罪は、
すぐに逮捕されます。
もし本当に匿名にしたいなら、それこそインターネット以外での
犯罪を侵す必要があり、そういったことを行う奴というのは、
インターネットとは関係無く犯罪者なので、
それは別問題だと思います。
さて、話を映画に戻しますが、この映画はインターネットの犯罪とは
なんの関係もありません。
昔、文通で行っていたことを、電子メールでやっている、
実にたわいのない話なのです。
これをトム・ハンクスとメグ・ライアンが、実にチャーミングに
演じています。
もう冒頭のシーンから、素敵なのです。
ただ、メグ・ライアンは『恋におぼれて』ほどではないにしろ、
顔が歳をとってきたのは仕方がないのでしょうが。
監督は、この2人を起用して『めぐり逢えたら』で大成功した
ノーラ・エフリン。
この映画は私は大好きで、英語の勉強用に、
英語字幕(日本語無し)付きのビデオまで買ってしまいました。
ノーラ・エフリンは、これまた私の大好きな
『恋人たちの予感』の脚本も書いているのですが、
この2本の映画は絶対お勧めです。
で、この映画は、と言えば、まあまあ面白かったです。
見ても損はない映画です。
ただ、こういった映画は、歯切れの良さとタイミングがポイントだと
思うのですが、ややもたもたしているところが気になりました。
ところで、この映画のテーマは、インターネットというよりは、
大型書店と良心的小型書店の対立でして、
活字中毒の私には、大変興味あるテーマです。
しかし私の偽らざる気持ちとしては、
良心的な小型書店というものが、
私の廻りにはあまりにも少ない(ゼロではない)。
かえって従業員教育の徹底している大型店の方が、
使い勝手が良かったりするのです。
だから、(メグ・ライアンの経営するような本屋も知っていますが)、
それでも何となく、しょうがないか、という感じですねえ。
- 『ビザと美徳』
第2次世界大戦中、日本政府の意向を無視してユダヤ人に
2000枚のビザを発行して、
多くのユダヤ人の命を救った外交官、杉浦千畝を描いた短編映画。
去年のアカデミー短編賞受賞。
私達の世代というのは、戦時中は1億総極悪人という教育を受けてきたので、
こういった話を聞くと、1人くらいりっぱな人がいたんだなあと思います。
しかも彼が外務省を首になったのは、戦後という、いかにも
日本の官僚のやりそうなことです。
しかも名誉回復したのは、外圧によってで、しかも何十年後という
体たらく。
本当に日本の官僚というのは、変わりませんねえ。
さて、だいたいアカデミー賞というのはかなり差別的で、
女性監督には冷たいとか、アジア系の人間のでる映画は相手にされない、とか、
あるので、
まったく日系2世の人で作った映画が賞を取るのは珍しいです。
ただ、もともと舞台劇だったのを主演をそのままでとった映画なので、
なんか演技がオーバーなのと、
アメリカの日系2世の考える戦前の日本人の美徳のある行動は、
我々が考えるものとはギャップがあるので、
違和感はありました。
- 『愛を乞う人』
母親に虐待されて育った主人公が、自分の父親の遺骨を探す
間に、自分を取り戻していく話。
とにかく脚本の出来が物凄く良いので、一人2役の原田美枝子も
本当に本領発揮しています。
これほどの演技は黒沢明の『乱』以来でしょうか。
見る価値十分あり。
ただ、文部省に特選されると、見に行く気持ちがなえるんだよなあ。
- 『メリーに首ったけ』
とにかくキャメロン・ディアスの異常な色気といったらないですねえ。
いま一番お勧めの映画。
とにかくばかばかしくもエッチなギャグが、
これでもか、これでもか、と出てくるのですが、
あまりのその迫力に許してしまいます。
こんなに笑ったのは、川島雄三監督の『幕末太陽伝』か、
パトリス・ルコント監督の『タンゴ』か、
小津安二郎の『生まれてはみたけれど』か、
パトリシア・アースクェット主演の『アメリカの災難』
以来(ちなみに、この4本が私のコメディー
上位4位)でして、
とにかく超お勧め。
ところで映画にアメフトが出てくるのは、
ありそうで意外とないのです。
