文部科学省研究費補助金基盤研究B


(3)周知と理解について
 口唇口蓋裂についての予防に対する関心は非常に高かったことから、周知を徹底することで、これまで本症患児の出生を心配して妊娠を諦めかけていた多くの患者や家族がリスクを十分理解した上で参加することが期待される。
 本プログラムでは、食事記録など参加者側の労力も大きいことから、参加者の条件として、予防に対する関心が高く、積極的な姿勢で臨む者であることが重要である。妊娠可能な女性ならびに家族に対する啓発の重要性も示唆された。
また、事務局では遺伝子カウンセリング部門を開設しているので、口唇口蓋裂について十分理解を得た上でのこのプログラムへの参加が求められる。


(4)予防効果の検証について
 本プログラムにおいて、予防効果を検討するために、参加者群と本症発生率について比較検討するための対照群を設定する必要があるが、我々が推奨している母体環境改善は、現時点で最も良い方法であると考えており、これに対する対照群を設けることは倫理的に問題がある。そこで、過去の資料や家系調査を実施し、予防の試みを行わない場合の発生率の参考値とすることにしている。
 本症は、性別、裂型別によって発生率が異なることから、このような分類に基づいて検証していく。
 今後、参加者数を増やすことで、これらが可能になると考える。
また海外における本症再発予防に関する調査として、先述のように、Tolarovaらによるチェコスロバキアにおける臨床調査が実施されており、10mgの葉酸と総合ビタミンのサプリメントの服用群で、65.4%の再発の減少が認められている。この予防効果は、葉酸によるものか、他のビタミンによるものか、それらの相互作用によるものかについては不明であるが、これらの服用の潜在的な効果を示すものとしている。


(5)今後の展望
 近年ゲノム解析が盛んに行われ、様々な疾患の発生機序が、遺伝子レベルで明らかにされつつある。本症の発生は、遺伝要因と環境要因の両者によると考えられており、その発生機序の解明は困難を極めるが、本研究においても参加者の内、同意を得られた方から遺伝子解析用に血液サンプルの提供を受けている。今後、この予防の試みにおいて、予防が可能であった群と、そうでなかった群における比較を行う予定である。
 これらの研究を展開することで、将来的に、遺伝子型や体重も考慮した上で葉酸等の必要量を算定するなど、各個人に合ったより有効な予防法、すなわちテーラーメイドの予防法が確立されるものと期待される。


back