愛知学院大学 歯学部 薬理学講座
Aichi Gakuin University School of Dentistry Department of Pharmacology


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研究内容


教授挨拶
 本講座は松本昌世先生が初代教授として昭和38年に開講されました。私は松本先生の後任として、平成8年4月から本講座を主宰しております。私は昭和60年10月に本学に赴任しましたが、大学院時代には福田英臣先生(東京大学名誉教授)に中枢性筋弛緩薬の薬理学的研究を、助手時代には永津俊治先生(名古屋大学名誉教授)にカテコールアミン合成酵素チロシン水酸化酵素の活性制御機構の生化学的解析を、留学時代にはDr. Gordon Guroff(NIH, NICHD)に神経突起形成を担うNGFによるPC12細胞におけるリン酸化についての神経科学的研究をご指導頂きながら、それらの研究に興味深く携わりました。このような研究背景を基に、先代の松本先生の「硬組織の薬理学」を発展させるため、平成8年より「神経系の骨代謝への関わり」についての研究に着手しました。それから既に17年の歳月が流れております。骨と神経の研究を、最新の分子生物学的手法を用いた神経機能および骨代謝の解析と基本的な薬理学である薬物の生体に与える影響の解析を行いながら、また歯科領域における発展・応用を考えながら、研究を推進させています。教育においても、薬物の基礎的な作用機序にとどまらず、生命機構解明という学問の面白さを伝えることを、また、大学院教育においては、歯科医学の発展を目指す意欲、世界第一線の研究者として通用する技術・知識を体得させることを念頭においています。本講座には、宇宙科学的な発想に根ざした研究、電気生理学的な手法を用いた研究、遺伝子欠損マウスを駆使した研究、正統的な薬理学的研究など、それぞれが異なった得意分野を持った講座員で構成されています。骨と神経の関連について、それぞれの持ち味を活かしながら、お互いの成果を異なる視点から議論し、日々研究に取り組んでおります。現在も4名の大学院生がスタッフと共に研究をエンジョイしています。骨と神経の研究に興味のある方は、是非本講座までご連絡ください。 これからの8年間も、美しいもの、未知なるもの、神秘的なものに目を見張る感性を失わないように、講座員と共に研究をエンジョイしたいと思います。ニュートンの言う“遊子”の様に。“I do not know what I may appear to the world but to myself I seem to have been only like a boy ?playing on the seashore, and diverting myself in now and then finding a smoother pebble or a prettier shell than ordinary, ?whilst the great ocean of truth lay all undiscovered before me.?”『私は砂浜を散歩する子供のようなものである。 私は時々美しい石ころや貝殻を見つけて喜んでいるけれど真理の大海は私の前に未だ探検されることなく広がっている』。(平成25年12月25日記)
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研究詳細
 本講座では、1997年にヒト骨芽細胞におけるアドレナリン受容体およびニューロペプチド受容体の恒常的発現を報告し()、また、1998年9月開催の第40回歯科基礎医学会学術大会において「骨と神経」と題するシンポジウムを企画した際、臨床的観点からのシンポジストとして加わって頂いた黒川高秀教授(東京大学医学部整形外科)に『大変興味深く、面白いテーマだ』と励まされて以来、一貫して神経系の骨代謝制御についての研究を行っています。
 今までに、培養細胞および実験動物を用いた研究により、交感神経系が骨代謝の制御システムとして生理的意義を有していることを、小規模研究室として出来る限りの手法等を用いて明らかにしてきました。本講座の研究結果を中心にまとめた総説()もいくつか公表する機会を得ており、参照頂ければ幸いです。現在、本研究室では下記のテーマを中心として、今迄の知見をさらに質・量共にレベルアップすることに、講座員一丸となって取り組んでいます。
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研究テーマ
1. 交感神経系および感覚神経系による骨代謝制御に関する薬理学的研究
2. 神経細胞と骨関連細胞との情報伝達に関する薬理学的研究
3. 骨代謝における概日リズム制御機構の分子生物学的および時間薬理学的研究
4. 骨代謝における活性酸素の生理的役割に関する分子生物学的研究
5. メカニカルストレスによる骨代謝制御に関する薬理学的研究
6. 骨関連細胞の環境応答に関する薬理学的研究
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【1.交感神経系および感覚神経系による骨代謝制御に関する薬理学的研究】