最近だと、ジム・キャリーの『エース・ベンチュラ』くらいでしょうか。
本作のように結構出てくると、アメフトファンの私には嬉しい。
でも、こんなことやっているから、パッカーズは49ers に、
今年のプレー・オフで負けたんだよなあ(しかもラスト3秒で)。
パッカーズファンの私には、悲しい。
でもジョー・モンタナも、ノートルダム大学で来日してた
頃からのファンですが。
- 『マイ・フレンド・メモリー』
とにかく泣けました。良い映画です。
スティングがトレバー・ジョーンズの依頼を受けて作った曲も
ピッタリです。
スティングの曲は、『レオン』も良かったけど、これも良いです。
ところで、予告編でやっていた『マイ・シリーズ』というのは、
やっぱり変ですねえ
(知らない人のために言っておくと、『マイ・ライフ』のように
一連の『マイ』が付く映画は、シリーズだ、という物ですが)。
この映画の題名だって、原題は『ザ・マイティー』であり、
確かに『マイ』の字が付いてはいますが、『my』ではないのに。
- 『パパラッチ』
まあ芸能人を取材する記者のすさまじいことは、
洋の東西を問わないのですが、
なかなかこの映画は面白かった。
でも1年前のダイアナ事故死の時に公開されれば、
もっとヒットしたのに。
- 『ワン・ナイト・スタンド』
エイズに侵されたダンサーとそれを取り巻く
人々の物語なのだが、
単に病気かわいそう、という映画ではなく、
人間のしたたかさ、強さ、そういった物が描かれている。
ただ監督のマイク・フィギスは『リービング・ラスベガス』も
そうなんですが、もうちょっと観客のことも考えて、
テンポ良くした方が良いかとは思いますが。
番外編『黒沢明映画特集』
黒沢明の映画特集が行われていまして、見てきました。
今までは、名古屋のシネマ・スコーレやシネマ・テークのような、
小さな画面で見ることの多い黒沢明の映画なのですが、
今回はシルバー劇場という、比較的大きな映画館で
行われたので、嬉しいです。
まあどの映画も、さんざん映画館で見た映画ですが、
やはり大きなスクリーンは格別です。
まあ、どの映画もあまりにも有名なので、
今さら私がコメントを言うことも無いのですが、
それでもあらためて見るに、
また新しい発見もありました。
- 『羅生門』
それにしても、これは分かりにくい映画ですねえ。
それに大映でとった影響か、ちっとも黒沢らしいダイナミズムもない。
でも、それが結局ヨーロッパで指示されて日本人初の
ベルリン映画祭で賞を取り世界の黒沢になるのだから、
世の中どこでどうなるか分かりません。
全然内容が分からないから、
『黒沢明の映画、ドナルド・リーチ著、社会思想者』などの
物語の分析なども読んでは見るのだが、
それでも良く分からない。
だれか分かりやすく解説して欲しいですよ。
後の黒沢映画では、こんな分かりにくい映画は『どですかでん』くらいで、
分かりやすいのが黒沢映画なのに。
- 『生きる』
まあこの映画もあまりにも有名で、今さら解説の必要はないですが、
ちょっとだけ書きます。
そもそも私が映画にのめり込むきかっけになったのは、
河合塾で浪人していたときに、
当時唯一出ていた授業の牧野先生が、
推薦したので見に行ったことなのです。
名古屋の河合塾千種校の近くには、池下方面に多くの映画館があり、
気晴らしばかりしていました。
そこで『生きる』と『椿三十郎』を見るわけなのですが、
私は断然『椿三十郎』にはまってしまいまして、
それ以来、私の黒沢明映画のベストになっています。
それにしても、『生きる』という映画は、
本当に脚本の出来がよいですねえ。
特に私が好きなのはガンだと知るシーンなのですが、
この出来の良さは格別です。
それにしても加藤大介のヤクザは、似合いませんねえ。
木村功は永遠の若侍だし。
それと小田切みきはデートのだびに2人前食べさせられて、
あごが2段になってるし。
やっぱり影の主演は宮口精二ですか。
でも本当の主役は音楽かも知れない。
『ゴンドラのうた』に限らず、音楽の使い方が、実に上手なのですねえ。
- 『天国と地獄』
このあたりが黒沢明の絶頂期で、この次の『赤ひげ』以降1985年の
『乱』までの20年間(その間『デルス・ウザーラ』や『影武者』は
ありますが、本来の黒沢ではないと思います)は、日本映画の斜陽とともに、
私に言わせれば「どうしちゃったんだろう」という感じですねえ。
でも20年たって復活するのが普通じゃなく凄いですが。
ラストの山崎努と三船敏郎が会うシーンは、
なかなかだと思います。
チャップリンの『殺人狂時代』のラスト・シーンも、
これくらいの出来にしとけば、もっと良い映画になったのに
(でも『殺人狂時代』は好きです)。
- 『用心棒』
それにしても、東野栄治郎は、本当に貧相な役が良く似合いますねえ。
とても後に水戸黄門をやる人には思えません。
それでも『七人の侍』の
あっと言う間に殺されるちんけな泥棒よりはましですが。
この映画で一番好きなのはジャイアント馬場ですが、
山田五十鈴も迫力ですねえ。
でもやっぱり、卯之助こと仲代達矢でしょうか。
とにかく黒沢がこれほどのりまくって作った映画も
珍しいのではないでしょうか。
- 『蜘蛛巣城』
実はこの映画は、かなり好きなのです。
黒沢の悲劇の中では、『白痴』や『乱』と同じくらい好きです。
原作はシェークスピアの『マクベス』ですが、
実にオドロオドロしい雰囲気が良く出ています。
それだけでなく、
最後の三船敏郎が弓でいられるシーンでも、
本物の矢を用い、物凄く危ない撮影で、
さすがの三船も神経衰弱になったそうですが、
十分その価値はあります。
- 『隠し砦の3悪人』
私が黒沢の映画で一番好きなのは『椿三十郎』ですが、
脚本の面白さは『椿三十郎』と『隠し砦の3悪人』では
ないでしょうか。
とにかくこの映画の面白さと言ったら、
凄いものがあります。
この映画はストーリはジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』で
そっくりそのまま使った
(2本の映画のストーリは、良く考えれば全く同じ)ことでも有名ですが、
確かにそれだけの価値はあります。
とにかく次から次へと危機になる主人公たちが、
実に巧みに危機を逃れていくのです。
- 『七人の侍』
まあ、日本映画の人気投票をすると、1位『七人の侍』
2位小津安二郎の『東京物語』、3位『生きる』と決まっておりまして、
これは世界の映画でやれば1位『天井桟敷の人々』
(ところでこの映画は、本当に面白いのでしょうか?
私は、この映画の美人は美人に見えないし、内容も面白くないのですが)
になるようなもので、
未来永劫変わらないでしょう。
それにしても、確かに仲代達矢はちらっと出ていますねえ。
それから最後、宮口精二が投げた刀は、本当に盗賊まで
届いたのでしょうか。
そうは見えないのですが。
どっちにしても、型破りな映画であることには
違いありません。
以下は1月に見た映画です
- 『ラッシュ・アワー』
まあこれは完全にジャッキー・チェンの映画です。
確かにクリス・タッカーは才能あるコメディアンなのでしょうけれども、
(マーケットの理由なのか)こういう形の競演は面白くないと思います。
それより、もっとジャッキー・チェンを見たいです。
こういった形の競演と言えば、エディー・マーフィーが
一躍有名になった『48時間』がありますが、
あれはニック・ノルティーも凄かったけど(朝から大量にウィスキーが
入ったコーヒーを飲む刑事役)、
それに負けないエディー・マーフィーの
キャラクターが良かったのです。
でもこの映画では、クリスは物足りなかったです。
- 『ジョー・ブラックをよろしく』
ブラッド・ピット主演の死神映画なのだが、
本作は色々愛についての考察が出てきて、面白かった。
とにかくブラピとクレア・フォラーニとの恋愛は
うまくできている。
監督は『ビバリー・ヒルズ・コップ』のマーティン・ブレスト。
この人の『ミッドナイト・ラン』は物凄くお勧めです。
ただ『セント・オブ・ウーマン』では見事にアル・パチーノに
久しぶりのアカデミー賞をもたらしたのですが、