交感神経系が過剰に興奮している高血圧自然発症ラット(SHR)において骨吸収の亢進による骨量の減少が見られる事、SHRの骨量減少が低用量のβ2アドレナリン受容体阻害薬によって回復することを示した。またβアドレナリン受容体作動薬を浸透圧ポンプにより持続的に投与すると骨吸収の亢進による骨量の減少が起こることを示した。さらに、カプサイシンにより感覚神経除去を除去したラットにおいて骨吸収の亢進による骨量の減少が起こることを示した。神経伝達物質であるノルアドレナリンをヒト骨芽細胞SaM-1に適用するとGi/o共役型のα1Bアドレナリン受容体を介したKチャネルの抑制により、細胞増殖が促進されることを示した。これらの結果から交感神経、感覚神経が骨代謝を制御していることが示唆された。現在は、骨芽細胞におけるβおよびα受容体の新規標的分子とその機能解析を行っている。


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【2.神経細胞と骨関連細胞との情報伝達に関する薬理学的研究】

マウス新生仔より交感神経節である上頸神経節を摘出し、骨芽細胞様細胞MC3T3-E1またはRAW264.7細胞から分化させた破骨細胞との共培養系を用い、神経-骨芽細胞、神経-破骨芽細胞間のシグナル伝達を観察した。サソリ毒により神経細胞を選択的に刺激することで、神経終末における細胞内Ca濃度が上昇した。これらの結果から、神経が骨代謝関連細胞に対して直接的にシグナル伝達を行う可能性が示された。現在は、神経細胞と骨芽細胞のシグナル伝達の評価法の確立を目指している。

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【3.骨代謝における慨日リズム制御機構の分子生物学的研究および時間薬理学的研究

骨代謝活性が日内変動することは広く知られているが、その分子メカニズムは未だ解明されていない。近年、生体の概日リズムを調節する遺伝子として時計遺伝子が発見され注目されている。我々は、骨芽細胞に時計遺伝子が発現しており、それが交感神経系および糖質コルチコイド系のシグナルにより同期化されることを示した。一方、破骨細胞においては交感神経系ではなく糖質コルチコイド系シグナルにより、時計遺伝子が同期化されることを明らかにした。さらに一部の骨代謝関連遺伝子も時計遺伝子同様の概日リズムを示したことから、交感神経系や糖質コルチコイド系のシグナルが骨代謝の概日リズムを制御する可能性が示された。現在その詳細なメカニズムについて検討している。

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【4.骨代謝における活性酸素の生理的役割に関する分子生物学的研究】

活性酸素種は老化、炎症、ガン様々な病気と関連していることが示唆されているが、近年骨粗鬆症とも関連していることが報告されている。交感神経系による骨吸収亢進のメカニズムとしてβアドレナリン受容体を介して活性酸素種の産生を誘導し、破骨細胞分化を促進することを見出した。現在、活性酸素種の骨芽細胞系への影響について検討している。

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【5.メカニカルストレスによる骨代謝制御に関する薬理学的研究】

機械的負荷が骨代謝制御に大きく関与していることが知られているが、その詳細なメカニズムは未だ明らかになっていない。実験的歯の移動モデルにおいて歯根膜で交感神経系、感覚神経系が活性化されることを示し、βアドレナリン作動薬および阻害薬が歯の移動をそれぞれ促進、抑制する作用がみられた。さらに、6-OHDAによる交感神経の除去により歯の移動が抑制された。 これらの結果は実験的歯の移動において交感神経の活性化による骨吸収の促進が歯の移動に重要な役割を担うことを示している。現在は、感覚神経系と交感神経系の関与について検討している。

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【6.骨関連細胞の環境応答に関する薬理学的研究】

骨は機械刺激だけではなく、様々な刺激に対して応答を示す。

発痛物質であるブラジキニンによって骨芽細胞においてIL-6やPGE2などの炎症性メディエーターの産生が増加することが示された。ブラジキニンによる作用はGqタンパク共役型受容体であるB2ブラジキニン受容体を介し、細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出およびストア作動性Ca2+チャネルを介したCa2+流入が関与することが示唆された。


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