それにしても長い映画でした。
で、本作も長いのですが、確かに3時間を感じさせなく
あっと言う間なのですが、
それでも2時間半くらいに切った方が、
もっと良い映画になったと思います。
- 『ビッグ・ヒット』
殺し屋の話。
と言ってもゴルゴ13みたいな完璧な殺し屋ではなく、
腕は一流なのに、何とも人が良いのでいつも仲間から
利用され割を食っている奴の話。
監督は『新ポリス・ストーリー』のカーク・ウォンなので、
アクションの派手さは香港映画的ですねえ。
主演のマーク・ウォールバーグは『ブギー・ナイト』で
巨大な・・・を持つポルノ男優を演じてましたが、
本作では見事に運動神経抜群の殺し屋を演じています。
- 『ラブ&デス』
予告編にはマーラーの曲が延々と流れていたので、
てっきり『ベニスに死す』のリメークかとも思ったのですが、
確かにリメークっぽいのですが、
この映画は何かふっきれたところがあって、
リメークというよりは新しい映画として見た方が良いかとも思います。
大体が『ベニスに死す』は内容が痛々しすぎますが、
こちらは『デス』という割にはロングアイランドの明るい日ざしのもと、
こんな話もあるんだ、という展開になります。
主役のジョン・ハートも良いのですが、ジェーソン・プリーストリーの
いかにもアイドルなのだが、憂いを帯びた表情、
それもわざとらしくやるときもあれば自然とやるときもある、
なかなかの演技力です。
- 『フェース』
ロバート・カーライル主演のギャング物。
ロバート・カーライルは『トレイン・スポッティング』の
ヤク中よりも凶暴なアル中を、見事に演じていましたが、
もともとは『カルラの歌』のような繊細な役が
あっているのかも知れない。
この映画は、『司祭』で組んだ監督アントニオ・バードと
再び組むわけなのだが、
なかなかカーライルの男ぶりを引き出しています。
話は、なかなかどっちに転がるか分からない展開でして、
私は好きです。
- 『ロスト・イン・スペース』
昔、テレビシリーズだった『宇宙家族ロビンソン』のリメーク版。
最新テクノロジーを使ってまあまあの出来ですが、
なんかいまいちだった。
映画の最後の方のオドロオドロしさは、
これほど特撮を使ってもテレビ・シリーズのようだった。
出演者は、久しぶりのウィリアム・ハート。
彼は『蜘蛛女のキス』のゲイの役でぶっとびましたけっど、
その後『ブロード・キャスト・ニュース』や
『愛は静けさの中に』ではただの人になり、
その後は消えてたのですが、
『スモーク』でちょっと出て、
『ダーク・シティー』では広いおでこを復活させ、
見事本作で復活した感じですねえ。
ゲーリー・オールドマンのスミス博士は、
テレビシリーズの卑屈さが無く、
これはこれでなかなかの出来栄えです。
もともと彼は、最悪中の最悪ロッカー、元セックス・ピストルズの
シド・ビシャスを描いた『シド・アンド・ナンシー』で
ぶっとび、『レオン』で一躍有名になったように、
悪役に異常な才能を発揮する人ですが、
『ベートーベン』あたりからおかしくなって、
『エアー・フォース・ワン』の悪役は
どうしちゃったんだろう、って感じだったので、
本作はなかなか良い。
- 『アルマゲドン』
この映画を見に行くにあたっては、なかなか複雑な気持が
錯綜しました。
やっぱり、あの名作『ディープ・インパクト』の後では、
どんな映画を持ってきても、このテーマであの映画を上回ることは
出来ないだろう、と言うことです。
ところが、この映画のことを色々知るうちに、
そんなことはどうでも良く、とにかく見に行く気持ちが
上回りました。
理由その1.
監督がマイケル・ベイ。
この人は今まで2作しか監督作品がないのですが、
どちらもバツグンに面白いのです。
1作目が『バッド・ボーイズ』。
とにかく文句のない面白さ。
もうメチャクチャ面白い。
2作目の『ザ・ロック』は言うまでもないくらい有名ですねえ。
とにかく、歯切れの良い演出、最後まで一気に気持ち良く
もってくテンポの良さ、娯楽映画の王道を行く人で、
絶対観客を失望させません。
理由その2.
マイケル・ベイは、MTV出身だけあって、音楽にはうるさい。
前作『ザ・ロック』では、ニコラス・ケージは
アナログ・レコード・マニアの役だし、
なかなか音楽的に面白い。
今回も音楽担当はイエスのトレバー・ラビンで、
イエス・ファンの私には興味深い。
ただ私が好きだったイエスは『フラジャイル』の頃のイエスなので、
トレバー・ラビンのイエスはまったく別物と思っていますが、
それでも『究極』で落ちるとこまで落ちて空中分解してしまった
イエスを復活させ、『ロンリー・ハート』で大ヒットさせた
手腕はさすがです。
ただ、なんぼエアロ・スミスのスティーブン・タイラーの娘
リブ・タイラーが出ているとはいえ、
エアロ・スミスの『カム・トゥゲザー』は
センス悪いと思う。
やっぱりビートルズか、マイケル・ジャクソンのがカッコ良いと
思います。
理由その3.
出てくる俳優がメチャ面白い。
やっぱり『グット・ウィル・ハンティング』で
マッド・ディーモンと競演したベン・アフロックとか、
変な顔のスティーブ・ブシューミとか、
私好みの変な奴がてんこもり。
そしてこいつらをまとめるのが、
いかに臭いと言われようと、ブルース・ウィルスしか
いないわけです。
以上、これらを見に行くだけでも見に行く価値は十分あると思いますが、
とにかくこの監督の良い所は、初めからグイグイ攻めて行くところです。
その分人間ドラマは単純化され、
『ディープ・インパクト』などに比べるとその点の深みには欠けますが、
そんなこと問答無用で、パワーで押し切ってしまうところが
この監督の良いところです。
まあ『ディープ・インパクト』は3回泣けたけど、
本作は2回泣けて、10回度胆を抜かれましたね。
- 『キューブ』
こういうのをモダン・ホラーと言うのでしょうか。
立方体の迷路に閉じ込められた何人かの人間が
脱出を試みる話です。
内容の恐さより、私は数学の教師をしていますので、
数学の謎解きの方が面白かったけど、
いまだに良く分かりません。
だれか教えてください。
それにしても、最近のカナダ映画の充実ぶりは
驚異的ですねえ。
アトム・エゴヤン監督の『エキゾティカ』『スィート・ヒアー・アフター』
デビッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』
リン・ストップケウィッチ監督の『キスト』、
どれも内容の充実したすばらしい作品ばかりです。
今は、イギリス映画とカナダ映画と中国語映画はカイ、
フランス映画マアマア、イタリア映画ドウシチャッタノ、
てとこでしょうか。
- 『ビッグ・リボウスキ』
あのコーエン兄弟だからなあ...まあとりあえず見ました。
私は、コーエン兄弟の映画は大好きなのですが、
良く万民向きでない映画も有りますので、
どのくらい薦めていいものやら、迷うのですが。
主人公はロサンジェルスで一番不精者。
これをジェフ・ブリッジズが好演しています。
何しろ味が有る。
彼以外にも、『ファーゴ』でさんざん変な顔と言われていた、
本当に変な顔のスティーブ・ブシェーミ。
『コーン・エアー』の演技から考えると、信じられません。
こいつら不精者のくせして、律儀にボウリングの練習だけは欠かさない。
何が有っても欠かさない。
それに『遥かなる帰郷』で実に良い味出していたジョン・タートゥーロ。
このあたりは、コーエン兄弟好みの本当に演技力有る俳優たちです。
で、何から何までコーエン兄弟のペースで作られた映画なのに、
それがいまいち面白くないのはなぜだろう。
もっとも前作『ファーゴ』が面白すぎて期待しすぎる、
というのは有るのだが。
『ファーゴ』の前の『未来は今』は、あまり評判は良くないのだが、
私は好きです。
でもまあ、コーエン兄弟が普通の映画を作ってもなあ...
というきらいは有ります。
要するに、コーエン兄弟を見る場合、その人の『コーエン度』のような、
どのくらい入れあげているか、にもよるので、
一概に薦められないのがつらいのですが、
一度はまると、たまらない快感ですよねえ。
『バートン・フィンク』のカリカリ感。
『ミラーズ・クロッシング』のスタイリッシュな映像。
本当に凄い。
- 『宋家の三姉妹』
これは中国に実在した三姉妹の話で、
一人は中国一の大富豪と結婚し、一人は孫文と結婚し、
一人は蒋介石と結婚するという、大変な一族の物語です。
映画の話としてより、こんな三姉妹がいたということ自体が、
大変な驚きでして、そのこと自体、大変興味深いのです。
こんな大変な人々の物語りですから、
話は自然と盛り上がり、なかなかドラマチックな出来になっています。
それに、女性ですから運命に翻弄されるイメージが有るのですが、
この三人とも、自分の運命をしっかりと捕らえ、
それに力強く向かっていくところが良いです。
ただ、映画館の映写設備の不備なのか、
画面のピントがあっていなく、ピンボケで、
音も時々揺れるのが気になりました。
映画館の映写機は自動化され、昔気質の映写技師は必要とされなくなった
そうですが、では映写機の映像が良くなったかと言えば、
自動映写機を操作する人間の未熟で、不備なことはしょっちゅう起きています。
外国などでは、映画が始まって15分くらいは、
映画館の係員が画面に異常がないか見ているそうですが、
日本で行っているのは、外資系のチェーン店で一部行われているだけで、
ほとんどないそうです。
この映画館は、以前もリュック・ベッソンの
『アトランティック』を上映したときもひどい映像だったので、
かなり映画館の質の問題なようです。
何とか、なりませんかねえ。
- 『6デイズ・7ナイツ』
ここ10年くらい、ハリソン・フォードの魅力がどんどん無くなってきて、
ついに大統領の役で最悪と思っていたのですが、
やっと『スター・ウォーズ』の頃に戻って、良い感じの映画に出来上がっています。
大体は冒険映画と言うものは、冒険が大きくなるほど面白くなると
勘違いしている監督もいるのですが、
この映画は、ほどよい冒険、ほどよい快感、良い仕上がり具合です。
本当はあまり期待せずに見に行ったのですが、お勧めです。
- 『イン・アンド・アウト』
ケビン・クラインのさわやかな持ち味が出た、
ナイスなコメディー。
最後の結末もなかなか良いが、
やはりアカデミー賞の授賞式のシーンは見ものです。
でも司会は、ビリー・クリスタルにやって欲しかったけど。
- 『ベルベット・ゴールドマイン』
ゴールドマインとは金鉱のこと。
題名どうりの、70年代のゴージャスなロックの雰囲気を漂わせた映画。
私のように70年代ブリテッシュ・ロック大好き人間には、
このゴージャスさは、たまらないです。
ただこの映画は、明らかにデビッド・ボウイなんだろうけれども、
デビッド・ボウイの協力が得られなかったため、
音楽はブライアン・イーノやブライアン・フェリーが
担当しているようです。
私の記憶では、ロキシー・ミュージックというのは、
デビッド・ボウイや T.REX に比べれば、いまいちな印象だったので、
T.REX の曲をもっと多く使えば良いのになあ、などと思って
見ていました。
ところで、ユアン・マグレガー演じるロックミュージシャンが、
一番当時の雰囲気に近いような気がし、あらためて彼の
演技力の凄さに参りました。
彼は極めてまじめな俳優なので、
『普通じゃない』とか『ナイト・ウォッチ』のようなまじめな役だと、
まじめがぶつかっちゃって、いまいちなのですが、
『トレイン・スポッティング』とか本作のように、
ハチャメチャな役で、しかも実は悩んでいたりする役だと、実にはまりますねえ。
ところで、彼が演じていたロック・ミュージシャンは、
アメリカ出身とか、上半身裸ということから考えると、
やっぱり最悪のロッカー、イギー・ポップなのでしょうか。
ちなみにイギー・ポップは、コンサートで客席の女性に
マイクに・・・させて前歯を折ったという事件が、確か有りました。
最後に、やはり当時のレコード屋のレコードは、懐かしいですねえ。
最近良くコマーシャルでかかるギルバート・オサリバンとか、
私の大好きなイエスのサード・アルバムとか。
特にイエスは、ロジャー・ディーンがイラストを描く『フラジャイル』
からが有名ですが、まだリック・ウェークマンが加盟せず、スティーブ・ハウが
一人でギターを弾きまくっているサード・アルバムも、
捨てがたい味が有ります。